最悪な彼女が俺好みな機械人形に 1話先行公開版 補足あり
Added 2024-08-23 09:50:58 +0000 UTC現代から少しだけ離れた、とある未来の時代。 技術が進歩し、社会が新たなテクノロジーに少しずつ適応していきながら、人々の世界はまたひとつ先の段階へと進んでいた。 しかし、どれだけ無数の研究や技術が進んでいても、人々の営みが根本から変わることはまず無く、その心情や欲望は太古から殆ど変わっていない。 それはつまり、昔から人々の間で起こる問題はたいして大きく変わらないことも示していた。 だが、テクノロジーはそこに新たな解決方法を示すことができる。それが例え根本を捻じ曲げる方法だとしても、それが現れれば利用する者と提供する者が必ず現れる。 これは、そんな未来の時代に起きた、軋轢が生まれつつあったとあるカップルの間の話である。 * * * 季節は真夏。とある島国の首都にある、ある高層マンションの一室にて、ひとつのカップルが同棲していた。 「はあ……ただいま」 汗をかきながら、疲れた様子でマンションの一室に帰ってきた男性の名前は青木純也。 良い会社に勤めており、給料も高く、一人暮らしをしているならば相当に良い生活が出来るであろう状態となっている。 会社の社内環境も悪くなく、仕事自体も彼に合っているため、現状には何の不満もないどころかむしろ維持したいくらいに思っていた。 だからこそ、彼は中々に広く個室が複数あり、非常に過ごしやすい高層マンションの一室で暮らすことができていた。 そんな彼には、現在同じ部屋で暮らしている彼女がいる。だがその人物こそが、今の彼の人生においてとても大きな頭痛の種であり、こうした大きな披露の原因になっているのだった。 「ねえ遅くない? あたしどんだけ待ったと思ってんの? もうこっちは夕飯済ませちゃったから、とっととそっちで全部片付けてよね。はあ……こんな暑い日に外まで出前取りに行かせるとかほんっとダルかったわ。もっと早く帰ってきてたらそっちが取りに行ってもっとマシだったのに」 彼女の名前は上田朱美。年齢は二十代中頃で、現在純也と同じ部屋で暮らしている女性である。 部屋の明かりで煌めいている艶々とした額出しのセミロングヘアーに、それぞれのパーツがハッキリとしていてかつ非常にバランスの整っている、まさしく絶世の美女という形容詞が正しく働くであろう美貌。 それでいて身体付きは全体的に細くしなやかながらも、両胸は部屋着の下からはっきりと突き出た形が浮き上がる程に豊かでハリがあり、肉感的かつモデル体型という理想的な姿を体現している。 女性としては平均よりも高身長で、足がスラッとしつつ引き締まった尻や太ももが、よりその魅力を上乗せして色気を放っている。 まさに彼女は、誰もが羨むような理想的美女であり、世の男達が見ればどうしても付き合いたいと思うような存在であった。 そしてそれを実際に叶えたのが、他の誰でもない純也であった。だが、その先には多大なる問題があった。 「はぁ…………仕方ないだろ、電車止まってたんだから。今日なんてこんなクソ暑いせいで」 「はぁ? 何、言い訳する気? そんなの別にそっちが自分で判断して行動変えればいいだけの話でしょ。そっちにも頭使ったらどうなのよ。そういうとこほんっとつっかえないわね」 それは、朱美の性格があまりにも酷く最悪ということだった。 『付き合ってくれませんか!?』 『実は……あたしもずっと気になってたんです。純也さんが良いなら喜んで』 二人は元々、同僚や同級生などの間柄ではなく、朱美がカフェで働いていた時に偶然純也がそこに立ち寄ったところで出会い、そこから二回目の来店頃から仲良くなっていった。 純也側から朱美に惚れてアプローチをし始め、それに応える形で少しずつ二人だけで仕事場以外で会うようになり、そして彼の告白を彼女が受け入れ、本格的に彼氏彼女の関係として付き合い始めた。 それを契機に、朱美はカフェを辞め、彼の家で同棲するようになり、本格的に親密な恋人関係を築いた状態となった。 『何これ、またなんか買ったの?』 『別に良いでしょ。純也の稼ぎはあたし達の共有物でしょ? あんたもそう言ってくれたじゃない』 だが、同棲生活を開始してから間もなく、二人の生活環境に暗雲が立ち込めはじめた。 恋人同士となってから間もなく、それまでそのような気配を見せていなかった朱美に、酷い浪費癖が目立ち始めた。 金遣いが荒く、ネットショッピングで突然大量に物品を購入したり、知らないうちに財布から現金を抜き取ったりと、とにかく純也の懐から次々と消費していた。 『なあ朱美、部屋に置いてあったあの荷物知らないか?』 『あーあれ? 捨てたけど。別に使ってる様子も無かったし別に良いじゃない。場所取って邪魔だったのよね』 さらには、自分が買ったもののスペースを確保するために勝手に彼のモノを捨てたり、時にはネットオークションに出して許可なく売却したりと、とにかく純也に所有権など存在しないかの如く、勝手に物品を整理し、出来たスペースを自分のパーソナルスペースにして領域を確保していた。 つまり彼女は、懐に潜り込むその時まで猫を被っていたのだ。 現在の季節は夏。余計に彼女は家から出なくなり、自分は家にいながらフードデリバリーを頼んだり、外に出るのが億劫だからと余計にネットショッピングを促進し、どんどんその消費度合いは強くなっていった。 金銭面とはまた別に、大抵家内で良い思いをする時は自分優先で、特に涼しい場所を確保する時も自分が一番気持ちいいようにカスタマイズする。 まるでこの家の主は自分であるかのように徹底的に独り占めし、全部を持っていっていたのだった。 そうして今日に至る。 完全に堕落した生活を送ってはいるものの、彼女自身は自分磨きを怠る気配はない。 