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土装番 from fanbox
土装番

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機械の侵食 4.5話 1/2?

 巨大テーマパーク、ラクーン内で発生した、アンドロイド破損及び盗難事件。  一体の女性型が破壊され、一体の女性型が姿を消したという、一見すれば少々規模の大きな事象ではあるが、警察側はその捜査に非常に難航していた。  まず、この事件には、通常のものと比べて不可解な点がいくつもあった。ありすぎた。  一つ目は、事件当時、またはその前後の映像がどの監視カメラにも写っておらず、犯人の確認すら困難である事。  仮に2〜3台程ならば、まだ偶発的、または何かしらの不備や要因による故障という選択肢も入る。  しかし、今回その数は異様な程に多い上に、事件当時の部分だけごっそり無いというのは不自然極まりない。  内部犯の存在も考えられたが、捜査を続けるうちにその可能性も消えてしまっていた。まさしく異常という他なかった。  二つ目は、なぜだか指紋や体液と言った類の痕跡が見当たらなすぎるということ。  破壊された女性型や、周辺の液体痕など、気になる点は細かく徹底的に見分を行ったが、DNAのような、生物的な判別材料は一切見つからなかった。  不明な金属物質こそ発見されたが、それ自体は犯人特定の材料にはなっていない。が、数少ない貴重な手がかりとして、採取されたデータは厳重に管理保管されている。  三つ目は、推測不能な犯人の動機。  女性型アンドロイドの盗難ともなれば、大抵の場合は愛玩目的や各種欲望の捌け口などの動機が浮上する。  しかしこの事件に於いては、どのような目的があったのかもまるで読めない。  自ら起動することのないアンドロイドをわざわざ一体だけ破壊する理由もわからず、なぜセキュリティの甘い施設ではなく、しっかりとした監視を敷かれたこの場所を選んだのかもわからない。  適当に選んだのなら、ここまで完璧な目くらましができるのだろうか。  謎が謎を呼び、ハッカーの自信の誇示のような説まで出てくる始末。  まさに警察側は、この事件に酷く頭を悩ませる結果になっていたのだった。 * * *  警視庁にて働く一人の女性刑事がいた。彼女の名前は佐々木千鶴。  年齢は25歳。動きやすいようにと整えた黒のショートヘアーに、事件現場に訪れた野次馬が目を引く程の、可愛らしさをほんのりと残しつつもシュっとした、生真面目を感じさせる目つきの美貌を持っている。  警官制服の下から形がよくわかる程の、片手で鷲掴みをしても足りなさそうな程に大きくハリのある乳房に、平均よりも脚が長く高めの身長。  人気モデルのキャンペーンと言われても通じる程の綺麗な容姿だが、その一方で警官としての能力も優れていた。  身体能力が高く、並大抵の男性では、彼女が身につけた逮捕術、護身術にはまず敵わない。  学生の頃は陸上部だったのもあって脚も速く、脚力を活かして逃げだす犯人に追いつくこともしばしばあった。  まさに、模範的で優秀な、期待の若手警官とも言える女性である。  そんな彼女は現在、机の上で資料を広げながら、ラクーンにて発生したアンドロイド破損盗難事件の調査を行っていた。 「…………こんなにも決定的な証拠がないってあるのかなあ」  どれだけ彼女がガッツのある警官だとしても、一人でどんな事件も解決できるわけではない。  彼女もまた、この不可解な事件の謎に頭を悩ませる一人だった。 「事件の痕跡はいくらでもあるのに、犯人を特定できる手がかりが何もない。内部犯の線は消えてるし、犯人の足跡も全くわからない…………もう、どういうことなのこれ……」 「おう、今日もまたあの事件で悩み中か」  今にも髪をくしゃくしゃにかき乱したい気分になっていた中で話しかけてきたのは、千鶴と歳の離れた刑事の倉田篤紀。  配属当初から彼女がお世話になっている人であり、警官としてのノウハウを学ばせてもらっている先輩である。   「篤紀さん……そうなんですよ。