XXX4Fans
広域はんい from fanbox
広域はんい

fanbox


①縮小奴隷日記外伝 ~ペッティー~


 ~ 時刻は夕方の十六時 ~


 立ち歩く事は出来ない狭い場所。

 僕を含めた何人かの同類が、一つ一つの檻の中に分けられて閉じ込められていた。


「始めてペッティーの売り場まで来ましたけど、色んな子が置いてあるのですね。 あっ! この子いいかも」


 声のした方に視線を向けると、少し離れた場所にある檻の前に二人の女性が立っていた。

 嬉々とした声で檻を覗き込んでいる黒いドレスを着た女性と、僕を調教をしていたスーツ姿の『渚 涼子』様が。

 

「このペッティーは見た目は良いのですが、しかしお客様のご要望の愛撫の方は少し……。 これは見た目の癒しを目的にしたペッティーですので」

「あ、そうなのですね……残念」

「お隣に置いてあるペッティーの方はお客様のご要望に合うかと思いますが」

「うーん、この子はちょっと……」


 涼子様がおっしゃられる “ペッティー” とは、人間の方々が僕達に向けて呼ぶ俗称の言葉。

 僕らはもう……人ではなくなったからそう呼ばれているんだ。

 人間に尽くし、飼われるにすぎない存在に成り下がってしまったから……。


 ~人間に飼われる。

 ……そう、僕達はペットと同じような扱いを受けている。

 檻というケージの中に閉じ込められ、ペットショップみたく人間が飼う商品として無様に並べられて。


 だから……だから黒いドレスを着飾ったこの女の人は、お客様なのだ。

 僕らをペットとして飼う……人間の。


「うーん、どれにしよう……」

 コツ……コツ……コツ…………。


 何やら迷っている様子で段々と近づいてくるお客様。

 一つ一つのケージの中にいる男を物色しながら、ヒールの音を鳴らして。


《キュゥ……》《クゥゥン…………》


 動物の鳴き真似をして大人しく待つしかない僕達。 狭いケージの中で女性客に選ばれるのを。


 今さら逃げ出そうと、そんな馬鹿な真似をする者は誰もいやしない。

 僕を含め、この場にいる皆は分かっているからだ。

 そんな事をしてしまえば、食肉として加工され食べられてしまうと。


 この身がペッティとされたあの時、見てしまった。 ――見せられてしまった。

 前日まで一緒に生きていた男を切り分けて、肉として焼かれたあの姿を。

 イシガキプレートの皿の上でジュージューと肉汁を吹き出すステーキとされ、涼子様方、七人の女の人に夜ご飯として余す事なく食べられていたのを……。 


 きっとあの食事風景は、僕らを従順にさせるために見せたのだろうと今では思う。

 事実、そのおかげで涼子様方に逆らったら駄目だと、心の底から思わされた。

 下手をしてしまうと自分もあんな風に食べられてしまうのだと。


 ――だから、誰も逃げ出そうとはしない。 ケージの中にいる僕らは大人しく従っているしかない。

 どれだけ人間以下の扱いをされようとも……。 

 

「あれ?」


 お客様の不思議そうな声の後、ヒールの音がすぐ傍で鳴り止んだ。

 見るといつの間にか僕の眼前には、ストッキングを穿いた大きな脚があった。

 

