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今回の講座はYoutubeで公開している「脱・初心者!肌の塗り方」の動画を見た上で読んでいただくとより深く理解できると思います。ぜひまだ視聴していない方はそちらからご覧ください。講座の途中には「動画の何分のように」といった引用があるので、視聴済みの方も随時ご確認ください。
今回の講座では、動画で言っていたポイントをさらに深掘りしながら、どのように肌の質感を表現するのかについて解説していきます。肌を塗る時には光の性質、そして人体、特に骨格・筋肉・脂肪をよく知る必要があるので、どこにどういった光や影を描写するべきなのかについて解説します。
人体の構造を知った上で塗りに落とし込むという工程は、絵柄やペイントソフトに左右されないため、ぜひみなさんのイラストに役立ててほしいと思います。
※人体全身の比率やデフォルメの知識が必要な全身のラフの描き方については次回の講座で作成予定です!
【注意事項】
全ての講座に言える注意事項です。講座には私の個人的な観点も含まれるため、必ずしも正しいとは言えません。定説・理論が存在しない場合もあり、私の個人的な価値観が反映されている部分もある為、ある程度の誤差や例外、間違った部分があると思います。そのことを考慮していただき、寛大な心でご覧下さい。ただ、私の講座は完璧ではないかもしれませんが、経験上のものであることは確かなので、参考になると思った部分は吸収し、皆様の今後のイラスト活動に活かしていただければと思います。
【イラスト作成に使用したもの】
今回解説に使用するイラストは、前回同様オリジナルキャラのMEIです。
使用ソフトはProcreate、使用ペンはソフトブラシ1.1 のソフト円ブラシと、初期から入っているペイントの中の円ブラシ、エアーブラシの中のソフトブラシの3種類のみです。ツールはぼかしツールを使用しています。キャンバスサイズはA4の2894×4093px、解像度は350dpiです。
使用したカラーパレットは下の写真です。(Procreateにはカラーヒストリー機能がない為、なるべく意識して色を記録しています)
目次;
1.全体の工程
2.光と影の基本原理を基にライティングする
3.肌塗りのポイント①顔
4.肌塗りのポイント②上半身;肩・胸・お腹・腕(上腕と前腕)
5.肌塗りのポイント③下半身;太もも・足
6.まとめ
キャラクターイラストを描くにあたって、毎回多少の順番変動はありますが、大きな全体の流れは変わりません。私の場合はラフ→線画→ベタ塗り→ざっくり陰影をつける→1影→2影、3影(多いときはさらに追加あり)→ハイライト→線画の色トレス→色味調整(加工)という工程で進めています。
今回は肌の塗りに焦点を当てているので上記の工程からラフと線画を除いて解説します。
ここからは画像をもとに詳しく説明していきます。
まず初めに、レイヤーは可能な限り分けることが大切です。1時間ドローイングや2時間ドローイングのように、限られた時間で描かなければいけない時を除き、レイヤーは分ければ分けるほど細かい調整がしやすくなります。また、レイヤーを増やすと塗りたいレイヤーを探すのに時間がかかってしまうことがあるので、パーツ(ex; 目、髪、肌など)ごとにファイルでまとめるのがおすすめです。さらに、レイヤー自体にも名前を付けておくと分かりやすいのでぜひやってみてください。
では上の画像についての詳細です。今回の流れは、赤い矢印でも書いているように「ベース塗り→塗り込み→鼻・輪郭ハイライト→オーバーレイ(加工)→ハードライト(加工)→ほっぺの斜線」という順番で進めていきました。レイヤーは増やしたその都度クリッピングをして、ベース塗りからはみ出さないようにしています。
以下はレイヤーごとの説明です。
レイヤー10(ベース塗り);動画の1分2秒〜2分42秒の工程です。このレイヤーをベースとして上にクリッピングをして塗り進めていくので、塗り残しがないようにすることが一番重要です。エアーブラシでざっくりと陰影をつける時には、光源が一番あたる箇所を除いた大部分を塗ります。動画を見ていただいたら分かるように、ベースを塗り残している箇所は全体の3割強くらいです。
