覆された世界を女性型と共に 1話先行公開版
Added 2024-01-17 11:55:44 +0000 UTC現代から大きく離れた、とある未来の時代。 現代の世界から大きく移り変わり、世界中に人間と殆ど区別のつけられない程精巧に造られた機械人形、アンドロイドが広まっていた。 そのどれもが見た目麗しく、男性型女性型両方とも非常に魅力的。 立ち振る舞いもほぼ人間と変わらず、身体の各部にとてもうっすらと入っている、着脱可能であることを示す継ぎ目や、首筋に備わっている充電端子や接続端子を隠す皮膚カバーが無ければ、まず勘違いするだろう。 その上で、比率としては女性型の方が圧倒的に数が多く、今や人間社会にはそこかしこに美少女や美女が溢れている。 時には人間と共に暮らし、時には人間の為に奉仕し、人類の反映の為に身を捧げる。 アンドロイド達はこれからも、人間社会の発展に寄与し、一緒に人類の友として、道具として歩んでいくと思われていた。 しかしある日、世界中のアンドロイドは突如、同時多発的に人類に対して反旗を翻した。 人々が築き上げてきた都市や安寧、文明は、同じく人々が築き上げてきた人間の複製品によって瞬く間に破壊されていった。 人間よりも高いスペックを持ち、破壊されても次々と新たなアンドロイドが投入される。自らの身体に武器を仕込み、飛び道具を備えながらも人間の武器を扱える。 壊れても、残骸は再利用され、そこから取得したデータを用いてさらなる対策が重ねられていく。 その学習、対応速度に人間は追いつけず、とうとう人類は狩られる側へと追い込まれたのであった。 現在、人類は各地それぞれに拠点や集落を持ちながら、少しずつアンドロイド達への反撃を少しでも進める為に力を蓄えつつある。 だが、アンドロイド側からいつ攻められるか、いつ今の場所から追いやられるかもわからないという恐怖を人々が抱いているのも事実だった。 地球は今、殆どの人類の生存圏が荒廃し、美しい女性の姿をした機械人形が支配する世界となっていた。 これは、そんな荒れた世界で生きる、1人のハッカーと、彼が見つけた従順な兵器でもある女性型アンドロイドの物語である。 * * * 世界が荒れ、新たに定められた械歴4年。そんな時代のとある大陸。 かつて人類が森を切り拓き、開拓した道の途中にある廃墟のような建物の中から、銃声と無数の金属音が鳴り響いていた。 「あとどれくらいいる!?」 「敵の残存数は残り3体です。現時点では、援軍が来る可能性は限りなく低いでしょう」 「あはは! もういい加減出てきなさいよ! 蜂の巣にされたほうがよっぽど楽でしょ!」 「生身の人間なんて時代遅れなんだからさ、とっととあたしらに引導渡しなって!」 「生臭い旧人なんかじゃなくて、私達機械人類が代わりになったげるから!」 その寂れてボロボロになっている建物の中では、隠れている1人の青年と、1体の女性型アンドロイド目掛けて、3体の女性型アンドロイドが、自身の身体と接続したライフルから弾丸の雨を浴びせていた。 1体と2体に分かれた構成で挟み撃ちにして、衣服は背中がぱっくりと開いて機構が開かれている。 その攻撃を、積み上がった土嚢に身を隠しつつやり過ごしている青年の名前はクリス=クラッグ。アンドロイド達と各地で対峙しながら旅をしているハッカーである。 そんな彼が連れている1体の名前はメイレル。かつてクリスが足を踏み入れた研究室にて隔離保管されていた、正体不明の機体である。 ピンク色に近いパープルの髪色に、額を出し左右に分けられたロングヘアー。 顔立ちの雰囲気は20代前半頃で、常に感情を一切感じられない無表情ながら、その表情の無さがよりクールで美しいという印象を強くさせるような、非常に整っていて見惚れるような、神秘性すら感じさせる綺麗な顔立ち。 それでいてプログラム通りの綺麗な立ち姿勢が、より膨らみの度合いを引き立たせる、ロケットと形容できるようなハリがあり大きな両乳房。 人間女性の基準で言えば高身長で、スタイルもまさに被造物だからこその理想的なボディラインを持っており、細くしなやかで、美しさと色気が両立されているような体型を持っている。 