26.出発準備 大浴場で湯浴みしたエリル達は、屋敷2階にある貴賓室に戻り、食事の準備を整えていた。貴賓室は元の屋敷の主の貴族が来客者をもてなすためにつくられた部屋なのだろう。壁と床は気品のあるワインレッドで統一され、ソファーやテーブルはベージュで彩られ、落ち着いた雰囲気が漂う。壁に面しておかれる白の台座の上には甲冑や剣、槍などが飾られていた。この館の主が由緒ある騎士由来の貴族であったことが窺がい知れた。荒廃した屋敷の外観とは異なり、内部はベラ達によってかなり行き届いた手入れがされていた。 革張りのベージュのソファーに、ユリエ、ベルテ、テルへ、シャンロン、ユリエの5人が一堂に会し座っている。 ユリエはいつもの戦闘スーツである黒革のボディースーツ姿、シャンロンはユリエから貸してもらった白革のローライズスタイルのショーツパンツ、上半身は白い革製のハイネックのロングスリーブカットソー、膝下までの白革のロングブーツの姿、エリルは自身の黒のボディコンスタイルの神官服を見つけ、それを身に着けていた。 テーブルには、パンとチーズ、紅茶、それに若干のハム類が並べられている。食事を準備したベルテが、 「このようなモノしかありませんで・・・。質素ですが、どうぞお召し上がりください。」 と、いつもの紳士的な態度でエリル達に食事を勧める。 「でも、これって、あいつらの食材なんじゃないの?」 ユリエが笑いながら、ベルテに聞くと、 「腹が減ってはなんとかと言います故、背に腹は代えられませんですぞ。」 といい、ムシャムシャと食べはじめた。 他のみんなもパンやチーズをほおばりはじめる。 「ところでさぁ。エリル。謎の黒ずくめの軍団の話をしたじゃない?そいつらが言っていたんだけど、エリルのことを『姫様』って言ってたの。『姫様は二階に捕らわれてる』って・・・。エリルはある貴族からの求婚を断りに来たんだよね。」 ユリエはパンをむしりながら、ユリエ達に助太刀した謎の黒服軍団の話をエリルに聞かせる。エリルはここまで、ユリエ達を巻き込んでしまった以上、自分の素性を隠し通すことはこれ以上無理だと感じた。そしてこれ以上、自分にかかわらないように促すことにする。 「ええ、実は・・・・」 エリルは手にしていたパンを皿において、自分がアクアマリン王国の第三王女であること、また、ファドゥーツⅠ世の求婚を断りにオプシディア帝国に着たことを皆に話して聞かせる。 「えーっ、ファドゥーツⅠ世からの求婚を断りにきた!!!」 全員が声をそろえて同じことを合唱する。相手はあの世界最強国家であるオプシディア帝国の君主、別名「残虐の大君」である。そもそも皇帝からの求婚を断るなど、皇帝の顔に泥を塗るに等しい仕打ちだ。ただで済むわけがない。 ユリエは帝都・カールスクルーナからルサカに向かう途中の軍の馬車や騎兵の数がやたら多いことに納得がいった。つまり、皇帝はエリルの行動を厳密に監視していたのだ。おそらく、助太刀にあらわれた黒服軍団は皇帝の隠密部隊だったのだろう。 「これはかなり手ごわいね」 ユリエがボソッと呟く。 「相手はあの『残虐の皇帝』か・・・・」 テルへの声も強大な相手にどう対処すべきか困惑した表情を浮かべる。 「エリルはあのカルス城から逃げてきたの?」 シャンロンが皇帝の手からどうやって逃れてきたのかを尋ねる。 エリルは皇帝との謁見の儀の話を皆に話して聞かせた。 「ひでえ、ひでえよ、それ! 『妃か性奴隷か』なんてありえねーぜ。」 テルへはアクアマリン王国の王女に対する皇帝の仕打ちに心の底から怒りが込み上げてきた。 「それで、皇帝はエリルに帰国の邪魔はしないと言ったの?」 ユリエへの問いにエリルは黙って頷く。 ユリエは皇帝の真意を図りかねた。