塗り込み;ガッツリと塗り込むレイヤーです。今回の動画のほとんどの時間はこの部分に使われています。動画の2分43秒〜5分29秒まで1影を全体に塗っています。1影を一旦体全身に塗ることで、全体のバランスや奥行きが分かりやすくなり、そこから2、3影をパーツ(足、お腹、腕、顔など)ごとに塗る際にの目安になります。
鼻・輪郭ハイライト;動画の13分50秒〜15分01秒の工程です。レイヤーの名前通り、鼻の上のハイライト、顔の輪郭に沿ったハイライトを描いています。ハイライトという名前ですが、レイヤーモードは普通レイヤーです。今回の肌の色は塗りこんでもそもそも色味が薄いので、加算発光レイヤーでハイライトを描いてしまうと色が白飛びしてしまいます。なので普通レイヤーで描き込んでいます。
オーバーレイ;動画の概要欄・コメント欄に記載されているタイムスタンプの「色味の調整1」「色味の調整2」の工程です。暗い赤色をメインに使用し、肌に血色感を与えています。
ハードライト;動画の概要欄・コメント欄に記載されているタイムスタンプの「色味の調整3」の工程です。オーバーレイレイヤーもハードライトレイヤーも(今回は使いませんでしたがスクリーンなども同様)、加工レイヤーではエアーブラシしか使いません。エアーブラシで広い範囲を筆圧で微妙にグラデーションを作りながらより自然な色味になるように調整していきます。私の場合は加工で鮮やかさを足すことが多いです。今回もオーバーレイでは赤の彩度を、ハードライトでは顔全体の彩度を上げました。
ほっぺ斜線;動画の概要欄・コメント欄に記載されているタイムスタンプの「ほっぺの斜線」の工程です。この工程はあってもなくてもどちらでも構いません。特にあまりほっぺの赤みを足したくない方はない方がいいと思います。「塗り込み」のレイヤーと別レイヤーにしている理由は、最終的に斜線を消したい時や、斜線の色味のみを変更したい時に塗り込みレイヤーと統合していると調整ができなくなってしまうからです。私は何回かこの失敗をしているので分けるのをおすすめします。
具体的なパーツごとの塗りの説明に入る前に、肌を塗る際に絶対に知っておくべき光と影の基本知識・用語である「落ち影」「反射光」「環境遮蔽」について解説していきます。(肌以外を塗る時にも役立つ知識です!)
【1.落ち影】
動画ではいきなり落ち影という言葉が出てきており、説明でも「髪の毛の落ち影を塗ります」と言っており、では具体的にどこにどのような影を塗ればいいの?と思った方もいると思います。なので画像をもとに詳しく説明していきます。
・一つ目の原理・法則です。
光源と地面(今回の場合は地面は肌にあたります)の間に物体があると、物体は光を遮り、影を作ります。図を見ると、最も濃くなる部分は水色の部分で、その周りのピンクは水色より薄くなるのが分かります。従って、濃い影(1影より2影、2影より3影)になればなる程塗る面積が狭くなっていくという原理は、本影と半影を理解すれば分かるようになります。
・二つ目の原理・法則です。
図を見ると、物体が光源に近ければ近いほど影の領域が大きくなり、また物体から地面の距離が遠くなればなる程影はぼやけるということがわかります。
実際に髪の毛の落ち影にそれを当てはめると、毛先の方の落ち影は薄く、ぼかして描くと良いことが分かります。
以上の三点、「濃い影になればなる程塗る面積が狭くなっていく」「物体が光源に近ければ近いほど影の領域が大きくなる」「物体から地面の距離が遠くなればなる程影はぼやける」という原理を意識して落ち影を描くのがおすすめです。
【2.反射光】
反射光という言葉も動画ではいきなり登場しています。このイラストでは以下の画像のような部分が反射光の例になります。
反射光とは、名前の通り光源が反射した光になります。反射光の特徴としては、「反射光は光源より強い光になれない」ということです。なので、この反射光の部分に真っ白な光を入れてしまうとテカテカし過ぎて肌の質感が損なわれます。
