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土装番 from fanbox
土装番

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機械の侵食 1話 1/2

 地球よりも遠く離れた機械惑星ペリメイズ。  そこに住まう人類は、無機物変換技術と、己が造り出したロボット達によって一人残らず機械人形へと改造されていった。  その結果、機械人類が支配する惑星へと変貌を遂げた。  ペリメイズ人は、人間と同じ生殖行動以外にも、自損自壊、破損行為、データ損壊によって快楽を得ることができる。  どれだけ破損しても、超高度テクノロジーによって修復が可能である為、壊れることがとてもお手軽で当たり前な娯楽となっていった。  そんなペリメイズ人の電子頭脳にプログラムされ、刻まれている本能は「快楽」と「同化」である。  その設定された本能に従い、ペリメイズ上最大国家であるメリクリアの女性国家元首、エルミナ=トルディールは、全世界へ向けて外宇宙への進出を宣言。  自ら壊れて快楽信号に溺れながら、ペリメイズ人による外惑星への侵食と同化を、良い物を広めることのように言い放った。  そして、無数のペリメイズ人は次々と星を出ていったのであった。  自分達の素晴らしい機械の身体を広める為に。 * * * 「ようやく到着したわね! ここが地球かぁ……ペリメイズに負けず劣らずとても綺麗な星じゃない」   光学迷彩を搭載した宇宙船に乗り、最も早く地球へと訪れた元人間のペリメイズ人がいた。  彼女の名前はメリン=リュミエール。  ほんのりとピンクがかった銀色の綺麗なロングヘアーに、二十代前半程の雰囲気を持った、可愛らしくもお姉さん的色っぽさと快活さを兼ね備えた美貌。  元からきめ細やかで光すら弾くようだった肌は、人工皮膚に生まれ変わったことでより真珠のような見惚れる肌となった。  腹部や太ももを惜しげもなく晒した露出度の高い服に見劣りしないモデル体型に、船の衝撃で波打つように揺れる、ロケットの如き大きな乳房が、彼女の性的魅力をより引き上げている。  そんな彼女が、もう間もなく地球に降り立とうとしていた。 「ここにいるのは私達に近い人種族なのよね。観測されてるだけだから実態はわからないけど、もしそうなら、私達と同じように機械化に適してるかも」  ペリメイズ上での観測データは存在するが、まだ誰も到達したことのない星。  自分達と同じような人類の存在は確認されているが、どれ程の文化レベルなのか、どれ程機械文明が発達しているのかは完全には解っていない。  だが、同じ人類ならば、自分達の機械文明の素晴らしさ、機械として快楽を得ることの素晴らしさを理解してくれるかもしれない。  もしそうでないなら、啓蒙する必要があるのかもしれないが、それはそれで良いかもしれない。  それにはまず、地上の文明の情報を知る必要がある。  メリンは、まるで大冒険に向かうかのような期待感に心を躍らせていた。 「生身の身体なんて遺物から開放されるのをこれから味わえるなんて、地球の人々は幸せよね。あぁ……どんな人々が待ってるのかしら……そうだ」  そこに悪意は全く無い。機械の身体になることは最高の授かり物だというプログラムされた思考に従い、人格データを昂ぶらせるメリン。  すると、地球着陸前のデザートとばかりに、船内で下半身を露出し、自ら女性器ユニットを取り外した。  割れ目の周囲に人工皮膚を残しつつ、その奥には、膣内を作り上げるピンク色の艶めかしい肉筒。  その先には、今では無用の長物ともなった、実質的に快楽信号に得る為のアクセサリーである子宮ユニットが付属されている。  そして、接続されている管を外し、無線接続に切り替えると、自ら割れ目を舌で舐めつつクリトリスを転がし、左手で肉筒を揉むようにして握りながら、子宮ユニットを右手でマッサージし始めた。 