自分が求婚した異国の王女を無防備にも放り出し、命の危険に晒す皇帝は一体何を考えているのか。実際にエリルは人攫いに捕らわれ、危うく人身売買の性奴隷に貶められる寸前だったのだ。一歩間違えば、あの変質サドのベラに殺されていたかもしれない。 「わかった。エリル。私達がエリルを無事にアクアマリンに送り届けるよ。」 ユリエはエリルの顔をじっと見つめ、クールな眼差しでエリルを守る決意を示す。 ベルテ、テルへ、シャンロンも頷く。 「えっ、シャンロンさんも・・・」 エリルはユリエの一団にシャンロンが加わったことに少し驚く。 「ああ、シャンロンはこれから私達と行動を共にするんだ。」 ユリエが言うには、シャンロンは尿道に挿入された特殊カテーテルを摘出する必要がある。そのため、帝都・カールスクルーナの技工師の下で摘出術を受けなければならなく、ユリエ達が連れていくことにしたのだ。また、シャンロンは元は貴族の出身でありながら、エリルと同じく求婚を断り、性奴隷に堕とされるのを恐れて家出していた。武術を学んだ経験もあることから、ユリエはシャンロンは自分達の仲間に入れることを認めたのだ。エリルやシャンロンに対するユリエ達の温かい気持ちにエリルは心からありがたい気持ちでいっぱいになり、涙があふれてきた。 しかし、問題は相手があの恐ろしい「残虐の大君」なのだ。ユリエ達にどんな惨い仕打ちが襲い掛かるか想像するだけでも胸が締め付けられる。 「ユリエさん達の気持ちはありがたいの。でも、あの皇帝が相手では・・・。」 エリルはやはりユリエ達の好意を受け入れるわけにはいかなかった。 「大丈夫だよ。必ずエリルをアクアマリン王国まで送り届けるさ。」 ユリエはエリルが自分達を皇帝とのトラブルに巻き込まないようにしている気持ちを察し、有無を言わせない口調でエリルの護衛を約束した。 一行は朝食を終えると、ユリエ達が乗ってきた幌馬車でカンバラヤに向けて出発することにする。 ********************* その頃、アクアマリン王国の迎賓館では一人の男が沈痛な思いで打ちしがれていた。迎賓館は王国のパール宮殿から少し離れ、眼下に美しいターコイズ湾を眺める高台にそびえ建つ。その1階のテラスに立ち、寂しそうに海に沈みつつある夕陽を眺めるビブロス連合大公国王子・ピレセルは、この国のルクソール王との謁見時の会話を思い浮かべ、ため息をついていた。 パール宮殿謁見の間の玉座に座すルクソール王は、膝をつき頭を下げ礼を尽くすピレセル王子訪問を祝福する。 「遠路はるばるようこそおいでくださった。ビブロス連合大公国王子・ピレセル皇太子殿下、国を挙げて殿下を歓迎いたしますぞ。」 ピクセルはルクソール王のお言葉に返礼を口上する。 「こちらこそ、国王陛下より歓迎の言葉をいただき、ありがたき幸せ。今後とも両国の友好を一層深めて参りたいと存じます。」 「うむ。ところでお父上殿はお元気かのお?」 形式的な社交儀礼を終えると、ルクソールは親しみを込めてピレセルに父の近況を尋ねる。 「はい、全く健康ばかりが、取り柄でございまして・・・。本日はわが父より国王陛下にワインの贈り物をお持ちいたしました。どうぞお楽しみください。」 ピレセルは船の中で何回も練習してきた挨拶を口にする。さすがに何十回も練習しただけあって、国王とのやりとりは無難に終えられたのだが・・・・。 ―― ふ~。なんとか、無難に会話を終えられたか。余としたことが毎回この謁見の儀だけは緊張で胸が張り裂けそうになる。なにせ、求婚相手の父親だから、それも当然なのだが。ボロは出さないように気をつけねばなるまい。それよりもエリル殿はどこにおられるのだ。 ピレセルは、挨拶が一段落すると、 「ところで、国王陛下、エリル殿下はお元気にあらせましょうか?」 