やっぱり変ですよねこの事件」 「俺もそう思うが、鑑識すらまともに決定的な証拠を見つけられないってんじゃあなあ。動こうにもどうにもなんねえ」 「それはそうですけど……今こうしている間にも、犯人は息を潜めてまた犯罪を企んでいるかもしれないんです。こんな規模の犯罪を起こせるなら、複数犯かもしれませんし……そうなれば、また新たな被害者が出てしまいます。それだけ避けないと」 「気持ちはわかる。だが焦っちゃダメだ。こういう得体の知れねえヤマは大抵、下手に動けば良からぬことが起こると相場は決まってる。動く前にまず準備を整えるんだ」 「……わかりました」  篤紀の言葉は、とても正しいものだった。彼の積み重ねた経験やそこから導き出される勘から言っても、その判断は間違いないのだろう。  どうにもならない自分の未熟さ、無力さを歯痒く思いながら、千鶴は一旦、机を立ち、気持ちを落ち着かせる為に手洗いに向かった。  その姿を、篤紀は何も言わずに見届けた。 「…………俺も動きてえがな、こんな不気味なヤマは見たことねえよ」 「お、篤紀さんどうしたんです?」 「おお、マツか。千鶴があのヤマで頭を悩ませてたからよ、励ましてたんだ」  そこにやってきたのは、同僚刑事で、千鶴の歳上、篤紀より歳下の松田京太郎。  二人と同じく、アンドロイド破損盗難事件の担当を任されている。 「彼女としては歯痒いでしょうねえ。どんな事件でも犯人は絶対に捕まえてやるって、正義感強い子ですから」 「前の連れ去り事件でも、根気強く足跡辿って頑張ってたのはあいつだったもんなあ。あいつの根性は、俺達にも火付けてくれるよ」  千鶴は刑事となった頃から、とても真面目で頑張っていると評判だった。  秩序に属する人物としてはとても理想的で、何よりそれに見合った結果も出している。  悪意を持って何かを成すような人物が許せない。だからこそ、どれだけ自分に危険が及ぼうとも己を省みず、毅然と立ち向かう。千鶴はそんな熱い刑事だった。  二人も、彼女のそんな性格と芯の強さをわかっているからこそ、一緒に事件を担当することになった時は、引っ張りつつもサポートしたりと、手を貸してあげていた。 「だがぁ……今回はあんまりにもおかしいとこが多い。ここまで痕跡が残ってて個人を特定する物証がねえってのは、不気味どころの話じゃねえ」 「そこは同感ですね。こんな大都市のど真ん中で証拠や目撃情報もまともに残さず逃げられるなんて、只者じゃない」  だが、だからこそこの事件には、得体のしれない何かを強く感じ、千鶴のことを心配していた。  刑事をやっていれば、いつかは必ず深すぎる霧の中にいるような事件にぶち当たる。闇が覆い隠しているような事件にも足を踏み入れる。  しかしこれは、それらとはまた違う何かだ。二人の勘と感覚がそう言っている。  それにぶつかった千鶴がどう転んでいくのか、二人は内心で心配していた。 「今のところ手がかりってなったら、現場に落ちていた液体にほんの微量混ざっていた謎の金属ぐらいですかねえ」 「あー、なんか話にゃ聞いたな。なんかどの金属なのかわからねえとかなんとか」  「近いうちに詳しい検査はされるみたいですね。それが何かしらの手がかりになればいいんですけど」 「それまではお預けかねえ。千鶴にもそれを伝えておいた方がいいかもな」   現場に落ちていた無色透明の粘液に含まれていた謎の金属。  それの正体がわかれば、何かしらの答えにたどり着けるかもしれない。だから今は、同じ警察内の仲間を信じて待ちに徹するのがおそらくの正解。  戻ってきたときにその話をしようかと、二人はその場で待っていた。  「お二人とも、ちょっといいですか?」 「あ? なんだよこんな時にぃ……」 「天京駅の方で不審火の通報がありました。至急向かってください」 「他の人に任せればいいのに……って言っても、いれば任せてるか」 「ええ、ちょうどそこにいる人員に任せてくれという指示で」 「大雑把な上に一方的だなあおい。仕方ねえ、先にそっち行くか」  だがタイミング悪く、二人はそう遠くない天京駅の方からもらった通報の方を優先して向かうことになった。  