その為、未だに出会った頃に勝るとも劣らない美貌や体型を維持し続けているものの、今の所彼女に対してはそれ以外が最悪という感想を抱くしかなかった。 家にいる間は家事清掃など到底やる気配などなく、やったとしても自分の範囲が及ぶ場所だけであり、彼の手助けをする気は毛頭ないようだった。 「チッ…………はぁ…………はいはいわかったよったく……」 話が通じないと思った純也は、自分の言葉を途中で仕方なく打ち切り、自室へと戻っていった。 彼の足音が小さくなったところで、朱美はとてもだるそうに溜め息をついて、ソファの上で寝転がった。 「鬱陶しいわね……黙ってお金持ってきてあたしに出してくれればそれでいいのよ。あたしに惚れて来たくせに一々文句いってんじゃないっての」 彼女は言い過ぎたとか言い方が強かったなどという優しさの側面を見せることなく、むしろいいからATMになってろと悪態をついて、勝手に不機嫌になっていった。 自ら口にしていた通り、元々朱美は彼に惚れていたわけではなく、別に好きだと思ったわけでも無かった。 彼女は最初から、彼の稼ぎと良い所で暮らしているという部分にだけ意識しており、彼の金と住まいを自分のものにするために演技をしていただけだった。 純也がカフェにやってきた最初の日に、彼はメニューの中でも比較的高いものを選んで注文していた。 それから、彼の身につけているものや使用している携帯端末の機種、盗み聞きした会話や独り言などから、この人は確実に金を持っていると推察。 しかも自分に惚れている雰囲気を感じた瞬間に、これはチャンスだと思い、ならばそれを利用しない手はないと一芝居をうって、この現状へとたどり着いていた。 向こうから惚れたのならば、どんなことが起きても早々には別れられないはず。どんなにわがままを働いても、自分になら気を許してしまうだろうという予測と心理を利用し、徹底的に純也から絞り尽くす気でいた。 さらにとっくに彼の家に根付いているため、簡単に追い出すこともできず、もし追い出そうものなら逆に糾弾して追い詰めてやることも視野に入れ、とことん彼に食いつき続けるつもりでいる。 その為に、純也とは二回程性行為をしたことはあるが、そこに愛情などなくただその気にさせるためだけのもの。その際に彼に対しての愛を感じさせるような言葉もつぶやいていたが、それらも全て嘘偽り。徹底的に彼のことは金のなる木としか見ていなかった。 「はぁ……なんか興醒めかも。お風呂入って寝よっかな……あ、明日結構過ごしやすいんだ。どっか出かけよっかなー」 今や彼のことは、黙って自分に従うならいいけど文句言ったりすることが増えた鬱陶しい奴ぐらいにしか思っていなかった。 傍若無人な振る舞いを重ねながら、朱美はひたすら家内を全て自分の領域かのように扱い、自分の好きなように使っているのが現状となっている。 そんな状況を、純也自身も心と頭両方で理解はしていた。 「……………………はぁ。どうすりゃいいんだよもう」 だが彼自身、もうそろそろ彼女の度を超えたわがままに付き合いきれないと思っていても、まだ別れたいとは思わなかった。 そもそも惚れたのは自分であり、性格が最悪だとわかっていても、湯水のように金銭を消費されていても、やはり彼女の美人さは相変わらず不変であり、未だ魅力的だと感じていた。 まさに、彼女が描いていた理想の展開に見事ハマっていたのだった。 だからこそ、彼はこう思うようになった。「顔と身体だけはいいのに」と。 「追い出したら俺が不利になるんだろうし、マジでどうしようもないな……なんとかできないもんかなあ」 だが、もうそろそろ顔と身体だけ、そして自分が惚れたからという部分で納得するには限界が近くなっていた。 解決方法を常日頃から考えるも、突破口が何も思いつかない。彼女に対しての更正は期待できないし、別れるとなれば確実に何か面倒なことをしでかすのは予想できる。 日々の仕事は激務とは言わずとも給料相応に忙しく体力を消耗する分、安らげる場所が無い彼には相当応えるものがあった。 どうにかできないか。そう考えるだけで進展はない。そんな日々を何日も続けていたが、そんな彼に、非現実的な転機が訪れるのだった。 * * * ある日の夕方過ぎ。気温は相変わらずの真夏日であり、未だ日が完全には落ちず、蒸し暑さが辛く感じる頃。 純也はいつもの様に定時に会社を出て、自宅への道を目指していた。 「…………はぁ」 だが、彼の足取りは普段のそれよりも、会社へと向かう速度よりもかなり遅く、まるで駅までの道から向かい風が来ているかのような遅さになっていた。 顔は俯き、気力を感じず、とにかく無気力な状態になっている。 出勤時はまったくそんなことはなかったが、彼はとにかく、本来は心休まる場所であるはずの自宅で、また色々と喚き散らされたり当たり散らされるのだろうと気が滅入っていた。 帰宅時とは思えないような溜め息をつき、とぼとぼとした歩幅で少しずつ歩んでいく純也。携帯端末には、なんか飲み物買ってきてという趣旨のメッセージが朱美の方から送られてきている。 これを忘れると、また色々言われるのだろうなと負の予測を浮かべながら歩いていたその時、彼に対して一人の少女が話しかけてきた。 「そこのサラリーマンの方、ちょっと宜しいですか?」 「…………何?」 いつもは話しかけられても無視して通り過ぎるはずだったが、この日は普通よりも歩く速度が遅すぎたが故か、帰りたくなさすぎて思わず彼女とは別の女性の声を求めていたのか、不思議と反応し返答してしまっていた。 とても疲れた顔で横を向くと、そこにいたのはアイドルかと見まごう程に可愛らしい顔立ちの少女だった。 あどけない雰囲気に、自分がとても可愛いとわかっているような振る舞いと仕草。