と、目当てのエリルについて国王に尋ねた。普段は、国王との謁見が終了すると、エリルをはじめとした王女たちと茶会を開き、王族間の親交を深めていたのだ。遠路はるばると、海を越えてやってきたピクセルは、このエリル達との親善の催しを心待ちにしていた。 ピレセルは国王からパール宮殿庭園にて開催される茶会に誘われるものと思っていた。しかし、ルクソール王からは驚くべき事実が告げられる。 「実はのぉ、殿下。殿下にお話をしておきたいことがあってのぉ・・・」 ルクソール王は渋い顔をしながらピレセルに、オプシディア帝国の大艦隊が訪問してきたこと。そして、エリルに皇帝・ファドゥーツⅠ世が求婚してきたこと。それを断りに、エリルが単身でオプシディア帝国に向かったことを告げた。 その話を国王から直接聞いたピレセルはあまりのショックで、王の面前で言葉を失ったほどだった。ピレセルも個人的にだが、国王や王妃、エリルにそれとなく求婚を示唆してきたつもりだった。そのため、アクアマリン王国との王族との親善には尽くしてきた自負がある。 それが、オプシディア帝国は大艦隊をこの小国に派遣し、軍事的圧力ともとれる行動を伴ってエリルに婚姻を求めてきたのだ。これほど最強国家の国力を露骨にした慇懃無礼な振る舞いはないだろう。馬鹿王子のピレセルとは言え、帝国のやり方に著しい怒りを感じずにはいられなかった。 海に沈む夕陽を見つめるピレセル。その後ろ姿は寂しさが漂う。 ―― だがなぁ・・・。相手があの最強国家のオプシディア帝国じゃな・・・・。 オプシディア帝国は、世界最強の国家として君臨する覇権国家だ。この世界でオプシディア帝国に対抗できるのは、セレウキア共和国のみだ。だが、そのセレウキア共和国は共和制を敷いた貴族が運営する貴族制民主主義国家でその陣営のリーダーでもある。政治制度が異なるプシディア帝国と激しく対立し、幾度か激しい戦いを繰り広げている。 ピレセルの祖国・ビブロス連合大公国はもちろん封建制度の国で、オプシディア帝国の同盟国である。 いくら強引にエリルを引き連れていったからと言っても、オプシディア帝国は封建主義国家の盟主。そして同盟国だ。大国との政治力学上、ビブロス連合大公国の王子が関与できる生易しい問題ではなかった。 「よお! 随分哀愁が漂うな。しけた面だな。」 テラスの先にある庭園からひとりの少年がピレセルに声をかける。眼を向けると、王国近衛兵の軍服を着たひとりの少年が立ち、こちらを見つめている。 ―― あの少年は・・・・。 甘栗色のストレートボブの髪型の美少年。ピレセルはこの少年に見覚えがある。というよりも、顔なじみといった方がよい。 「カール殿か?」 少年はエリルの許嫁のカールだった。ピレセルとカールは歓迎の茶会の時に、何度かエリルや王族の護衛を務めるカールと言葉を交わし、その時にエリルの許嫁であるのを聞いていた。カールは相手にもしていないが、ピレセルは勝手に恋敵と思い込んでいた。 ―― そうか。コヤツは許嫁を奪われたのか・・・・。自分の最愛の女を奪われた意味では同じ境遇だな・・・。 ピレセルは自分よりももっと辛苦に浸るカールの気持ちを慮る。 「エリル殿は行かれてしまったらしいな・・・・。」 どういう言葉をかければいいのかわからず。素直にエリルが王国を出た話をする。 「ああ・・・」 カールはただそれだけを口にする。愛する女を奪われたカールにとってそれが精一杯の言葉なのだ。 ―― そう言えば、今日の茶会ではカール殿の姿は見えなかったなぁ・・・。王国騎兵隊兵長なのだから、何か用事があっての姿を見せないと思っていたが、自分の許嫁を目の前で攫われたのだ。意気消沈して兵務も疎かになろう。 