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夜空さくら from fanbox
夜空さくら

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ラバーシスターが生まれた時 おわり

■ とある世界の、とあるシスターが生まれた時のお話。強大な力を得て好き勝手振舞う人類の敵――淫魔に対抗するために人類が試行錯誤するお話です0w0クワッ!

■ ちょっと最後駆け足になってしまいましたが、『×××シスターの生まれた時』――『ラバーシスターの生まれた時』はこれで終了です! ラバーシスターの誕生話でした。数十年単位で時が経った後が本編軸ですが、ラバーシスターが生まれた直後辺りのお話もちょっと書きたくなっちゃいますね。ラバーシスターという存在がまだ受け入れられていなかった頃。広めるために王侯貴族に話を聞いてもらおうとして、不敬だとかなんとかで人間に捕まり、尋問を受けるラバーシスター、でもその国にも淫魔の魔の手は迫っていて――みたいな! 書きたいものがどんどん増えちゃいますねぇ……ーw-;

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 かつて、その世界を闊歩していた化け物・怪物を駆逐した人間の英傑たち。

 その英傑たちを手駒に取り、骨抜きにして力を奪い、世界の頂点に君臨した淫魔。

 欲望を支配する淫魔の前に、人間の営みは破壊されて、人の時代は終わろうとしていた。

 かつてないほどに人間に滅びが迫ったその時から、早四十年。


 人々は再び豊かな営みを送れるようになっていた。


 多くの人間たちが笑顔で、活気に溢れ、人の営みを築きあげている。

 人間に平和を齎した者は――否、者たちは、ラバーシスターと呼ばれていた。

 ガチャガチャと、手枷を繋ぐ鎖の鳴る音を立てながら、市街地のど真ん中をその集団が歩いていく。

 町民たちはそんな彼女たちの姿を見て、喜びの笑みを浮かべたり、感謝の祈りを捧げたり、それぞれの想いを彼女たちに向ける。

「おお……ありがたや……ありがたや……」

 両手を祈りの形に組んで、頭を下げる老婆がいる。

「相変わらず、一糸乱れぬ……って感じだな」

「ああ。頼りがいがあるぜ……」

 感心した様子で言葉を交わす男たちがいる。

「シスターさんだぁ! すごいなぁ」

「あたしも将来シスターさんになれるかなぁ?」

「いい子にしていたら、きっとね」

 親に連れられた年端も行かぬ子供は、憧れと羨望の眼を向けている。

 一部、シスターたちの姿を見て邪な感情を抱く若い男性もいたが、人々のためにその身を捧げてくれているシスターたちのことを考え、慌てて自分で自分の感情を戒めていた。

 とはいえ、若い男性が思わずそんな気持ちになってしまうのも無理はない。

 道行くシスターたちは、皆一様にラバーシスター服を身に着け、その若く張りのある、瑞々しい女体のシルエットを剥き出しにしていたからだ。

 さらにその手足には枷が取り付けられ、前を歩くシスターの仲間の手足と繋げられていた。

 列を乱せば即座に転んでしまうであろうその状態で歩くことで、シスター同士の連帯を高めているのである――というのは、シスターたちの姿を遠くから見る町民たちであり、実際にどうなのかは明かされていない。

 下手に人に知識を広めるわけにはいかないからだ。

 ラバーシスターの知識を、少しでも求めているのは淫魔といった魔物も同じだ。

 そのため、シスターたちは死ぬまで修道院内の事情は明かさないという硬い誓いをそれぞれ交わしている。

 もし淫魔に拉致されて脅しをかけられたとしても、秘密を話そうと口を開いた途端、そのシスターはその代償を支払うことになる。

 過度ともいえる守秘義務が課されているわけだが、その分、ラバーシスターによる淫魔への働きは抜群であった。

 シスターたちは人類の希望として、『ラバーシスター』となり、雨後の竹の子のように世界各地で現れる淫魔に日々立ち向かっているのだ。



 他のシスターたちを先導してきたそのシスターは、まだ経験が浅く若いシスターたちを見回して、目を細めていた。

 いずれも粒ぞろいのシスター候補たちだ。

 これから数年かけて修行させ、形になった者を正式な『ラバーシスター』として任命することになる。

 果たして何人が残れるだろうか。

 そんなことを考えながら、そのシスターは見習いシスターたちに向けて講義を始める。

 彼女の体は全身ラバーに包まれている。体だけでなく頭部もきっちり覆われているため、個人を判別できるのは体のスタイルくらいしかない。

 メリハリのあるボディラインといい、非常に若く見えるが、彼女の実年齢はすでに五十を超えていた。

『私たちの用いる淫魔への対抗策……それが、【子宮封印術】です。器の大きな者ほど、強大な淫魔を封印することが出来るとされています。皆さんは修行に励み、少しでもその器を大きくすることに勤めてください』