だが、大抵の男性なら、そんな彼女に引き寄せられないわけがないだろう。 「とても疲れた顔をしていますね。何か悩みがあるんですか?」 「あーーーー……まあ、うん。あるにはあるよ。どうにもならないけど」 「もしかしたらそのお悩み、解決できるかもしれませんよ? もしよろしければ、私についてきてくれませんか?」 規制されているはずのキャッチ。ここでついていけば、まずぼったくりのコースに直行するだろう。 普段ならそもそも無視して取り合わず、仮に強引に話しかけてきても心の壁を貼って拒絶しているはずだった。 だがこの日は、あまりにも疲れて誰でもいいから助けを求めたくなっていたのか、不思議とその少女の言う通りにして、ゆっくりと足を動かしついていった。 どこに連れて行かれるのかわからないが、ぼったくり店だとして自分の財力なら払えない金額ではないだろうと、なるようになれの精神になってついていった。 一度も足を踏み入れたことのない、帰路の途中でたまに意識する程度のビルの地下へと進んでいく純也。 どこまで続くのかわからない階段を歩き続け、行き止まりのように見えるオートロック式の自動ドアを少女が開けた先に広がっていたのは、まるでナイトクラブのような怪しくも明るい輝きが床から灯る広い空間だった。 どこからどう見ても、普通の雰囲気が存在していない世界。少しその中を進んでいくと、前屈みになって胸を寄せたり、両脚を拡げて床に座っていたりと、色んなポーズを取ってショーケース内に飾られている、マネキンのようにしか見えない全裸の女性達だった。 「なんだこれ……どういう店なんだよここは」 最初はただのぼったくり居酒屋やキャバクラのキャッチ程度に思っていたが、どうやらそれよりも、別の意味で非現実的な店へとやってきてしまったようだった。 飾られている女性達は、そのどれもが絶世とつけても過言ではないような美女や美少女ばかりで、例外なくケースの向こう側にアピールするような笑顔を浮かべている。 ポーズを固定するためか、立っている女性には、床から伸びる太めの鉄パイプが女性器内に挿入されており、座っている女性は、両足首に備え付けの足枷が嵌められている。 その女性達はどう見ても生身の女性にしか見えないが、生きている人間がこんなことするわけがないと思い、とても精巧に作られたラブドールか何かだろうと認識した。 裏社会的な空気が肌にずっと張り付く中で、純也は先程までのぐったりした態度は自然と緊張感によって矯正され、少女の後ろをじっと歩き続けた。 すると、歩き続けた先に設置されたソファに座っていた一人のスーツ姿の女性が、すくっと立ち上がり深々と丁寧な礼を向けた。 「いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます。さ、どうぞ座ってください」 まさに男装の麗人と呼ぶに相応しいような、初めて出会う美女。丁寧な所作とその振る舞い、そして均整な顔立ちから、彼女もまたショーケースに入っていた人形達に勝るとも劣らない魅力的な女性だと純也は感じていた。 彼女の案内に誘われるままに、柔らかく広いソファに腰をかけていく。 「初めまして。私の名前はレナと申します。本日は当店へのご来店、誠にありがとうございます」 「初めまして。青木純也と言います」 お互いに丁寧な礼と自己紹介を進めて、礼による牽制をはかる。 レナの一連の振る舞いはひとつひとつが完璧で、彼女が同じ会社にいたら参考にしようと言われるだろうなと思える程だった。 「…………あの、先に質問して良いですか?」 「どうぞお構いなく。私達はどのような質問でも、可能な限りお受けしますよ」 「そもそもここって、どんな場所なんですか? 最初はあの子に誘われた時、居酒屋とかキャバクラのキャッチかと思ったんですけど、ここまでの道程を見るにどうもそういう風には思えないですし」 一通りの挨拶を終えた後は、少しだけ話しやすい気分になったような気がした純也は、真っ先に質問をぶつけていく。 「やはりそうですよね。こちらの店はそのようなタイプの店ではありませんね。失礼ながら、お客様は同棲している方や彼女さん、奥さんなどはいらっしゃいますか?」 「ええはい、一応……彼女と一緒に暮らしています」 今度はレナの方から向けられた質問に答えると、しばしの沈黙が空間に流れ出した。 レナは、純也の返答の中にあったわずかな合間と、少し言いにくそうにしていた表情に着目し、じっと彼の顔を見つめ始めた。 瞬きもせず凝視した後、彼女の表情が再び動き出す。 「現在、その彼女さんとは上手くいってますか?」 「………………正直なところ、あまり上手くは言ってないです」 まだ何も言っていないのに、まるで現状を見透かされたような質問に、思わず息を呑む純也。 「やはりそうですか……もしよろしければ、純也さんの今の状況を教えていただけませんか?」 純也はその言葉に甘え、初対面でありながらも、朱美との馴れ初めから関係性、同棲を始めてから今までの変遷など、正直に話し始めた。 初めて話す相手であることも考慮して、ある程度内容は調整してはいるが、不思議と彼女に対しては心の内をあけっぴろげにしてもいいような気持ちが生まれそうになっていた。 「…………なるほど、どのような状況になっているのかはわかりました。ではあとひとつ、こちらから聞かせていただきたいのですが……その朱美さんが自分の思い通りになったら、自分で操作できるような存在になったら嬉しいですか?」 「そりゃ…………正直嬉しいな。今の朱美にはもう性格は期待してないし、美人で身体もエロいくらいにしか思えないというか」 「わかりました。では、本題に入らせてもらいますね」 心理テストか何かの質問だろうかと、最後の問答に対して思った純也。