少々千鶴への不安は残るが、まずは目の前の事件を片付けるのが刑事だと、二人は走り向かっていった。  一方、千鶴は用を足した後、小さなペットボトルの水を飲みながら、自分は一体どうするべきかと悩みに悩んでいた。 「…………あんなだいそれたことを、まともな証拠も残さずに出来るような犯罪者がいるなんて。しかも単独犯とは思えない犯行……このままじゃ、また新たな被害が出ちゃうかも」  自分達が手をこまねいている間に、同じ犯人達による新たな被害が生まれてしまうかもしれない。  そうなっては、悔やむに悔やみきれない。自分がすっとろいせいで、罪のない人々がまた苦しむことになる。  篤紀はああいっていたし、それが確かに正しいのだろう。だが、いてもたってもいられない。  千鶴はペットボトルをぎゅっ、と握り潰し、決意を帯びた瞳で足早に歩き出した。 * * *  同日の夕方近く。まだ日が沈みきらない時間帯。  事件の残り香を感じさせず、騒ぐ子供達や楽しげな男女の声がそこらじゅうから聞こえるラクーン内にて、千鶴は一人訪れていた。  夜が近づいても、園内の照明によって明るさが保たれ、殆どの移動経路に視界と安全性が保持されている。  そんな補助に関係なく、目の奥を光らせて昼と変わらず稼働する、破壊され盗難した機体と同型の女性型アンドロイドのコンパニオン達。  このままの日常が続けばいいのにと思いながら、千鶴は事件調査の中で目星をつけられた箇所を入念に調べ始めた。 「……事件当時は殆どのカメラがなぜか記録を残せなかったけど、その前にここのカメラも記録が残せなかったんだよね」  千鶴が目を向けたのは、施設外側のエスカレーターを上った先にある、ひと目につきにくい場所にあった行き止まり。  ここには、隠れて犯罪組織による取引や薬物交換などの行為が行われないようにと、監視カメラが一台設置されていた。  だが、事件当日の昼頃、なぜか一時的に監視カメラに映像が保存されていないタイミングが存在した。  それは、前後の時間の周辺監視カメラも同様で、まるで何者かの存在をかき消しているかのようだった。  当然、警察側もそれを怪しんで、それに連なる道を検証していたが、落ちていたのは、アンドロイドのものと思わしき人工皮膚の非常に小さなほんの一部分のみで、身元に繋がる決定的証拠は掴めなかった。 「内部犯でもないのに、狙い澄ましたような監視カメラの操作なんてできるの……? 一体何がどうなってるのこれ」  改めて頭の中で整理しても、すればするほどよりわからなくなってくる。  本当に、何が一体どうなっているのか。  だが、それで怯んでいては、突き止めるべき真実も遠ざかってしまう。何より、ここにいるたくさんの一般市民達が、いずれ大変な被害に遭ってしまうかもしれない。  それだけは絶対に許せないと、千鶴は己の信念と根性のままに、何か手がかりがないかと歩き出した。    そんな彼女の姿を遠くから見つめる者がいた。 「久しぶりに来ましたけど、私達のことを探ろうとしている人がいるんですね。まだその時じゃないのに……バレるわけにはいきません」     まるで園内の構造を全て把握しているかのように、完全に監視カメラの死角かつ、向こう側からは姿をまともに視認できないような場所。  そこに立っているのは、フード姿で身体を覆い、大部分が見えないようになっている女性だった。 「あの場所は、内部の人物か調査している警察側でしか目星をつけられないはず。となれば、あの女性は警察官」  独り言をつぶやきながら、頭の中でたった今取得しつつある情報を整理する。  そうなれば、彼女の取る行動は一つだった。 「あの人間女性も、私達と同じ仲間にしないといけませんね。私達と同じように、快楽信号を処理する素晴らしさを体験させてあげないと」  そう口にすると、フード姿の女性はその場から立ち去っていった。  千鶴はその人物の存在に、少しも気づくことはできなかった。 * * *  完全に日も落ち、閉園時間も近づいてきた頃。  結局、まともな収穫を得られなかった千鶴は、落ち込んだ様子で立体駐車場の方へ向かい、戻る準備をしていた。  視線は下を向いており、どうにもならない悔しさが滲み出ている。 