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【第11話】残虐のサド大君―マゾ奴隷に徹底調教される被虐のフィアンセ 11.サン・ラグーナ裏路地の宝石店―― 服従と悦楽の烙印

11.サン・ラグーナ裏路地の宝石店―― 服従と悦楽の烙印 医務室のベッドの上で、M字開脚の大股開きの姿勢を強いられるエリル。その目は鋭くオイリーの顔を睨みつけ、この理不尽に屈してはいなかった。エリルの性格の強さを物語っている。馬車内で睡眠薬を飲まされ、深い眠りにのなかにあったエリルは、目覚めると再びオイリーの手によって悪魔の特殊下着をギュウギュウに締められた。惨めにも大股開きの姿で股間を晒すエリルの正面に立つオイリー。エリルは誰にも見せたことのない秘部を無防備にさらけ出している。恥ずかしさから、今にも泣き出したい思いに駆られていた。オイリーはエリルから王族としての気品や品格をじわじわと奪い取るつもりらしい。エリルは特殊下着の厳しい戒めと羞恥に悶える地獄の時を過ごしていた。 「姫様の置かれている立場がわかったでござますですか?」 オイリーは抵抗できなくなった女を楽しみながらいたぶるように、ジワジワと詰問を続けている。無抵抗の人間を言葉で嬲(なぶ)るその仕草は、まるで虐待を娯楽のように楽しみ喜ぶ。王族であるエリルにできるのは、この屈辱的状況に歯を食いしばって黙々と耐えるのみだった。 「姫様、わかったでござますですか?」 エリルがオイリーの問いかけに沈黙していると、ヒステリックに声を上げて問いかけを繰り返してくる。もはや、自分がエリルの立場をわからせる主人という気でいるらしい。しかし、エリルにもアクアマリン王国の第三王女としての誇りがある。こんな仕打ちにうちしがれるわけにはいかない。 「・・・・」 あえて何も言わず、沈黙で抵抗を示す。エリルにとって背一杯の抵抗だった。オイリーは反抗的なエリルの態度を見て悪魔のような妖しい笑(え)みを浮かべはじめる。悪寒を走らせるような不気味な笑みだ。 「あらま、姫様、ご機嫌がよろしくないようでござますですね。それはいただけませんでございますです」 そういうと、侍女が用いる黒革のカバンから、小さな箱を持ち出し、箱の中からアクセサリーを取り出した。それはマクシミウス伯爵から贈られたイヤリング「乙女の幸せ」だった。 「姫様、これから街中にお出かけでございましたら、せっかくでございますですから、このイヤリングをお着けになられたらいかがでござますですか?」 オイリーはあまりにも険悪になった2人の雰囲気を変えようとしたのか、急に態度を軟化させておめかしの話を振ってきた。しかし、エリルはベッドの上でM字開脚し、オイリーの前で屈辱的な大股開きの姿を晒しているのだ。こんな蔑まされた状況で、これから外出するおしゃれについての話などできるはずもなかった。打ち解けた話がしたいのならば、まずは、この卑猥な姿勢をやめさせるのが筋だろう。ただ、エリルにとって、こんな状態であっても、マクシミウス伯爵から贈られたイヤリングを、さしたる理由もなく身に着けるのを拒むわけにもいかない。オイリーによって「エリルが贈呈されたイヤリングの着用を拒んだ」と吹聴し兼ねないからだ。 「え、ええ、よ、よろしくてよ」 エリルはオイリーの無神経さにあきれながらも、不承不承に返事をせざるを得なかった。 M字開脚の姿で答えるエリルの様は無様だが、それ以上に同姓の前で大股開きで答えるのは惨めだった。 「それでは、姫様のお耳に私がお着けいたしますでござますです」 「・・・」 オイリーに身体を触られるのは身の毛がよだつほどに気持ちが悪かった。が、以前に「アクセサリーは使用人が着ける」と聞いたこともあり、仕方なくオイリーに任せることにする。オイリーは大股開きの姿勢を続けるエリルの傍(そば)によると、潤いに満ち手入れの行き届いたロングストレートをかき分け、左右の耳にイヤリング「乙女の幸せ」を丁寧に着けていく。その瞬間、エリルの肉体に弱い電撃のようなものが走り、なぜか胸がズキンとした。 オイリーは、エリルに聞こえない小さな小声で、妖しい呪文を唱えはじめていくのだった。 『ドゥー・アラ・オールデン・ドーミネン・・・・』 呪文を唱え終えると、カチン」という小さな音がして、エリルに耳に飾られたイヤリング「乙女の幸せ」の留め具が耳たぶにしっかりと嵌まる。 「うっ」 エリルの顔がピクリと揺れ、小さな喘ぎ声が少し漏れる。エリルは少しふわっとした心地よさを肉体に感じた。 「さあ、姫様、イヤリングをお着けしましたでございますですよ」 オイリーは幾分か不機嫌さが収まってきたようだ。手鏡をエリルに渡す。エリルは大股開きの無様な姿勢のままで手鏡を受け取り、そのままの姿勢で髪をかき分けて耳のイヤリングを見つめる。 「ええ、オイリー、ありがとう。とても素敵ですわ」 エリルは、大股開きで無様に股間を晒す惨めな姿のまま、オイリーに素直に感謝の言葉を返した。当然、女ならこの屈辱的な姿にいたたまれなさを感じるであろうが、今のエリルが恥じらいを感じている気配は微塵も感じらない。 ―― ちょ、ちょっと、私、オイリーに怒ってるはずなのに。でも、なんだか、心が安らいでいく・・・ エリルは自分から発せられたオイリーへの言葉や態度に違和感を感じ始めた。 ―― 今のオイリーに対する自分の態度はなんだったのだろう。なんだか変。 エリルは自分の先ほどの仕草に複雑な気持ちになる。心の中はオイリーに対する怒りが失われたわけではない。嫌悪や怒りを抱えているにもかかわらず、理由もなくオイリーに少し素直になってきているのだ。その気持ちが釈然としないものがあり、不可解だった。 「姫様の美しさが一層際立ってございますです。とてもお似合いでござますです」 そうは言っても、エリルはオイリーを前に大股開きで恥辱の姿をさらしている。こんな姿で放置されるのは女に耐え難いほどの侮辱だ。普通ならば、こんな状態でイヤリングを褒められても、全くうれしくないだろう。 ―― もうそれはいいから、早くこの姿勢から解放してくれないかしら・・・ エリルはオイリーに不満の気持ちを抱く。すると、心の中がモヤモヤとして、気分が重苦しくなってきた。全身に倦怠感が襲ってくる。心の中が締め付けられるように苦しい。 ―― な、なんな、胸が苦しい。息が詰まるようだわ。 胸の内でオイリーに対して不満な気持ちを抱くと、心が締め付けられるように重苦しくなるのだ。 ―― なんか気持ちが塞ぎ込んで、重苦しくなり苦しいわ・・・ エリルはなにか、罪を犯したかのように後ろめたい気持ちになってきた。仕方なく、オイリーに社交辞令的な言葉を返す。 「ええ、オイリーがいろいろしてくださるお陰ですわね。」 と、口に出すと、胸の内のモヤモヤがスーッと消えて楽になった。 ―― この感覚なんなの?。胸のモヤモヤが消えていく・・・ どうやら、オイリーに反抗的な態度をとると、胸の中に罪悪感や心苦しさを感じてしまうようだ。オイリーはそんなエリルの心の内を知ってか、再び同じ問いかけをしてきた。 「ところで姫様、姫様のお立場はわかってございますですか?」 ―― この老婆は、どこまでも卑劣なのかしら、私は、アクアマリン王国第三王女、なぜあなたに跪(ひざまづ)かないといけないの? エリルはあからさまな抵抗は控え、無言を貫くことにする。 「・・・・」 しかし、その無言の抵抗の意志に対して、胸の内が苦しくなっていく。心が重苦しく、罪悪感さえ感じてくるのだ。 ―― なぜ、オイリーにあがらうと、重苦しくなるの? 自分の感情に釈然(しゃくぜん)としない。「なぜ」の疑問が浮かんでくる。しかし、エリルは心の中で、この老婆に精一杯の抵抗を試みる。 ―― 王女の立場として軽はずみな言動は慎まないと・・・。 しかし、そう思えば、思うほど、自分の心の中には、罪悪感が広がり、重苦しくなってくる。 ―― いったい、この罪の意識はなんなのだろう? わたしはなにも後ろめたいことはしていないのに・・・。  得体のしれない罪の意識に戸惑うエリル。不安が募っていく。 「姫様、わかったでござますですか?」 オイリーが執拗に、エリルに返答を求めてくる。まったく、しつこい性格をしている。粘着質とはこういうことをいうのだろう。しかし、今のオイリーの言葉には何か得体のしれない未知の力が働いているような気がした。エリルはオイリーの言葉に答えなければならない義務的な気持ちにさらされている。オイリーの問いかけが気になって仕方がない。無視して黙っているのが、ムズムズして耐えるのが心苦しいのだ。 「ええ、わ、わかっておりますわ」 自分でも驚くべき素直な言葉を口にして、唖然となる。 すると、エリルの心の中がスーっと楽になっていく。罪悪感が消えていき、重苦しさがなくなった。 「ふう」 思わず安堵のため息を漏らす。心の中がスカッとして気持ちいい。 ―― えっ、この気持ちなんなのかしら?  今までに感じたことがないような、とても幸せな感覚が心と身体を満たしていく。至福というのにふさわしい感覚だ。 ―― はああああああ、ああああああ 言葉に表せない悦楽がエリルの魂を満たす。身体は小刻みに震え、秘孔からも淫液がどくどくと流れ出る。 ―― こ、これ、溶けていくような、幸福感。なんなのこれ? はぁはぁと肩で息をしながら、全身に満たされる恍惚感に浸ってゆく。エリルの頭の中は心地よさに思考が停止していく。頭の中に、あるイメージが浮かんでくる。エリルは、全裸で跪き誰かに従属している。首には首輪がつけられその誰かが手綱を持っている。手綱をグイっと引かれ、顔をあげると手綱の主はオイリーだった。『従属』というイメージが心の中に入ってくる。誰かに支配されている自分。『従属は悦楽』そんなイメージが意識の中に入ってくる。それは『従属』の烙印が魂に押された瞬間であった。 「はっ」 ―― い、いまのは、なに? エリルの頭の中では、まるで白昼夢のようにオイリーに従属する自分の姿が映った。 あまりにおぞましさにエリルは言葉を失う。今まで想像だにしなかった、卑わいで屈辱的なイメージが何か不可思議な力によって頭の中に流れ込んできたのだ。頭を犯された感覚だった。エリルはワナワナとおののく。 ―― ああ、頭の中を犯されている・・・ 信じられなかった。自分が乗っ取られるようで、急に怖くなってきた。しかし、直後に全身に悦楽が流れ込んでくる。 ―― はあああああああ・・・・ なんとも言えない心地よい感覚が肉体も心も満たしていく。オイリーは、エリルの恍惚に満ちた表情を見て満足気な顔をすると、エリルの頬を優しくなでまわす。 