意味がわからないというのが正直な感想だったが、その本当の意味は、すぐに理解させられる。 「純也さんを信用してお話しますが……こちらはですね、人間の女性に改造を施し、従順なアンドロイドへと作り変える場所になります」 純也はそれを聞いた瞬間、SFの妄想でも聞かされたのかと思った。 「そのような表情になるのも無理はないですよね。非常に理解できます。しかし、これは純然たる事実になります。私やこちらの娘、現在展示されている方々も、全員元は人間でした」 だが、そんな感想も織り込み済みとも言えるような、先回りした発言をぶつけていくレナ。 未だ信じられないという表情で、純也はおもわず口がぽかんと開いてしまう。 「純也さんと同様に、一緒に暮らしている彼女さんや妻の横暴な態度や仕打ちに耐えられないという方々が他にもいましてね。つい先日も、いつも不機嫌で感情をぶつけるにも関わらず、財布や貯蓄から引き出しては散財し、さらには浮気までしているという彼女のいる男性と対面しました」 「うわ、俺と似たような境遇だ……しかもそっちは浮気までしてるのか……まだこっちの方がマシかも」 「その女性も、私達の手で全身を完全機械化させていただきました。現在ではその彼女の人格へ調整を加え、仲睦まじい恋人同士の関係となりました。多少、彼女は操作される存在となりましたが。純也さんの現状は、まさにその方に似ていると言っていいでしょう」 やはりこういう相手、面倒な相手を意図せず引いてしまう男は他にもいるんだなと、少しだけ救われた気持ちになった純也。 そして、レナはここから本題へと入っていく。 「そこでですね、私から純也さんにも同様に、彼女さんの完全機械化を提案させていただきたいのですが……いかがでしょう?」 「待て待て待て、俺はまだ信用はしてないからな。ここまで話を聞いてくれたのは嬉しかったけど」 「まだ人間のように動くアンドロイドがいないのに、完全機械化なんてできるのか? ということですよね」 「うっ……やっぱ同じようなことみんな言うのか」 「はい。秘匿された技術な為無理もありません」 当然の疑いに対して、先回りして自信を持った返答をぶつけたレナ。 だが純也には、もうひとつだけ思うところがあった。 「それもそうなんだけどさ……俺、実はそういうアンドロイドとかサイボーグとかのキャラが好きなんだ。言いにくいけど、そういう性癖というかなんというか……機械の身体をした女ってエロいなって思ってるんだ」 それは、彼がアンドロイドやサイボーグのことが好きだということだった。これは、朱美にも同僚や友人にも誰にも言っていない、隠した性癖となっている。 レナの話に対して、本音ではグイグイ食いつきたいと思っていたが、現実的に考えて無理だろうと一歩引いた視点で考えていた。 それを聞いたレナは、元々ずっと作り続けていた笑みをさらに明るく大きくした。 「本当ですか!? でしたらなおのこと、純也さんにはオススメできますよ! 少々お待ち下さい、ただいまその証拠をお見せしますので」 彼女はそう言うと、純也を誘い案内した少女を手で招き寄せ、自分の背中を向けさせた。 少女は言われるがままに従い、無防備にレナへ全てを任せて力を抜いた直後、少女の首筋を右手で掴んで固定した。 すると、ガクンと全身が震えて動かなくなり、先程までの微笑みを保ったまま虚ろな瞳になり、両腕が垂れ下がった。 そして、後頭部が髪の毛ごと、まるでカバーのように自動で開き、人間ならばその奥に生体脳が収まっているであろう頭の中を晒した。 少女の頭部に入っていたのは、人間の脳の形をある程度再現したような、金属部品と電子部品の塊だった。 生身の部分はひとつとして存在しておらず、中身が晒された後も、微小な動作音が細かく淡々と鳴り続けていた。 「嘘だろ……! 本当に、アンドロイドなのか……!?」 「正確には、先程も申した通り元は人間だった娘です。私も含めて、ここにいる全員が、元々は生身の人間だったモノです。機械化を行うことにより、外部端末による操作が可能になり、自由に扱えるようになります。改造時には自動で体型や顔のバランスもより美しく補正され、理想の女性を使えるようになりますよ」 非現実的な光景を目の前で実際に公開されて、信じないわけにはいかない。レナが言っていることは本当だったのだ。 ともすれば、あのワガママ三昧で自分の全てを吸い付くさんばかりの、顔と身体しかいいところのない彼女を自分の隙に出来るというのも真実らしい。 ずっと疑いの目を向け続けていた純也は、一気に視界と脳が拓けたような気分になった。と同時に、密かにスーツの下で興奮を湧き上がらせていた。 「じゃあ本当に、うちにいるあいつを改造できるのか……!?」 「はい、もちろんです。」 「じ、じゃあ!」 どれだけの料金や条件を吹っかけられるのかはわからない。だが、あの吸血鬼みたいに自分の金と領域を吸い続けるあの面倒な女を矯正して自由に操れるようになるなら安いもの。 しかも、自分の性癖を体現した、まさしく理想の女へと生まれ変わらせられる。そんなもの受け入れないわけにはいかない。 純也は早く話を進めたいとばかりに笑顔で詰め寄っていくが、レナは落ち着きを保ったまま話をマイペースで進めていく。 「ただ少々こちらのお話を聞いてください。私達は今まで、所属しているスタッフの働きによって対象を確保し、改造するという手段を取っていました」 「まあ、改造とかってよくそういうイメージはあるな」 「しかし、今回はこちらからの提案として、別の手法を試させていただきたいのです。そして、その実験に協力してください。私達は新しい全身機械化の方法を確立しました」 純也は思わず強い興味を持ち、ソファにどっしりと腰を据えて耳を傾けた。 「聞かせていただきたい。ものすごく興味があります。