異形と機械お姉さん達の性的な日常 3.5話 碧と三体のお姉さんへの挨拶
Added 2025-07-31 14:48:46 +0000 UTC4体の非人間の女性達が暮らす家に、新たに連れてこられた、アルゴビットの実験施設で大量に製造された、元廃棄品かつ幾多のコピーの中の一体である水樹碧。 彼女は、自身のオリジナル側の機体である元人間の水樹葵をとにかく一体連れてくることを条件として、共に生活することになった。 碧は、状況こそある程度把握はしたが、まだ残り四体のことをよく知らない。最も交流を交わしたのは、自身を廃棄場から持ち出したキリエのみ。 一体この家がどういう状況にあり、どういう者達が集まってこうなっているのかもわからない。 碧は、四体が集まっての朝食のテーブルに流れで参加した際、美緒と名乗る女性だけがまともに食事を行っており、美咲と呼ばれた女性の前にも皿は用意されたが、食べるようなモーションだけで何も食べていなかった光景も目撃していた。 共同生活を送るならば、まずはそれぞれがどういう人物なのかを知らなければならない。ある程度の見当はつくが、その中身は実際に対面してみないとわからない。 一度は真っ白なテストルームで稼働し、それから破損し機能停止に陥ってからそのままだった碧。自身が無数に存在するコピーのうち一体ということもよく理解している。 だが、また愛する葵と壊れあいたくて仕方がない。そういう条件でここの一員になることを彼女は選んだ。交渉の主導権を握ってはいたが、そもそも廃棄物だった彼女にはどこにも居場所はない。むしろその条件を飲んでもらえたことが、運が良いと言える。 また、愛する葵との壊れあい愛し合い気持ちよくなる機会を与えてもらったのだから、こちらからも歩み寄ろうと、碧はそれぞれ家内で離散した一体一体に、話しかけてみることにした。 「はじめまして。水樹碧です。いきなりの話ですが、今日からよろしくお願いします。よければ、お名前を聞かせていただいてもいいですか?」 「あら、こちらこそはじめまして。私は加藤美咲って言うの。まさか、家族が増えるなんて思ってなかったわ……私の方からも、よろしくね、碧さん」 碧が先に話しかけたのは美咲の方だった。 他にも色々と気になるところはあったが、彼女としては一番気になったのは、朝食中に何もない皿の上から無を取って食事しているような動作をしていた美咲の方だった。 まだ接続や通信などは行えていないが、自身が機械だからこそ、その瞳の奥で絞りが拡縮して視界を調整しているのがはっきりと見える。 彼女は間違いなく、自分と同じ機械の身体。しかしどういう存在なのかはまだわからない。そういう興味から、最初に美咲を選んだ。 「美咲さんは、ずっとここで暮らしてるんですか?」 「いいえ、私は一ヶ月半くらい前からここで暮らしてるのよ。キリエと美緒と一緒に暮らし始めて、後からミレイが入ってきたの」 「へぇ……それ以前は何をしていたんですか」 「その前? えっと…………えーっと………………えっと…………えっと……………………」 少しずつ踏み込んで話をしてみようと、この家で暮らす前はどうしていたのかと質問をしたが、美咲は顎に指を当てて思い出そうとするような声を出した。 だが、彼女の思考がループしてしまったかの如く、ずっと同じ言葉を繰り返すばかりになってしまった。 美咲のここで暮らす以前は、アルゴビット内で稼働していた記録となる。その記憶データが、人格エミュレート時の彼女ではうまく参照できなかったのだった。 碧は、おそらくこれは引き出そうとしても彼女の口から出せないものだと判断し、切り上げることにした。 「あの、じゃあ、美咲さん、美咲さんっていつもはどうしてるんですか?」 「えーっと……………………いつもはどうしてるか? そうね……私がいつもお留守番で、ミレイと一緒に美緒とキリエの帰りを待ってるわ。美緒とキリエが仕事してくれてるの。それで、私達は家事をしたりして、みんなが少しでも快適に過ごせるように頑張ってるわ」 新しい質問が投げかけられ、思考が上書きされた美咲は、ループが止まりそれに答える。 警戒心もなにもないように全て打ち明けていき、落ち着いた雰囲気の温かな微笑みと共に喋っていくその様は、お姉さんという形容詞が相応しい姿をしていた。 ところどころに怪しいところはあるが、人間としての振る舞いは殆ど問題はない。が、彼女を家で待機させる理由もわかる。 人間としての挙動の危なっかしさを感じつつ、碧は最後に少し踏み込んで質問をぶつける。 「なるほど…………そういえば、今朝は何を食べていたんですか」 「ふふ、変なこと聞くのね。目の前で見てたでしょ? 『内容が設定されていません』を食べてたのを」 美咲からの返答は、実に機械的なものだった。人格エミュレートによって、なんとか人間らしい反応や言動、挙動を実行できてはいるものの、その中に明確な不自然さがどこかしらに生まれている。 しかもその不自然さに、彼女は気づいていないし自覚もしていない。