10.約束と条件 それは、1ヵ月前のことだった。未希は健太に離婚を切り出したのだ。 「健太、少し話し合いたいことがあるの・・・」 リビングで寛ぐ健太に、未希は突然に離婚について語りはじめる。その話を聞く健太はみるみる顔面蒼白になっていく。無理もない。会社の仕事も順風満帆で、家庭には人も羨むほどの美しい妻がいる。収入も安定し、実入りもよい。世間では勝ち組と言われる部類に位置し、健太自身もそう信じていた。 それが突然に、愛妻から別れを告げられたのだから、全くの驚きだった。 ―― 自分は妻に対して何か至らないところがあったのだろうか・・・・。 健太は思いを巡らすが、離婚に繋がるような伏線は全く見当たらない。最近、未希と喧嘩や争いをしたこともない。一体、未希はなにを不満に感じているのか。健太には皆目見当がつかなかった。 そもそも、未希と健太が結婚したのは、仕事上の繋がりだった。グローバルカンパニーとして名を馳せるメーカーに勤める健太は、製品のマーケティングについて未希が勤める広告代理店にプランの制作を依頼していた。もちろん、その広告代理店は一流企業だ。その広告プランの担当責任者が未希だった。 未希の提案は奇抜なアイディアを避け、必要不可欠なポイントを抑えた上で、コンシューマーに訴求していくという地味なものだった。が、それが健太の企業の幹部から信頼を獲得し、他社の案を抑えて無事に案件が決まった。その後のやり取りを通して、未希と健太は急速に関係を深めていくことになる。 未希にとって、健太は仕事を通して知り合ったボーイフレンドの一人に過ぎなかった。ハイスペックの未希にとって、健太クラスの男は腐るほどいる。むしろ、未希を落そうと狙ってくる男がほとんどだった。いくら、一流企業の肩書付きの男でも、未希にとってはロースペックに映る。なにせ、未希の父親は超一流企業の役員なのだから、さまざな高スペックの男性と知り合う機会はふんだんにある。政治家や知事、公務員の幹部、企業の経営者、大学教授などさまざだ。 そんな中にあっては、健太も色褪せた存在に映っても不思議ではなかった。 健太とのデートは最初はビジネスベースのものだった。つまり、未希はクライアントのさまざな情報を健太から得ようとしていたわけだ。健太もその辺は十分に理解していた。未希の人気は業界内ではトップだ。あらりあらゆる男が未希を我が物にしようと、画策していたのだから、そんな競争に巻き込まれるのは正直言って気が引けた。 健太は未希が一流企業の役員の娘であることを知り、はなから自分にはチャンスがないと決め込み、諦めていたのも事実だ。2人きりのデートも、仕事の話がベースで、食事をして、少しお酒を飲んで終わりというもの。とても付き合っているといえるものではない。ただし、未希とプライベートな食事にいくことができる男性はほんの少しだけであり、健太はそれだけでも男性として優越感に浸ることができた。 そんな2人に転機が訪れたのだ。未希の父親は副社長に昇進。いくつかの子会社、関連会社の社長を務めるようになる。元々野心が強かった父親はさらに自己実現を追及するようになる。それは未希の人生にも大きな影響を与えようとしていた。 ある日、未希が実家に呼ばれ、父の元を尋ねた時の話である。 都内高級住宅街にある未希の実家。そのリビングルームで対面のソファーに腰かけ、向き合う父と娘。父が口を開く、 「仕事の方は、どうだ?」 父、武川龍太郎はソファーにどっしりと腰を構え、向かい合って座る未希に他愛のない仕事の近況を聞いてきた。大企業の副社長を務めるだけあって、親子でもなかなか腹の中は見せない男だった。 「ええ、最近は五洋コーポレーションとのマーケティングの案件を担当してて、まず順調にいっているわ。」 五洋コーポレーションとは、健太が勤める企業で日用品から産業素材まで幅広く手掛けるグローバル企業グループだ。未希は龍太郎に仕事が順調であることを告げる。 「そうか、それはよかった。まぁ、未希はもともと優秀だからね。広告代理店なんかに勤めてるなんてもったいないほどだ。光永君は私の後輩でね。よく言っておくよ。」 父親が名前を挙げた光永氏とは、未希の勤める広告代理店の社長の名前だ。