XXX4Fans
misaki-syumi from fanbox
misaki-syumi

fanbox


痩せたもん!

「わ~、久しぶり~!」 黄色い声が飛ぶ。やや洒落た居酒屋の一室を貸しきった、ごく小規模な同窓会に、最後の一人が合流した所だった。 太く丸い身体を揺らし、ぶるっぶるっと二の腕の肉を揺らしながら手を振って、どすんっとソファに座る。 「久しぶり~!よい、っしょ…っふー、あっついねー」 「いやいや、アンタだけだから!なんかまーた丸くなったんじゃない?」 「ね!思った!」 「ひっどーい!これでも少し痩せたんだよ?」 SNSで連絡こそ取り合っていたが、数年は会っていない間柄だ。しかし、軽快な口調にはブランクを感じさせない。 「はいはい、皆飲み物選んでー。ご飯はコースだから」 「えー、たりなーい」 「アンタは食べ過ぎなの!」 他の女性の三倍近くありそうな彼女が発言するたびに、誰かがツッコミ笑いが起きる。高校の時も、似たような物だった。 「でもさ、本当に太ったよね。高校の時は流石にもっと痩せてたでしょ?」 「あー……まあ、それはほら、色々あるじゃん?」 成人式の時は、結局彼女だけ会えず仕舞いだった。だからか、自然と一番最後に合流した最重量の彼女に話題は向かう。 「あ、アタシ写真スマホに入れて来たよ」 「えー!見よ見よ!……うっわー、私パンパン!」 「ねー、みんな丸~い。……でもカナはこの時の方がやっぱ細いねー」 「そりゃ、体育とかあったし。この時たぶん…90kgくらい?」 「うっそ、私らには80kgとか言ってなかった?」 「え……そ、そうだっけー?」 ソファに深く、どすんっと腰を下ろして動きづらい彼女の周りに自然と密集する。 左右の彼女たちは、ごく標準的な体型だ。対してカナと呼ばれた彼女は、でっぷりとした腹の脂肪がスカートの生地を押し上げてテーブルについてしまいそうなほどの肥満体型である。体重も、スマホの中の当時よりずっと増えているだろう。 「ほら、この時まだ顎あるもん。今は、うっわぷにょぷにょ」 「んむ~やめてよー!」 たぷたぷと溢れた顎の脂肪を揺らされて、目を細めながら首を振る。けれど案外嫌ではないし、じゃれついているような物だった。 「あ、飲み物来た。ビールの人~」 「あ、アタシだ」 カナの隣に座った、幹事の彼女が手を上げる。ビールを受け取る二の腕は、肩出しのブラウスからスラッと伸びている。 「カシオレー」 「はーい、カシオレ私ー」 カナが声をあげて、両手を伸ばす。隣の彼女の太ももくらいありそうな二の腕がだぶっと揺れて、顔ほども大きな胸がテーブルに乗っかる。皮の余ったような皮膚がふるふる震える。 「ノンアルは、私で……はい、ハイボール二つ」 「はーい」 「ありがとー」 各自、飲み物が行き届く。高校の時から、なんとなく五人で行動していた彼女たちは、今でも年に1~2回はこうして顔を合わせたりしている。 「でも、カナと会うのすっごい久しぶりだよね。仕事落ち着いた?」 「あれ?カナアレじゃないの?彼氏でしょ?」 「えー!うっそ、私仕事忙しいんだと思ってた!」 「残念でしたー、彼氏の方で正解でーす。んぐっんぐ…っはぁ~、甘~い」 まるでジュースのようにカシスオレンジをぐびぐびと飲み、上機嫌で得意気にカナは続ける。 「引っ越ししたりとかさー、色々あって。……ほら、彼の実家行ったり~♪」 「うっそ!マジ?カナ結婚するの?」 「えー、そりゃ、いつかはそうなると思うけどー」 テーブルと背もたれでぎちぎちになった肥満体型を揺らし、照れたように、けれど自慢気にカナが言うと、対面の彼女がノンアルコールビールを飲み恨めしそうに口を開く。 