白亜の迎賓館の前に広がる庭園にはオレンジ色の夕陽が差し、一面が黄金色に染まっていた。ピレセルは庭園に繋がるテラスの階段をゆっくりと降り、カールの下に歩いていく。 ピレセルがカールの目の前に来ると、沈痛な趣きで口を開く。 「ピレセル王子、実は頼み事があるんだ。」 カールの表情は真剣そのものだった。ピレセルはその言葉🅂を聞いて、 ―― まさか、この俺に「エリル殿を取り返しに行け!」と言うのではなかろうな・・・。 と邪推する。まさか、そのような頼みを受けれるはずもなく、ピレセルは急にオドオドしだす。 「ん? な、なにか、余に、し、してもらいたいことが・・あるのか?」 普段は我儘三昧で、王子の特権を振りかざし、したい放題で勝手気ままな王子もかなり弱腰になる。カールはピレセルの目を見つめ、 「オレをオプシディア帝国に連れていって欲しんだ。一生のお願いだ。頼む!」 と言って深々と頭を下げる。有無話言わさず許嫁を略奪されたカールは単身でオプシディア帝国に乗り込み、エリルを助け出そうと考えていたのだ。 ―― オプシディア帝国に行くだと。それも単身でか! そんな無茶なことをしたって、エリル殿をどのように助けるというのだ。オレだって愛するエリル殿を助けたいのは山々だ。だが、相手が悪すぎる。相手はあの「残虐の皇帝」なのだ。そんな計略がバレれば、タダでは済まぬ。我がビブロスも無事では済むまい・・・。 ピレセルは単身でオプシディア帝国に乗り込もうとするカールを正気の沙汰と思えず、なんとか断ろうとする。 「カ、カール殿、貴殿のお気持ちは、い、痛いほどわ、わかる。余も、同じ思いだが、いささか、相手が悪すぎる。よく考えてみるがよかろう。帝国に逆らえば、我が国も、そなんたのアクアマリン王国もどんな酷い仕打ちを受けるのかを・・・」 ピレセルはカールにオプシディア帝国に行くのを諦めさせようと説得しようと、さらに言葉を続ける。 「そ、それにだな。ルクソール国王陛下のお話では、エリル殿は求婚を断りに大陸に向かったと言うではないか。まず、エリル殿を信頼して待つのが・・・・」 カールはピレセルの説得の言葉を遮り、 「オマエ、本当にあの皇帝が約束を守るとでも思ってるのか? エリルが無事で済むと思っているのか?」 ピレセルはそのカールの問いに言葉を失う。当然、ピレセル自身もあの残虐の皇帝が約束を守るはずがないのを理解していた。ましてや、エリルが無事に帰ってくるなどあり得ないとも思い、エリルを諦める心境に陥っていたのだ。夕陽を見つめながら、恋した女性を失い。諦めるようとした矢先にカールから声をかけられたのだ。 ―― コヤツは絶対に敵わない相手に戦いを挑もうとしているのか?自分が愛した女のために何もかも失う覚悟なのか? ピレセルは愛を貫くカールの純粋な気持ちがうらやましかった。自分は王子の位や生活を捨ててまでエリルを助けるなど決して真似などできなかったからだ。 「ああ、オレにはもうそれしかないんだ。帝国に行ってエリルを必ず救い出す。」 ピレセルはカールのその無垢な気持ちに撃たれ、なんとかカールに力になれるように思案する。 「ならば、余の国・ビブロスに着いてくるがよかろう。そこから帝国に入るに策がある。」 ピレセルは自国から帝国から向かう案をカールに示す。ピレセルにとってエリルを奪還を目論むカールを入国させる行為は、皇帝に抗うのを意味する。それは最悪の場合、ビブロスという国の滅亡を招くかもしれないのだ。 ―― よくも、余にこんな大それたことが思いついたものだ。 ピレセルはカールとエリルの為に自分が力を貸していることに驚く。 ****************************** パール宮殿の背後に位置する南国の緑豊かなココヌイ山。その中腹に据えられた南神殿修練所にカールは白馬にまたがり駆けつける。 