この父ほどの社会的実力者となれば、さまざまな分野に顔が利くのだろう。「よく言っておく」というのは、実の娘を贔屓にしろということ意味する。つまり。父・龍太郎は、未希の社会生活に介入しようとしているのだ。傲慢で強欲な父・龍太郎は何事も自分の意のままにしなければ、気が済まない性格で、最愛の娘にしても全てをコントロールしようとしていた。 それが嫌な未希は、父が役員を勤める会社への入社を避け、あまり影響が及ばないと考えられた広告代理店に入社したのだ。しかし、龍太郎はなにかにつけ、未希を自分のコントロール下に置こうとしていた。 「そんな父の七光りなど要らない」と言いたかったが、ここで口論してもはじまらない。未希は黙って父の話を受け流した。 「ところで、今度、関連会社と子会社の社長を勤めることになってね。」 龍太郎は複数の会社の社長就任について話し出す。龍太郎によれば、複数の社長を勤めることから、優秀な秘書が必要になるという。その秘書に未希がなってほしいという話だった。 「今、大事な仕事を進めているの、それは、ムリよ。お父さんの会社には優秀な人が沢山いるのだから、そのなかから選ぶべきよ。」 未希は当然のことを言って話を断るのだが、 「まあ、優秀な人材は沢山いるがな。信用ができる人間はいないのだよ。わかるか?」 龍太郎はまじめな顔つきで話し始める。今度の社長に就任する会社では、最先端の技術を扱い。その機密性は極めて高い。いくら、優秀な社員でも、優秀さだけでは秘書に採用するわけにはいかないのだという。 この龍太郎の話もある程度は納得するものがある。この龍太郎という人間は常に信用を重視する人間だ。「情報は決して漏らさない」というのが信条であり、滅多に人を信用することがない。そのため、副社長にまで昇進したとも言われる。 しかし。プロジェクトを任される責任者を勤める未希には、そんな話は到底受け入れられる筈もなかった。 「未希は今、どんな役職に就いているんだ?」 龍太郎は、未希の会社での立場が知りたいのか、役職について興味を示す。 「シニア・ディレクターよ」 その言葉を聴いて、龍太郎は目をまん丸くして驚きの表情をする。製造業のシニア・ディレクターと、マスコミのシニア・ディレクターはその立場が異なる。恐らく、龍太郎は経営層のディレクターと勘違いしちるのだろう。広告代理店で、ディレクターは「現場監督」が相当する意味だ。業界が違うと肩書のインパクトも異なるのが面白い。 「まあ、仕事で頑張るのもいいが、家庭を築くというのも大切だ。」 龍太郎は今日の本題に入ろうとする。自分の秘書に就くことを未希がやすやすと承諾しないのは想定内の話だったらしい。「家庭を築く」ということになれば、それは結婚の話ししかない。 「実は、ある国政を担う若手代議士さんが、未希のことを大変評価してくださっているんだよ。」 龍太郎は満面の微笑みを浮かべながら話し始める。その代議士は、所謂2世代議士で、その父親はもう引退しているが誰もが知る有名な元国会議員だった。社会的に大企業の実力者になりつつある龍太郎にとって政界とのつながりは、経済界に睨みを効かすキングメーカーになるチャンスだった。娘を政略結婚させてまでも、地位と権力を手中に収めようとしているのだ。 「彼は学歴も品行も、その政治哲学も申し分ない。そんなお方が未希に興味を抱いているのだ。少し合ってみてはどうかと思うんだが・・・」 龍太郎の話を聴き、未希は「このままでは父の出世の道具にされてしまう。」との危機を強く抱くのだった。 ―― もう残された時間は少ない。 未希は焦りはじめた。人生で生まれてはじめて、追い詰められたのだ。父、龍太郎は頑固だ。政治家との繋がりを望む龍太郎は、未希をその若手代議士に嫁がせるつもりなのだろう。確かに代議士の夫人として、生きるのは悪くないかもしれない。世間受けも悪くはない。ただし、それは未希が心から望んでいる人生とは全く違った。未希は今のように一般社員として働いていくのを望んでいた。そこで、まず父の企みより先に、結婚して自分の身を守ることにしたんのだ。そこで白羽の矢が立ったのが、健太の存在だった。グローバルカンパニーに勤め、昇進も早く、ルックスもよい。