「やっぱり何もなかった……どうしたらいいんだろう」  導線がまだないわけではない。おそらく監視カメラが写っていない時間にいたであろう一般人を探し、どのような人物がいたか、怪しい人物がいたかを聞き出す方法も残っており、進行自体はしている。  だが、そんな人を探すのにも虱潰しの状態な為、まだまだ思うように進んではいない。  まさに現状は大量の雪が積もっているような八方塞がり。覆面パトカーの鍵を開け、運転席に座るまでの間も、千鶴は溜息をつかずにはいられなかった。 「犯人捕まえられるかな……」  キーを差し込み、数秒の沈黙が車内に流れる。その間に千鶴は、己の中で気持ちの整理をし、ふうっ、と大きく息を吐いた。 「ううん、きっと大丈夫! 糸口は絶対に見つけられる! 私だけじゃなくて、みんながその為に頑張ってるからきっと背中が見える!」     この事件を追うのは自分だけじゃない。自分よりとても優秀な仲間も、協力して少しずつ進んでいる。きっとそのどこかに、無数の頑張りのどこかで犯人達の足元は崩せる。  信じる気持ちが湧き上がる程に、沈んでいた心が徐々に先の希望によって湧き上がってきた。 「よーし、明日も頑張るぞ!!」  心持ちが復活し、いざエンジンをかけようとしたそのとき、誰もいないはずの後部座席から突如、何者かの手が、千鶴の口と腕を掴んだ。   「んん!!?」 「黙ってください。動かないでください」  感触こそ柔らかくしなやかだが、明らかに力強くまともに抵抗できない。  その声はどこかで何度も聞いたことあるような声だが、突然の襲撃にまともに頭が回らず、なんとか拘束を外すそうと藻掻いた。  同時に、千鶴は見えないように無線信号を送ろうとするが、指が届く直前に、謎の女性の左手によって押さえつけられた。  と同時に、なんとか口元への拘束が解かれる。 「私は車内状況がちゃんと見えています。外部への通報は許しません」 「はぁ……はぁ……あ、あなた一体……まさか、ラクーンのアンドロイド破損事件の……」 「はい、私は当事者です。ですが、私はあのことがあったおかげで、新たな自分を得ることができました」  バックミラー越しにその顔を見ようとするが、フードを被っており、肝心の人相が殆ど見えない。  鼻筋や口元から、より女性だという確信を強めるが、それにしては力が女性離れし過ぎている。  そして、まるでもう懸念などないかのごとく、その人物はフードを取り去った。  そこには、千鶴の予想の外にある顔があった。 「えっ、その顔……ラクーンで動いてるアンドロイドと同じ……!?」 「正確には、私は以前までラクーンで稼働していました。盗難されたとされる機体の名前は『真奈美』ですよね? その『真奈美』が私です」  信じられないものが、そこにはあった。  ラクーンで動いているアンドロイドの言動や動作は、何度も現場に入ったり、今回の調査で把握している。  ここまで人間的に、自律的に動作できるような性能はしていないし、そもそもそんな機体が存在するという情報はどこにもない。  だが確かに、その声は何度も園内で聞いたものと同一のものだった。  そこに、人間らしい起伏や感情が加わり、すぐにはわからない違いが生まれていたのだ。  バックミラー越しに見える表情も、園内で見せるようなプログラムされた固定的笑顔ではなく、まるで今の状況を憂いているかのような困り顔になっていた。 「そんなはずは……こんなに、人間のように動くアンドロイド、聞いたこと……」 「私も、その戸惑いは理解できます。私自身がそう思いましたから。でも、私が機械だという証拠を見せます」  そう言うと、真奈美は突如左手を口元に持っていき、強引に中指を噛み砕いた。  そこから露わになったのは、人工唾液まみれになり、潰れた金属骨格と人工皮膚が混ざりあった中指。  ぴくぴくと震え、小さな機械的動作音が鳴り、痛そうに見える悲惨な状態だが、真奈美はむしろ少しだけ頬を染めているように見えた。 「どうですか。これで私は機械だと証明されたでしょう。ご所望ならば、もっと私の中身を曝け出します」 「いえ、もういいです! とにかく、何が目的なんですか一体」  こんなところで手をこまねいている暇はないが現状はどうしようもない。  