そんで俺に試させてください」 「ありがとうございます。では、説明させていただきます。その方法は…………」 最初は警戒していたが、今ではすっかりと乗り気になった純也。 そうして、本来の帰宅時間を過ぎてしまっていても、彼はそちらへの意識を傾けることすらなく、家で待っているであろう朱美への壮大な仕返しの為に未知なる世界へと足を踏み入れたのだった。 * * * 同日の夜。外はすっかり日が落ち、ようやく暗くなったものの、未だ蒸し暑さは健在な時間。 「チッ…………遅い遅い遅い遅い…………! あいつどこで道草くってんのよ…………!」 自宅で純也の帰宅を待っている朱美は、いつもより明らかに帰宅の時間が遅いことに苛立っていた。 彼のことを心配しているわけではなく、帰るときに買ってこいと言っていた飲み物が来ないことに腹が立っていた。 「帰ってきたら絶対ただじゃおかないから……!」 既に食事はフードデリバリーで終えているが、飲みたいと思った飲み物がまだ着いていない。 自分の言うことを無視して遅れてくるなんてと、もうとっくに一室の主かのような気分で待っていると、ようやく玄関からドアが開く音が聞こえてきた。 朱美は眉間にシワを寄せながら立ち上がり、ズカズカとした怒り丸出しの歩きで、部屋着越しの乳を揺らしつつ玄関へ向かう。 「ただいまー。ごめん遅くな」 「ちょっと! どんだけ待たせてんの!? 買ってきてって言ったんだからとっとと持って帰りなさいよほんっっと鈍臭いんだから!!」 玄関に入りただいまと言いながら靴を脱いで室内に上がった瞬間、朱美は有無を言わさず怒りを剥き出しにした声で怒鳴り、同時に彼の頬を思いっきり引っ叩いた。 彼にとってはもう慣れたものだが、今日は特に、彼の胸中には余裕があった。 「なにボーっと突っ立ってんのよムカつくわね。ほら、言ってた飲み物買ってきたんならとっとと入れてあたしに出してよ。それくらい出来んでしょ」 一度取った買い物袋を投げつけ、遅く帰ってきた罰と言わんばかりに飲み物を注いで出すように命令し、朱美はリビングへと戻っていった。 純也は溜息をつきながらそれに従うことにしたが、心の中ではむしろありがたいとすら思っていた。それは、買ってきた飲み物をすぐに自分で飲み始めたらどうしようかと考えていたからである。 純也はすぐにキッチンに向かい、綺麗なコップを取り出して氷を入れ、買ってきた塩ライチのジュースを注いでいく。 そしてその後、純也は鞄の中から、使い切りかつスポイトのような形状の小型容器に入った液体を注ぎ入れ、スプーンで軽くかきまわす。 すぐにそれを洗い、バレないようにとすぐにゴミ箱に捨てた後、言われた通りにきちんと彼女の前まで差し出した。 「はいどうぞ」 「はあ……さっさと持ってくればよかったのよ。喉が乾いて熱中症になったらあんたに責任取ってもらうつもりだったんだから」 苛立ちとようやく飲みたいものが飲めたという解放感、純也への侮蔑的な眼差しに意識が傾き、飲み物に対して一切の警戒心を抱いていない朱美は、一旦考えるような素振りもなく、ゴクゴクとそれを飲み込んでいった。 「はぁ〜…………やっぱり暑い日にはこういうのが一番よね。クーラー効いててもこれなんだから、こんな時に外出たらと思うとやってらんないわ」 一杯分を全て飲み干し、ソファー前のテーブルに置くと、からんと氷が動く音が鳴った。 身体が内側から冷え、スッキリとした気分で背もたれに身体を預け、ふうっ、と息を吐く。 「ほんっと、もっと早く持ってきてくれればよかったのに。あたしがどっかに注文せず、あんたに買ってこさせたのだって、あたしの役に立つチャンス与えてあげたんだから、ちょっとは感謝し、しな、しな……さ………………」 お礼も言わず相変わらずの悪態を再びつき始め、彼への文句を再開しようとしたその時、朱美の様子に異変が起き始めた。 最後まで自分の頭の中に浮かんだ内容をそのまま喋ろうとしていた朱美だったが、それを全て言い切る前に突然、彼女の両腕は力が抜けてすとんとソファの上に垂れた。 全身が脱力し、背もたれに身体が預けられるが、自らそういう風にしたというよりも、まるで操り人形の糸が切れたような様子だった。 喋りかけていた言葉が詰まり、最後まで言い切る前に何かが詰まっているように、何度もその言葉を繰り返しながら、間抜けな様でぽかんと口を開いている。 すると、彼女の全身ががくん、がくん、と跳ねるように震え、うめき声のような声をあげ始めた。 「し、しなさ、しなさ、しなさ、さささささ、さ、さ、さ、さい、さい、か、感謝し、しなさ、さささ、ぁぁぁァァァァ………………」 両眼がぐりん、と左右バラバラに四方八方を向き、腰や背中が何度も無秩序に跳ねてはまたソファの中へと収まっている。 両腕はまるで水圧に踊らされたホースのように暴れ、指がわきわきと無茶苦茶に動いていた。 両脚は何度もピンと張っては床に足が叩きつけられ、まるで地団駄を踏んでいるように、普通の賃貸なら下の階から苦情が来そうな程の音が鳴る。 口からは飲み物混じりの唾液が口端から漏れ、密かに股間からは失禁を起こし、水分によるシミが生まれ始めていた。 総じて、今の朱美は明らかにただごとではなく、まさに毒を盛られたかのような、今にも死んでしまいそうな程の痙攣と正常でない挙動を発生させていた。 「本当にアレって効果あったんだな……あとは、これで待てば……」 しかしこれは、彼の思惑、そしてそれの元凶であるレナが想定していたものだった。 『こちらが、今回私達が新たに開発した機械化技術の結晶であるナノマシンを含有した溶液になります』 『……これをどうするんだ?』 『こちらを、何かしらの味を含んだ飲料にこの1パック分を全て混ぜ入れ、飲ませてください。対象となる体内に侵入した後、すぐに機械化処置が開始されます。