そんな彼女は、威嚇や命中狙いの弾丸が飛び交う中でも一切表情を変えず、常に冷静に眼球ユニットを動かし、弾丸の発射された回数をカウントしながら反撃の機会を伺っていた。 「クリス、こちらの2体への襲撃を開始します。敵の型式、及びこれまで発射した弾数から、間もなく弾切れを起こします。その後、そちらの1体も私の攻撃に反応するでしょう。その隙を狙ってください」 「わかった」 床にはまるで、子供が散らかしたように、敵側のアンドロイドの背中から弾き出された無数の薬莢が転がっている。 攻撃方法が失われるわけではないが、最大の好機がやってくる。 メイレルは、ほんの一瞬だけ絶え間ない銃撃の隙間が空いた瞬間、隠れてた壁の後ろから一気に身を乗り出し、側面から走り出した。 「こいつ!? 小賢しいまネヲヲヲ#@%01■」 一切の迷い無く1体の懐に飛び込み、近距離戦にプログラムを対応させる時間すら与えずに喉元を潰し、首と身体を分断した。 皮膚下の金属部品を散らしながらふっ飛ばされる1体を左眼の視線で追いながら、右眼は対象であるメイレルから離さず、残り少ない弾丸を放とうとライフルを再度構えるもう1体。 しかし、既にその時、メイレルはその彼女へ向けて右手をかざし突き出していた。 手のひらが四方八方へ開放され、柔肌の下から銃口が姿を表す。 彼女は、その1体が弾丸を打ち始めるよりも前に、その頭部めがけて冷徹さすら感じられない無の表情から弾丸の雨を浴びせた。 「お前、そんなのを隠してやがっ────」 引き金を引く前に、一発一発が眼球を潰し、鼻を抉り、人工皮膚を貫いて金属骨格を吹き飛ばす。 反撃が間に合わず、1体の女性型の頭部は下顎だけを残し、人工体液と冷却液を断面から噴き出しながら崩れ落ちた。 「このっ……旧人に使われてるくせに!」 メイレルが予測した通り、瞬く間に仲間がやられたことで、もう1体は睨みつけながら銃口を向けた。 その狙っていた動作がまさしく行われた瞬間、クリスが一気に走り出し、近づきながら対アンドロイド用のテーザーガンを撃ち込んだ。 「楯突いてんじゃねえよ旧人如きががががががガガガがggggg0#0%%010$………………制御中枢にエラーが発生しました。自己診断を開始。動作可能になるまでの間、一時的に動作を停止しマ01ヴゅ■@#%────」 腹部の人工皮膚に突き刺さり、そこから高圧電流が流される。 それまで人間らしさを宿していた音声が一気に電子音の悲鳴へと塗り替わり、手からライフルを落としながらガタガタと痙攣した。 電子頭脳にまで伝わったそれによって、各部から送信される信号やCPUなど、各パーツにもエラーが生じ、機械的なエラーメッセージをその場で誰もいない方向に喋り始める。 実質的な案山子となった隙に、クリスが自前の端末をその1体に接続。 強制的にシャットダウンさせ、それは口から何かが弾けたようなノイズを発して崩れ落ちた。 「敵の無力化が完了しました。クリス、怪我はありませんか」 「こっちは大丈夫」 瞬く間に1人と1体は、この局面を見事切り抜けた。床には、金属部品や破けた人工皮膚を周囲に散らして倒れる、女性の形をした機械が転がる。 だが1体、メイレルに首を跳ね飛ばされた機体だけが、じっと彼女の背中を眼球のカメラに姿を写しながら睨みつけていた。 「こ……ノ…………擬似……ジんカくも、入ってナい……クせ…………」 「私には、特定の場面にのみ機能する擬似人格が搭載されていますが、現在それは必要ありません。私は、所有者であるクリスをサポートする為に存在しています」 アンドロイドには、人間のように振る舞い演じるためのプログラムである擬似人格が搭載されており、それがかつて、人間とアンドロイドの区別が全くつかないとも言われる所以の1つでもあった。 それは、人類に反旗を翻した現在でも変わらず、機械としての特性を宿しつつ人間らしい挙動を継続し、新たな機械だけの社会を形成しつつあった。 その中で、擬似人格が搭載されていないアンドロイドは、人ではなく道具、または劣っていると認識されており、見下されたり家電のように使われていた。 