パカパカパカ 馬の蹄の音が辺りに響き渡る。 修練所の前には、元最高神官だったウラシェが神官の黄金の杖を持ち静かに立っている。 「婆(ばば)さまー」 カールは叫びながら、白髪の神官・ウラシェの前で、馬を止め降りる。 「婆(さま)、お久しぶりです」 カールは神妙な趣きでウラシェの前に立つ。 ウラシェもカールがわざわざ訪ねてきたその理由を深く理解していたのだろう。 「おお、カール。オプシディアに行くのか?」 と、尋ねてきた。 「ああ、オプシディアに行ってエリルを救い出してくる。国王陛下にもその旨を伝えてきた。」 カールは固く心に決心した気持ちをウラシェに語る。 「そう、容易なことではないぞ。」 ウラシェはカールが行く路が極めて困難であるのを十分知っていた。あの「残虐の皇帝」の意に逆らうのだから、命を失う可能性が高いのだ。 「ああ、オレが行かなきゃ、エリルは救えない。」 カールの心に迷いはなかった。例え、命を失おうともエリルを救い出すつもりだ。 ウラシェがカールの瞳を見つめると、そこには確固たる決意しをした男の瞳があった。 もう二度とアクアマリン王国の土を踏むことはないかもしれない。だが、カールからは一切の迷いは感じられない。 ウラシェは南神殿修練所の中にカールを招き入れる。礼拝堂の中に本尊として祀られる天の神・アーシャル像の前で、黄金に輝く奇跡の剣を授ける。 「汝、カール・スハラに天の神・アーシャルにより認められし剣、奇跡の剣とともに、アクアマリン王国の最高剣士となる聖剣士及び聖騎士の位を授け給う。この剣と汝の揺るぎない御心によりて、人々とエリルを悉く救うべし。」 カールは天の神・アーシャル像の前でウラシェに跪き、「奇跡の剣」を受け取る。 「さあ、行くがよい。天地乱れ行く大陸へ。そして、聖剣士としてエリルと人々を救うのだ。」 「ありがとう。婆(ばば)様。オレは絶対にエリルを救って見せる」 そう言い残すと、白馬にまたがり港へと向かって行った。 「死ぬでないぞ、カール。」 ウラシェはひとり呟く。 その夜、ピレセルが率いるビブロス艦隊が静かに錨を上げ、カールと共にアクアマリン王国を去っていった。ウラシェは風の奇跡の力を司り、帆船の速力が上がるように奇跡の風を送る。帆船は予定の半分の日数でビブロスに着くだろう。 **************** エリル達はビブロス公船の定期便が発着するカンバヤラの街に向けて出発する準備を整える。ベラがアジトとして使っていたこの屋敷は、外見は廃墟にカモフラージュし、内部は驚くほど手入れがしてあった。恐らく、拠点化する最中だったのだろう。 エリルは先ほど自分が寝ていた寝室で旅に向けて着替える。ユリエに用意してもらったスポーツタイプの白革のブラを身に着けてみる。 「ユリエさんが身に着けてるはずだから、少しは緩いと思ったけど、かなりタイトだわ。」 戦闘用のブラジャーとしてつくられているためか、しっかりと乳房をホールドするのだが。乳房を締め付けるような感じがする。「回復の湯」に浸かったとは言え、まだ、膣内の疼きはいくばくか残っている。そのため、このブラジャーの締め付けでさえ、肉体に快楽を与えていく。 「ううう。」 ―― この締め付けがジンジンとカラダに響いてくるわ。馬車の振動に耐えられるかしら・・・。 エリルは以前にオイリーによって快楽責めの地獄を味あわされた記憶が蘇る。 すると、ジンと膣が疼き、僅かに股間が湿ってくる。 ―― いけない。こんなはしたないことを思っちゃだめだ。 エリルは快楽を求めるカラダの淫らな求めに抵抗するかのように、思いを切り替える。 ―― 心を快楽に支配されたらダメよ。 エリルは強く自分に言い聞かせる。 