自分が人間であることが当然であり当たり前と思っているような振る舞いだった。 そのセリフからも、何かを食べるような動作を行っていたのも深い意味はなく、電子頭脳内に記録されていた、過去の何かしらの朝食を食べるモーションを再生していたのだと察した。 そうして碧は確信した。美咲は葵と同じように被虐側の機体なのだと。自分が人間であると設定させられ、それに基づきどれだけ人間として不自然な様を見せても設定通りに動く姿を披露する側なのだと。 そう確信した瞬間、葵に対して湧き出ていたものの50%程度ではあるが、美咲に対しての嗜虐心が湧き出てきた。 おそらく彼女も自分と同じスレイブドール。そういう強い予測が彼女にはあった。 「そうね、そうだったわ。色々聞いてくれてありがとう、美咲さん。改めて、これからよろしくお願いします」 「ふふ、こちらこそよろしくお願いしますね」 女神のような微笑みで、新しい住人を温かく迎え入れた美咲。 その一方で碧は、最も大好きな葵ほどではないが、もしかしたら壊れ合いの相手にすることはできるのかもしれないと、少しだけ可能性を思考内に抱いていた。 彼女は続けて、ずっと無表情のまま黙々と家事を進めるミレイの方へと近づいた。 「どうも、はじめまして。水樹碧です。今日からよろしくお願いします」 挨拶をすると、ミレイは一旦手を止めて視線を動かし、プログラム通りの美しい立ち姿勢から、丁寧に頭を決められた角度で下げた。 「はじめまして、碧様。当機は型式番号RB164935001S。登録名はミレイです。以後、よろしくお願いします」 容姿は家内で最も歳上に感じるが、言動は非常に機械的で、他の三体に比べるともっとも人間らしさが感じられない。 動作も自然さこそあるがどこか固く、言動も抑揚がハッキリとしていて聞き取りやすすぎる。 キリエ以上に自分が機械であるという雰囲気が強く、元人間の機体が人格エミュレートを切られている時よりかなり硬質的だと、彼女は感じた。 「なるほど……ミレイさんって、アンドロイドなんですか?」 「はい。一ヶ月と13日前、当機体は美緒様とキリエ様に購入されました。それ以降、ここで皆様のサポートを行っております」 「ということは、貴女は市販品なの?」 「はい。当機体はアルゴビットより製造販売されている量産型アンドロイドです。製品名はメイズとなっておりますが、当機体の名称はユーザー側で自由に設定可能です。ミレイという名前は、美咲様の提案により設定していただきました」 どこまでも彼女の喋り方や話し方はとても製品らしい雰囲気を放っている。 視線はずっと話し相手の碧から離されず、眼球ユニットの動作が忙しない。 対応はとても丁寧ではあるが、量産型かつ市販品ということもあって、おそらくミレイのスペックはそこまで高くないのではと予測した。 「なるほどね……ねえ、ミレイさんはここで暮らしてるみんなのことはどう思ってるの?」 ミレイはその質問に、数秒間沈黙した。黙り込んでから、碧は視線から外れるように移動してみると、瞳が追うように動き、少しだけ遅れて頭部だけでその移動先の方を向いた。 「…………申し訳ありません。当機体には、所有者または同居人に対しての個人的な感情を抱くような機能はありません。当機体は、所有者の快適な生活をサポートする為に稼働しております」 返答はおおよそ予想できるものだった。市販品かつスペックの低い彼女には、擬似人格や人格エミュレートのような、人間らしい反応を起こすプログラムは組まれていない。 一体の人間のようなロボットではなく、女性の形をした高級家電と言う方が、ニュアンス的には近いのではと、碧は考察した。 碧は最後の質問として、ちょっと悪戯めいた内容をぶつける。 「……じゃあ、ミレイってセックスとかできるの?」 所謂廉価版の機体では、性行為もできないことが多い。 碧は性感帯への刺激以外にも、破損やエラーを快楽信号に変換して気持ちよくなることができるが、そもそもその前段階である快楽信号処理の基盤があるのかどうか引き出そうとしてみる。 「はい。当機体は性行為が可能ですが、デフォルトの状態ではパターンに乏しいため、カスタマイズを推奨します」 「えっ、できるの?」 「はい。また、当機体には現在、キリエ様からインストールしていただいた、美咲様専用のセックスプログラムが複数パターン存在しています。美咲様専用の為、それ以外の方には適用できません。ご了承ください」 魅力的な肢体に、デキる美女といったような容姿、情欲をそそる胸の膨らみとしなやかな脚。それで性行為ができないのは勿体ないと思えるものだったが、きちんと対応していた。 しかしそれ以上に、まさかキリエが既に、専用のセックスプログラムといったものを作成し適用しているとは思ってもいなかった。 これはつまり、そういう風に乱れた家なのではないか、という想像が掻き立てられる。 「そっか……ありがとうございます。