「姫様は、なんといい子なんでございましょうですね」 「はうぅぅ・・・」 エリルは愛撫をされたような感覚に、小さな声を漏らす。 まるで愛玩動物のように自分の頬を撫でまわすオイリーを心底憎悪するが、なぜかそうした「憤怒」「憎悪」「反抗心」等の彼女に対するネガティブなイメージは徐々に弱まっていく。 自分のなかでオイリーに対するあがらう意識が衰弱していっているのだ。ただし、この衰弱は忘れたり、完全に消失したりするものではなかった。心の奥底に封印されたというべきものだ。 「さすがは姫様、お呑み込みが早うございますですね」 何が起こってるいるのか混乱するエリルを見て、オイリーは意味深な言葉を口にする。王女としてふさわしくない淫らなM字開脚で無様に大股を開くエリルの姿を見て、すこぶるご機嫌な様子だ。頭の中が混乱するエリルは、秘口から淫液を垂れ流しながら 「い、いったい、わ、わたしになにをなさったのですか?」 と大声で叫び、オイリーにこの不可解な感覚について質す。 「いえね、姫様がちょっとばかし、お躾けにあがらいますでございますですからね。お少しお素直になさるようにしたのでございますです」 「普通になさっただけでは、こんな風になるはずはないわ」 「姫様、こんな風とは、どんな風なんでござますですか?」 エリルはオイリーの問いかけに、頭の中で浮かんだ、首輪を付けて手綱を引かれて従属する姿を思い出す。あまりの淫らなイメージに恥ずかしさが込み上げ、全身が淡くそまっていく。 ―― やっぱり、このイヤリング「乙女の幸せ」が怪しいわ イヤリング「乙女の幸せ」は、わざわざオイリーがエリルに直接着けてきたほどなのだから、なにか後ろめたい理由があるに違いなかった。しかし、前に晩餐会で身に着けた時は、こんな不気味な感覚は襲ってこなかった。では、なぜ、いま「乙女の幸せ」を着けると、オイリーに従順になっていくのだろうか? エリルには不思議でならなかった。 「そ、それは・・・」 エリルは頬を赤らめながら、口ごもる。 オイリーに従うと悦楽が心と身体を満たしていくなんて、口が裂けても言えなかった。しかし、このようにオイリーに抵抗するような意識が芽生えると、すぐにエリルの心の中に暗雲が垂れてくる。 ―― ああ、息苦しい、心の中が苦しい・・・ エリルは悶えるような表情を浮かべる。 「姫様、あまりのムリはお身体のお毒になるでございますですよ」 ―― オイリーは知ってるんだ。この感覚が沸き起こる理由を・・・ 「オ、オイリー、これは、ど、どういうことなの?・・・」 オイリーへの抵抗心が心を苦しませる理由となっているが、オイリーはわざと質問自体をはぐらかす素振りでごまかす。 「姫様、なにがでございますですか?」 オイリーはわざとネチネチとエリルを辱めて楽しんでいるようにも思えてくる。 ―― くっ、なんて底意地がわるいのかしら エリルは王女としての立場も、面目も、誇りも奪われ、惨めに屈服するしかないのだった。 「そ、それは、」 「それは、なんでござますですか?」 「オ、オイリーの言うことを聞くと・・・・、」 「姫様、私の言うことを聞くとなんなのでございますですか?」 オイリーはエリルの言葉に少しのごまかしも許さない。 ―― こ、こんなの、みじめ過ぎる・・・・ 誰にも知られたくない心の中を、最も忌むべき相手にさらけ出さないといけないとは、あまりにも惨めで、残酷だった。 「オ、オイリーに、服従、あああ・・・」 服従という言葉を口から出した瞬間、エリルの肉体と心の中に歓喜の波が襲ってきた。まるで身体の中が溶けていくようで、心もカラダも満たされていく。「服従」に幸福感を感じた瞬間だった。 ―― からだが、快楽に蝕まれていく・・・。 エリルは歓喜の波に呑み込まれる寸前だった。「服従」という言葉自体が、悦楽になっている。 「あらま、姫様、どうしたでござますですか?」 オイリーは意地悪く、わざと聞いてくる。 「オ、オイリーに、服従、す、すると、か、かいらく、で、こ、こころとか、からだが満たされますの・・・」 そう言葉にすると、再び心と身体が至福に包まれていった。 「はああああああ・・・・」 エイルは悦びに満ちた顔で、恥ずかしい声をあげ、股間からは淫液を流している。 「おほほほ、姫様はとんだド・変態でございますですね。このオイリーがとことん身世話を致しますですから、ご安心なさってくださいませです」 「ええ、あ、ありがとう、オイリー・・・」 なぜか、オイリーに都合のよく話が進んでしまい。エリルは混乱していく。 ―― な、なんで、わたしがド・変態になってて、その身世話をオイリーがしていくことになるのよ。なんで、わたしは、「ありがとう」なんて心にもないことを口に出してるのよ。 エリルは自分がどんどん貶められていく境地にいたたまれず、心の中で泣き叫ぶ。 「姫様がお素直になられましたので、このイヤリング『乙女の幸せ』につてお話いたしますです」 オイリーは以外にもこの不気味なイヤリング『乙女の幸せ』について語りはじめた。 今、エリルが耳に着けているイヤリング『乙女の幸せ』は、神話伝説上で伝えられるそれで、恐らく本物だそうだ。恐らく、エルムポリの宝石商・ベトラーがなんらかの手を尽くして入手してきたのだろう。 この『乙女の幸せ』は摩訶不思議な力を秘めることから、大昔から古今東西で秘宝として扱われてきた。