上の2枚の画像では、光源から出た光が地面に反射して地面に接している足に当たり、周りより明るくなっています。今回の場合は「光源が白色であること」「地面も白色であること」の条件が揃っているためシンプルですが、光源が人工光である場合と自然光である場合でも反射光の色は変わってきますし、周りの環境(ex; 森林、海など)でも変わってきます。(ちなみに自然光は人工光より黄色みを足して表現します)
最新作の NEIプールのイラストでは肌の色がだいぶ青みがかっているのが分かると思います。これは太陽光がプールに反射し、その色が肌に反射しているからです。
まとめると、
▶︎反射光は光源より強い光にはなれず、光が反射する物体の色に依存する
ということになり、これも意識して描きましょう。
【3.環境遮蔽】
動画でも少し解説しましたが、今回この原理が使われて影を塗っている箇所は胸の谷間、指と指の間、肘を曲げた時に接する肌の部分、服が肌に食い込んでいる部分などが挙げられます。光の持つ性質の一つに「物体と物体の間が狭くなればなるほど暗くなる」というのがあり、それがイラストにも適応されています。実際に自分の指をピッタリと閉じた時に指と指の間が暗くなることを確認してみてください。
これで初めてのポーズや小物を描くときにも、「物体と物体の間が狭い箇所には影を入れて暗くする」ということを意識すれば自然な影が描けるようになるはずです。
▷▶以上の「落ち影」「反射光」「環境遮蔽」の原理を理解した上で
1.濃い影になればなる程塗る面積を狭くする
2.物体が光源に近ければ近いほど影の領域を大きくする
3.物体から地面の距離が遠くなればなる程影をぼかす
4.反射光は光源より強い光では塗らず、反射する物体の色に依存した色で塗る
5.物体と物体の間が狭い箇所には影を入れて暗くする
を実行すれば肌がうまく塗れるようになれます。これを何度も繰り返していると、意識していなくても感覚でどこにどれくらいの光や影を入れればいいのか分かってきます。
上の画像とこれまでの光と影の原理をもとに、顔に焦点を当てて解説をしていきます。
落ち影(青色);顔に落ちている落ち影は髪の毛しかないため、髪の毛の落ち影のみを描写します。この際、先ほどの原理1、3を用いて、髪の毛の落ち影は根本ほど濃い色で描き、また毛先の方はぼかします。
ハイライト(赤色);顔の凹凸部分の中でも高い鼻、頬にはハイライトを入れます。ハイライトは硬めのペンで入れています。また、眉の上が明るいのには2つ理由があります。1つ目は画像右上の図からも分かるように顔を球に見立てた時にできる明部と暗部の境が大体眉の辺りにくるからです。2つ目は、実際の骨格的にも眼球は窪んでいるため影になり、暗くなるからです。
目の周りのメイク(緑);眼力をより強調したい人にはおすすめの方法ですが、やらなくてもよい工程です。影というよりメイクのアイシャドウの表現になります。目の二重幅、涙袋の辺りを少し濃い茶色で囲うように塗ります。そうすると、より目を大きく見せることができます。これは茶色ではなくても、例えば地雷メイクなら深い赤色だったり、アイドルのように目立つメイクなら鮮やかな青や黄色で行うことができます。さらにこの上にフリックブラシで白色のラメを表現すると、より華やかな印象になります。(実際のメイクでのグリッターやラメをアイシャドウの上にのせる工程を再現しています)。この工程はかなり個性を表現できる部分です。自分の好きなメイクを研究し、イラストに落とし込んでみるのがおすすめです。
頬;頬の赤みが後から足りないと感じた時はオーバーレイレイヤーを追加し、エアーブラシで暗い赤色をのせると血色感が出せます。逆に、頬を赤くしすぎてしまった時は、オーバーレイレイヤーを追加し、エアーブラシで薄い肌色をのせると薄くすることができます。
私が肌を塗る際に意識している骨格・筋肉・脂肪について紹介していきます。全ての骨・筋肉・脂肪については説明しません。詳しく知りたい方は解剖学の本などから詳しく学んでください。おすすめは「スカルプターのための美術解剖学」です。
これは脂肪の位置を示す参考資料です。以下の解説を見るときの参考にしてください。また、今回は解説に使っているイラストは正面のイラストなので、もし横向き、後ろ向きのイラストを描く際には役立ててください。(アイビスペイントのトレス素材を使用して作成)
