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腹痛SOS—小児科に集う人々 差分

 腹痛SOSの差分小説です。

 本編を読んだ後にお楽しみください。

 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23827627



 小児科の朝は、いつも慌ただしい。

 鮮やかなピンクのナース服をまとった看護師の佐倉紗希(さくらさき)28歳は仕事に追われていた。落ち着いた雰囲気と知的な美しさで、患者だけでなく同僚たちからも一目置かれる存在だった。


 今朝も診察室と処置室を行き来しながら、彼女の足は止まることがなかった。ここ最近、地域では胃腸系の感染症が流行しており、嘔吐や下痢に苦しむ子どもたちが次々と訪れていた。


「佐倉さん、これ、次の患者さんの分です!」

 

 若手看護師の奈々が手渡してくる書類を受け取り、紗希はにっこりと微笑んだ。

 

「ありがとう、奈々ちゃん。処置室は順調?」

 

「はい、少し混んでますけど大丈夫です!」


 そのやり取りを終えると、紗希は診察室へ向かい、医師の指示通りに患者の体温や問診内容を記録し始めた。


 しかし、その時――。


(ん……?)


 腹部に鈍い違和感が広がるのを感じた。昨晩の夕食は特に変わったものを食べた記憶はない。だが、この痛みには覚えがあった。


(まさか、私、伝染った……?)


 胃腸炎が流行している時期に、患者と頻繁に接する看護師が感染することは珍しくない。頭をよぎる嫌な予感に、紗希はそっとお腹を押さえた。

 紗希は自分が感染したことを認めたくなかった。しかしその後も業務を続ける中で、違和感は次第に増していった。時折訪れる腹部の締めつけるような痛みに、顔をしかめそうになるのを必死にこらえる。


「佐倉さん、ちょっと顔色悪いですけど、大丈夫ですか?」

 

 同僚の看護師が心配そうに声をかけてきた。


「ええ、大丈夫よ。少し疲れているだけだから」

 

 笑顔を作りながら答えたが、内心では焦りが募っていた。

 

(とは言え周りに伝染すわけにはいかないわ。事情を説明して早く上がりましょう。でもその前に……トイレに行かないと……)


 しかし紗希の社会人として真っ当な考えは中々実行に移すことができなかった。患者の対応が立て続けに入り、トイレに行くタイミングを見失ってしまう。腹痛の波が次第に強まり、紗希はなんとか冷静を装いつつも汗が滲む額を袖でぬぐった。


 そんな中、次の患者を案内する声が聞こえてきた。


「次の方、どうぞ――」


 その瞬間、腹部に走った強烈な痛みが沙希を襲う。


(もう限界――!)


 紗希は他の看護師に目で助けを求めながら、小声で告げた。

 

「ごめんなさい、少し席を外します!」


 慌てて診察室を飛び出し、トイレへと向かう。

 幸いなことに誰も使っていなかった。

 廊下を駆け抜け、トイレのドアを勢いよく開ける。紗希は迷う余裕もなく個室に飛び込み、鍵をかける。


「間に合った……!」


 息をつきながらスカートを掴み、下着を慌てて下ろした瞬間―― 。


 ブジュルルルルッ……ジュブブブッ……!


 便座に腰を下ろす間もなく、お腹から一気に解放される水状の便が勢いよく流れ出た。


「……っ!」


 耐えきれず漏れた小さな声に、紗希は顔を真っ赤にしながらも、トイレットペーパーを握りしめた手を震わせる。


 ギュルギュルギュル……!

 お腹の中で再び不穏な音が鳴り響き、その直後―― 。


 ブリュリュリュリュ……ジュルジュルジュルッ……!


 勢いは衰えず、便器の中に水下痢が激しく叩きつけられる音が響く。個室全体に広がる特有の匂いに、紗希は目を閉じ、肩を震わせながら耐えるしかなかった。


(恥ずかしい……こんな状況、誰にも知られたくない……!)


 額には冷たい汗が滲み、髪が肌に張り付くのを感じた。お腹を抱え込み、身体を丸めたまま、紗希は必死に呼吸を整えようとする。しかし、腹痛の波は次々と押し寄せる。


 ブジュッ……ジュルルルルルッ……!

 

 「うぅ……まだ、終わらない……」


 紗希は膝を震わせ、便座に深く座り込んだ。何度も続く強烈な腹痛に、気を緩める暇もない。


(これじゃ、早退するにもできない……どうしよう……)


 紗希は脂汗が止まらなかった。脂汗をトイレットペーパーで拭いながら、心の中で何度も謝罪の言葉を呟いた。このままでは仕事を続けるどころか、同僚や患者に迷惑をかけるかもしれないという不安が頭をよぎる。


 ブリュリュリュ……ジュルジュルッ……!