歴史上、数多の王朝で秘かに所蔵されてきた貴重なものだという。世間一般的に語られる「乙女の幸せ」の作用は、「その女性の願望を叶え、その人生を幸せに導く」というもので、「意中の人物との永遠の幸せが約束される」というロマンチックな神話として語り継がれてきている。 そのために、プロポーズの際して、男性が意中の女性に贈ることが多く、多くの偽物がつくられてきた。偽物には、大抵、街にいるような三流の魔導師が魔力を宿す魔道具に加工している。そのため三流の魔道石しかつくれないのだ。当然、魔力も弱い。やはり最高の魔道石をつくるには一流の魔導師が手掛ける必要がある。一般的に、魔道石はその魔力によって「魅力」「女性らしさ」といった女性のオーラが増幅されるようになっている。贋作の「乙女の幸せ」であっても、一般女性の魅力が増すある程度の作用と効果があるのは確かだ。 もちろん、本来の「乙女の幸せ」にもそのような作用もあるのだが、本物には、さらに人間が本来持つ本能を満たすための深淵で複雑な作用が隠されていた。オイリーが語った「乙女の幸せ」の隠された本来の作用は次のようなものだった。 イヤリングを着けられることで女は 「怒りの剥奪」 「憎悪の剥奪」 「嫌悪の剥奪」 「抵抗の剥奪」 「敵愾心の剥奪」 ―の力の作用を魔道石から受けることになる。イヤリングを直接付けた人間に対してのみ怒りや憎悪などがなくなるというものだ。自分で着けた場合は、異なる作用が本人に現れるらしい。 つまり、このイヤリングを女に着けてあげた人間は、その女の「怒り」「憎悪」「嫌悪」「抵抗」「敵愾心」を奪うことができるのだ。ただし、この「怒り」や「憎悪」などは、剥奪されるので消えてしまうもではないらしい。イヤリングを外すと、魔道石の作用が身体に及ぼさなくなり。「怒り」などが再び心に戻ってしまうのだ。これだけだと、イヤリングを装着中だけに発生する作用であり、着用しなければそれほど問題でもなそうではあるが・・・。 もっと恐ろしい作用が隠されているのだ。このイヤリングには『服従』の作用がある魔道石が組み込まれ、イヤリングを着けた女に『服従』させる意識を埋め込んでいく、また、同じく『悦楽』の作用がある魔道石も組み込まれ、『服従』すると『悦楽』が心と肉体を満たし、肉体と心に「服従=悦楽」という想念を潜在意識のなかに刷り込むのだという。 潜在意識の中に「服従=悦楽」が固定化されると、顕在意識、つまり心の中に自然と「服従=悦楽」が固定化され、それがその女の常識となる。これを「意識への烙印」と呼ぶそうだ。一旦、「意識の烙印」が植えつけられると、それを打ち消すのは困難を伴うという。潜在意識・無意識の中に溶け込んでいる想念を消すのは、確かに不可能だ。女の意識のなかでは、「服従」は快楽になってしまうのだ。 古代から時の執政者は、「英雄色を好む」と言われ、その絶大な権力で女をほしいままにしてきた。しかし、女の肉体や精神を完全に自由自在に、ほしいままにした権力者は以外に少なかったのではなかろうか。このイヤリング「乙女の幸せ」を着けさせさえすれば、女から「怒り」「憎悪」「嫌悪」「抵抗心」「敵愾心」を完全に奪うことができる上に、服従させることもできるのだ。 このイヤリングを着用した女は怒りや嫌悪や抵抗心を奪われ権力者に跪(ひざまず)き、服従することになる。それも無意識に。感情を奪われた女は愛玩動物のように愛でられ、「至福の悦楽」に浸りながら飼われていくことになる。確かに、怒りを失った女は男と争うことも、嫉妬することもないだろう。男との間に絆を揺るがす揉め事は起こらないはずだ。どんなに心を傷つけられても、男にあがらえない都合のよい女。これは女を愛玩道具にする悪魔の装飾品だったのだ。 権力者に好都合の女になった女は日常生活はなにも心配はない。むしろ贅沢がたくさんできる。愛玩動物になったとしても、贅沢三昧な生活がそこにある。それ故この宝飾品は「乙女の幸せ」と呼ばれてきたのだ。古代からこんな悪魔な装飾品をつくってきた人間とは、どんなに醜い生き物なのだろうか。 オイリーが自らの手でエリルにイヤリングを着けたのにも理由があった。それは、イヤリングに組み込まれた魔道石の力を発揮させるためだ。女は自分にイヤリングを着けてくれた人間に対してのみ、その作用と効果を受ける。そのため、オイリーはエリルにイヤリングを着ける必要があったのだ。ただし、このイヤリングは単純に着けただけでは、その恐ろしい作用は完全には顕現(けんげん)しない。伝説上の神秘の力を発揮させるためには、魔導師が使う呪文である「淫呪(いんじゅ)」が必要になるのだ。オイリーはその「淫呪(いんじゅ)」をエリルに試みたのだった。 ―― そ、そんな、わたしから、心が、う、奪われてしまったなんて エリルは自分の心が犯されたことに、激しいショックを受けた。確かに、先ほどまで抱いていたオイリーに対するわだかまりが弱くなってきているの実感する。しかし、本当にこれはイヤリング「乙女の幸せ」の魔道石の作用。効果によるものなのだろうか? まだ半信半疑で疑っている自分がいる。確かに、この時代にも、魔道石と呼ばれる類(たぐい)の宝石を使った宝飾品はたくさんある。が、そのほとんどが贋作(がんさく)とされ、偽物の扱いになっていた。また、一部には、ひと昔前の魔道装飾品、魔道装飾具と呼ばれるものがあり、ある程度の魔力を持つことが知られていた。