「えぇ……? この子は他の子よりも大きいというか……おデブちゃんですね」

「ああ、これは私が調教を致しましたペッティーですね。 名前はポン吉。 見た目通り、コロコロしているのでそう名付けました」

「うふふ、確かにコロコロしてる」


 ポン吉。 それが今の僕の名前。

 元々は当然に人間としての名前があった。

 されど、もう二度と呼ばれる事はないだろう。

 涼子様に新しい名前を付けられ、そして奪われてしまったからだ……。 『山川 太』(やまかわ ふとし)という名前が。


 まあ人間だった頃も、大人になるまでは名前で呼ばれる事はあまり無かったが……。


「はい、この子は人間に従順で、しかも見た目も愛嬌があって、大変お客様に人気のペッティーなんですよ」

「確かに豚? ううん、狸? みたいで可愛らしい姿をしていますね」


 可愛いと、僕が人として生きていた頃には、家族以外誰にも言われた事は無い。

 ペッティーとなり今ではコロコロしていると言われているが、小学生の頃から同級生にデブと馬鹿にされ、ブタオとしてあだ名を付けられ呼ばれていたので。


 現在、異性から人として見られていないというのは分かっているし複雑だが、だけども可愛いと言われるのは正直に言って嬉しかった。

 人から馬鹿にされた蔑んだ目ではなく、本当に……本当に女性客が僕を見る目は、動物に向ける――そんな優しい目をしてくれるので。


「お客様、ポン吉の抱き心地はプニプニと柔らかくて気持ちが良いですよ。 多くのお客様にもご好評なんです。 もし宜しければお試しに抱っこしてみますか?」

「あーじゃあ、せっかくですし抱かせてもらおうかな」

「分かりました。 少々お待ち下さいませ」


 ケージの扉が開き、涼子様の両手が入ってくる。

 そして、ガシッと両脇を掴んだと思えば、軽々と僕を持ち上げていってしまうのだった。


 何せ、太っていると言っても僕の姿は、子犬ほどの大きさでしかないからだ。

 今年で “二十” を超えた成人の男なのに、本当にそれぐらいの大きさでしか……。


 それもこれも、涼子様によって注射を刺され体を縮まされたから。

 ……女の人に軽々と持ち上げられてしまう大きさまでに。


 だけども、涼子様がおっしゃるには僕の体の大きさはまだマシな方らしい。

 本来ならば、ほとんどが中指ほどの……人形の大きさになるみたいだから。


 あー涼子様はなんて言ってたか……。

 そうだ、男性ホルモンが薄い人間は縮みにくいとかなんとか言ってたかな……。

 逆に男性ホルモンが強すぎる人間はゴマ粒ほどの大きさにまで縮んでしまうとも。



 ――そんな事を考えていると、僕は涼子様の胸元まで持ち上げられていたようだ。

 視界には、さっきまで見上げるしかなかったドレス姿のお客様の顔が良く見える位置にいる。

 とても美しい人の顔が。


 それはお客様も一緒のようで、僕の顔を見てこの人は何やら驚いたかのような表情をしていた。

 何やら聞き捨てならない言葉をポツリと呟いて。


「ぇ……? ブタオ?」


 ……と。


 ブタオという言葉は、先に語った通り僕が学生の頃に言われていたあだ名である。

 もしかして知り合いなのか? と思ったが、しかしどう見ても顔には覚えがなく、同級生にもいなかった。

 流石にこんな美人の人が知り合いだったら、忘れもしないはずだ。


 だから、多分気のせいだと思う事にした。

 きっと過去の記憶を思い出していたため、聞き間違っただけなのだろうと。


「さあ、お客様、ポン吉をどうぞ」

「――えっ⁉ あ……はい」


 涼子様の手からお客様の手へと差し出される僕の体。

 落ちないように片手でお尻の辺りを支え、優しく抱き上げてくれる。

 そんな風に女の人が接してくれるのが嬉しくて、僕はついつい……。


「わわっ! 尻尾がブンブンとすごい」

「あらら、どうやらポン吉はお客様に抱っこされて喜んでいるみたいですね」


 もちろんこれは本物の尻尾ではなく、僕達専用に作られた物。

 お尻の付け根に無理やり体内に植え込まれた……。

 また、尻尾だけじゃなく動物の耳に似せられた物まで頭に植え込まれてもいる。

 人間としての耳はあるが、人から少しでもペットとして見てもらうためだという理由で。


 そんな尻尾と耳は、極わずかな力を入れるだけで自由に動かせられていた。

 元から、僕の体の一部だったかのように……。


「よ、喜んでるって……本物の動物にそっくり」

「ええ、動物と同じように感情表現をしなさいと調教を致しましたので」


 そう、僕らはこうした動物みたいな仕草で、人間とのコミュニケーションを図れと調教されている。

 人間に飼われるペットなのだからと、喋れなくされてしまって……。

 

 僕らペッティーが唯一許されているのは鳴き声だけだ。

 ……このような。


「ブブゥ~ブゥ~」

「あ、豚みたいに鳴いてる……。 見た目は狸なのに」

「ふふ、ここに展示してあるペッティ―は、人間に飼われるペットなのだと受け入れているからです。 ですのでお客様の方も特に気にする事なく、ペッティーを動物として扱って下さいませ」