社内外でも健太を狙っている女性は多いとの噂を聴く。父・龍太郎の政略結婚から逃れるためには、健太以外に目ぼしい男はあまり見当たらなかった。それと、未希が健太に白羽の矢を立てたのは、健太の性格も大きい。 健太は未希が食事に誘っても下心を決して出すことなく、ビジネスライクの関係を保つように努めている。未希が欲しい社内の情報や、クライアントしての要望など、未希の望みは阿吽の呼吸で通じていた。健太の発するオーラにはギラギラの欲望にまみれた感じはなく好感が持てたのだ。 未希と健太は急速に男女の仲に発展し、ついには結婚にゴールする。もちろん、父・龍太郎は未希の結婚を容易に受け入れなかったが、娘が選んだ相手との結婚に抗しきれず、最後はあっさりと折れたのだった。こうして、未希と健太は家庭を築くことになったのだが、それは未希の人生上、消極的な選択と言わざるを得なかった。 それでも円満な夫婦生活を送り、幸せな家庭を築いていた。そこで、また大きな変化が未希を襲う。父・龍太郎が病を患ったのだ。それも癌である。最新の医学により、直ぐに命を落とすということはなくなったものの、やはり子会社の社長を務めるには、今以上に家族のサポートが必要になる。そんな中で、再び未希に自分の秘書に就任するように求めてきた。 そして、若手代議士との結婚について勧めたことも、「悪いことをした」と反省している様子なのだ。父・龍太郎が病を患い、苦戦するなかで、未希の心のなかでもなんとか父を支えたいという気持ちが芽生えてくる。あんなに毛嫌いしていた筈なのに、未希自身が不思議だった。 それと、健太との結婚生活についても、正直飽きてきていたのだ。理想と現実のギャップが激しすぎた。所詮、サラリーマンとの結婚生活は退屈に過ぎないということを嫌というほど知ることができた。できれば、独身に戻って、もっと仕事に打ち込みたいとも思っていたのだ。誠に勝手極まりなにのだが、それが未希の素直な気持ちだった。 そんな未希の気持ちを打ち明けられた健太はたまったものではない。第一、離婚の理由が「もっと仕事に打ち込みたい」というもので、到底受け入れられるものではなかった。 「未希、それはどういうことだ。今まで、僕たちはうまくやってきたじゃないか・・・」 健太は離婚を打ち明ける未希に真剣な眼差しで問い質す。 「もう結婚はいいわ。私はまだやりたいことがあるし・・・」 未希はこの家庭生活には未練はないというキッパリとした態度を示す。それもそのはず、健太との結婚を急いだ理由だった「政略結婚」の話が消えたのだから、もう健太は必要なかった。それに、父・龍太郎は病を患い、以前ほど頑固ではなくなりつつある。父が未希を完全に支配しようとしていたのは以前の話になっていた。未希は、「あとはお互いの弁護士を通して話し合いましょう」といい、リビングルームを去っていった。 ひとり寂しくリビングルームに残された健太は、これからどうしようものかと思い悩む。人も羨むほどの容姿端麗な美人妻をみすみす逃すのは絶対に避けたいところだ。ただ、未希の意志はかなり固い。彼女のあの性格から考えを翻すことなないだろう。 そこに、悪魔の囁きが心の中に響いてきた。 ―― 「あれを使え。あれを使って、未希を完全に支配していくんだ。まるで、動物のように飼育してな。」 どこからともなく、心の中で思い浮かぶ悪魔の囁き。一方的に未希の都合で別れを告げられた健太は、未希を妻として扱うのではなく、性奴隷として飼育することが頭に浮かんでくる。 ―― 未希を絶対に手放すものか! 寝室で自分の着替えなどをまとめる未希。今日、このマンションを出ていく気なのだろう。健太が寝室に入ると、振り返り、健太を見つめる。 「今日は、とにかく、着替えを持って実家に帰るわ。その後の荷物は、また後で取りにくるから・・・」 未希は手を休めることもなく、着替えをトラベルケースに入れていく。 「随分、急な話なんだな。いきなり離婚の話を切り出して。こっちはまるで状況が掴めないよ。」 健太は未希の急変ぶりに狼狽する。それもその筈だ。さっき、離婚の話を聴いたばかりで、もう、家を出る支度をはじめているのだから、あまりにも急すぎる。 「父が病気なのよ。