最初に中枢である生体脳が機械化され、それから徐々に全身へと移行していきます。その際、変換時の副作用によって痙攣を起こしたり失禁などの症状が出てしまいますが、そのまま放置してください』 レナ達が新たに開発した機械化技術。それは、機械化手術による外科的方法ではなく、秘匿技術であるナノマシンを大量に含んだ溶液を飲ませて内側から置換、及び改造を行い、全身を無機物へと変換しながら内部改造。 それからこれまでの改造機体とほぼ同様の内部機構へと変換し、機械人形として生まれ変わらせるというものだった。 『生体脳の機械化が完了しますと、あらかじめ登録した端末に向けて無線が発信されます。それを接続した後は管理アプリのインストールデータが送信されますので、改造を実行している間にインストールを完了させてください。そうすれば、あとは改造完了後にアプリ操作を行って登録するのみです』 手作業ではなく、ナノマシンを用いた変換、改造を行うことで、対象の人物を拉致する必要もなく、望んだユーザーの目の前で対象が機械化していく様を眺めることができる。 ユーザー任せにする分リスクそのものはあるが、レナ側が監視をつけておき、ひと目につく場所で機械化を行おうとした場合は、止めるようにと最低限のリスク管理は行っている。 だが、まだナノマシン式の機械化はユーザーに提供したことはない。純也が初めての使用者となる。 『仮に何か問題が発生した場合は、ご気軽にご連絡ください。私達がどのような問題にも対応させていただきます』 ユーザーフレンドリーな姿を見せ、純也には安全に彼女を機械化できるようにサポートすることを約束した。 こうして、現在に至る。全ては純也とレナの想定通り。 当の朱美は、自分に何が起こっているのか理解できないまま、うめき声にも似た声を漏らして痙攣し続けていた。 「あああぅ、ぅぅぅぅぅ……………………」 涙や鼻水、唾液も垂れ流し、今にも崩れ落ちてしまいそうな程に、人間として危険性の高い姿を晒し続ける朱美。 そして、このままでは息絶えてしまうのではという状態が続いた後、彼女のうめき声がようやく収まった。 直後、ずっと外部からの無線接続を開放しておいた携帯端末に「Akemi Ueda」という名前の回線からの接続通知が表示された。 「お、本当に来た。マジか…………」 純也は話自体に乗りはしていたし、行動を実行に移しもしたが、最後の1%程はまだ信じられないという気持ちもあった。こんな少ない液体で全身機械化なんてできるのかと。 だが、たった今それは100%の事実へと変わった。朱美の脳は電子頭脳へと生まれ変わり、本当に機械となったのであった。 回線との接続を行い、携帯端末の画面から目を離して朱美の方に視線を戻すと、彼女の激しい痙攣は一旦落ち着きを見せていた。 頭は少しだけ斜め上を向き、ぽかんと口が開いたまま虚空を見つめている。 涙の後が頬に残っており、時折びくっ、と震えている。 これまでの口を開けば悪態をつくような彼女からは想像できない程静かになり、ゆっくりと近づいてみても、朱美側から視線を彼に向ける様子もなかった。 まるで死んだような雰囲気が漂っている彼女の様相。そして沈黙がしばらくの間流れた直後、彼女の身体に少しずつ変化が生じ始めた。 「マジか……マジだ……本当に変わっていってるのか」 目蓋が開いたままの眼球の材質が少しずつ変化し、瞳のレンズや内側がまるでカメラのような、綺麗で艶々とした機能的な構造へと変化し、よりつややかな物体へと生まれ変わっていった。 髪の毛や睫毛、眉毛の材質も変化しているのか、自然な柔らかさを保ったまま、元来のツヤを保持しているが、どこか潤いが増したようにも感じられた。 顔や首、唇などの体表面は、ケアしながらもほんのわずかに存在していたシミや産毛が完全に消滅し、生身から樹脂へと置換され、人間のそれよりも更に触り心地の良い材質へと変化した。 部屋着の下では、現在純也の視覚からでは何が起きているのかわからないが、顔と同様に産毛やムダ毛が分解、消滅し、元々整っている体型がよりスリムに、かつより魅力的に調整された。 豊かな胸部は少しだけ膨らみを増し、部屋着の胸部分のシワが少なくなった。 体表面の下では、カルシウムを中心に構成された骨が全て金属に置換され、心臓を含めた内臓の大部分が分解後に再構築。 空っぽになった身体の中には、他の機体にも使用された大容量バッテリーや体液タンクなど、人間らしく動作する為に必要な部品へと生まれ変わり、新しい内蔵部品となった。 女性器は元々の膣内構造や子宮の形状を保持したまま樹脂製へと置換。人間だった頃に作られた卵子を、折り畳まれて一体化した卵巣型の保管カプセル内に保存され、子宮側面に取り付けられた。 自然な妊娠機能を失った子宮ユニットは、精液保存用の器官となり、女性器ユニット全体はいつでも取り外し可能なパーツとなった。 彼女の身体にはそれぞれ、両腕、両脚、女性器にとてもうっすらとした分割線が発生し、首筋には充電端子、接続端子、電源ボタンが隠された皮膚カバーが作られ、より分解可能なアンドロイドらしく様変わりした。 全身全てに分解と再構築が進められ、見た目はほぼそのままでも何もかもが違う存在へと変わっていく朱美。 血肉と骨で構成された生身から、樹脂と金属で組み上げられた機械人形となりつつあった彼女の姿は、その様を目の前で眺めている純也から見ても、以前より美しく、色気が強くなっていると感じられた。 「…………………………」 そして、全身の置換作業が終了し、痙攣も収まった直後、ずっと沈黙していた朱美の口が自ら動き始めた。 「対象となった素体の変換作業が終了しました。正常な動作を行うため、再起動を実行します…………」 今までの朱美からは一度も聞いたことのない、淡々として感情を感じられない、まるでアナウンサーや受付係のような喋り。 