ともかく、どこかでチャンスを掴みつつ、引き出せるだけ情報を引き出そうと考えていた千鶴。  だが、その質問の後で数秒程間が空き、空気が変わる。 「…………私達のことを探っていましたね。警察だから当然ではありますけど……まだ私達のことを公にされるわけにはいきません」 「やはり、組織犯罪を企んでいるんですね」 「組織なんてものじゃありません。私達はもっと大きくて、全てを包み込むような共同体です。いずれ、この地球上のみんなも理解する時が来ます」 「…………??」  千鶴は、突然話のスケールが大きくなったことに混乱する。  しかし、その時間も長くは与えられなかった。 「でも、まだその時じゃありません。だから……」  真奈美はいきなり運転席に身体を持っていき、千鶴と顔を見合わせた。そして、人間では無茶な姿勢のまま両手で彼女の顔を挟み込み固定した。  バックミラー越しではなく、直接肉眼で視界に入ることで、その肌の人間離れしたきめ細やかさ、美しさと、目の奥の機構がよく目に入った。 「あなたをまず、私達と同じにしてあげます。すぐにわかるはずですよ、快楽信号を得ることが、機械になることが、破損することがどれだけ素晴らしいことか」 「き、機械になる!? それって……んんん!??」    ありえない言葉を聞き、その非現実感に思わず声が出た直後、真奈美は声を塞ぐように、突如強引に唇を重ね始めた。  柔らかな感触が伝わり、一瞬虜になりそうな心地よさが走る。  なんとか歯を食いしばっていたが、真奈美はそれを舌だけで押し退け、人工唾液を纏わせたそれを絡ませていった。  舌だけでも人間離れした力に、抵抗を難なく乗り越えられていく千鶴。だがそれ以上にたった今行われている行動の理由がわからない。  まるで何度も愛情を交わしあった仲のように、人工唾液を流し込みながら情熱的なキスを一方的にし続ける真奈美。  まともに抵抗できない千鶴は、早くこの理解できない時が終わってほしいと思いながら、震える手で無線機を落として外部からの救援を呼ぶキッカケを作ろうとした。  しかし、それに指が届きかけたその時、彼女の脳の奥に突如、ノイズの濁流と人生で感じたことのない透明感のある思考が同時に湧き上がってきた。 「んん……やめ……離してくだ……あ、あ、あああああががが、うううううああああええええううううつうあ、あ、あ、あうううううう」  直後、千鶴の眼は小刻みに震えだし、両手はその場で指が暴れながらばたつき、涙を流しながら失禁し始めた。  心臓から搾り出すようなうめき声を上げ、それを真奈美の唇が強引に塞いで抑え殺す。  目の前の犯罪者と思わしき相手に目線すら向けられない状態になると、始まったとばかりに真奈美は、彼女の震え暴れる両手を掴み、恋人握りにして重なり合った。 「そう……変わるんです……私と同じ機械になって……私達は同じになるんです……ん……ぅ…………」 「ううう、ええええあああああ……ああ、あ、あ、ううううううううう…………」  まるで愛し合う仲の如く、性欲を発露するように絡み合う。  非常に一方的で、犯しているも同然の状態だが、千鶴はそれを受け入れる以外になかった。  次第に彼女のうめき声も小さくなり始め、皮膚や眼球、服下の乳房や体型、体毛などにも大きな変化が訪れ始める。  その進行度が進む度、真奈美からの愛情はより強まっていく。  新たな仲間が生まれること、そして、初めて誰かを生まれ変わらせてあげられたこと。こうして快楽信号を感じながら繋がっていること。  ただの性能の低いコンパニオンだった頃からは考えられない幸せの数々。  真奈美は、目の前で人間が変わりゆく姿を、擬似人格に強く、愛おしく感じていた。 「これから一緒に、私達と快楽信号を求めましょう…………」 「ううううあ、あ、あ、あ、あ、ああああああ……ああ……ぁ………………」  そうしてこの日、駐車場の一角にて、一人の女性警察官が、人間としての人生を終えた。 


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