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【小宵のひとりごと④】夏に読みたい本10冊

 まだ雨が降り続いていた先月の半ば、久しぶりに読書家の方とお話しする機会に恵まれ、互いに「夏に読みたい本」10冊を選出しようということになった。忙殺されているうちに梅雨が明けすっかり真夏の気候になってしまったが、まだまだ気軽な外出も憚られる今日この頃である。せっかくなのでこの場で公開して、皆さんの自室での暇つぶしに役立てていただきたい。



1. 『魍魎の匣』京極夏彦

 夏なので怪談を入れたいところだがホラーには明るくないのでこちら。妖怪や宗教、オカルト的な要素が強いミステリ。

 電車の中、男が大事に抱えた匣の蓋を開けて見せると、胸から上だけがぴたりと収まった少女が呼吸をしている――同著者の『姑獲鳥の夏』ではなくこちらを選んだのは、少女と逃避行、というモチーフが強くわたしの中の「夏」のイメージと結びついているからだ。

 匣、箱、筥、と言葉遊びのように様々な”ハコ”が絡み、複数の事件が一つの結末に繋がっていく。



2.『りら荘事件』鮎川哲也

 夏のミステリーといえば、山荘や離島を訪れた大学生グループが事件に巻き込まれ、次々と殺されていく筋書きが定番中の定番。中でも言わずと知れた名作がこちら。

 次々と登場人物が殺されていくテンポの良さ、たくさんの小さな仕掛けが積み重なり、それらの伏線が一気に回収されていく爽快感が味わえる。



3. 『犬はどこだ』米澤穂信

 同著者の『氷菓』から始まる『古典部シリーズ』はアニメ化もされた作品で、ご存知の方も多いだろう。失業した主人公が犬探しをするために立ち上げた探偵事務所に、失踪人探しと古文書解読の依頼が舞い込む。一見交わらない2つの事件の交点が次第に明かされていき、認識していた現実は反転する。

 独特の後味の悪さは著者の持ち味でもあり、超越的で特異な存在ではなく無力感を抱えたひとりの人間としての「探偵」像を描いている。



4. 『水族館の殺人』青崎有吾

 地道で堅実な論理展開で11人の容疑者の中から犯人を炙り出す”アリバイ崩し”を題材とした本格推理ものでありながら、ライトノベルのような文体とキャラクター性が印象的。探偵役・裏染天馬が重度のインドア派アニメオタクであることから、分かる人には分かる小ネタが随所にちりばめられていて、ミステリに触れたことがないオタク諸氏にもとっつきやすいのではなかろうか。

 文庫版では謎解きの前に「読者への挑戦」が挿入されているのがミステリ好きには嬉しいところ。この夏休みの間にじっくり時間をかけて推理に挑戦してみては?( ちなみに小宵は容疑者3人までしか絞れませんでした )



5. 『GOTH リストカット事件』乙一

 これを中学生のときに読んでいたら確実に中二病を拗らせて取返しのつかないことになっていたと思う。

 死にたがりの少女と猟奇趣味を隠し持つ少年が死体を探したり、殺人現場を巡ったり、ときには攫われたり助けたりしながら事件を解決していく連作短編集。「殺人」に惹かれてしまう二人の、友達とも恋人とも言い難く、他を寄せ付けない特異な関係性が魅力的だ。



6.『プシュケの涙』柴村仁

 前半は少女の飛び降り自殺の謎を追うミステリ、後半ではその事件に至るまでの日々を描いている。構成があまりにもずるい。通して読むことで登場人物の行動の意味や性格が全く違って見える。後半の物語が甘く美しく描かれるほどに心が抉られる。

 旧表紙のモルフォ蝶の群れの中を少年と少女が落ちていくイラストが美しくて大好きだったので、ぜひ一度見てみてほしい。



7. 『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』斜線堂有紀

 大切な人の死に金銭的な価値がついてしまったら、その人への純粋な愛情を証明するのはとても難しい。「金塊病」に侵された彼女の身体は死後、3億円もの価値がある金塊に変わるという。

 寝たきりのヒロインと見舞いに通う少年の構図はベタすぎるほどの王道だが、彼らの前に横たわる問題は「死ぬまでにどう生きるか」ではなく死を前にして「どう愛情を証明するか」。現実にはチェッカーのように最善の手が存在しないのだ。



8. 『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹

 短いのにあまりにも衝撃的で、一生忘れられないような、そんな出会いの物語が夏には多い。

 これは夏休み明けにやってきた「人魚」を騙る奇妙な転校生との出会いから、彼女の死体を発見するに至るまでの物語だ。嘘つきで残酷な彼女が語る美しい「人魚」の物語の裏に陰惨な現実が見える。現実と戦うために物語があり、それこそが『砂糖菓子の弾丸』だ。



9. 『僕のエア』滝本竜彦

 挫折を味わい無味で孤独な生活を送る主人公の前に、疎遠になった初恋の人とそっくりな少女が現れる。「エア」と名乗る少女は幻を見せる能力を持っていた。彼女が見せる完璧な夢は次第にリアリティを増し、現実と区別のつかないものになっていく。絶望の向こうにあるのは「色鮮やかな地獄」だ。

 この作品はぜひ文庫版で読んでほしい。あの壮絶な文庫版解説を経て初めて物語の意味をきちんと消化できた気がしている。



10. 『聖なる怠け者の冒険』森見登美彦

 後継者探しをしているちょっと怪しいヒーロー「ぽんぽこ仮面」と何としてもぐうたら過ごす休日を死守したい会社員の攻防が、やがて祇園祭の只中の京都中を巻き込む騒動に発展していく(壮大な社蓄とダメ人間の物語ともいえる)。夏休みを満喫するなら怠け者の道理を心得るべし。



( 以上10冊、どれか読んでくださった方がいればマシュマロかここのコメント欄に感想をいただけるととても喜びます。素敵な夏休みになりますように! )

【小宵のひとりごと④】夏に読みたい本10冊

Comments

シチュエーションとか絵的なインパクトもありますがオチが衝撃的ですよね……!

魍魎の匣!! 京極夏彦さんの、百鬼夜行シリーズは全部読みました。 中でも魍魎の匣は、インパクトが強かったですね

がっくんじじ丸Ω


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