ただし、魔道術を使いこなされなければ、その作用を100%発揮させるのは難しかった。 現在において、魔道石や魔石、魔金属、魔水などを使いこなせるのは、アクアマリン王国の神官術師、もしくは、得体の知れない魔術師のみだ。そんなエリルにとって、摩訶不思議な魔力を秘める魔道石など、信じられるはずがなかった。 エリルは自分の心が蝕まれているのをまだはっきりとは理解していない。M字開脚の大股開きで秘口から淫液を垂れ流すその姿に違和感を感じなくなっているのは、まさにイヤリングの魔道石が作用している証とも言えるものだったのだが。 「姫様、もうおわかりでございましょうです。姫様は、もう『乙女の幸せ』に支配されているのでござますですよ」 オイリーは一通り「乙女の幸せ」についての話を終えると、エリルの心中に絶望という引導を渡そうとする。 ―― そっ、そんなはずはない・・・。 エリルは、オイリーの言葉を心の中で否定する。すると、オイリーの意向に反したのだろう、エリルの意識が重苦しくなっていく。 ―― あああ、く、くるし、い・・・ ―― そ、そんな・・・・、オイリーの言葉を否定しただけで、こんなになるなんて・・・ エリルは意識の中で、『乙女の幸せ』に支配されているイメージを思い浮かべる。自分の思いを捻じ曲げて屈服しなければ、心がどんどん犯されていくのだ。 ―― わ、わたしは、もう「乙女の幸せ」に支配されて、いる・・・ エリルは、肉体のみならず、心までも穢されて淫らな肉の塊に堕ちていく惨めさにいたたまれなくなる。苦悶の表情を浮かべるエリルの顔を見て、オイリーは、今まさにエリルがイヤリング「乙女の幸せ」の支配下にさらされつつあるのを確信していく。 ―― この娘の心はすでに「乙女の幸せ」に侵されている。 オイリーの唱えた淫呪(いんじゅ)は、見事に「乙女の幸せ」を発動させたのだ。オイリーは乾いた唇をペロリと舐め、生唾をゴクリと飲み込むと、 「さあ、姫様、姫様にひとつマナーを教示して差し上げますです」 エリルにマナーと称して、M字開脚の大股開きのまま胸を張る姿勢で、頭の後ろに肩と平行になるように手を組みむように命じた。 「さあ、姫様、頭の後ろに手を組むでござますですよ。腕は肩と並行に。胸は突き出すほどに胸を張る姿勢をするでござますです」 ―― な、なんて、卑猥なポーズをさせるのかしら・・・。これでは、淫売女だわ。 オイリーの意志に反することを考えると、エリルの心の中に「不安」「苦痛」「悲しみ」「恐怖」など心を苛める感覚がどんどん広がってきた。 ―― あああ、や、やめて・・・。 エリルは魔道石の力よって、心の中が過剰な恐怖や悲しみで占められ、精神に苦痛を強いられる。 「あああ、あああ」 恐ろしい魔道石による精神への責めに顔を歪めるエリル。エリルの意志に反し、嫌々に頭の後ろに手を組む。オイリーが望む姿をエリルは渋々ととるのだった。 ―― こんな姿をさせられるなんて、惨めすぎるわ しかし、オイリーに従った褒美として、魔道石はエリルの心と肉体に「至高の歓喜」を与えてきた。 「あああああ・・・ 「あああああ・・・」 「あああああ・・・・」 肉体と精神に今まで感じたことがなかった未知の悦楽がどんどんと入ってくる、まるで身体の中がとろけてきそうな感覚だった。エリルの目はトロンとして、視線の先が定かでなくり、口元はゆるみ切っている。先ほどの強い意志を持ったエリルの姿はもう失われていた。 「はぁはぁはぁはぁ」 ―― このままじゃ、心とからだが支配される・・・ エリルはなんとか、イヤリング「乙女の幸せ」から逃れるようと考えを巡らせた。その感情でさえも反抗とみなされ、心の中に恐怖の闇を広げられてしまう。希望を失い苦悶の表情を浮かべるエリル。その表情をしげしげと眺めるオイリーはエリルをさらに辱めていく。 「それでは、姫様、この姿勢になったら、次の私が告げる言葉をこれからは言うんでござますですよ」 そう言って、エリルに耳打ちする。それを聞いたエリルの顔みるみる赤くなっていく。余程のことなのだろう。 「さあ、姫様、お立場はわかってござますですね」 オイリーは意地悪そうにニヤニヤ笑っている。 ―― なぜ、こ、こんなことを言わなければないないの。 エリルは言葉を出すのを躊躇っていた。もたもたしていると、魔道石の戒めがはじまってしまう。エリルは意を決して、オイリーが言った言葉を口にする。 「オイリー様、どうか淫乱変態エリルのオマンコを見てくださいませ。エリルはいつもアソコを濡らさないと満足できない淫らな牝犬です。どうか、淫乱変態エリルの臭いオマンコの濡れ具合、締まり具合など手入れに手抜かりがないか、よくお確かめくださませ」 ―― こ、こんなのヤダ、み、惨めすぎる エリルは、はしたない言葉を口にすると、涙があふれてきた。しかし、同時に、胸の中にスキーンという衝撃が走る。本能が何かに目覚めた気がする。そして、肉体と心の中に「悦楽」が流れ込んできた。 「あっ、ああああああ」 エリルは溢れるような歓喜のなかに浸っていく。 ******************* ホセは、長いこと、兵営舎個室のベッドの上でずっと天井を見つめ考えてごとをしていた。頭の中にあるのは、エリルのことだった。