 

 再び激しい音が響き、紗希は声を押し殺しながら個室内でじっと耐える。


(お願い……早く落ち着いて……)


 それでも、腹痛の波はなかなか収まらず、下痢をしてはお尻を拭くという動作を繰り返していた。出し切ることよりもトイレから一刻も早く出たいという思いが優っているが故の行動だった。

 

 何とか腹痛の波が落ち着いたのを見計らい、紗希はトイレから出た。


(大丈夫、あと少しだけ耐えれば家に着けるわ)


 *


 上司に状況を説明すると、「今日は早めに帰って休みなさい」と快く送り出してくれた。明日診察もしてくれるようである。同僚たちにも心配され、申し訳なさを感じながらも、紗希は診療所を後にする。


 外に出ると、冷たい風が頬を撫でた。冬特有の空気がいつもなら心地よく感じるはずだったが、今の紗希にとってはただの寒さだった。


 最寄りのバス停まで歩きながら、お腹に不安定な感覚がまだ残っているのを感じた。胃腸炎にかかった患者たちの訴えが思い出される。


(この症状……やっぱり胃腸炎かしら……)


 バスに乗り込むと、幸運にも座席が空いていた。紗希はすぐさま腰を下ろし、鞄を膝に抱えるようにして座る。しかし、再びお腹に鈍い痛みが走り、冷や汗が滲む。


(やだ、もう一度くるの……!?)


 身体を丸め、ひたすら耐える。バスが揺れるたびにお腹に負担がかかり、痛みが強まる気がした。


 最寄りでバスを降りあと数分で家というところで――突然、今までよりも強烈な腹痛が襲った。


「っ……!」


 紗希は息を止め、道端で立ち止まる。冷たい風が頬を叩き、心臓が早鐘を打つように脈打つ。


(無理……このままだと……)


 周囲を見渡すと、人気のない空き地が目に入った。背の高い草むらに隠れれば、誰にも見られずに済むかもしれない。


(……仕方ない。ここで済ませるしかないわ)


 覚悟を決めた紗希は、急いで空き地の奥へと足を進める。誰もいないことを確認すると、足元のスカートを掴み、震える手で下着を下ろした。


 しゃがみ込むと同時に――。


 ブジュルルルッ! ジュババババッ……!


 まるで抑え込んでいたものが一気に解放されたように、激しい音を立てながら腹の中のものが噴き出した。


「……っはぁ……」


 紗希は耐えきれず、声を漏らした。冷たい風が汗ばんだ肌に当たる中、顔を俯けて耐えるしかなかった。


 ジュルルル……ブリリリリ……!


 止まらない勢いに、紗希は膝を抱え込み、涙目で震えながら状況が落ち着くのを待つ。


(こんなこと……私が野糞をするなんて……)


 羞恥心と罪悪感に苛まれながらも、お腹の不快感が和らぐと同時に、ようやく少しだけ楽になった気がした。

 ようやく腹痛の波が収まり、紗希は震える手でトイレットペーパー代わりに鞄に忍ばせていたハンカチを取り出した。周囲に誰もいないことを確認しながら、最低限の処理を済ませると、立ち上がってスカートを整えた。


(……早く帰らなきゃ。またお腹が下ってきたらまずいわ)


 羞恥心と申し訳なさが混じる複雑な感情を胸に抱きながら、紗希は急ぎ足で空き地を後にした。身体を冷たい風が突き抜けるたび、先ほどの出来事を思い出しそうになるが、何とか心を無にして歩き続ける。


 家のドアを開けた瞬間、緊張の糸がぷつりと切れた。


「ただいま……」


 誰もいない部屋に向かってそう呟くと、玄関先で倒れ込むようにしゃがみ込んだ。冷え切った手足をぎゅっと抱え込み、涙が頬を伝う。


(私、なんでこんなことになっちゃったの……)


 しかし、しばらくすると、自然と涙は止まり、胸の奥に小さな安堵感が広がり始めた。


(でも、家まで帰ってこれた。大丈夫、これで落ち着くはず)


 紗希は震える手でスマートフォンを取り出し、上司に報告するメッセージを打ち込んだ。「無事に帰宅しました。体調が少し落ち着いたら、明日診察を受けさせていただきます」


 送信を終えると、ソファに倒れ込むように横たわり、深い吐息をついた。胃腸炎の症状は辛いものだったが、自分が医療従事者として患者の気持ちをより深く理解できたことを思うと、不思議と少し前向きな気持ちにもなれた。


(明日になれば、きっと良くなる。そう信じて、今日はゆっくり休もう)


 ふと窓の外を見ると、街灯に照らされた冬の景色が目に入った。冷たく澄んだ空気の中に漂う静けさが、紗希の心をほんの少しだけ癒してくれるようだった。


 その夜、紗希は温かいスープを飲み、一日を振り返りながら早めにベッドに潜り込んだ。自分の身体の声をもっと大切にしなければならない、そんな小さな決意を胸に抱きながら、彼女は静かに眠りについた。

Comments

こちらこそいつもリクエストありがとうございます! 楽しく書かせていただいております!

タスク

差分小説ありがとうございました。有能な看護師さんが止まらない下痢に苦しむ様子や、急激に強くなる便意に耐えきれず外でしちゃって罪悪感を感じるところが普段の姿とのギャップを感じられてとても素晴らしいと思います。こんなひどい下痢を抱えながら途中まで仕事をしていたと思うとさらにそそるものがあります。同僚の看護師さんにもうつってしまったり、患者さん用のトイレでも二次感染が発生しちゃったりもしそうですごく想像が広がります。素晴らしい作品をありがとうございました。

melty


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