少し父の仕事の手伝いをしなければならないの・・・」 未希は仕方ないという表情をしながらも、着替えを次々と大型のトラベルケースに入れている。手を休めるつもりはなさそうだ。 「そうか、それは気の毒だ。未希、ちょっと、これを見てくれないか?」 健太は手に持っていたタブレットを未希に見せる。なにかと思いながら、タブレットを覗き込む未希。そこには、未希と健太の愛し合う姿の動画が映し出されていた。正常位やバックをはじめ、健太と楽しんだ男女のまぐわい。その一部始終が動画になっている。 「これは一部だ。もっと、いろいろとあるんだ。」 健太は真面目な顔つきで未希に卑猥な画像を見せつける。自分たちの性行為を録画するなど、未希は想像もつかないことだった。それも、寝室には隠しカメラが何台も取り付けられていたらしく、さまざまな角度から卑猥な行為の一部始終が録画されている。こんなものを世の中にばら撒かれたら、社会的実力者の父・龍太郎に相当の打撃を与えるはずだ。 未希はこれが脅しであることを瞬時に理解した。 「こ、これをどうするつもり・・・」 未希は冷静を装って健太を刺激しないようにする。もし、ここで健太が錯乱すれば、未希の卑猥な動画がネットにばら撒かれるかもしれない。このスキャンダルで父は失脚の憂き目にあうだろう。 「君ほどの女性の性の営みを知りたい男性は世の中に、ごまんといるだろう。そういう奴らに恵んでやってもいいと思ってるんだ。」 健太はネットという言葉は使わないものの、夫婦間の性生活の録画を公表するつもりらしい。 「やめて、これは立派な犯罪よ。健太、自分の将来を失いたいの?」 未希はキッパリとした強い意志で、健太を諭す。 「こういうのもあるんだ。」 そう言いながら、健太は次の画像を未希に見せる。そこは、未希の部屋の映像だった。未希の部屋にも、隠しカメラが付けられていたらしい。それも複数台という念の入れようだ。 その日は、健太は仕事で留守だった。未希は健太の部屋を掃除しながら、クローゼットの奥にあった不思議なアルミケースを見つける。アタッシュケースより大きい、そのアルミケースはダイアル式の鍵がかかっており、開けることはできなかった。未希はその鍵の番号を健太の誕生日と推測し、ダイアルを合わせていく。 カチ 「ビンゴ!」 アルミケースは見事に空いた。その中には、黒い革のベルトのようなモノが沢山入っている。 「なにこれ・・・」 このベルト状のものは、一般にハーネスと呼ばれ、SMプレイで女を拘束するために使うものだった。 未希が手に取ると、ジャラジャラと革のベルトに付くバックルが音を鳴らす。夥しい数のベルトとバックルの数。これを一つずつ締め上げて、身体を拘束していくのだろう。そんな黒革のベルトを見ると、何故か胸がドキドキし、心拍数が激しくなる。 アルミケースの中には、全身拘束ベルトの他に、手枷、足枷。首輪、T字ベルト、乳房枷、ウエストベルトなど、女の肉体を厭らしく拘束する器具がぎっしりとつまっている。 「なんで、健太がこんなもの持ってのかしら・・・」 未希の理性はここで、「直ぐにそれをしまいなさい」と命じてきた。それもそうだ。こんないかがわしいもの、一体何に使うのか、健太に確かめる必要がある。まさか、この卑猥な道具を使って浮気しているとも限らない。卑猥なハーネスを持ちながら、それがどうやって使うのか、拡げてみたりして想像してみるが、一向に理解できない。 そんな時、アルミケースの底にある1枚の写真に気付く。このハーネスを身に着けている女の写真だ。「全身拘束具」とプリントされているため、商品の写真なのだろう。裏面には丁寧に着用の仕方が書かれていた。 その説明によれば、全身拘束具は、先ず、(1)首輪部分(2)首輪から股に伸びる垂直ベルト(3)乳房を上下に挟む横ベルト(4)ウエストを締めるウエストベルト――で構成され、これらを締めることで全身を拘束できるとされている。両手は後ろ手で組み、枷を嵌めた上でウエストベルトに繋ぐらしい。 商品説明の画像では、黒い首輪を嵌められ、豊かな乳房の上下を黒い革のベルトが走り締め付け、胸を突き出すように強調されている。