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広域はんい from fanbox
広域はんい

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①縮小奴隷日記外伝 ~美容のため(に)~

「お客様、こちらへ」

「はい」


 普段履く事はないヒールをコツコツと鳴らし、若い店員の後についていく。

 人間が食事を嗜む広いホール内を案内されて。


「どうぞこちらの席にお掛けください」

「恐れ入ります」


 手の平を上にして、店員の方が指し示すテーブル席。

 簡潔ですが私は一言お礼を言い、案内されたソファーの席にへと腰を下ろす。


 ポフッ!

 一見硬そうに見受けられたソファー。 しかしながら体重を乗せると柔らかく、静かに身体が沈み込んでいきます。 優しく……私のお尻を包み込むよう。

 見た目からしてそうなのですが、これは明らかに良い素材で作られたソファーなのでしょう。


 トプトプトプ

「お客様、どうぞ」


 優美な所作でグラスにお水を注ぎ入れ、こちらに差し出してくれる店員の方。

 私はご厚意を受け取り、遠慮なく渇いた喉を潤す。


「改めましてご来店ありがとうございます。 私は当店の料理長を任されております『月城 梨沙』と言います。 よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします」

「お客様、お料理には少々お時間を要しますが宜しいでしょうか?」

「ええ、かまいませんよ」

「ありがとうございます。 それではただ今からお料理を作らせていただきますので、どうぞごゆるりとお寛ぎくださいませ」


 月城様は丁寧に頭を深く下げてお辞儀をし、席から離れていく。


 頂くメニューは決められてるためか、とても簡潔なやりとりで終わった。

 しかしながら、まったく不快な気持にはなりません。

 お客様には煩わしい思いはさせたくはないと、少ない会話の中でもそのような気遣いが窺えたからでございます。 意識をしなければ分からない細かな事ですが、自然と身体を動かす所作や、口に出す言葉の柔らかさで。


「……いけませんね私は。 お仕事ではありませんのにこういうのを見てしまうのは。 気を付けなければいけません」


 反省をする。

 これら作法はメイドの身分の私からすれば当然の事でありますが、メイドとは関係のない方がされている作法を見て、わたしめが評価をするのは大変甚だしく失礼ですので。


「それに、せっかくお嬢様が私を休ませるために “チケット” までご用意してくださったのですから、お仕事の事は忘れませんと」


 バッグから取り出した紙の切れ端を眺めながら思い出す。

 ここに来るまでの、今朝の出来事を――。


 ………………

 …………

 ……


 この家に『柏木 明日香』お嬢様と住み始めてもうすぐ二年。

 思えばお嬢様が学園の試験に合格した際、親元を離れて住みたいと言い出してから、私――『坂口 秋実』との二人の生活が始まりました。


 当初は、慣れない家に何処か居心地が悪そうにしていたお嬢様。

 しかし時が経つにつれ慣れていらしたようで、今ではとても落ち着いた姿を見せていらっしゃいます。

 これは、お嬢様の専属メイドである私にとって大変喜ばしい事。 悠々と快適にお過ごし頂けているのは。

 しかし、


「いくら何でも落ち着き過ぎでございますよ、お嬢様。 柏木家のご令嬢なのですから姿勢を正してくださいまし」


 私は見るに見かねて声をかけた。

 ソファーの上に仰向けに寝そべり、はしたなくも股を広げてスマートフォンを御覧になられているお嬢様に。


「えーいいじゃん別に、私と秋実姉以外誰も見てないんだしさ」


 私の方を見ようともせず、スマートフォンに視線を向けながら返事をする。


「誰も……とおっしゃいますが、いいのですか? 真一様にも見られているのですよ? そのだらしのないお姿を」

「……あっ」


 お嬢様はおそるおそるといった様子で、寝転がっているソファーの前にへと視線を動かしていく。

 ご自分でテーブルの上に置いたであろう、真一様へと。


「アハハ……」


 今さらながらに自分のはしたない姿を見られている事に気付いたみたいで、お嬢様は姿勢を正す。

 恥ずかしいのか顔を赤く染め、照れ笑いをして。


 真一様がこの家にいらして以来、元は異性のご学友ともあって、こうしただらけた姿は見なくなっていましたが、最近では度々見かけるようになってしまいました。

 きっとお嬢様の中で真一様という存在を、身内として心から受け入れているからでございましょう。


「て、うわぁ秋実姉、綺麗」


 そんなお嬢様は始めて視線をこちらへと向け、目を大きく見開き私を褒める。

 いつものメイド服ではない姿を見て。


「以前購入しておいたドレスなのですが、似合っているでしょうか……」


 現在の私の姿は赤いカーデを肩に掛けた、黒いドレス姿。

 外出するために購入したばかりのドレスを着用しているため、不安になってお嬢様に聞きなおす。


「それはもうすっごく似合ってるよ。 ね、真一もそう思うよね?」

「ああ、とても綺麗です秋実さん」

「まあ、真一様まで褒めてくださるのですね。 ありがとうございます、安心しました」


 お嬢様と同年代であった若い男性に褒められ、嬉しい気持になる。

 共に生活をしてまだ日が浅いですが、真一様は嘘を吐くようなお方ではないというのは理解しているので。

 ですので私は、真一様のお言葉を素直に受けとっております。


「それはそうとお嬢様、この度はありがとうございます。 このような素敵なプレゼントをしてくださりまして」

「良いよ、秋実姉には毎日お世話になりっぱなしだからさ。 ほら、前に私が話していた新しいエステが気になるって言ってたでしょう? だからたまにはそのチケットを使ってのんびり体を休ませてきてよ。 それに前にあったパーティー時、あんなに楽しみにしてたのに家の仕事で秋実姉はいけなかったしさ」