「そうですか、自分で動物として受け入れて真似をしているのですね」


 髪をすく手の感触が気持ち良い……。

 どうやらお客様は、動物にするみたく僕の頭を撫でているようだ。


「あの、気になったのですけど、ポン吉って人間の年齢的に若い方ですよね?」

「良くお気づきになりましたね。 そうです、人間だった頃には二十代だった男性を、この子の他にも数匹ほど取り扱っているのです」

「あれ? 学生だったペロやポチなど以外は、三十代からの商品しか無いと聞いていましたけど……」

「ええ、お客様のおっしゃる通り、確かに三十代から上の商品を主として取り扱ってきましたが、最近は若い小人の方も扱えるようになったのですよ。 ですのでこれからこういった若い小人がお店の商品として増えていくと思います」

「そうだったのですね! わぁ、楽しみ♪ ペロやポチ以外に若い商品を使えるようになるなんて。 あ、それともう一つ聞いておきたいのですが、この子はどんな犯罪をしてエロステの商品になったのでしょう? お店の商品になっている男性は、何らかの罪を犯している人達ですよね?」

「そうですね、ポン吉は……」


 ~ 僕は決して犯罪をした訳ではない。

 日々を普通に生きていた。 苦痛となる毎日を……。


 大人になり社会に出れば、流石にイジメられるなんてありはしないと思っていた。

 だけどどうだろう、どこのバイト先を行っても学生の頃と何も変わる事はなかった。

 むかつくという理由だけの僕に向けての罵声と暴力や、そして異性からの蔑む目などが。

 何もしていないのに……。 迷惑なんてかけていないのに……。


 小学生の頃からこういったイジメを受けていた僕は、さすがに心が耐えられなかった。

 大人になってもこういう事が続いていくのだと考えたら……とても。


 だからか、自分の住むアパートに帰った後、いつも脳裏に過っていたのだ。

 一人、部屋でご飯を食べている時や風呂に入っている時、そして寝る前などに。


 ――もう終わりたい。 ――楽になりたいと。

 あまりに生きていくのが辛すぎて。


 そんな絶望している中、部屋の床に僕が放り捨てていた、あるチラシが目に入ったのだ。


「……ん? ああ、これってバイト先から返る途中にもらったチラシか。 海外の人のようだったけど美人だったなぁ……あの人。 しかしこれは何のチラシなんだ? えっと、【辛い人生を終わらせませんか】だって? ……宗教の勧誘か何かか?」