ウエストには黒革のベルトが食込み、女の細いウエストを強調し、股間には黒革のベルトが割れ目に食込むように締め付けている。どう見ても、卑猥で猥褻な感じしか受けないが、とても厭らしく、女の肉体が美しくも見える。 未希は、この全身拘束ベルトを身に着けると、どんな感じになるのか試してみたくなった。幸い、今日は夫は仕事でいない。内緒にできるはずだった。急いで、アルミケースを自分の部屋に持ち込む。未希の部屋で全身拘束具を身に着けていく。 首輪状の革ベルトを首に嵌める。しっかりと嵌まる革の感触が、まるで自分が囚われの身になったような錯覚を醸し出す。支配された感覚に襲われる。次に首輪から股に伸びるベルトを股間前に垂らし、乳房の上下に黒革のベルトを這わせて、背後でバックルで止める。 「すごい、胸が圧迫される感じ、胸が疼くようだわ・・・」 未希は乳房の感覚が増幅していくのを感じる。 「これを思いっきり締め付けられたら、どうなってしまうの・・・」 未希は自分でバックルを嵌めているため、力強い締め付けはできないでいた。それが、なにかもどかしい。 ウエストのベルトを締め、最後は股間にベルトを通し締め付ける。 「あ、これはアソコを締め付ける・・・ヤバイ・・・」 未希がベルトを締め🅂つけると、クリトリスが圧迫され、ジーンする疼きが下半身を襲う。 「はあ・・・」 思わず、淫靡な声を漏らす未希。 ――この全身拘束具ってスゴイ。全身を感じさせる作用があるハーネスみたいね。 未希は徐々に自分が興奮していくのが、わかった。ウズウズするなか、我慢できず。最後は部屋でオナニーまでしてしまう。それも、一度きりではない。拘束具に異常性に興奮した未希は、しょっちゅう健太の部屋からアルミケースを持ち出し、拘束具を自らの肉体に付け、バイブを使いオナニーを楽しんでいた。 その一部始終が録画されていたのだ。 「お前にこんな趣味があるとは知らなかったよ。これも、その手の趣味の奴らに見てもらおうかと思っているんだ。」 未希の表情がみるみる青ざめていく。まさか、自分の変態行為が録画されているとは全く想像していなかったからだ。健太の部屋からアルミケースを持ち出し、内緒で楽しんでいたSMの拘束具、それを使ってオナニーしている姿が録画されていたなんて・・・。 こんなもの流出してしまったら、もう終わりだ。これからの人生はお先真っ暗になる。 「健太・・・それは・・・」 未希はそれ以上、言葉を続けることができない。ここで逆切れする手もある。ただし、健太の機嫌を損ね、一部でも映像が流出してしまったら、マズイ。 「僕は、未希を脅す気はないよ。ただ、条件を飲んでくれれば、離婚にも応じるし、この録画も全て削除してもいいと思ってるんだ。」 健太は妙に紳士的な態度に出てくる。だが、それはある条件を飲めばの話だ。その条件とはどんなものだろう。 「条件って・・・・」 未希はすかさず、その条件について問い質す。 「まあ、焦らないでくれ。まず、君は自分では気付いていないかもしれないけど、マゾなんだ。だから、僕拘束具を使ってオナニーをして楽しんでいたんだ。」 間髪入れずに、未希が叫ぶ。 「何言っている。マゾなんかじゃないわ。」 強く激しく否定する未希。その否定に構うことなく、健太は続ける。 「それは未希が自分でマゾだと気付いていないだけさ。首輪を着けられ、家畜のような扱いをされると君は心から悦びを感じるのさ。そういう女だってことをこれから証明してみせるよ・・・」 健太は自信満々に未希がマゾだと言い張る。そして、それを証明するともいう。 「もし、君がマゾでなければ、無条件で離婚にも応じるし、録画も削除しよう。そのために、これから1年間、僕が未希をマゾ奴隷に調教していく。1年経っても、『マゾではない』と君が言い張るのなら、その時は君がマゾじゃないということだから、君の好きにすればいいさ」 どんなに健太が紳士的に振る舞おうと、あんな卑猥なが画像を握られていたら、いう通りにするしかない。事は穏便に済ませた方がいい。未希は自分がマゾだとは決して思わないが、なにより怖いのは、健太が暴発し、映像がネットにばら撒かれることだった。取り乱している健太が落ち着いてから、ゆっくり諭してもいい。未希は健太の条件を飲むことにした。