機動戦士ガンダムSEED FREEDOM ネタバレ有り!感想、演出意図解説
Added 2024-03-02 09:16:03 +0000 UTCネタバレ有の感想です!未見の人は注意!
本記事では映画の話の流れをおおまかに振り返りながら、作品に込められたメッセージを読み解きたいと思います。
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20年前のガンダムSeedDestinyの完結編といった内容で、かっこいいシーンや笑えるシーンなど盛りだくさんで大満足の内容でした。
自分はこの映画を見るために1作目のガンダムSeedをHDリマスタースペシャルエディション(全3話)で、2作目のガンダムSeedDestinyを50分のスペシャルダイジェスト版で視聴しただけのニワカなのですが、それでも非常に楽しめました。
変わらない世界、迷うキラ
前作Destinyではデュランダルが討たれ、彼の提唱したデスティニープランは否定されましたが、社会や政治、生存競争や他人への不信感などに振り回されていたキラやアスラン、シンたちと、依然として対立し続ける世界の人々に果たして本当にデスティニープランを超える素晴らしい未来や可能性を創り出せるのか?という問題が今作序盤で表出し、キラを苦しめました。
キラは何度戦っても望む結果を得られない己の無力さを痛感し、自分はラクスにふさわしくないとまで考えるようになります。
ラクスに堂々と言い寄るオルフェに何も言い返せないキラの姿には思わず「なにやってんだ!キラ!」と言いたくなるくらい顔面アスランになってしまいました。
そして物語の中盤にファウンデーションの王女であるアウラによって、コーディネイターの上位種であるアコードのオルフェとラクスは生まれながらに結ばれる運命であり共に人類を導く存在であると語られます。
ガンダムやアークエンジェルを失い、そして心の支えのラクスを奪われ完全に自信を失ったキラは、ラクスがそれを望むのなら…と自暴自棄になり、その運命に身を委ねかけます。
このときのキラの姿はかつて世界の命運をフレイに預け、彼女のたどり着く先が世界の破滅であるならばそれでもよいと賽を投げたseedのラスボス、クルーゼの姿と重なります。
ここで「この馬鹿野郎!」とキラを思い切りぶん殴って陰鬱とした空気を吹き飛ばしたのが親友のアスランです。
ラクスの気持ちは直接聞いたのか!?なぜ自分の想いを伝えないんだ!?なんで一人でそんなに抱え込もうとするんだ!?とまくしたてます。
そしてキラの心に巣くう周りの人間を弱者だと見下す心を砕き、ともに手を取り合い歩むことの大切さを自らの行動(鉄拳)によってキラに説きました。
アスランのストレートな感情表現はここまでの展開も相まって非常にスカッとしましたね。
散りばめられた愛のカケラ、子供たちと成長
必要とするから愛するのではなく、愛するから必要なのです!
物語が終盤に差し掛かるころ、ラクスはこう言い放ち明確にオルフェを拒絶します。
誰かから必要とされたいと思う心は親の愛情を求め、見放されることを怖がる子供の心そのものです。
ラクスに必要とされたいという想いから(精神に干渉されていたとはいえ)功を焦り道を踏み外してしまったため、キラも一度ラクスに拒絶されています。
二人はラクスに必要とされるため、愛されるために行動していました。
つまりキラとオルフェはお互いに子供で、似たもの同士で、ラクスに母性を見出し、それを求めていたということになります。
ラクスに拒絶され失意の底にいたキラはアスランに殴られたことをきっかけに、映画序盤にて描かれていたラクスとともに過ごした穏やかな日々を思い出します。そこにはラクスからの思いやりや、温かいまごころが秘められていたということを自覚してキラは大人へと成長しました。
キラへの手料理という形でラクスからの愛はわかりやすく表現されていましたね。
当たり前だと思っていた光景も実は誰かの愛情が形になったモノなのです。
しかし、未熟なキラはラクスからの愛情に気づくことが出来ず、それらに手を付けることはありませんでした。
ともに過ごした日々に存在していたラクスからの愛、それを確信したからこそキラはラクスの本心を怖れることなく、自分の愛を直接伝えることができたのです。そしてラクスは成長したキラを快く受け入れます。
一方のオルフェは子供であるが故にラクスを強引に押し倒しました。