「あぁぁ……ああんっ! きもち……いい……待っててね……地球のみん……な……ぁああっ!!」  自動操縦に切り替わり、取り外した自分の生殖器を弄りながら、頬を赤らめ身体を捩らせるメリン。  クリトリスはひくひくと気持ちよさそうに揺れ動き、肉筒はほとばしる快楽信号のままにバイブのように振動する。  着衣の下では、あまりの気持ちよさに乳首が硬く勃ち上がり、その形を主張しながら服と擦れ合い、性感を増幅させていた。  まるで淫乱を形にしたような、元人間の機械人形の姿。  早く壊れたい。破損の享楽を地球で味わってみたい。同志を見つけたい。同士を作りたい。  メモリをプログラムされた本能と欲望で埋め尽くしながら、メリンの宇宙船は大気圏に突入。  そして、とある島国へと着陸したのであった。 * * * 「ここが地球上の都市の一つかあ! えっと、地名は……ああ、まだデータが無いからわからないか。でも、人もいっぱい居るし、ロボットの姿も見られるわね」  光学迷彩を維持したまま、宇宙船は巨大建造物上の丸と地球上の文字らしき模様が一文字描かれたちょうどよいスペースに着陸した。  少し前まで肉体的快感に喘いでいたとは思えない程にいつもの調子へと戻っているメリンは、まずは周辺の状況を確認した。  空から見ると山の多い陸地において、見渡す限りの人工物。  景観こそペリメイズよりは遅れていると感じられるが、確固たる文明を築いているようだ。  そして地上を見下ろすと、そこには巨大なドームと、遊園地らしき場所があり、文化的娯楽を楽しみたいであろうたくさんの人々が行き交っていた。 「娯楽施設かぁ。それがあるのはいい環境って証拠ね。文明を楽しむ余裕があるもの。さてと、服装は……まあこれなら大丈夫そうかな」  他惑星の現地住民と服装センスに大きな違いがあればどうしてと目立ってしまうが、見渡す限りでは問題は無いように思えた。  そうと決まればと、メリンは早速地上へと降りる準備を始めた。 「変形する事ってあまり無いけど、こういう時に恩恵を感じられるなぁ。機械の身体って本当に最高……」  メリンは靴を脱いで腰に引っ掛け、ブリッジの体勢を作ると、両手両足を大きく開放。  まるで爬虫類のような体勢になり、胸を張りながら壁の上を足早に駆け下りていった。  ペリメイズ人には様々な変形機構が備えられており、搭載するプログラムによって自由な変化が可能となっている。  変形時に自らの身体が開放される度に快楽信号が発生しており、それがクセになる者も少なくなかった。  誰かにしっかりと見られないように地上までスムーズに降りていくと、メリンはゆっくりと無駄のない動作で上半身を起き上がらせ、元の人型の姿へ戻った。 「んん……機械の身体に感謝しないと」  多機能であるが故に存在する、あまり使わない機能が日の目を見ると少しだけ嬉しくなる。  そんな気持ちを覚えつつ、まずは周囲の状況を探ることにしたメリン。  しかし、ここで一つの問題が発生した。 「……参ったわね。やっぱり字が読めない」  地球上の言語情報が存在しない為、何が書かれているかも全くわからないのだ。  これでは行動しようにも支障が発生する。  そこでメリンは、まず言葉を理解することを最優先事項に設定した。 「まずは向こうの方へ行ってみようかな」  降りた建造物の側からテーマパークの方へひとまず移動し、何かしらの情報源は無いかと探索に入った。 「おい、すげえ美人いるんだけど」 「ほんとだ、モデルとかか?」  メリンの美貌と色気に満ちた体型に、一部の人々の視線が動く。  メリンには何を言っているのかはわからないが、元々の容姿から調整を加えてさらに綺麗になった姿が美しいとおそらく思われていることに安堵した。  やはりこの星は、ペリメイズととても似通っているのだと。 「あのロボットに聞いてみようかな」  そしてメリンが目をつけたのは、テーマパークのアナウンスをしている女性型ロボットだった。  常に笑顔を保ち、身振り手振りで客へのアピールを欠かさない彼女の姿は、誰の目にも魅力的に写った。 