戦で家族を失い孤児(みなしご)となっていたホセはテクレンスに保護され、帝国親衛隊付訓練兵として兵役を務めていた。その任務として戦列艦ヴィクトリーに隠密兵として料理兵を装ってているときにエリルに出会ったのだ。 エリルはアクアマリン王国第三王女というれっきとした王族の身分をもっていたものの、艦内では水兵に気さくに話し掛けたり、艦内作業を手伝うなど、王族とは思えないほど庶民的な雰囲気ですこぶる人気が高かった。それにあの容姿であり、誰もが憧れる魅力に満ち溢れていたのがエリルだった。 ホセは調理場で、エリルについての話題を日常的に耳にしていた。 「あのからだつきはたまんねぇ」 「あの乳(ちち)は揉みがいがある」 「抱きてぇ」 などは、調理場の人間も普段から口にしていた言葉だ。 女人禁制の船乗りにとって、スキニーなロングドレスで、胸の膨らみや、腰のくびれ、豊かなバストなどを見せつけられては、拷問に近いようなものだった。 ある日、スキニーのロングホワイトドレスをまとった甘栗色のロングヘアーの女性が、調理室を物珍しそうに覗いていた。ホセが目を向けると。 「それ、なになさってるの?」 と、聞いてきた。それがエリルだった。 ホセがジャガイモの選別をしていることを話すと、 「わたしも手伝います」 と、一生懸命になってジャガイモの選別作業をしはじめた。こうして、エリルと調理場の水兵達は、徐々に親しんでいく。日々手伝いに調理場を訪れるエリルは、真剣に調理場の作業をこなしていき、最初はこそは好奇の目で見ていた調理兵達もその真剣な姿に心を打たれ、卑わいなことを言う水兵はいなくなっていた。 ホセは、調理場で様々なことをエリルに教えていくなかで、エリルに対して姉のような感情を抱くようになり、親しんでいった。エリルにしても、ホセが初恋の相手であるカールの少年期の面影があるのも手伝って、やはり弟のようにかわいがっていた。 艦内でエリルが暴漢に襲われた時は、ホセは自らの命も厭わぬ覚悟で暴漢に立ち向かい、四肢を折られる瀕死の重傷を負うまでエリルを守り抜くほどだった。そんなホセに、エリルは人前では決して使うことのない、「奇跡の力」でホセの命を救った。 ホセにとってエリルは常に姉であり、慕情を抱く対象ではなかった。しかし、それがエリルのデルタを見て一変してしまった。今まで気にしなかったのが不思議だったのだが、エリルは女として群を抜いて魅力的な存在だった。同僚の水兵がいろいろと卑猥な想像をするのも、いまならわかる気がする。ホセは姉として見ていたために、そのことには鈍感だったのだ。 しかし、ホセは気づいてしまった。エリルの持つ女として魅力に。馬車に乗った時に、偶然エリルの股間を真正面から目にし、秘部であるデルタをはっきりと視界に入れてしまった。ブルブルと震える太とももの中心にあるデルタは、絹地がピッタリと張り付き、美しいさを漂わせていた。しかし、本来、普通の女性ならば着けるはずのないモノ。黒革のベルトが縦に絹生地デルタ上に沿って締められ、股間の割れ目に見事に、力強く食込んでいた。しかも、その黒革ベルトが食い込む割れ目部分の絹生地部分は、なんらかの液体で濡れていたのだった。 オフホワイトのショーツのの上から股間を締め付けるように食い込む黒革のベルト。恐らくそれはウエストベルトから垂れてきていたのであろう。エリルは黒革ベルトによって、陰部に戒めを施されていたのだ。それは女性の陰部に無理矢理に刺激を与え、強制的に性的な衝動を促す仕組みの淫具だった。あれを嵌められた女は、間違いなく発情してします。エリルは馬車の中で性的に欲情していたのだ。 ―― あの時、姫様は、ブルブルと震えて、小さく嗚咽するような声を漏らしていた。あれは、感じてたのか? ホセも軍隊という男世界の中で暮らす。日々の同僚の会話のなかから、嫌でも女について知っていくことになる。ホセは、エリルがあの股の黒革ベルトによって陰部を刺激されていたのは、疑いようがないと思うようになる。 ―― あれは、奴隷商人が使う股間ベルトによく似ている。あれを嵌められたら、正気なんて保つなんて絶対に無理だ ホセは、あの黒革ベルトがどういうものか、知っているらしい。 ホセは、苦悶に歪めたエリルの表情と股間に絞められた黒革ベルトとそのデルタの残影を思い浮かべると、マスターベンションを繰り返していった。 ホセは、女としてエリルを意識するようになると、どうしてもエリルを自分のものにしたくなった。エリルを誰にも手渡したくない。 「エリル、あんなもの着けて喜んでいたのか」 ホセは、ぽつりとつぶやく。 「あんなもの着けると、エリルは悦ぶんだ」 「エリルが、喜ぶことを、オレもしてやるんだ」 ホセの歪んだ愛情が大きくなっていく。 ―― オレが、エリルを幸せにしてやんなきゃいけないんだ 清楚で女らしい魅力に満ち溢れるエリルをどこまでも、嬲りたくなっている自分がホセの中にいる。エリルの苦悶に満ちた表情を想像すると、男性としていてもたってもいられなくなる。 ******************** エリルが医務室で眠る頃、ホセはひとりで夕方のサン・ラグーナの繁華街を歩いていた。特に行く当てはなかった。部屋にいると、エリルの悩ましい姿が目に浮かび、あのデルタの残像をオカズにマスターベンションをしてしまう自分に嫌気がさして街をふらついていたのだ。 