殆ど感情最優先で生きてきたような彼女からそんな喋りが出るとは思わなかった純也からすると、その機械らしさに思わず改めて魅力的に感じてしまいそうになった。 システムメッセージを口にした後、彼女は一度瞳の光を失い、ようやく口を閉じてから、また沈黙した。 それから数秒後、再び唇が動く。 「再起動が完了しました。電子頭脳変換によるセットアップが完了しました。登録名、上田 朱美、起動します。当機体への改造の意思を示していただき誠にありがとうございます。機体を所有者の思い通りに操作するため、変換作業時に送信したアプリから、端末の登録をお願いします」 おそらくこれは彼女自身の意思で発されている言葉ではなく、システムがあらかじめ組み込まれたテンプレートのセリフを喋っているだけ。 だが、純也としてはその方がより興奮するし、魅力的にも感じている。 事実、現在痙攣から止まったポーズのまま、平常時かのような雰囲気で淡々と喋っている彼女の姿は、今までの朱美には無い特殊な魅力に溢れていた。 純也はそのメッセージに従って、言われた通りに展開を済ませたアプリを動かし、登録操作を進める。 「端末を確認しました。当機体の操作を行う端末として登録しますか? …………登録が完了しました。ユーザー名は青木 純也 様と登録されていますが、このままでよろしいですか? よろしければ、アプリ側からの操作をお願いします」 かつての猫被っていた頃にしか聞けなかったような、それでいてその時よりもさらに丁寧な喋りに、自分のことをマスターだと認識しているメイドロボットのような言葉遣い。 最悪な中身だった彼女が、中身まで最高な機械仕掛けの彼女へと生まれ変わり、思わず声を上げてしまいそうになりながらも、セットアップは早く済ませてしまおうと、アプリ側の操作へ戻る。 「確認しました。初期設定が完了しました。これからもよろしくお願いします、純也様。人格エミュレートを開始します………………」 人間らしさのある声色と感情の無さがはっきりと出ているはっきりとした抑揚が混ざったメッセージを喋り終えると、朱美は一度目を閉じ、数秒ほどの沈黙に入った。 そして、ゆっくりと目を開けると同時に、まるで鉄面皮のようだった顔に感情が戻り、元の彼女らしい表情が戻ってきた。 「…………うえっ!? なによこれ……なんであたしの服こんなに濡れてんの!? もう最悪……! ねえ純也、あんた何かしたの? なんでこんなに濡れてんのか説明しなさいよ」 人格エミュレートが行われてから最初に発した言葉は、純也への悪態だった。 ナノマシンによる強制的な人体改造、機械化によって涙や唾液が溢れ、失禁まで起こせば、当然彼女が着ていた服が無事であるはずもない。 同時に彼女には、自分の身体から生身が消えて樹脂と金属、電子部品の塊になったなどという自覚はなく、未だ己のことを人間であると常識のように考えるでもないという状態にある。 そうなれば、認識としては純也が何かしたのではないかという思考になるのは無理もなかった。 「俺は別に何もやってねえって」 「はあ? あたし全部ジュース飲んだ後よ!? あんたが何かやったとしか思えないでしょ!? 嘘つかないでよ!」 事実しか言っていないが、認識外の真実を彼女がわかるわけもなく、一方的に純也が悪いと決めつけて声を荒げていく朱美。 喉が声帯による発声ではなく、スピーカー式に変わった分、より声が通り、喉も傷めないようになっている。 その分より怒鳴りの圧が強いが、純也はいつでもどうにでもできるという余裕が生まれたのもあって、これまでずっと感じていたストレスはほぼ受けないようになっていた。 ここでふと、彼はあることを思いつく。 (ここで命令したらどうなるんだろ。確か、ユーザーの命令だったらなんでも聞くんだったよな) 全身機械化した朱美は、ユーザーと登録された相手の言葉は全て従うようになっている。それは、人格エミュレートが動作している時も同様。 リアルタイムで理不尽に怒鳴り散らしている彼女に命令をしたら一体どうなるのか、早速試してみることにした。 「なあ朱美、うるさいから黙って落ち着けっての」 「わかったわよ。仕方ないわね」 人間だった頃の朱美ならば「はあ!? うるさいって何よ!? あんたが正直に言えばいいだけでしょ!?」とヒートアップしていたことだろう。 だが、今の朱美は命令と認識した内容には素直に従い、不満げな表情や声色は残っていながらも、これ以上問い詰めるのをぴたっと止めた。 「本当になんでも言うこと聞くようになったんだな…… そんじゃ」 あれだけ暴力性があふれていた彼女がここまで従順になった上に、それについて自覚がない様子なことに、ただただ驚きを隠せない純也。 そんな簡単に言うことを聞くようになったのなら、そして機械仕掛けに生まれ変わったのなら、これまでの仕返しと鬱憤ばらしも兼ねて、純也は命令をぶつける。 「なあ朱美、今から胸を裂いてバッテリー取り出せ」 二回目に与えたそれは、自壊しろと言っているのも同然の内容だった。 「はあ? わかったけど、一体何言ってんのよバッテリーがどうとか……」 朱美はそれを聞くと、了承の返事を混ぜながらも、自分が機械になったという自覚がなく、そもそも自覚できないように設定されているからか、一言の中で相反する言動が混ざった矛盾した返事を返した。 意味不明なことを言っているというような態度を取りつつも、朱美は命令を聞き入れた直後に上半身の部屋着を脱ぎ始め、豊満な乳房を空気に曝け出した。 ブラも取り外し、ピンク色の乳首が露出するが、支えとなっているブラが外れた後も彼女の両胸は突きだしている程のハリを保っており、同時に色気を帯びて震えていた。 