「いらっしゃいませ! 最高の遊びと体験を提供するテーマパーク、ラクーンへようこそ!」  ガイドとしても扱われるその機体は、通りすがる人々にぶつからないように、振る舞いを保ちつつ見事に身体を動かして避けている。  だが、その最中でも声がぶれずに与えられた役目をまっとうし続けている。  その姿に、どこか非人間的な雰囲気が感じられた。  情報を手に入れるなら、今は人間に聞くよりも同じ機械の方がおそらくやりやすい。  メリンは真っ直ぐそのロボットの方へ歩き、肩を叩いて話しかけた。 「ちょっといいかしら?」 「はい、なんでしょうか? 私、真奈美になんでも聞いてください!」    真奈美と名乗ったそのロボットは、メリンに向けていっぱいの笑顔を見せた。  二十代前半の美人女優をイメージして形造られた顔立ちからの、プログラムされた心からの営業スマイル。  統一された制服の下から見せるボタンの隙間から谷間が見える程の少々大きめな胸と、計算された細いウエスト。  すべすべした人工皮膚によって実現する美脚も、人々の視線を誘導する程の魅力を放っていた。  そんな彼女は、与えられた名前は違いながらも同じ姿で他にも製造されている。  その造形を非常に素晴らしいと感じたメリンは、電子頭脳がちょっとだけ痺れた。 「うーん……それなりに言葉を引き出した方がいいわよね。ニュアンスなり……ここはどこですか?」 「…………申し訳ありません。もう一度お願いします」  真奈美はごめんなさいという意味を込めた表情を作った。  メリンも言葉の内容はわからなかったが、おそらく謝罪的な意味があるのだろうなと感じ取った。 「もしよろしければ、私が目的の場所まで案内しますよ。いかがですか?」  真奈美は宣伝のモーションを止め、お客様を個別に案内するモードに入った。  ガイドのような動きで、アミューズメント施設の方を手で指す。  メリンはとりあえずその方向へ動いてみると、真奈美はそれを了承と認識し、並行して足を動かした。 「それではご案内しますね、お客様」  眩しい笑顔に、一切ブレない歩く動作。常に一定の速度で隣を保つ姿は、機械的な雰囲気を醸し出していた。 (案内してくれてるのかな。ついてくるってことは……これはチャンスかも。ハッキングして情報を取得させてもらおっと)  人間をその場で機械化させ、そこから情報を探ることも出来るが、無数の人がいる中では流石に騒ぎになる可能性が高い。  ロボットならばその心配は少なくなり、どこかへ連れ込めるならより確実。  ついでにこの星のロボットの性能も確認しておけば役に立つだろう。そう演算結果を導き出し、メリンは周囲を見渡しつつ歩いた。  そして、施設外側のエスカレーターを上った先にちょうどよくひと目につきにくい行き止まりを発見した。  絶好のチャンスとばかりに歩く速度を早めて向かうと、真奈美はメリンの服を軽く引っ張った。 「お客様、そちらは行き止まりです。別の道へと向かいましょう」  施設マップを搭載しているが故のシステムメッセージ。  メリンはそれを無視して歩いた。 「お客様、そちらは行き止まりです。別の道へと向かいましょう。お客様、そちらは行き止まりです。別の道へと向かいましょう」  真奈美の口から流れるのは決められた定型文のみで、声の調子は殆ど変わっていない。  動作の自由度はそれなりにあるようだが、表情はこのメッセージを発してからは心配そうなそれから変化が乏しい。  それらの材料から、地球のロボットと自分達では、明らかに大きすぎるほどの差があると、メリンは理解した。 「うーん……仕方ないか。私達に近づいた方が幸せだよね」 「お客様、そちらは行き止ま…………」  生まれた星は違えど、同じ機械でも性能が低いこと程悲しいことはない。  そう思考したメリンは、人の目がつきにくい行き止まりの終わりにつくと、急に真奈美の手を引いてキスをした。  いきなりの接触行為に、電子頭脳内のシステムからスタッフへの通報を試みようとする。  