骨格;私が意識している骨は、鎖骨(青色)・上腕骨(濃い青色)です。鎖骨は出っぱっており、上腕骨頭は肩の筋肉(三角筋)を押し出して膨らみができているので、この部分の凹凸を意識して色を塗っています。凹凸が分かればどこに影ができるのかが分かるので、ポイントとなる骨の構造を理解していくことが大切だと思います。理解すればするほど、より正確な描写が可能になるので、私も日々勉強しています。
筋肉;私は腕を塗る際に、腕のシルエットを構成する筋肉を意識しています。外側に盛り上がっている部分と内側に曲がって見える部分を意識しながら塗る方向に気をつけて着彩を進めています。また、腹筋の縦線も意識しています。
※赤の点線部分は脂肪になります。脂肪については以下で説明しています。
脂肪;私は上半身の肌を塗る際に、上の画像で示した箇所の脂肪を特に意識しています。脂肪は柔らかいので、柔らかさを表現するためにこれらの箇所はエアーブラシやぼかしツールを多用しています。
▶︎これらの知識を統合した上で、塗る際には色のつながり(グラデーション)を意識することが重要です。
肌と一言に言っても鎖骨が出ている場所は硬いですし、脂肪がついている場所は柔らかい質感です。それを塗りで描き分けて描写するためには、上記の骨格と筋肉、脂肪の知識を理解することが大切です。また、分からなくなったらその都度調べて、想像で塗らないことも重要でしょう。
骨格;私が下半身を描くときに特に意識している骨は膝頭(青色)です。それ以外はあまり意識していません。今回のイラストは座っているので膝の描写が見にくいですが、矢印先の参考描写の赤色で描かれた部分が膝頭にあたります。膝頭は出っぱっているため、明るくなります。なのでここにハイライトを入れてもいいと思います。また、必然的に出っぱっている部分の下はその影になるため、膝下は影になります。
筋肉;私は具体的な筋肉ではなく、筋肉の流れ(緑色)を意識しています。これに沿って色を塗っていくイメージです。YouTubeで足の塗り込みをしているときの塗り方に注目してみてください。また、右端に描かれている様なイメージだと筋肉の流れと立体感がおかしくなってしまうので気をつけましょう。
脂肪;私は下半身の肌を塗る際に、上の画像で赤色で示している部分である脂肪を意識しています。上半身の時と同様で、脂肪の部分の柔らかさを表現するためにぼかしツールでぼかして馴染ませます。青と緑の楕円に注目するとそれが分かりやすいです。脂肪の部分である青は、緑の部分よりもぼかしを強く入れていることで周りよりも柔らかさを強調しています。動画を視聴する際にはぼかしの工程にも着目してみてください。
▶︎上半身に比べ、下半身は骨の構成要素が単純で、脂肪がつく場所も少ないため単調な仕上がりになりがちですが、筋肉の流れと色のつながりを意識して塗りを単調にしないようにすることが重要です。上半身と同様に、分からないことを想像で補わずにきちんと調べることも大切です。
「肌を塗る」と一言で言っても、どこにどういった光や影を塗るべきなのかということを理解して実践するには知識が必要で、その知識があればあるほどディティールを細かく表現できるということをこの講座でお伝えできたでしょうか。骨や筋肉、脂肪の名前を知らなくても大丈夫ですし、無理に覚える必要はありません。人体デッサンをする、参考資料を見て分析するなどして観察眼を鍛えると、構造を意識して塗る能力は上がっていきます。それを繰り返していくと、今まで学習してきたことを基にした、あやふやではない自分の「理論」として確立していくことができます。この段階から参考資料と組み合わせて描くことで多様な表現が可能になります。ゼロから想像で描くのではなく、理論の基で描くことで安定したクオリティでイラストを制作できることにもつながります。
とにかく実践あるのみです。一緒に頑張りましょう。
Jet
2022-10-04 07:42:41 +0000 UTCAKiYuki
2022-10-02 04:30:55 +0000 UTC