これからよろしくお願いしますね」 「こちらこそ、よろしくお願いします、碧様」 美咲とはまた別ベクトルで、女性的な魅力が溢れる電子音声は、思わず耳を傾けてしまいそうになる。 常に変わらぬ無表情で喋り続ける様は、意図的に人格エミュレートを切られて動かされる葵のことを想起した。 これで、新しい場所に住む二体に挨拶を交わした。キリエとは既に交流を交わしている。残るはあと一体。 碧は、スーツを身に着けもうすぐ外出しようかという雰囲気の美緒に話しかけた。 「はじめまして、水樹碧です。今日からお世話になります。よろしくお願いします、美緒さん」 「こちらこそよろしくね、碧。最初はいきなりキリエが連れてきたってことに驚いたけど、まあ賑やかになることは悪いことじゃないから。色々と変な家だけど、何かあったら遠慮なく言ってね」 これまでの二体とキリエに比べると人間味が強く、とても自然な人間的対話ができている。 首元や関節部の継ぎ目や、目の奥の絞りやレンズなどの機械的な特徴は見当たらず、皮膚の質感も生のそれにしか見えない。 だが、瞳の奥は人間のそれのようだが、何かが蠢いてるようにも見えた。 少なくとも、朝食を口にしていたのもあって、彼女は機械ではなく生身であることは間違いないようだった。 「…………美緒さんは一体どういう方なんですか? 変な質問なのはわかってますけど……ここにはアンドロイドやスレイブドール、液体金属しかいないみたいですが、美緒さんは先程の朝食と……見たところ生身ですよね?」 碧は直球の質問を投げつけた。 おそらくこの家にいるのは、皆が人間女性の形をした非人間ばかり。市販品であるミレイを除けば、人間社会の中で動くことに危険性を感じられる者ばかり。 そのパターンでいえば、彼女にも何かあるのではないか。そもそも、キリエと仲が良いという点でも何かがあるとしか思えない。 そんな興味から疑問をぶつけたが、美緒は警戒心が薄れてしまうような笑顔で顔を近づけた。 「そうだよ、あたしは生身なんだ。この中だとちょっとだけ浮いてるかもしれないけどね……あたしだけ食事もするし、ちゃんと人間してるから」 そう言った直後、美緒の顔の中心に突如、何かが裂けるような音と共に分割線が走った。 ぱき、ごき、と生々しい音が鳴り、彼女の顔の左側が内側から蠢く。 すると、彼女の左半分の顔が、まるで裏から見たイソギンチャクのように割れ、骨が無く赤色の肉といびつに生えた牙で埋め尽くされた顔の裏側がうねうねと脈動する姿を披露した。 碧は、今までに取得した映像でも見たことがない。葵としての記憶データ内にある映画くらいでしか存在が許されないような、非現実的な代物が目の前に現れたことに、思わず目が点になってしまった。 「でもねぇ、こういうことなのぉ。あたしも、人間じゃないからぁ…………」 間延びしたような声を、顔の中心にある肉穴から発する美緒。 今にも碧の顔を捕食しようとしそうな動きを見せた後、彼女の左顔はゆっくりと閉じ、元の可愛らしさと美しさの両方が宿る人間女性らしい形に戻った。 「どう? 驚いた? こういうことだから、人間のコミュニティには居られないってことなの。だからこうして、人間じゃない者同士の場所を作ってるんだ。あ、そろそろ出勤の時間だから、また帰ったらね!」 化物と形容するしかない姿を披露したとは思えないような、温かな微笑みを向けた後、美緒は腕時計を見て慌てて鞄を持ち、急いで玄関へ向かい仕事に出ていった。 「ああいうのって、本当に実在するのね…………」 宇宙からの生物なのか、異形の怪物なのか。碧に正体はわからないが、アルゴビットの敷地内にいたら絶対に出会えないような存在を目撃したことに、思わず葵としての人格データの部分が刺激された。 「挨拶は済みましたか?」 「ええまあ…………なんだか、すごい家に来たみたいね」 「それは間違いありませんが、ここだからこそ、葵も居住できるでしょう」 美緒の背中を見送った後、横からキリエが話しかける。 たとえ人間だった頃の葵だったとしても、あまりにも刺激的すぎる出会いだった。 だが同時に、ここならば葵と共にいられること。そしてなにより、葵と一緒にいられるまでは、性行為の相手には困らないことも間違いないと思考した。 そう認識し始めると、途端に情欲が湧き上がってくる。 「ええそうね………出来る限り、早く葵を確保してね。それはそれとして……この家の住人とは、好きに性行為や壊れ合いしてもいいのよね?」 「はい。破損した場合も、私が修復します。元々はその為に廃棄場にきました」 葵と破損しあえるならどこでもいい。それが出来るだけの条件がここにはある。 碧は、最初こそ疑念はあったが、今ではこの家で共同生活することが現時点の最善であると結論を出した。 葵が来るまでの間、どのようなことをしようか、美咲やミレイをどんな風に楽しもうか。葵がいない間の欲求不満をどれだけ晴らせるのだろうか。 そんなことを思考しながら、彼女は改めて、この家の住人になることを受け入れたのであった。