「いいなー……どんな人?デブ専?」 「えーそうかもー、多分?……太ってても良いって言ってはくれるしー♡」 「うわ、ガチノロケじゃん~。いいな~……どこで会ったの?」 「えー……あー、知り合いの紹介って言うか~……」 得意気なカナの口調が少し言い淀むが、アルコールが段々回ってきた面々は気にも留めず続ける。 「カナ結婚したら一番乗りか~…ねえ、サチは最近彼氏とどうなの?」 ビールを傾けていた彼女が名前を呼ばれて眉根を寄せる。 「うーん……マンネリっていうか、いや、良い人なんだけど……結婚する気無さそうって言うか~」 「まー、まだ若いしねー。……良いなー、あたしもカレシ欲しい~」 対面のノンアルコールをさっさと飲み干し、二杯目を注文する。 さっさと話題を変えようと、ハイボールを傾けていたうちの一人がカナに話しかける。 「てかさ、カナ。式やるなら呼んでね!」 「あ、そうそう。予定合わせるから!」 「うん、そりゃ呼ぶよー。まだ全然決めてないから分かんないけどー」 「……やっぱり女は胸か~」 けれど、話題を変えるという思惑は外れ、ノンアルを空にした彼女がカナの爆乳に手を伸ばす。 「やめなって。…アンナ…またフラれたの?」 諦めて地雷処理をする彼女が、飲みかけのハイボールをテーブルに置き、うねうねとテーブルの上に乗っかったカナの乳を狙う手をはたいた。 「……うん。なんか、『抱いてても興奮しない』って」 「あー……」 五人の中でも特にスレンダーな彼女に、全員が納得したような声を上げる。 「仕方ないじゃんね。食べても太んないし……」 けれど、この一言のせいで同情は霧散する。 「今ここに居る全員を敵に回したよ」 「そう言うとこでしょ、体型じゃなくて」 「帰りラーメン食べてく?」 「そうそう、カナの食生活真似してから言いなよ」 総攻撃を食らい、「うぅ~」と呻く彼女。呆れたように顔を見合わせて笑う他の四人。 話す内容は違えど、何となくのパワーバランスや、やり取りは変わらない。心地の良さがあった。 「丁度料理きたし、いっぱい食べなって」 「すいませーん、これってコース以外も追加で注文できますー?」 「カナは食べすぎ。太りたいなら少しはこの子を見習いなよ」 6人席に軽い前菜が運ばれてくると、もう話はそちらに移る。 6人席に5人のはずなのに、カナが二人分以上場所を取るので結果としてちょうどよく収まっているのも、学生の頃のファミレスとよく似ていた。 「でもさ、カナの方はホント丸くなったよね。高校の時も太ってたけど……ぶっちゃけ最初誰?って思った」 ビールを傾けながらサチがそう言うと、カナは傷ついたような顔を作る。 「ひっどーい。そんなに……変わったかな……?」 「その言い方は自覚してるじゃんね。アタシも、リカが声かけなかったら『部屋間違えてません?』って言いそうだった」 「サチもマミもひっどーい!リカ慰めてー!」 「あ、これ美味し……このドレッシングなんだろ」 「聞いてないし…」 早くもハイボールを空にして、サラダを摘まんでいたリカが顔を上げ、不思議そうな表情をする。 「何?何の話?」 「カナが太ってて誰か分かんなかったって話」 「あー、ね!なんか雰囲気でわかった。でも確かに言われるとめっちゃ太ったね」 「リカまでー……アンナー、慰めてー」 「彼氏持ちは全員敵だから」 吐き捨てるような自虐的発言にまた笑いが起きる。 店員が二杯目のノンアルを運んでくるのに合わせて、ハイボールとカシオレの追加注文をする。 