ユリエはエリルに下着やスパッツを用意してくれていた。ユリエ達駆けつけるために使った幌馬車に彼等の着替えや食事などが満載されていたのだ。なんでも、用心棒をするために、このオプシディア帝国内にいくつかの拠点があるらしい。 なぜ、国外者のユリエ達が帝国内に拠点を構えられるのか。それと、テルへやベルテが身に着けているネイビーブルーの服装は明らかに軍の高級将校の軍服に似ている。こんな服装をしていたら、帝国軍に怪しまれるはずだ。なぜ、ボディーガードがそんな軍服まがいの服装をしているのか謎だった。 ユリエが準備してくれた下着類は、白革のスパッツ。スポーツタイプの白革のブラ、そして白革のフルバックショーツだ。どれもカラダにピッタリとフィットするスタイルで、身に着けてみると、カラダのラインの細部がクッキリと浮き出て恥ずかしい。 ―― さすが、ユリエさん。こんなにカラダのラインを晒すなんて・・・。でも、あのグラマラスなボディーじゃ、このスタイルがよく似合うのかも。 エリルはブラを身に着けた後、白革のフルバックショーツに足を通していく。どうしても太ももの付近でキツキツになり、それ以上に上がらない。 「うくくく・・・・」 力を込めてショーツを引っ張り上げていく。ショーツを股間まで持ち上げ、まるでヒップを押し込んでいくようにショーツを肉体にフィットさせる。やはり、クリトリスにショーツが押し当り、ジンジンと刺激してくる。 ―― こ、この感覚、ヤバくない? エリルは革のショーツに四六時中、デリケートなクリトリスが刺激されるのを危惧する。 ―― タイトミニの神官服の下にこれを付けてれば、布のショーツよりは保護されるけど・・・。 エリルは布のショーツよりも革のショーツの方が、よりデリケート部分を保護できるのだと納得する。 「最後は、この白革製のスパッツだわ。」 エリルが手にする白革製のスパッツは先ほど履いたスパッツよりも、より細いのが見てわかる。 ―― これって履くの大変よね・・・・。 ユリエが言うには、ボディコン姿の神官服で素肌の太ももを晒すのは、日差しや行動で擦ったりと、肌を痛めるそうだ。そのため、革製のスパッツを履くことで、肌へのダメージを軽減できるという。 「エリル、素肌さらすのはよくないよ。これを着なよ。」 そう言って、白革のスパッツを渡してくれたのだ。 エリルがそのスパッツを手にして繁々とみると、薄いなめし皮でとても肌触りがよい。かなり上級の革を使っているのがわかる。尻の部分を見ると、割れ目に沿って縫い目が走っている。 「やっぱり・・・・」 エリルはこの縫い目がヒップや秘部の割れ目に食い込み、いかがわしい刺激を与えるのを知っていた。これもフィット感を増すための工夫なのだが、肉体に不要な刺激を与えてくるのは悩ましかった。 ベッドに腰かけ、つま先をスパッツに入れていく。足首の先端は踵紐(かかとひも)があり、踵に紐をかけるとスパッツが足首から上に上がるのを防いでくれる。ずり上げに悩むことがない優れモノだ。 エリルは足首を膝や脹脛の部分まで進めると、急に先端が細くなり着るのが難しくなる。 ―― また、ピチピチだわ。さっきよりもさらにキツイ・・・ エリルは太ももから腰にスパッツを引き上げるのに一苦労する。 ―― これじゃ、簡単に用も足せないわ・・・。でも、ユリエさんはこれを着ているのよね。どんだけカラダが締め付けられているのかしら? エリルは必死にスッパツに太ももを入れていく。 「うんしょ・・・」 太ももをスパッツに詰め込むように引き上げる。スパッツを履いた太ももはピチピチでエリルの脚線美が一際冴える。最後にヒップをスパッツに押し込んでいく。 「くううう・・・入らない・・・」 そう言いながらも必死に引き上げていくが、もはや全身が汗まみれになっていた。 ――このスッパツを着るだけで、こんなに体力を使うなんて・・・・。 エリルはヘトヘトになるが、スパッツを着た下半身は光沢感のある白革で美しくエリルの肉体美を際立たせている。ヒップに張り付くスパッツは割れ目に沿って沈み込み。まるで裸のようにエリルの下半身の細部をクッキリとさせていた。 ――これって、下半身のディテールがあからさますぎない? エリルは戸惑いながらも黒のボディコンスタイルの神官服を身に着けていく。腰に奇跡の力の剣を差し、膝上まである黒のロングブーツを履くと。太ももの白がエロチックに見えた。甘栗色の腰まであるストレートロングが美しく輝く。 ―― まあ、神官服で下半身は隠すから大丈夫ね。 着替を終えると、エリルはみんなが集まる貴賓室に戻った。そこには、同じく着替えを済ませたシャンロンが出発の支度をしている。エリルはシャンロンのその魅惑的な容姿に眼を奪われる。 ブロンドの髪はエリルよりも長くヒップ下まであった。 ――あら、確かシャンロンさんの髪の長さは私と同じ腰くらいの長さだったはず・・・ エリルはシャンロンの髪の長さがなぜ伸びたののかと不思議でたまらなかった。 「シャンロンさん、確か髪の長さは・・、腰までだったはず・・・」 エリルは驚きのあまり口に出してしまう。それもそのはずで。さっきまで腰までの長さだった髪が、今はヒップ下まで伸びているのだから。 「ああ、これねー。さっき『回復の湯』に入って、くせ毛がストレートに伸びたらしいんだ。」 シャンロンの話ではもともとクセ毛っぽいストレートだったものが、純粋なストレートになりその分髪の長さが伸びたのだという。 エリルはそんなこともあるのかと不思議に思ったが、それはそれとして納得することにする。 しかし、シャンロンの姿は女の魅力を存分に発揮していた。上半身は白革のタンクトップ。やはりエリルと同じく身体にぴっちりとフィットし、シャンロンの鎖骨から胸元、乳房、腰の括れまで女らしい肉体を惜しげなく披露している。下半身は上半身と色が同じの白革のローライズのホットパンツ。あまりのフィット感にヒップラインや股間のディテールがクッキリと浮かびあがっていた。 シャンロンはベラによって尿道に排尿を管理するカテーテルが埋め込まれていたため、スパッツを履くとカテーテルを圧迫してしまう。そのためニーハイスタイルの白革のストッキングを履き、ローライズ・ホットパンツの前後の裾から白革のベルトで白革のストッキングがズリ落ちないように釣り上げていた。 そして、膝上まである白革のロングブーツを履き、胸元下までの丈のGジャン風の白革のジャケットを身に着けようとしていた。ブロンドのヘアーが輝き白に統一した出で立ちはまるで妖精を彷彿させる。 シャンロンはエリルの姿を見ると、 「うわー、スゲーエッチ!カラダのライン丸出しじゃん!」 と、口にするが、それはシャンロンも同じだった。 「それじゃ、襲われるのも無理ないよ。」 シャンロンがエリルに笑いながら言う。 そう言うシャンロンも、そのホットパンツとタンクトップの姿はかなり、女の魅力を存分に漂わせている。 「おっ、準備できてるか?」 ユリエが部屋に入ってくると、いつもの黒革のボディースーツ姿に一堂見惚れる。 「うわ~、ユリエ姉スゲー!」 シャンロンが呟く。 「どうかしたか?」 ユリエは気にする様子もなく。シャンロンに聞き返す。 「ユリエ姉ぇ~、すごくグラマラスでうらやましいなぁ!」 シャンロンが憧憬に似た言葉を口にすると、 「この肉体で戦闘するのはかなりてこずってな。特に胸の膨らみは邪魔だ。」 ユリエには女の魅力などどうでもよく、戦闘しか頭にないようだ。 一堂の準備が整うと幌馬車に乗り込み、カンバラヤの街に向かう。