 そのシスターの声は、直接若いシスターたちの頭に聞こえていた。

 というのも、そのシスターは全頭マスクに加え、呼吸が満足に出来ないほど大きな口枷を自ら進んで身に着けており、自身をとことん追い込んでいるためだ。

 そうすることで、彼女は自身の器を大きく育てている。

 ただしそれは四六時中苦しみの中に身を置くということであり――何の修行もしていない者が同じことをしようとすれば、数日で発狂してしまうほどの苦しみになるのだ。

 見習いシスターたちはまだ胴体を覆うラバースーツや首輪、手枷足枷程度しか身に着けておらず、その差は歴然とあった。

「シスター・イル! 子宮以外に封印することは出来ないのですか?」

 そう呼ばれた、どう見ても二十代後半としか思えないシスター・イルは、その質問者に応える。

『よい質問です。残念ながら、淫魔を捕らえることが出来るのは、特別に修行を積んだ、特別なシスターの子宮しかありません』

 そう苦々し気に呟くと、温厚な顔を顰めてイルは自身の腹部を示して見せた。

 彼女の腹部は、大きく膨らんでいる。まるでスイカが入っているかのような、丸い膨らみだ。

 そこには淫魔が封印されており、現在進行形で浄化が行われているところだった。

『こうしてシスターの力で淫魔を体内に取り込み、浄化し続けるのです。淫魔の力にもよりますが、おおよそ数年から十数年で浄化しきれます』

 聖女・ヴィクトリカが編み出した子宮封印術。

 それによって人類は淫魔に対抗する手段を得たわけだが――代償は大きかった。

 シスターたちが受ける苦しみもその代償のうちのひとつである。

『始まりのラバーシスターに感謝と祈りを捧げながら、日々の修行に挑みなさい』

 それは見習いシスターたちに言ったようで、大半は自分に向けての言葉だ。



 イルは今年で五十五歳になるが、その姿は二十代後半の頃と変わっていなかった。

 ラバーシスターとなって、老化が緩やかになったためだ。

 彼女は四十年前、聖女・ヴィクトリカに、それまでの世界で聖女として扱われていた存在に、トドメを刺してしまった。

 もしもあの場でイルが淫魔の誘惑に抗うことが出来ていれば。

 何かが変わっていたかもしれない。

 そのことを、イルはその時からずっと、四十年以上悔いていた。

 中級の淫魔を封じて膨らんだ自らの腹部を抱えながら、彼女は教会の地下へ降りていく。

 その先には、かつての聖女・ヴィクトリカが安置されている聖堂がある。

 聖堂はとても小さなものだが、それで十分だ。

 ヴィクトリカは四十年前から全く変わらない姿のまま、その聖堂に拘束され続けていた。

 聖堂の中心には一般的なサイズの人間が丸まってようやく入れる合図の、小さな箱がある。

 その中にヴィクトリカは詰め込まれており、自らの自由と苦しみを代償に、魔王とも呼べる淫魔を封印し続けていた。

『ヴィクトリカ様……』

 イルはその前に膝を突き、這い蹲るようにして土下座して頭を下げる。

 彼女にとって、すべては贖罪のための行動だ。

 まっとうな聖女だったヴィクトリカにトドメを刺してしまったことを、イルは今でも悔やんでいる。

 大淫魔がヴィクトリカに封印されてから、イルは天啓を授かるようになっていた。

 ラバーシスターの概念を生み出したのも、その存在を周囲に認めさせていったのも、イルが天啓の導くままにやってきたことである。

 その結果、世界各地で猛威を振るっていた淫魔は大半がラバーシスターによって封印され、人々の営みはかつての賑やかさを取り戻した。

 イルが齎した功績はとても大きく、封印されているヴィクトリカよりも讃えられることもあったが、イルにとっては喜べないことだった。

 ただひたすら――ラバーシスターたちを導き、率先して淫魔の封印浄化を執り行う。

『ヴィクトリカ様が解放される、その時まで……私は償い続けて参ります……』

 それだけが、イルの存在理由だったのだ。


 それがラバーシスターを生んでしまった、最後の引き金を引いた自分の役目だと――イルは認識しているのである。



ラバーシスターが生まれた時 おわり

 


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