店員が部屋から出ると、また会話に花が咲く。 「だいたいさー!彼氏に甘やかされてるからそんな太ったんでしょー、じゃあ敵、一番の敵」 ノンアルを一気に半分飲み干し、胡乱な目でそう続ける。酒に弱いからとノンアルのはずなのに、すっかり出来上がっているようだ。 「そんなことないですー。ダイエットにだって付き合ってくれてるしー?」 「ダイエットねえ……何キロくらい減ったの?」 「えーっと……は……15kgくらい?」 「……待って、15kg減って、このお腹?」 隣に座ったサチが、スカートの中にたっぷりと詰まった腹肉をむにゅむにゅと触る。 「あははっ、くすぐったいってー」 「うわ、すっご……アレだ、ウォーターベッドみたい」 「ねえ、イヤだったら言わなくていいんだけどさ、体重何キロくらいなの?」 まだグラスに残ったハイボールをちびちび飲んでいたマミが、興味津々と言った様子で尋ねる。 「うーん、別に言っても良いけど。えっとね、150kgくらい」 「ひゃくごじゅ……」 「あ、ぴったり私の3倍だ。カナすご~い」 気の抜けたリカの言葉に、カナは「えー、リカ細ーい!」と呑気に返す。 「……アンナ、やっぱりカナに太り方聞いたら?」 「ムリ、真似できないし」 「いや、真似しない方が良いでしょ……」 至極冷静にツッコミながら、マミがハイボールの最後の泡を飲み干した。 「ねえカナー、一番太ってた時の写真とかないの?」 「んー、写真撮ってないなー。恥ずかしいしー」 酔いがすっかり回ったカナとリカが、べったりくっつきながらダラダラ話しているのを見て、幹事のサチが「ほらほら、そろそろお開きにするよー」と声をかけた。 「えー、まだ飲み足りなーい」 「食べたりなーい」 「はいはい。リカは飲みすぎ、カナは食べすぎ。ほら、カナは追加料金、食べた分くらい払いなー」 「はーい。今度ご祝儀で返してねー」 ポヤポヤした口調でカナがそう言う。マミとサチが顔を見合わせてやれやれという顔をした。 「で、こっちの飲んでない酔っ払いは?」 「こっちは別に平気でしょ。飲んでないんだし」 「二人とも……少しはフラれた私を慰めてよ……」 「いやだって割といつものことだし」 「アンナはねー、男見る目がねー」 「うぅ~~…!」 呻きながら立ち上がるアンナ。サチとマミが二人がかりでカナを立たせ、足元がおぼつかないリカとカナを三人で支えながら部屋を出る。 「カナおっも……」 「柔らか…良い匂いする……」 「ほーら、リカ自分で歩けー」 会計を済ませて店を出る。やや冷たい風にカナが気持ちよさそうに目を細め、のっしのっしと少し歩く。 「すずしー!……ふー、ちょっとすっきりー。……あれ?杖…あ、良いんだ」 「カナ、何か言った?」 「ううん、なんでもなーい。あ、私彼氏が迎えに来てくれるから、今日はこの辺でー!」 「はーい、彼氏さんによろしくー。あと少しは痩せなねー」 「結婚式、絶対呼んでね~!ほら、リカ歩きなって」 「カナー……今度良い人紹介して~……!」 「はいはい、バイバーイ」 駅に向かう四人の背中に、太い腕をぶるっぶるっと降って、ふぅ、と息を吐く。 「ふぅ……食べたりなーい」 そう呟いて、スマホを見る。彼から、そろそろ着くと連絡が入っていた。 「ただいまー!」 「カナちゃん、酔ってるねえ……」 車で150kgの巨体を運び、エレベーターでマンションの部屋に連れ込んだ彼が呆れたようにそう言った。 「酔ってないもーん。ああ、杖あった杖あった」 傘たてに刺さったまま放置されている頑丈な杖を見つけ、何か納得したように頷くカナ。 