自分の好きなものは全部自分の創作に出るもんだが、あまり開示されていないものもあると思い出しここに書き記します
マゾヒズムとサディズムはウチの中に息をひそめながらも確実に創作内に欲している部品です。 私はマゾヒストではありません、「定義として虐待されることを喜ぶけれども、その喜びは何処までも肉体的、官能的のものであって、毫毛も精神的の要素を含まない。」と読みました。しかしそれと共に、「ではマゾヒストは単に心で軽蔑され、翻弄されただけでは快感を覚えないのか。手をもって打たれ、足をもって蹴られなければ嬉しくないのかと。それはもちろんそうとは限らない。しかしながら、心で軽蔑されるといっても、実のところはそういう関係を仮に拵え、恰もそれを事実である如く空想して喜ぶのであって、言い換えれば一種の芝居、狂言にすぎない。…つまりマゾヒストは実際に女の奴隷になるのでなく、そう見えるのを喜ぶのである。見える以上に、ほんとうに奴隷にされたらば、彼等は迷惑するのである。」と続きます。クラフト・エビングの引用です。つまり関係性あっての性的な暴力ということになる。
性的な暴力に心を惹かれるのか、となるとそれもまた違います。以前もどっかで話しましたが私は谷崎潤一郎作品が好きです。その中でも「春琴抄」が何よりも好きです。しかしこれは決して春琴への想いによって佐助が両目を針で潰したことを愛として(あたかも、それが正当性のある濁りのないものとして)持ち上げたいというより、絶世の美女を愛し破滅する男に魅力を感じるのです。
絶世の美女を愛し破綻していく男という構造は昔からあります。「ファム・ファタール」という言葉がある通り、私はそれをフランス文学で良く目にするのですが(好きだからというのもありますが)
1番有名なのが「カルメン」だとして、「マノン・レスコー」がファム・ファタールの古典としてふさわしいのではないでしょうか。ウィキペディアにも書いてあったし…
騎士デ・グリューの「マノンが裏切るなんてことがあるもんか。ぼくが彼女のためにしか生きていないくらいのことは、知らないはずはないのだ。ぼくが彼女を熱愛していることは知りすぎているほどだ。ぼくをきらう理由なんかありはしない」という弱さが愛くるしいですよね。自惚れです。自分がマノンのためを思い、奈落の底に落ちることすら本望という彼の姿を世の人々は美しさを覚えるでしょう。私も美しいと思います。このさきの破綻までを見越して、美しいと感じるのです。
かなりマノンに従属的(もちろん、マノンにサディスティックな一面があるというわけでもなしに)で、そしてマノンは可憐な少女でありながら罪をデ・グリューに背負わせ破綻へ導きます。これは享楽主義的な考えをもつマノンが、あくまでもそこに計算はなく男を狂わせるところにロマンがあります。狂うだけでなく、きちんと行動させてくれるような引力がある。羨ましささえ思います。
(「ナジャ」についても書こうと思ったが、割愛)
さて今私が「羨ましい」と言いましたがどちらにでしょうか。もちろん「デ・グリュー」にです。当たり前だよな。
昔ゼミで谷崎の「飈風」を読んだとき、結末が「羨ましい」という感想をその場にいたメンバーに伝えたらウエッという顔をされたのを覚えている。みんなあの時18歳くらいだったもんね。教授のオッサンと変な女の子しか同意をしてくれなかった。と、昔から私もそういう若干の破壊願望を持っているのでしょう。
男がファム・ファタールな場合もあります。コレット作の「シェリ」です。これは若い男シェリと高級娼婦49歳レアの恋愛物語です。これもこのレアという高級娼婦が過去幾多の男と奈落の底に貶めることを喜びと感じていたに違いないある種のファム・ファタールだとは思いますが…。レアのシェリという若い肉体の男に固執する姿は届かぬ宝石を自分のものにしておきたい姿は哀愁があります。「今では身体は逞しく、19歳の若さを誇らしげに見せつけ、食卓では上機嫌で寝室では性急な彼だったが、それでいて自分らしくないところは絶対にさらけだそうとしない、要するに娼婦のように得体が知れないのだ。彼は優しいのかしら、とレアは自問した。そう、やさしさというものが、われ知らずもらす呻きや抱きしめる腕の仕草によって測れるものならば。しかしひとたび口を開ければ、正体も見破られまいとする身構えと共にあの「意地悪さ」が戻って来るのだった。欲望を満たされておとなしくなり目を半ば閉じ、さながら朝が来るたび、抱擁が繰り返されるたびに前夜より美しくなるとでもいうように、まなざしと唇に生気をよみがえらせた愛人を、この腕に抱きしめたことだろう。いくたび彼女はこうした朝まだき、征服したいという欲望と告白させる快楽に身をまかせ、額を相手の額に押し付けたことだろう。」
シェリという娼婦に狂わされるレアという図が根底にあります。
最近読んだコレはいいですねというやつで言えば、小西明日翔の「来世は他人がいい」ですね。なんで今まで読んでいなかったのか不明なぐらい面白かったです。霧島くんに内在する破滅願望と被虐願望がうっとりするほど共感できます。甘やかしたい気持ちと同等にある頭を潰したいという欲、きっとキャラクターのぬいぐるみを虐待しているやつらと似たような感情でしょう。不器用な愛で方ですよね。メチャクチャに殺されたいというその欲求をもっと細やかに教えてくれると読者オレはすごい助かるんですけどどうでしょう。別に私はグロテスクなものが好きなのじゃなくて、どこまでされてみたいのかを覗いてみたい好奇心です。二人が平和な着地点にたどり着くことももちろん歓迎ですが、好意と欲求がどう変化していくのか楽しみです。国家転覆や二等親まで殺すというより、もっと耽美な壊れ方をしてくれるのを楽しみにしています。ハンドクリームのくだりはもっといけただろ!と期待しました。
私は基本有名どころしか読みませんが、他オススメの私が好きそうなものありましたら教えてください。名作は名作と言われるだけの力を持っていますね。そしてこういう好きな本について話すのも妙に恥ずかしくやっていなかったので、出来てうれしいです。オタク特有の自意識がね…
変態エロ小説大好きクラブってタイトルでマンディアルグ作品を喋ろうみたいなのもやっていいかもな~地味に消化不良かもしれません。あと不倫大特集ってことでラディゲをやろうかな…
そしてもっと詳細に語りたいことがあるので悩ましい。またやろうかなー