「お嬢様……」


 お嬢様から頂いたチケットを、自分の胸元で大事にそっと抱きしめるように持つ。


 私が胸元に持つこれは、『エステサロン・エロスティック』、略してエロステの優待チケットでございます。

 お食事と、新しいエステであるマイクロモルモットを堪能できる特別な。


 そう、マイクロモルモット。

 私はこのエステがすごく……ものすごく気になっておりました。

 女性の畜人とされた方よりも、さらに小さくされた男の人がされる身体のケアは、細部までを綺麗にしてくれるのだとお嬢様から聞いておりましたので。


 ~“彼” を取り入れ、実際に若々しくなった身体。

 そうした実体験があるため、エロステには絶対なる信頼が私にはあるのでございます。

 ゆえに、より美を求めてこういったケアをしてみたいと思うのは、ごく自然な事でございましょう。


 また、もう一つ。

 真一様に綺麗に思われたいという理由もあります。

 お食事を与えるという名目で淫欲を鎮める際、私の裸体を見せつけるのですから。

 小さな彼に、私の身体の隅々まで……。


 決して汚くは思われたくない。 彼には綺麗だと思っていてほしい。

 これは女としての意地でもあります。

 例えペットみたく飼育している真一様であっても、元は私よりも一回りお若い男性。

 そのような若い男性にも、年甲斐なくも魅力的に見てもらいたいものですので。


「それではお嬢様、外出をさせていただきますが、私がいなくても大丈夫でございますか? 何か困りごとがあればご遠慮なくお電話をくださいましね」

「大丈夫だって秋実姉、もう子供じゃないんだしさ。 私の事は気にせずに堪能してきてよ」

「わかりました。 真一様、どうかお嬢様の事をよろしくお願いします」

「あ、はい、俺に任せてください」


 ドンッ! と力強く胸を叩く真一様。

 男らしくお嬢様を守るという意思を感じる……のですが……。


「もう真一ってばそんな小っちゃいのに任せて下さいって、どう任せるの? ぷくくっ♪」

「……あ、いや…………」


 どうやら真一様は私の言葉の意味を勘違いしてしまったようです。

 よろしくお願いしますとは、単に、お菓子の食べすぎや、お勉強をするのを監視していてほしいといった意味合いでの言葉でしたのに。


「あはは♪ でも、それほど私の事を大切に思ってくれてるんだよね。 ああ、やばい……すっごく嬉しいかも。 ちゅ~❤」

「お、おい明日香? ウブッ! ちょ! いきなりはやめ――ウブッ!」


 机に上にいた真一様を手で掴み、口元にまで持ち上げてチュッチュッと軽いキスを何度も落としているお嬢様。

 抵抗をしている様子だった真一様は次第に大人しくなり、今ではキスを受け入れ、自分からもお嬢様の手の平の上から背伸びをして、キスをされに行っている。

 これは以前には見られなかった光景。

 命令しなければ、真一様からのキスなんて絶対にされる事はなかったのに。


 この様子からみるに、真一様はもう受け入れたのでしょう。

 今のご自身の現状を。


「真一、私の事好き?」

「ああ、好きだ……」

「ふーん♪ どのぐらい?」

「どのぐらいって、そりゃ……」


 以前にも増してとても仲良くなられたお二人の姿が微笑ましい……のですが、すっかり私の存在を忘れられているご様子。

 なので私は二人だけの世界に入っているお二人に気付いてもらうべく、大きく咳払いをする。


「こほんっ!」

「あ、ごめんなさい秋実姉……」

「いえ、仲が良いのは大変宜しいのですが、ほどほどにしてくださいましね? まだお嬢様に伝えたい事がございますので」

「はい……」


 叱られたと思ったのでしょうか、お嬢様からの沈んだ声。

 特に怒っている訳ではないのですが、悪いと思って反省をしているようです。


「それで秋実姉、伝えたい事って何?」

「はい、ご昼食の件でございます。 作っておりますので、温めて召し上がってくださいという事と、キッチンをお使いになられた後の火元の――」

「分かってるって確認でしょ?」

「さようでございます、くれぐれもお気をつけてくださいまし。 あと――」

「えっ? まだあるの? いやもう大丈夫! 大丈夫だから! 真一もいるしちゃんと私もするから安心して行ってきて」


 お嬢様はうんざりしたご様子。

 思えばお嬢様も大人になられるお年頃。 少々煩くしすぎているのかもしれません。


「かしこまりました」

「ほんとこっちは大丈夫だから。 それよりも時間は大丈夫なの?」

「あっもうこんな時間です。 間に合いますが、あまりゆっくりしていられませんね。 せっかくお嬢様が予約して手に入れてくださったチケット、遅れてしまったら申し訳ございません。 それではお嬢様、エロステへと向かいますので半日ほどお暇させていただきますね」

「うん、いってらっしゃい。 急ぎすぎて事故とか起こさないよう、秋実姉も気を付けてね」


 玄関前にまで見送るために来てくれたお嬢様は手を振っている。

 真一様も空いているお嬢様の片方の手の平に乗って、手を振っている。


 そんな二人に向けて私は一礼し、玄関の扉を開けてここ――1251ビルにへと向かったのでした。

①縮小奴隷日記外伝 ~美容のため(に)~

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