オルフェは愛に無自覚な子供なので、それ以外に愛を表現する方法を知らないのです。精神的に未熟だからこそ、大人のふりをして一足飛びに身体を重ねようとする…その姿はガンダムseedで描かれたキラとフレイの関係を思い出させます。
しかしオルフェはラクスの本心を覗くことを怖れ、胸をはだけさせることができませんでした。また、自分の本心を曝け出すことすら怖れ、身にまとう衣服を脱ぐ素振りもできません。そして何故ラクスを愛そうとしているのか?本当に愛しているのか?という問いから目を背けます。
オルフェはあくまでキラという競争相手を蹴落とすことによってラクスを振り向かせようとする、母親のような愛を求める子供として決戦を迎えました。
誰かを愛し、愛されるということに自由を見出し、自己を確立して大人になったキラ
vs
自らのアイデンティティを他者との競争の中に見出し、苦しみながらも最後の一人になるまでその身を喰いあう業を背負う運命の子供、オルフェ
この対立構造が非常にグッときましたね。
愛の表明
アコードの特殊能力でお互いの思考を共有できるようになっても、オルフェはそばにいるイングリットが秘める愛情に気づけませんでした。
これはつまり、たとえこの先人類が進化し続けてバケモノじみた超常的な力を得られたとしても心はヒトのままであり、心や愛情に無頓着であり続ける限りすれ違い続けるということを示唆しています。
恐らくデスティニープランが実行されればやがてその意義は捻じ曲がり、誰かが決めた自らの運命を享受するだけの、運ばれて来るエサをただ待つ雛鳥のような、精神的に未熟な子供しかいない世界が訪れるのでしょう。
だからこそデスティニープランの後継を自称するアコードの面々は意図的に精神が未熟な存在として描かれ、王女のアウラに至ってはそのままストレートに子供の姿をしています。
しかしキラとラクスに敗れたオルフェは死の直前、イングリットの気持ちを知ることでようやく大人へ成長する足掛かりを得ました。ナチュラルもコーディネイターもアコードも平等にヒトであり、愛情に気づくことが出来るのです。
最終決戦ではキラだけでなく、アスランやシン、ルナマリア、ムウなど、コンパス陣営のパイロットたちは皆、それぞれ形は違えど愛の力で勝っています。
愛、愛、愛…これでもかというくらいに愛が圧勝し続けます!
自分が持つ愛情をさらけ出し、相手に表現し、伝えること。
愛の表明こそが真の自由であり、デスティニープランを否定する黄金に輝く自由の翼だったのです。
今作のタイトルであるFREEDOMとは、「愛の表明」という意味だったのですね。
FREEDOMの事件を乗り越えたキラたちはハッキリと、「誰かを好きだと言える世界は素晴らしい」と胸を張って言えるようになったことでしょう。
より良い世界に必要なのは人類の進化や世界の救済ではなく、近くの人間を愛することである。
月並みながらも力強いメッセージが込められていて、単なるお祭り作品にとどまらないレベルで完成されています。拍手👏
そして特筆すべきはズゴックで無双しながらエッチなカガリを妄想することで、相手の思考を読む強敵シュラを手玉に取るアスランの姿です。
戦場も女も知る百戦錬磨の余裕を持った大人の男という感じで非常にカッコ良かったです。
イザークやディアッカもそうですが、物語を通じて成長し大人になったキャラクターを見せてくれるというのは20年待ったファンへの最大のサービスでしょう。
3Dで描かれるモビルスーツの重厚感もすごいし、挿入歌のミーティアが流れるタイミングもばっちりでカッコ良かったねぇ…確実に死んだと思われていたキラがひょっこり姿を現してファウンデーションを煽るところとかもなんかすごいseedだなって感じだった。
余談ですが、無意識に抱いていた自分の感情や他人からの何気ない気遣いが愛そのものだったということを自覚した時、少年は大人になることができる。という物語は、シンエヴァンゲリオンとも重なります。
子供のままのゲンドウと大人になったシンジの戦い。
シンジに惹かれるよう仕組まれて産まれてきたアスカやレイも自由意志でそれぞれの道を歩み、シンジもまたマリと手を取り世界へ飛び出していった…。という結末ですが、どことなくSeedFreedomに似ています。
どちらの作品も愛という答えにたどり着くまでには長い年月がかかっていますが、秘められた愛に気づくためにはそれだけの時間が必要ということなのかもしれませんね。