「?杖がどうかしたの?」 「んーん、お店出るときさがしちゃったのー、いらないのにねー」 酔ったカナの口調は怪しく、確かに杖が必要そうな足取りではあった。 「カナちゃんは痩せたから同窓会にも行けるし、杖が無くても歩けるのですー」 「はいはい、ほら服脱いで。皴になっちゃうから」 「んー、パジャマどこー?」 「いつものとこにかかってないかな?」 廊下をのしのしと歩き、脱衣所でスカートを緩め、ノースリーブのブラウスをガバッと脱ぐ。 あっと言う間に、サイズが大きいだけの下着姿になる。でっぷりとせり出した腹の脂肪がショーツのゴムから零れるように垂れ、今にも洗面台につきそうだった。 「ほらー、洗面台にお腹もつかないし、ドアも通れるし、全然痩せてるー」 「はいはい。シャワー浴びなくていいの?」 「んー、めんどくさいなー」 尻や腹の脂肪をだぶっだぶっと揺らしながら廊下を歩く。普段は手すりが少し邪魔だが、酔った今はむしろ丁度いい。 「おなかすいたー」 「いっぱい食べたんじゃないの?」 「足りないよー。全然足りなーい。ラーメン食べたーい、作ってー」 「太っちゃうけど良いの?」 「今日はチートデイなのー!」 下着のままどすんっとソファに腰かける。随分へたっているソファが少し軋んだ。 彼が、リビングの隅でタオル掛けと化している歩行器からバスタオルを手にし、150kgを超えるの彼女をもってしても、更に特大サイズのTシャツを手にして、タオルと共に放る。 「風邪ひいちゃうから、シャツくらいは着なよ?」 「はーい」 タオルで汗を拭い、オーバーサイズも甚だしい14XLの海外製のTシャツを頭からすっぽりかぶる。でっぷりと太ももの上に乗っかっていた腹の脂肪が丸々隠れて、ワンピースのようになった。 たっぷり蓄えて垂れた二の腕も収まり、胸元は広く空いている。 「ふー、ぶかぶかTシャツ楽ー…」 「ラーメン作ってあげるから、寝ないでよー。……どのくらい?」 「三つー」 「……なんか、昔の食欲に戻ってない?」 「平気平気、今日はチートデイだからー!」 先ほどと同じように言いながら、重たい身体をのっそりと起こし、テーブルの上のスナック菓子の袋を手にしてもう一度背もたれに体重を預ける。 「ほら、机の上のポテチも一人で取れるし、全然痩せてるでしょー?」 「はいはい。前に比べたらね」 キッチンに立つ彼の声を聴きながら、ポテチを鷲掴みにして、むしゃむしゃと貪る。まるで今日初めての食事のようながっつき方だ。 「ぁむ…んふぅ…んむ…」 日常生活でも滅多に見かけないレベルの肥満体型に良く似合う仕草。指を舐める仕草も、先ほどの同窓会とは随分雰囲気が違う。 「ふー……トイレ行きたい」 ソファに両手をつき、ぶんっぶんっと勢いをつけてソファから立ち上がり、膝近くまで広がるTシャツの中で脂肪を揺らしながら、どすっどすっとトイレに向かう。 「あれ、トイレ?待ってて、今……」 「別に平気だってー」 「……ああ、そっか。ごめんごめん。なんかこの時間にラーメン作ってて、そのTシャツ見るとつい……」 「もー!ひどーい!二年前だよー?いい加減忘れてってばー」 「いやいや、忘れるのは無理だって。……ていうか、トイレいいの?」 「…行ってきまーす」 やや早足で、どすんっどすんっと手すりを掴みながらトイレに向かい、ドアを開けて中に入り、ドアを閉める。 便座を上げて、ぐるりと反対を向き、Tシャツを捲ってショーツを下ろす。極々普通の動作だ。 「よい、っしょー……やっぱちょっとおっきいなー…」 300kgまで耐えられる一般家庭には無いサイズの便器に、少し座りが悪そうにもぞもぞしながら腰かける。 