サン・ラグーナは街の周りを城郭で囲まれた小さな要塞都市で、繁華街もそれほど大きなものではない。ただ、一通りの店がそろっているのが特徴ともいえた。街の中心部は様々な店が集まり賑わっている。パン屋、お菓子屋、果物屋、八百屋、鍛冶屋、金物屋などだ。横道に入り人気のあまりない路地を少し歩くと、見慣れない小さな宝石店が目に入った。 「宝石店か・・・・・」 「こんなところに、宝石店なんてあったかな?」 ホセの記憶には、この辺りに宝石店などはなかった。親衛隊の任務上、街の変化には目を光らせているので、恐らく最近できた店なのだろう。ホセは、店が気になり足を踏み入れる。 カラン、カラン、カラン ドアに付いた鐘が小さな店内の響き来客を告げる。店内には、商品棚やガラス平台の上にさまざまな宝飾品が並んでいる。どれも美しいく光輝き、女性が見れば喜ぶに違いない。 「うわぁー、こんな華やかな店ができたんだ」 ホセは呟きながら、店の奥に進む。 「いらっしゃいませ」 店の奥に腰かけていた若い女性店員が、ホセに笑顔で声をかける。 髪はセミロングのブロンド。面長で目はクリクリしていて端正な顔立ちをしている。 どんな装飾品を身に着けても似合いそうだ。 「ここに、お店ができたんだね」 ホセは物珍しそうに店内を眺め回す。 「ええ、最近、開店したんですよ」 「へー、そうなんだ。いろいろあるんだね」 「ええ、彼女様にプレゼントをお探しですか?」 女子店員のその問いかけに、ホセはエリルの顔を思い浮かべる。 「い、いや、まだ、その、か、彼女じゃないんだ」 言葉につまりながら、急に照れた表情をするホセ。女子店員は、その心中を察したのか、宝飾品の説明をはじめる。 「意中の特別な方がいらっしゃるのでしたら、こちらのリングはいかがでしょうか?」 店員はアレクサンドライト・リングを手に取って見せる。 「このアレクサンドライトの宝石は、『秘めた思い』を表すといわれています。そして石の作用は、『秘めた思いが伝わっていく』というものなのです」 女店員は片思いにあるホセの気持ちを慮ったのだろう、その純粋な気持ちが伝わるように、アレクサンドライトのリングをプレゼントすることを暗に勧めてきた。 「へ~、『秘めた思い』か~。でも、それよりも、オレはもっと彼女をモノにしたいというか、無理矢理でも奪いたいって感じなんだよ。絶対にムリな話なんだけどね」 ホセは冗談っぽく照れながら、女店員に話す。その表情には悲しさが浮かんでいた。 「こちらにお越しください」 女店員はホセを奥のスタッフルームに招き入れる。その奥には、人ひとりがやっと通れるほどの地下に続く階段があった。 「こちらです」 女店員は地下に下っていく。ホセも続く。地下2階まで降りていくと、1階の売場よりも大きなスペースに宝飾品棚が並び、カウンターにはひとりの老婆が座っているのが見えた。女店員はカウンターの老婆と話をすると、 「こちらが当店の宝飾鑑定師になります」 とホセに紹介した。魔法使いのような衣装に身を包んだ、彫りが深くしわしわの細身の老婆が低い声で語りかけてきた。 「うむ、お伺い申した。なにらや、禁断の恋のようなもんかのぅ」 老婆は女店員から聞いた話をホセに確認するかのように尋ねる。 一見(いちげん)で初対面の客なのに遠慮はない。 「えっ、まぁ、そーいやそうかも知れないけど・・・。まあ、あっちにもいろいろあって・・・・。オレも全然相手にされてないし・・・」 いきなりの話の振られ方に、急にしどろもどろになるホセ。 「主(あるじ)様は、その女がほしいのか?」 老婆は真剣な眼差しでホセを見つめる。ホセは黙ってうなずく。 「それならばじゃ、『秘めた思い』のアレクサンドライトではいささか力不足じゃな。それに加えてエメラルドの『成就と繁栄』、そして『服従』の魔石を組み込んだ魔道装飾具の「虜のペンダント」。それに加えて、『服従・隷属』『悦楽』『淫女』『性欲の虜』の魔石と『性奴隷の心の烙印』を組み込んだ「支配の首輪」が一番のお勧めじゃな」 「『虜のペンダント』?」 「『支配の首輪』?」 ホセは初めて耳にする名称に戸惑った。それもいかがわしい名称そのものだったからだ。 老婆は怪しい笑みを浮かべ、魔道装飾具の「虜のペンダント」と、「支配の首輪」をホセの目の前に差し出してきた。魔道装飾具、それは古代から伝わる魔術器具のひとつで、神話伝説では夢のような空想的な作用や効果が語り継がれている。その多くは、「女性を魅力的に見せる」、「肌がきれいに見える」、「恋仲の男女と縁が結ばれる」など、パワーアイテム的なものがほとんどである。 だが、実際の魔道装飾具、戦での戦闘力を増すための器具として発展してたのが本当のところだ。つまり、剣、鉾、縦、槍、盾などの用具を魔道石で強化し、魔力によって強力な武器にしてきたのである。 また、魔道装飾具は、古代の魔術師が創生したものが最もパワーが強く、近世につくられたものは、微弱な効果・作用しかないのがほとんどだった。それは、強力な魔力を持つ魔導師がほとんどいなくなったためである。従って、古代の魔道装飾具は、貴重なもので代々王家に秘宝として厳重に保管されている。そのため、世間一般に出回ることはないのが実情だった。その秘宝をめぐって国家間で戦争をも引き起こす、極めて危険なものでもあった。従って、街の小さな宝石店が扱えるような代物ではない。