 普段ならそのまま紙を丸めてゴミ箱に放り投げていた。

 だけどこの時の僕は、どうしても辛い人生を終わらせるという文言に目がいってしまい、そのまま続きを読んでしまったのだ。


 書かれていた内容はこうだ。


 【もし無為に人生を終わらせようとお考えなら、新しい生を受けて女性に尽くすお仕事をしてみませんか?】


 【頑張り次第では今よりも幸せになれる事をお約束しますし、またどうしても生を終えたいのであれば、女性の役立つ物として私共がお手伝いをさせていただきます】


 と。


「え、新しい生を受けて女性に尽くす仕事? それに生を終わらせるためのお手伝いをしますって……な、なんだよそれ……」


 とんでもない内容が書かれたチラシだった。


 でも異様に興味をそそられ、魅力を感じたんだ。 ……下部に書いてある会社名を見て尚更。


「うそだろ、エステサロンエロスティックって……めちゃくちゃ有名な所だ……」


 予想外に大きすぎる会社に、僕はすっかり信頼してしまった。

 だからこの仕事をしてみようと思った。 この仕事にかけてみようと……。

 このまま生きていても辛すぎるため、このチラシは一種の希望のように感じたから。


「えっと、連絡先の電話番号は……あ、ここに書いてあった。 えっと……めちゃくちゃ覚えやすい番号だな」


 さっそく電話をして、僕は1251ビルに面接を受けにいった。

 そこで涼子様に即日採用をされたのだ。


 しかしまさか新しい生という意味は、体を小さくされて生きていくのだとは思いもしなかったけど。

 人間が飼う――ペットにされるのだとは……。


「ですので犯罪をしていた訳ではなく、自分から応募をしてここにいるのですよ」

「そうですか、ポン吉は人間だった時があまりに辛かったから……ここでペットになって……」


 涼子様の説明を聞いたお客様は、いきなり僕をギュッと抱きしめた。


「ブプっ」


 そのせいで顔がお客様の胸の中に埋もれてしまって息苦しくなってしまう。

 だけども、僕は安らぎを感じていた。

 ブラジャーを着けているのにぷにょぷにょと柔らかく、直に人肌を感じられるので。


 体が小さくなって女の人の胸に抱かれるのは、本当に気持ちいい。

 チラシに書いてあった通り、確かに僕は幸せだ。

 もし今でも人間であった場合、異性からは相変わらず蔑み含んだ目で見られたままで、絶対こんな経験はできなかったはずだからだ。


 ああ、小さくされた当初、僕と同じ人間だった男を食べられる姿を見せられた時は恐怖しか感じなかったけど、それでも涼子様の調教を頑張った甲斐があった。

 ――ペットになれて本当に良かった。


 女の人がペットに向ける無償の優しさというのは、心の底から幸せだと感じさせてくれるから。


「所で如何致しましょうか? ポン吉の愛撫の方もお客様にはご満足頂けるかと思いますが。 それに、ペッティーの中では一番ペニスが大きいのですよ」

「た、確かに見た感じおっきいかなって思ってたけど……え? そこまで?」

「はい、体が縮んだとしても並みの成人男性ぐらいは……。 きっと勃起した姿を見られたらお客様は驚かれますよ。 それに中に出される刺激も気に入って頂けるかと。 射精量の方もそれはもうすごくて……」

「そ、そんなにすごいのですね……」


 胸元に抱かれている俺の元に、ゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえる。

 見上げると、お客様は僕の股間をジッと凝視していた。

 頬を桜色に染め上げて。


「あ、でも中に出されたりなんかしたら――」

「お客様、妊娠といった心配は不要ですよ。 自慰用性具と同じで、縮小した際にそういった機能はかなり “薄く” なっておりますから。 また、確実に出来ないよう、 “ペッティーの全て” はこちらの方で処置を終えておりますので安心です。 ですので、なんらお気にする事なくお客様はお楽しみいただけるかと」

「……そ、そうなのですね」


 何故か、お客様から同情した目を向けられた気がした。

 だけどそれは一瞬の事で、すぐに真剣な表情になる。


「うん、よしっ! 決めました。 私、この子にします」


 何だったのだろう? と変に気になったが、どうやらお客様は僕を飼う事に決めたようだ。

 

「ありがとうございます。 では一度、ポン吉を洗いますのでこちらに」

「はい、どうぞ」


 僕を胸元から離して、涼子様に手渡すお客様。

 そしてすぐに、僕をまたケージの中へと入れる。


 この後、綺麗に洗われるんだ。

 別に僕が汚れているからではない。 毎朝ケージに入れられる前は、涼子様方、職員の誰かが洗ってくれているので。

 でも、必ずお客様に飼われる者は、もう一度身体を洗われる。

 多分、お客様に対しての礼儀なのだろう。

 少しでも身綺麗にして渡すための。


「期間はどのぐらいに致しましょう? 一週間から最長でひと月までとなりますが」

「とりあえずは、一週間の期間でお願いできますか?」

「大丈夫ですよ。 ではお客様、ペッティーを飼う際の注意点を一つ。 必ず会員以外の者には見せず、室内だけで飼うようにしてくださいませ。 世間に知られてしまいますと大事になってしまいますので、くれぐれも」

「はい、大丈夫です。 会員になる時しっかりと規則は覚えましたから」

「ありがとうございます。 もし散歩などをされる場合は、別料金となりますがお店に連絡をしてくださいませ。 ご自宅までお迎えに上がり、私共が管理をする敷地までご案内いたしますので」

「わかりました」

「では、お手続きをさせていただきますので、受付カウンターまでお越しください。 あ、お客様、ペッティーの受け渡しは本日の夜にご自宅まで職員の者がお届けに参りますので…………」


 この場から遠ざかっていく二人。

 僕はケージの中でぼんやりと新しいご主人様の後ろ姿を眺めていた。

 室内から退室しても、閉じたドアの方をずっと。


 こうして人間に飼われる事になった僕。

 でも、不幸とは思わない。

 むしろ人間に飼われるペットとして生きる方が幸せだ。


 ここに来るお客様は僕をイジメていた人達ではないし、ポン吉となった今では優しく接してくれるから。


 ――そう、僕はブタオじゃなくポン吉。


 先に語った通り、ポン吉として生きていれば、女の人は僕を蔑んだ目を向ける事はなく、愛情を注いでくれる。


 だから僕はなりきる。 愛情を向けてくれる人間に、癒しを与える動物に。

①縮小奴隷日記外伝 ~ペッティー~

Related Creators