「っふぅぅぅ…♡」 じょろろろろろ……! アルコールのせいか、勢いよく排尿する。ツンとするアンモニア臭が広がる。 「ふぅぅぅ……もー、失礼しちゃうよねー、一人でトイレできなかったの、結構前なのにさー」 小便をしながら、少し唇を尖らせる。二年前ならトイレの中に彼も居たが、今は一人だ。彼女の文句も届かない。 じょろろろ……しょろろろろ……ぴちゃん…ぴちゃっ… 「ふぅぅ……出た出た…よい、っしょ……んっふ……」 トイレットペーパーに手を伸ばし、カラカラと巻き取って、少し身体を傾けるように太い腕を伸ばし、腹肉をかき分けながらたった今尿が出た場所を拭く。 「んっふぅ…ひとりで、っふー……拭けてるし…んふー」 顔を赤くして、息苦しそうにしながらも得意気にそう言って、トイレットペーパーを便器に落とし、立ち上がる。 「よい、っしょ…んっふ……ふー…汗すっごー……ふー…よいしょ……」 どす、どすと重たそうに立ちあがり、壁のリモコンを押す。便器の中で水が流れていく。 「ふー、ほら、全然だいじょーぶ…ふー……」 息を荒くしながらトイレを出て、またどすっどすっと手すりを伝いながらリビングに戻る。 元々は一人では満足に歩けないからとつけた手すりだが、痩せた今でもつい使ってしまう。 「大丈夫だった?」 「ふー、当たり前じゃん!トイレくらい一人でもできるってばー」 「………………」 「……そりゃ、前は出来なかったけど……」 彼の無言の指摘に、バツが悪そうな顔をして彼女がどすどすとキッチンの方に近付いてくる。痩せたおかげで、この程度の移動ならどうともない。 鍋の湯が沸騰して、彼が袋麺を三袋分、まとめて入れる。 「でもでも、痩せたのはホントでしょ?」 「まあ、それはそうだけど。……今日はそれ、結構言うね。なにかあったの?」 「んー……あったわけじゃないけど、痩せなって言われたし、痩せたって言っても信じてもらえなかった?」 「あー…………まあ、ね……このお腹だもんね」 彼の手が彼女のでっぷりとせり出している腹の脂肪をむにゅんっと揺らす。 手のひらにズシっと重たい感触は、それでも随分軽くはなった。 「でも、痩せたじゃん!すっごい!」 「そうだね、凄い痩せたのは本当だもんねー」 しばし麺を茹でているので両手が空いた彼が、彼女の後ろからでっぷりとした腹の脂肪に手を回す。ギリギリで後ろから抱きつけば手を回せるウエストは、ピークに比べると随分細い。 「あ、じゃあ一番太ってた時の話したんだ?」 「え、あー……いやー……それはだって、恥ずかしいし……」 「…………何キロ痩せたって言ったの?」 「……15kg」 「…………見栄っ張りだなあー…そりゃ信じてもらえないし、痩せなって言われるよ」 「だってえー…85kg減らしたって言ったら、絶対ビックリされるじゃん…?」 「それはまあ、そうだけど……」 230kgを超える程太り、一人ではトイレも出来ず、歩くのにも杖や歩行器、手すりが必要だったころに比べれば随分健康的になった彼女の、それでも過剰に蓄えた腹の脂肪を彼の手がしたからだぶっだぶっと持ち上げる。ズシっと重いが、ウエストが2m近かった頃に比べると、今の140cm前後のウエストは随分スッキリ感じる。 「危なかったんだよー、写真ないのーって言われたり、彼氏とどこで会ったのー?って言われたり」 「素直に言えばいいのに」 「言えないって!ほとんど服ないから写真はあっても裸だし、階段上れなくて困ってた時に会ったのが切っ掛けです、とか!いくら皆でも無理なのは無理ー!」 