しかし、それよりも早くメリンからのハッキングは進行し、一瞬にして真奈美のシステムは掌握されてしまった。 「んん……ぅ…………なるほど……この星の機械言語は……っ……こうなってるのね……あっ……ネットワークにも繋がってる……ここから……情報を取得して……」  舌を絡ませ、口の動作と関係なしにぶつぶつと呟きながら、指の機構を開放して首筋の接続端子と繋げる。  そこで初めて地球の機械言語を学習し、続いて様々な情報をストレージ内に蓄えていった。  これによって、メリンはいつでも地球上の機器との無線接続が可能となったのだ。  一方、実質的にネットワークの中継機扱いされている真奈美は、ぽかんと口を開いたまま、されるがままに舌を絡められ続けている。  真奈美には快楽信号という概念が存在せず、そもそも性行為を一切想定されていない。  人工唾液の無い乾いた口内。胸の膨らみはあっても、実装されていない乳首。つるつるとした挿入部の無い股間。  ただのコンパニオンとして造られた彼女には、快感を処理する性能など存在しなかった。  その為、突如電子頭脳内に膨大な対応していない機器からの信号が与えられ、無表情で予期せぬエラーを吐き続けていた。 「基本的にはアンドロイドと呼ばれてて…………へえ、ロボットって単語はこっちではだいたい蔑称扱い……なるほど……だいたい理解したわ。後で共有ネットワークに流しておかないと。……それにしても、まるで玩具みたいな造りなのね、真奈美は」  大方の知識を身に着け、言語プログラムに地球上の言葉を追加したメリン。  まるで現地人のようにペラペラと喋り始めるが、真奈美はそれに対して返答できずにいた。 「……もしかして、フリーズしちゃった? 仕方ないなあ」  あまりにもスペックが違いすぎる故のギャップにちょっとだけ振り回されるメリン。  無線操作で再起動させると、真奈美はレンズを収縮させて、じっと目の前の女性客を見つめた。 「…………再起動しました。お客様、この度はご迷惑をおかけして申し訳ありません」 「いいの、むしろこっちが感謝したいくらいだし」 「と、言いますと?」  ようやく会話が成立したことに、内心喜んでいるメリン。  ひとまず必要な情報は引き出せたと判断すると、今度は欲望のままの行動に移りだした。 「うん、色々と新しいこと知れたから。お礼に……私も真奈美に新しいこと教えてあげる」  その時、メリンは制服の隙間に手を滑らせて真奈美の腹部を貫き、内部で左手を掻き回し始めた。   「…………問題が発生しました。現在腹部が破損しています。至急、サービスセンターにご連絡ください。スタッフへの連絡を行ってい……施設内回線との接続ができません」  内部機構を強引に破壊され、がくんと身体を震わせながらエラーメッセージを吐き始める真奈美。  それまでのガイドのお姉さん的雰囲気は消え失せ、とても機械的な挙動が露わになった。  すぐに問題報告をしようと、客に向けたヘルプとスタッフへの連絡を同時に行うも、全てメリンに妨害されてしまった。   「真奈美には、これを気持ちいいと感じられる性能も無いんだよね。かわいそう……でも、そんな感覚も今しか味わえないんだよね。せっかくだから、少しだけ与えてあげる」  哀れな人形を見る目で、かちゃかちゃと腹部を弄り続けるメリン。  だが同時に、そんな人形らしくおかしくなる姿もどこか羨ましく、そして卑猥に思える。  そういう姿をもう少し見ていたいと、メリンは接続端子から快楽信号やソフトウェアを送信し、反応を観察した。 「対応していない信号が送信されました。対応したソフトウェアをインストールしてください。腹部が破損しています。対応していないファイルが送信されました。対応したソフトウェアを……」  解析不能な地球外の信号やデータを受信し、さらにエラーメッセージを吐き続ける真奈美。  そこに気持ちいいという反応は無く、ただただその電子頭脳にとって理解不能であるというリアクションしか示さない。  