テイワットのどこかで開催されている、各国の富裕層の男達が集まる人間などが売買される、闇のオークション。また次のオークションのため、新しい商品が調達されるのだった。 ここはモンド城近くの草原。ヒルチャール達が集まる、小さい集落のような場所。大きな斧を持ったヒルチャールや、杖を持ったヒルチャールなどが数十匹集まっている。 そのヒルチャールの群れは、モンドの商人の移動経路をふさいでいて、討伐依頼が出されていた。 その集落の小さい岩陰に、一人の少女がいた。黒と紫の衣装に身を包み、片目を眼帯で隠し、もう片方の眼帯をつけていない方を、軽く手で押さえ、指の隙間から緑色の目を輝かせる金髪の少女。 彼女は今、ヒルチャールの集落を飛んでいる鴉と視界を共有していた。上空から、ヒルチャールの群れを見下ろし、情報を集める彼女は、フフフと笑い始める。 「…見える、見えるわ。罪深き魂の澱み、その蠢く影が…!闇の底より這い出でし存在が、このわたくしに挑もうとしているのだわ!」 その少女は片目を隠しながらそう呟いた。その声には高揚と興奮が混じっている。 彼女の名前はフィッシュル・ヴォン・ルフシュロス・ナフィードット。又の名を「断罪の皇女」。 本名はエミ。とある小説が大好きな、モンドの冒険者協会に所属する冒険者の一人である。 偵察を終えたフィッシュルは目を開き、岩陰からゆっくりと立ち上がり、弓をゆっくりと引く。 「運命は定まった。黒き翼よ、昼夜を切り裂きなさい!」 そう高らかに宣言すると、フィッシュルはヒルチャールの群れに向かって矢を放った。その瞬間、雷をまとった矢とオズが、紫色の光を放ちながらヒルチャールの群れへと突進する。 「さあ、オズ、彼らに裁きを下すのよ!」 「仰せのままに!」 ヒルチャールたちが気付き、威嚇の咆哮を上げ、棍棒を振り上げながら突進してくる。だが、すでに遅い。オズが周囲に落とす雷で小さいヒルチャールは全滅し、フィッシュルの放った矢が宙を走り、一番大きなヒルチャールを敵を貫いた。 「ふふ、運命が我をここに呼んでいる!」 フィッシュルが弓を下ろし、キメポーズをとると、大量にいたヒルチャールは痙攣しながら崩れ落ちた。 「ふぅ……終わったわ!」 「お疲れ様です、お嬢様!」 数秒で依頼を終えたフィッシュルはそう呟くと、次の獲物を求めて飛び立った。 フィッシュルが次に受けていた依頼は、モンド近郊に出現した宝盗団の討伐任務だった。地図を見ながら目的地に向かったフィッシュルは、同じように近くの草むらに隠れて、様子をうかがっていた。 依頼されていた場所には、数人の男たちがいた。 「彼らが次の獲物ね……」 フィッシュルは物陰に隠れながら隙を窺う。しかしフィッシュルは知らない、その宝盗団が宝盗団に扮したオークション運営陣の男たちである事も、この討伐任務自体存在しない任務で、男たちが仕掛けた罠である事も。 男たちはフィッシュルに気が付いていたが、気づかない演技をしていた。オズに同化できる、神の目持ちの優秀な冒険者。一筋縄ではないかないため、彼女が近づいてくるのを待っていた。 上空をオズが飛び、オズを視界を共有しながら、物陰で隙を窺うフィッシュル。そして数分が立った後... 「 断罪の名において!」 フィッシュルが立ち上がり矢を放った。同時に雷をまといながら、宝盗団に突撃するオズ。 しかし、男たちはそれを待っていましたと言わんばかりに隠し持っていた武器を取り出した。動物を捕獲する網のような武器。オズはその男たちが取り出した武器を見て止まろうと思ったが、突撃していたスピードは止められない。 そのまま網に体を突っ込んでしまう。 その網は特別で、捕まえた者から、力と元素力を奪う特別な網だった。 「なにを...したの」 「お嬢様っ!!」 網に捕まってしまったオズと元素力でつながっているフィッシュルは、力と元素力を奪われ、そのまま地面に倒れてしまう。網の中でバサバサともがくオズと地面で動けなくなってしまったフィッシュル。 「捕まえたぞ!」 男たちは、網で動けなくなったフィッシュルに近づいてきた。 「思ったより簡単だったな」 「まぁ、まだ年齢的にはガキだからな」 「さっさと催眠かけちまうぞ」 男たちはそう言いながら、地面で力が抜けているフィッシュルを無理やり起こす。そして彼女に催眠をかけようとする。二人の男がフィッシュルを押さえつけ、残りの男が片手にとある本を持って、フィッシュルに見せながら、語り掛ける。 「わたくしに...触らない...で」 『今からお前は、俺の言葉を復唱する』 「だれがそんなっ...そんっ...な...わたくしは、あなたの言葉を復...唱...する」 フィッシュルの鋭い瞳が少し虚ろになり、その本を凝視する。 『お前の大好きな本は、この本で、この主人公にあこがれる』 「わたくしの...だっ...だいすきな本は、この本で、この主人公にあこがれる』 『昔から読んでいた本はこの本で、あこがれていたキャラは、この本のキャラ』 「む...むかしからっ...読んでいた本はこの本で...あ...あこがれていたキャラは、この本のキャラ』 『お前はこれから毎日、この本を読んで、書かれていることをする』 「わたくしは、これから毎日、この本を読んで、書かれていることをする」 『自分がこの本の登場人物だと、勘違いするようになる』 「わたくしは、この本の登場人物......」 『そう。お前はこの本の登場人物』 「わたくしは......この本の登場人物」 「よし、催眠完了。みんな放していいぞ」 男たちはフィッシュルを手放した。網の中で暴れていたオズは消えていた。男たちはフィッシュルの首に黒いチョーカー風の首輪をつけて、フィッシュルにその本を渡してどこかへ去っていった。 その本を持ちながら、立ち尽くすフィッシュル。視線を下に向け、渡された本を見る。その手に持たされた本のタイトルは『フィッシュル”調教”物語』。 「わたくしは何を?」(なんで、大好きだったこの本をもってこんな所に?) 催眠にかけられた事をフィッシュルは理解できない。自分が今持っている本が、昔から読んでいた本で、私はこの物語の主人公だと心から思っている。
チョコパン
2025-02-05 07:12:11 +0000 UTCまやら
2025-02-05 02:03:03 +0000 UTC