XXX4Fans
津久井五月 from fanbox
津久井五月

fanbox


【告知】アンソロジー『異形コレクションLV ヴァケーション』に短編小説を寄稿

書き下ろしの怪奇・幻想アンソロジー『異形コレクションLV ヴァケーション』(光文社文庫)に、「観闇客のまなざし」という短編小説を寄稿しました。「観闇客」のルビは「ダークツーリズム」。

(frame embed)


主人公の吉村裕太は、観光庁に勤める30代の官僚。

若い力を活かせず内向きな組織――ひいては日本の将来を憂う吉村のもとに、謝敷(しゃしき)と名乗る男から電話がかかってくる。

未来人を自称する謝敷は、未来(謝敷の時代)から過去(吉村の時代)へと観光客を送り込む仕事をしているのだと告げる。謝敷の目的は、観光によって“日本の消滅”を防ぐことだという――。

……といった感じの話です。


今回のお題は「ヴァケーション」なので、「異郷に出かけていく話」を書くのがストレートな回答だと思います。旅の非日常感を期待する読者が多いと思うので、それに真正面から応える作品は気持ちがいいな、と。しかし僕はちょっと旅行嫌いの面があるのもあって、「旅行者を迎える側の話」になってしまいました。


少し話を広げると、最近、「自分の好きなものは散歩なんだ」という発見をしました。発見というか、ずっと前から知りつつも認められていなかったことを、初めて自分の特性として認めたという感じです。

散歩。つまり大した目的もなく、歩くこと自体を楽しむ態度。

旅の多い人生はカッコいいですが、散歩の多い人生というのは、なんだかダラダラした響きです。「旅よりも散歩が好き」はどうにも斜に構えた態度に聞こえます。

でも、それが自分なんだからしょうがない、と認めたわけですね。


おそらく、僕は非日常的な刺激のある小説を書くのが得意ではありません。日常を少しだけ別の角度から見直すような、いわば「散歩的」な視点の作品ばかり書いている気がします。別の世界に出かけるのではなく、家の周りを深夜に徘徊してみるような、現実から飛翔しきらない話ばかりです。

それはSFやホラーを書く上ではかなりの弱点だと思うのですが、「それが自分なんだからしょうがない」と認めると、創作への気負いから少し解放されたような気分になります。


では、そういう「散歩的」な人間は、どんな小説を書いて何を目指していけばいいのか。今年はそれを考え続けることになりそうです。


Related Creators