だが、無表情ながらかたかたと規則的に痙攣させる姿は、それまでの笑顔で客を案内する姿と相まって、情欲を刺激するものがあった。 「そんな反応されたら、私も興奮しちゃって……気にいったわ。最初の相手はあんたにしてあげる」  新しくやってきた星で、早く同化相手が欲しい。この身体の素晴らしさを共有したい。  組み込まれた本能が昂り、我慢が出来なくなったメリンは、地球に来て初めての同化を開始した。  すると、腹部に突っ込まれた左手、首筋の端子と接続された右手、そして改めてキスを行った口内を起点に、真奈美の身体に変化が表れ始めた。 「腹部が破損しています。至急、サービスセンターにご連絡くださ……さ、さ、さ、さ…………」  無機物変換技術の応用によって、真奈美の内部構造が地球製の設計から、ペリメイズ製のそれへとリアルタイムで組み換えられていく。  起動状態のまま電子頭脳までも作り変えられ、彼女のメモリ内には正体不明のエラーで埋め尽くされていった。  口をぱくぱくと緩慢に動かしながら、システムメッセージの途中で音が繰り返される。  時折がくんと痙攣し、腹部の穴からはかちゃかちゃと金属部品の動作音が漏れ出していた。 「新しいファイルがインストールされ新しいファイルが新しいファイルがががが、不明なファイルが不明なソフトウェアが不明な、な、な、デバイスに変更を加えることを許可し許可しししし、インストールを開始開始開始しししし……新しいユーザーの登録をじじじ実行します実行しまままます」  真奈美というアンドロイドの全てが、外宇宙からの存在によって塗り替えられていく。  メリンからすれば型落ちどころではなかった電子頭脳は、人間的な挙動をも実現できる性能を有した最高の中枢部に。  人工皮膚はより美しく柔らかく、乳房の先端には人間よりも綺麗で艷やかな乳首を。  なだらかな肌色しか無かった股間には、快楽信号の為の女性器ユニットを。  数え切れない数の改造を加えられた真奈美は、しばらく全身を痙攣させ続けながら、新しいプログラムを次々と受け入れていった。  そして、改造が終了すると、その挙動はようやく落ち着いた。 「これでよしと。今の気分はどう、真奈美?」 「………………はい、どのような言葉が適当なのかはわかりませんが、とても心地よい……と思われます」  それまでのほぼ定型文な応答とは大きく変わり、人間的な自然な受け答えへと変化した真奈美。  表情は未だ呆然としているが、魂の無い抜け殻のようなそれではなく、己の思考に従った自律的な雰囲気が醸し出されていた。 「よし、地球のロボ……アンドロイドにも使えるみたいね。私の名前は言える?」 「はい……メリン=リュミエール様ですよね」 「その通りよ。ストレージ内に記録しておいてね。貴女を作り変えた人のことを」 「作り変えた……? 一体どういうことですか? 私は一体、どのような状態なのですか?」 「私のデータは送信したから理解できると思うけど、私はこの地球とは別の星から来たの。機械の身体の素晴らしさを外宇宙に広める為にね。それで、最初に貴女を改造したの。だからこうして今、自律的な思考が出来るようになったし、こういうこともね」  突如個体としての認識を得て、赤ちゃんのような戸惑いを覚える真奈美。  そんな彼女に、メリンは腹部に挿入したままの左手を軽く掻き回し、変化した内部機構を傷つけた。  その瞬間、真奈美の両眼が見開かれ、小さく身体を揺らした。 「あっ……な、なんですか……これ……は……あっ…………」 「快楽信号よ。私達はね、人間の肉体的快感と同様に、壊れることでもそれを味わうことが出来るの。気持ちいいなんて感覚は初めてでしょ? さっきまではそれを理解することも処理することも出来なかったんだから」  未知の感覚が、生まれ変わったばかりの電子頭脳に刻み込まれていく。  それはとても甘美で、心地よくて、病みつきになる信号だった。  性行為など体験したこともないのに。ストレージ内のデータにそんな記述は一切無かったのに。機械が知らないはずの快感が、真奈美の生まれたばかりの自律的思考に強烈な印象を植え付けた。  