「あたしは人間なんだから、そんなの入ってるわけないじゃない。変なものでも食べたの? それとも、あたしをロボット扱いして使いたいとか言うつもり? いい度胸じゃない」 反抗的でねじ曲がった解釈をしながら、再び彼を攻撃し罵倒する口実を作り上げる朱美。 その間にも彼女の両手は、谷間の中に入れられ、両乳を掻き分けるようにしてその奥の人工皮膚の上に指を置く。 直後、何の迷いも戸惑いもなく思いっきり指を突き入れ、人工皮膚に無数の穴を開けてしまった。 痛がる様子は微塵もなく、そもそもそんな傷が生まれたことすら、自分がやったことなのに気づいていない様子。 穿られた穴からは血液が一切出てきておらず、彼女が人間から血の通っていない機械人形へ生まれ変わったことを強く示していた。 そしてそこからさらに深く指を入れ、自分の胸部を思いっきり左右に開き、金属がねじ曲がる鈍い音をたてながら両乳房の先端がそれぞれ左右斜めの方向を向いた。 人工皮膚がブチブチと裂け、その奥から曝け出される金属骨格と詰め込まれた内部機構。そこに収まっている、無数のケーブルに接続された、今の彼女の心臓部であるバッテリーが外からも見える状態になると、命令通りにそれを手で掴んだ。 「だいたいここに住んでいいって認めたのはあんたでしょ? その為に仕事だって辞めたんだから、別にあたしが家で何しようが勝手じゃない。今だって大抵のことはそっちが出来てるんだから何も問題ないでしょ。誰があんたのロボットになんてなってやyyy……………………」 自らの心臓を掴むような非人間的な行為も、まるで当然であるかのようにスムーズに進め、いつものように純也への不満と文句をぶつけ続ける。 だが、命令通りに思いっきりバッテリーを引っ張った瞬間、彼女の声はプツンと途切れ、一瞬だけ音飛びしたような声になった後、取り出した瞬間のポーズのまま動かなくなってしまった。 胸の奥には裂け目のようになった穴があり、皮膚下の金属と樹脂の集合体が、生身が完全に消失したことをはっきりと示していた。 「マジでやったよ…………本当に俺のロボットになったんだな。あんなこと言ってても、主人の命令には逆らえないんだな」 純也は、噴き出しそうな興奮を抑えながらも、動かなくなった彼女の顔や唇、胸や腕、生まれた裂け目や、人工皮膚と金属骨格の隙間、身体の中身と、まるで新しい玩具に触るようにベタベタと触れ始めた。 数少ない性行為の時に、彼女の肌や肉の感触は体感したことはあるが、今の触り心地はその時よりもさらに心地よく、人間らしくありながらもそこに非人間的な心地よさが加わった、上位互換と呼べるような肌に変わっていた。 両胸も、そのまま枕にしたり揉みしだき続けたくなるような質感で、思わず指で擦り続けたくなってくる。 顔と身体だけ良かった女が、自分専用の機械人形へ変わり、最高の相手へと生まれ変わった。その実感が更に強くなり、アンドロイド好きである彼の欲望はさらに強くなっていった。 「これがもう俺の思い通りになる……しかも機械化したからなんでもできるし壊したり狂わせたりもできる…………やっとまともになってくれたな」 今日から、自分と彼女の理想に溢れた生活がようやく始まる。過去の搾取され続けだった生活は反転したのだと喜ぶが、彼はその前に、アプリからレナのところへ連絡メッセージを送信した。 「……でもまあ、まずは直してもらわないと無理か」 完全にその場のノリで彼女に自壊を命令したが、流石にアンドロイドやサイボーグが好きとはいえ、彼自身に機械のメンテナンスを行えるスキルは無い。 何より世間には一切広まっていない未知なるテクノロジー。下手に手を出しては、正常に動作することはまずないだろう。 そんな姿を楽しむのも乙だとは思っているが、とりあえず最初は専門家に任せようと、完全機械化して間もなく、修理を依頼することにしたのだった。 「…………正直どうにか別れようかと思ってたけど、こうなったらそんなこと考える必要もないな。これからもよろしくな、朱美」 バッテリーを引き抜いた瞬間のポーズで静止している朱美に、この先も彼女として受け入れることを宣言した純也。 動力源を失い、発言途中の表情のまま機能停止している彼女には、その言葉は届くわけもない。ただただ一場面を切り抜いたような状態を保ち続ける姿は、まさにモノそのものだった。 レナの運営する店から、彼女を回収する為のスタッフが来るまでの間、純也は濡れていない箇所をべたべたと触り、ラブドールも同然なその女体と顔をしばらく堪能するのだった。 こうして、彼女を機械に造り変えた彼氏と、自覚のない機械人形へと生まれ変わった傍若無人な彼女の同棲生活が、改めて幕を開けたのであった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今回はこちらの作品を読んでいただきありがとうございます。 今回の作品は、作品内でもそれっぽく書きましたが、数か月前に販売した「いつも不機嫌な彼女への調整」と同じ世界観での話となっております。
Comments
販売開始されたら、すぐに購入して読ませていただきます! ありがとうございます!!
kattobing
2024-08-25 13:32:16 +0000 UTCありがとうございます! 販売はいつも通りにBOOTH、少し日にちを置いてDLsiteでも販売予定です。
土装番
2024-08-25 13:25:26 +0000 UTC「彼女への調整」は即購入致しました!
kattobing
2024-08-24 16:28:08 +0000 UTC土装番 先生、超好みです!!! こちらの作品は何処で購入できますか?
kattobing
2024-08-24 16:25:47 +0000 UTC