子どものようにジタバタと彼の腕の中で暴れるカナに、彼が苦しそうに呻く。 「ちょっ、カナちゃん今でも十分重いんだから、暴れないでって」 「ひっどーい!」 カナがぷりぷりと怒っていると、キッチンタイマーが鳴る。 「ほら、ラーメンできたから、一回離れて」 「はーい、……別に、嘘は言ってないもん。ちょっと誤魔化しただけだしー……」 「はいはい。ラーメン伸びちゃうよ」 彼がそう言うと、不服そうなカナがどすっどすっと歩きソファに座る。彼が大きな丼をカナの前に置く。 「いただきます…!」 「はい、召し上がれ」 そう言うと、彼は脱衣所の方に向かった。カナの脱いだものを片付けるのだ。 一方、彼女の方はズルズルとラーメンを一気に胃袋に収めていく。 「んふぅ…んっむ…っふぅぅ……」 大量のアルコールのせいで、食欲ばかりが昔に戻ったようで、食べても食べてもまだ食べられそうに感じる。せいぜい2~3人前で抑えていた普段の食事の反動のようだ。 「美味しい?」 「美味しいー、けど足りなーい」 片付けを済ませた彼がカナの横に腰を下ろす。ピーク時はカナ一人で埋まっていたが、今は二人並んで座れる程度には余裕があった。……もっとも、随分密着しているが。 「……甘いの食べたい」 「え、困ったな……ミキサーとか洗わないと。…生クリーム残ってるかな…」 「そっちの甘いのじゃなくて!普通にアイスとか!」 「ああ。なるほど……はははっ、そのシャツ着てラーメン食べた後に甘いのとか言われちゃうと、またアレ飲むのかなーって思っちゃった」 「いくら私でも、アレはもう飲みませんー!そりゃ、美味しかったは美味しかったけど…」 「生クリームと練乳とアイス混ぜたのが美味しいんだ……」 「甘いんだから美味しいに決まってるじゃん?」 何を当たり前のことを、というようなカナの表情に、彼が少し引きつった顔をする。 「……カナちゃん、また太ったりしないでね?」 「もー、大丈夫だって!今日だけ!……私だって、お風呂にハマって救急車呼びたくないし……」 「…大変だったもんねえ……。お医者さんには怒られて、消防の人には呆れられて、お義母さんは泣き出しちゃうし……」 「だーかーらー!痩せたでしょー!ほら!」 150kgの特大の肥満体を自慢気に揺らすカナに、彼も「うん、頑張ったねえ」と慈愛顔だ。 「んふ…んむ…んっぐ……っふぅぅ…ごちそうさまー…ふー、だから、今日だけ、たまーにだから、多分平気だし……おねがーい」 「……はいはい」 彼が諦めたように笑って、丼をシンクに運び、帰りに500mlの大きいアイスを冷凍庫から取り出してスプーンと一緒に彼女に渡す。 「ありがとー。ぁむっ…美味し~♡」 「……まあ、カナちゃんが幸せそうなら僕はいいんだけどさ」 「んむ…んふふー……なんだかんだ私の彼氏さんは優しいねー。一口いる?」 「ありがと」 カナのスプーンからそのままアイスを貰い、「美味しいね」と言って、でっぷりとしたカナの腹に腕を回すようにギュっと抱きしめる。 カナの方も、少し窮屈そうにしながらアイスを大きなスプーンで口に入れる。 「ぁむ…んむ…皆ね、式には呼んでだってー」 幸せそうにカナが呟く。彼が「そっか……呼ばなきゃね」と嬉しそうに微笑む。 そして、傍と何かに気づいたような顔をする。 「……スライドショーとか、どうしようか」 「あ……出会った頃の写真とか、必要かな……」 「成人式の写真とか」 「無理無理!ぜーったいムリ!」 「可愛かったけどなあ」 「ムリー!」 成人式の頃、ピークほどではないが、200kg近かったころの写真は、カナにとっては黒歴史同然だ。 