故に、目の前にある『虜のペンダント』と『支配の首輪』は贋作と断定できるのだ。 ―― これは偽物に違ない ホセはそう確信した 「へえ、魔道装飾具かあ、婆さん、これって本物なの?」 ホセは疑いの目で老婆を見つめる。 「ふははは、まあ、そう思うのも致し方あるまいな。」 老婆はホセの疑いにたじろぐ様子もなくそう答える。 「実際は本物ではない。贋作じゃ」 やはりこの魔道装飾具は本物ではなかった。 ―― やっぱりな 老婆には続きの言葉があった。 「贋作は贋作でもじゃ、実際にこの魔石に本物と同等の作用と効果があるのじゃ」 ―― そんなばかな ホセは心の中で呟く。仮に、古代の魔石と同じ効果・作用を発揮するならば、贋作をつくった魔道師は古代の魔術師と同等の強大な魔力を持つと言える。それは、世界の均衡を激変する力を持つに等しいことだった。現代ではそんな魔力を持つ魔術者がいるとは考えられない。 「信じられんじゃろうて。ならば、その証、見せてしんぜよう」 「シヴィ、こちらへ」 老婆は手招きして女店員を呼ぶと、 「さあ、顔をお上げ・・・」 老婆はシヴィの顔を上げ、首を晒すように告げる。 「この首輪を嵌めておやり」 とホセに首輪を渡す。ホセは首輪を手に取ると、彼女の顎を上げ、黒革の首輪を白い柔肌の首に巻き付けていく。首輪は本革で結構な重さがある。首輪をバックルでしっかり留めると、女の首にはがっちりと黒い首輪が嵌まった。女店員は、先ほどのまでのしっかりした目つきが緩みトロンとして、恍惚に酔いしれる表情を浮かべている。 「それでよしと、これだけでも、もう効果と作用があるんじゃよ」 女店員は肩で「ハァハァ」と息を荒げている。馬車の中で見たエリルが悶絶した時と同じ様子だ。 「『服従・隷属』『悦楽』『淫女』『性欲の虜』の魔石がこの首輪に着けてあるでな、こうなるんじゃよ」 老婆は当然とでもいうように語る。 ―― えっ、マジ? でもこれ演技じゃないのか? ホセは、目の前の出来事はまだ演技だと疑っている。世の中にそんな都合のいいものが存在するはずがないからだ。 「今、この女はのぅ、肉体の悦楽の波に呑まれて淫女になりつつあるんじゃ。この首輪には服従と隷属の作用もあるんじゃ、それ、なんでもいいから命じみればいいじゃろ」 老婆の言葉は信じられなかったが、真面目そうな女店員はその身体をブルブルと小刻みに震わせ、そこに立っていた。まるで、エリルの仕草と同じだった。 「そこにしゃがんで大股を開き、奴隷の服従姿勢をとれ」 ホセは、普通の女が絶対にしない、死ぬほど恥ずかしい命令を下した。女店員は、かぶりを振りイヤイヤをするが、全身はわななきながらも徐々にしゃがみこみ、頭の後ろで手を組んで両足を左右180°に大開脚した。大股開きの姿勢、つまり奴隷服従の姿勢をとった。 女の秘部のアソコの部分は大きく開かれ、純白のショーツが卑猥に見えるほどに晒されている。ショーツの股布の部分は濡れて染みがうっすらと滲んでいる。しかし、女の瞳からは涙が滴っている。自分の意志に反し、無理矢理に惨めな姿を晒されているのがひしひしと伝わってくる。 「お、おゆるし、く、ださい」 女店員は恥ずかしそうに呟く。目からは涙があふれ、滴り落ちる。 「え、演技ってこともあるからな」 ホセは目の前の女店員の姿に驚きつつ、冷静さを装った。これが本物だとしても、軍人のホセには決して手に届くものではないのはわかったいた。 「懐(ふところ)具合を気にしておるのか? それならば気にせんでもええ。ほんの2万ドーンほどでいかがじゃ?」 老婆が示した価格は2万ドーン。帝国親衛隊訓練生のホセは月の支給金は25万ドーンなので、買えないことはない。ただ、贋物でも安すぎるきらいはある。 ―― 贋物でもこんな安価じゃないはずだ ホセはますます疑いを深める。 「ホッホッホッ、疑い深いのぅ」 「では、この首輪の秘密を明かしてやろうかのぅ」 老婆によれば、この首輪の魔石は、「着けさせた」人間の魂をエネルギーの源にして効果と作用を発揮するという。もっと正確に言うならば、魂の中の「純粋」「純情」「誠実」とともに寿命をエネルギーとして魔石は効果を発揮していくのだ。首輪を付けられた側(首輪を嵌める側)の人間は、魂のエネルギーを失うことはないそうだ。また、魔石の真の作用と効果を100%顕すためには、淫呪(いんじゅ)を唱えた後、本人が心から望んで隷属・服従の宣誓することが必要だという。 ―― こっ、こんなの悪魔の道具じゃんか! ホセは、心の中で呟いた。魔力を使って意中の女を自由自在に弄(もてあそ)ぶことができるアイテム。それが魔道装飾具なのだ。 「い、いや、いらないよ」 と喉まで出かかったのだが、なぜかそれを手に入れたい気持ちが沸々と心にわいてきた。 ―― これがあればエリルを手に入れられる。エリルにこの首輪を嵌めて自由に弄ぶことができるんだ。 エリルの白くきれいな肌の首に、この黒革の首輪を嵌めてリードをつなぎ引き連れて歩く。その姿を想像するだけでゾクゾクしてくる。ホセに自分の衝動を抑えることはムリだった。

【第11話】残虐のサド大君―マゾ奴隷に徹底調教される被虐のフィアンセ  11.サン・ラグーナ裏路地の宝石店―― 服従と悦楽の烙印

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