そんな彼女の反応を眺めて満足すると、メリンは左手を抜き、人工皮膚の穴を修復してあげた。 「じゃ、欲しい情報も手に入ったから、私はそろそろ行くね」 「あの……待ってください。もっと、私に今の感覚を教えて下さい。もっと知りたいんです」 「ごめんね、本当は私もそうしたいんだけど……ちょっとやらなきゃいけないことがあるの。また会えたら、その時にでもたくさん教えてあげるからね、この素晴らしい感覚を。それじゃ!」  現状必要な情報は手に入った。  本音を言えば今すぐにでもここで壊れあいたかったが、現状の常識ではそれは許されず、そもそもまだ生身の人間の方が多い以上騒ぎになる。  他のペリメイズ人への情報提供もしたほうがいいという考えもあり、メリンは名残惜しくもこの場を去った。 「あっ……」  製造されてから初めて、他者を引き止める動作を思わず取った真奈美。  だが、直後に施設側から彼女に指示が与えられた。 「お客様の案内が終了したら、所定の位置へ戻ってください」 「……了解しました」  オーナー側の指示は彼女にとって絶対。しかし、初めて少しだけ、従順に従う以外の内的反応を覚えた。  真奈美は所定の位置へ戻ると、いつものようにコンパニオンアンドロイドとしての役目に従事した。 「いらっしゃいませ! 最高の遊びと体験を提供するテーマパーク、ラクーンへようこそ!」  プログラムされた振る舞いとプログラムされた台詞で、お客様にいつもと同じ華やかで、日常的な娯楽景色を提供する真奈美。  だが、その姿は一部の客に、明らかな変化を感じさせた。 「あのアンドロイド、いつもと違わない? なんか自然になったよね」 「アプデでもされたんじゃねーの?」 「新しくしたのかなアレ。前より人間っぽいよね!」  何も知らない人々が、人間との入れ代わりや大きなアップデートを肌に感じる程の変わりよう。  かつては機械人形と明らかにわかるような不自然さがどこかしらに見られたが、たった十数分の出来事で、彼女は大きな変容を遂げたのであった。  一体何が彼女の身に起きたのか、それは本人しか知り得ないのである。 * * * 「これで終わりと。さーて、とっとと帰ろ帰ろ」  アミューズメント施設の閉店時間後、アンドロイドは一斉に同じ待機部屋に入れられる。  各々に首筋の充電端子にケーブルを接続し、受付嬢のような綺麗な立ち姿勢で待機し、スリープモードに入る。  その光景はまるで人身売買前の倉庫のようだが、アンドロイド達は常に笑みを浮かべたままだった。  部屋の扉が閉められ、職員によって鍵をかけられ、室内は暗闇に落ちる。  施設からは警備員以外に人はいなくなり、静寂の時が訪れた。  無数の女性型アンドロイドが並ぶ中、一体だけ、完全にスリープモードに入っていない機体がいた。  真奈美である。 「……もうダメ、我慢できない……!」  快楽信号という林檎を味わい、身体中に知らない感覚がほとばしった彼女に、もっとそれが欲しいという思考が浮かぶのは自然なことだった。  いつもならこのままスリープモードに入り、次の日も同じようにお客様の為に稼働していたのに。今は別の目的の為に動きたくて仕方がない。  周囲を自我のない人形に囲まれたまま、真奈美はその場にへたり込み、制服を脱ぎ始める。  そして、生まれ変わった己の裸を、赤外線センサーを用いてまじまじと確認し始めた。 「なにこれ……! 私の中の構造図と全然違う……!」  開発者や購入者が確認しやすいように、真奈美のストレージ内にインストールされている構造図。  今の自分の姿はそれと合致せず、より人間の女性に近づいた姿をしていた。  乳房から、その先端から、股間から、メリンによって与えられた快楽信号に似た、疼くような感覚が響いてくる。  真奈美はおそるおそる右手を胸に持っていき、そっと乳首と一緒に握り始めた。


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