「高校卒業までの写真なら良いけど……それより後は最近のだけ!」 「まあ、それは追い追い決めるとして……まずは入籍しないとねえ」 「んむ…ん、それは、そうだけど。……あ」 アイスを食べていたカナが、何かを思い出したかのように声を上げる。 「どうしたの?まだ足りない?」 「それはそうだけど、そっちじゃなくて……えっと……皆に、デブ専だって言っちゃったかも」 「……僕が?」 「…………うん。……ほ、ほら!当時の私と付き合ってたし、嘘じゃないでしょ?ね?」 「………………はぁぁ……別に、太ってる人が好きってわけじゃないんだけどなあ……」 「ご、ごめんねー……アイス、もう一口食べる?」 「食べ物で許しちゃうのはカナちゃんだけだよ」 「ひっどーい!…ぁむ…んむ…んく…っふぅ…ごちそーさま」 やや溶けたアイスをぐいっと飲み干し、太く短い腕を伸ばしてテーブルに容器とスプーンを置く。そしてもう一度ソファにどすんっと座り直し、今度は隣の彼を抱き返すように密着する。 「じゃあ、デブ専じゃないって言える?」 「カナちゃんだけだからね。カナちゃんは特別」 「……なんか、シたくなってきちゃったかも」 「え、今……?」 彼が目を丸くする。一方、アルコールと程よい満腹感で心地よさげな彼女は、残りの欲求も埋めようとし始める。 「出来ちゃった婚とか、どう?」 「……またお義母さん泣くんじゃないかな……」 彼がそう言いながら立ち上がる。彼女が、勢いをつけてソファから立つ。今は彼の手が無くても立てる。 「良いけど……カナちゃん上にならないでね、本当に重いから」 「ひっどーい。前ほどじゃないじゃんー」 「230kgも150kgもどっちも重いの…!」 そう言いながら寝室に向かい、鉄柱で補強したベッドに二人で乗る。230kgのカナを支えていた特別製は、今ではビクともしない。 「結婚したら、また引っ越すかな?」 「うーん……でも歩行器とか捨て方分かんないしな…手すりもつけちゃったし、そのままで良いんじゃない?」 「そっか。それもそうかも!」 ブラを外しながら、なんでもない会話をする。 彼が、シャツを脱ぎながらなんとはなしに部屋を見る。引っ越しと言うワードが出たせいだろう。 「あ、ペットシーツ、そろそろ補充しなきゃね」 「あー…………ねー」 「……まだ使うの恥ずかしい?僕としては掃除が楽だから良いんだけど……」 「だって……なんかおトイレ間に合わなかったとき思い出すしー……便利は便利だけどさー」 「あー……ははは…カナちゃんいっぱい零しちゃうから…」 「し、仕方ないじゃん……」 彼がベッドの上にペットシーツを敷く。最初は文字通りトイレがわりだったが、今も別の用途で使われている。こればかりは怪我の功名だ。 「色々整理しないとね、洋服とか、ベビーパウダーとかも残ってるし」 「ねー……流石にもう使わないよねー?」 「カナちゃんが太っちゃわなければね」 「ひっどーい♡」 甘えるように彼をベッドに押し倒しながら、じゃれるようにそう言う。彼が小さく呻くが、230kgの時に比べれば随分軽い。 「もう、重いんだからやめてってば」 「ごめんなさーい♡…んむ…」 そして、脂肪まみれの身体を押し付けながらキスをする。 簡単に唇を重ねられるだけでも、痩せて良かったとカナは思う。 押しつぶされながら、150kgなら耐えられるなと、彼は思う。 二人の感覚が、溶けるように、何度も唇を重ね合った。甘くアルコールの混じった香りが、広がっていった。

痩せたもん!

Related Creators