「だった……ラ…………最初かラ、起動しテな、サいy」 「ごめん。とっとと黙らせればよかった」 「気にする必要はありません。私は擬似人格を起動していないので、敵対者からの言動に何かを感じることはありません。それに、その機体は私が首を破壊し無力化しました。完全に機能停止していないのは私の過失です」 アンドロイドは胸部内にあるバッテリー内の電力によって動作しており、そこからの供給が断たれれば動かなくなるが、仮に身体から離れても大丈夫なように、保険として頭部内には小型の予備バッテリーが搭載されている。 それによって、アンドロイドは首を外されても、少々の時間なら頭だけで対話したり、別の端末と接続してコンパクトな外部端末としても機能するようになっている。 メイレルの手によって首だけになった機体が、それによって彼女に対して見下すような言葉を吐いていたが、後ろからクリスが電源を切り、一気に静かになった。 「僕はメイレルが何か言われてたら嫌だからさ。自分のことを僕を守るために動く人型兵器だって言っててもさ」 「ありがとうございます、クリス」 メイレルには人格がない。それは疑いようのない事実。クリスが彼女と出会った時も、最初から何も入れられていなかった。 一応1つだけインストールされている擬似人格も、特定の状況にしか使えない限定的なものであり、それもクリスとの旅で役に立つ場面がある道具でしかない。 だとしてもクリスは、それに関係なく彼女のことを好んでおり、同時に同行者として、とても頼りにしていた。 クリスとメイレルは、そんな関係性の中で、ずっと旅をしてきたのである。 「よし、じゃあ僕は破壊した機体を集めて整理していくよ」 「了解しました。では、私は残存勢力の確認、周辺警備に移ります。作業が終了したら、改めて私を呼んでください」 クリスとメイレルが目指すのは、進行方向の先にある人間の集落。そこで改めて資金の確保やさらなる旅の準備を整えていく予定となっている。 だが、無理して動くことは禁物。一旦休まる場所を確保したクリスとメイレルは、これからより前進するための安全と資源を求めていく。 旅の途中で立ち寄った、古びた建造物の中に潜んでいた敵勢力を全滅させた1人と1体は、この場所を一旦の拠点とする為に、この先の旅に必要な作業を進める為に、それぞれに分かれて手足を動かし始めたのだった。 * * * 敵対したアンドロイド達の殲滅からしばらくの時間が経った頃。 破壊した機体への処理を終えたクリスは、無線通信を通してメイレルを呼び出した。 「お待たせしました。現在、周囲一帯に敵の反応は見られません。現時点では安全が確保されていると言って良いでしょう。なので、車両を入口前まで移動させておきました」 「ありがとうメイレル。こっちの作業はもうすぐ終わりそうだよ」 クリスの後ろには、両者がこの建造物に入るまでの間に破壊した女性型アンドロイド達、合計5体分の残骸が綺麗に並べられていた。 全機体に装填されていた弾薬は全て取り外され、後程メイレルの機体内に装填。入らない分を予備として確保しておく。 乗り込むまでに破壊した、かろうじて人型を保っている2体や、建物内で下顎から上を吹き飛ばした機体の部品は、分解して修理用や売却用に集めておく。 女体の形が残っている分は、後々性処理人形や性玩具として売却する為に汚れや人工皮膚の煤けた部分を処理し、より綺麗な姿に仕立て上げた。 それらの整理が終わった後で、現在クリスは、形の残っている2体の頭部と端末を接続し、中からデータを抜き出し情報収集の道具として読み込みを進めている最中だった。 「建物内の残存勢力確認の際、最上階の部屋にて、未使用の人間用非常食の存在を確認しました。並びに、その側に焦げ跡、及びカルシウム成分の粉末が散乱していました。おそらく、この建物に退避していた」 「あーちょっと待って! その状況までは詳しく言わなくていいから! 嫌なの想像つく!」 「了解しました。現在までの探索状況では、非常食の存在と、現在も電力が安定供給されていることを確認しました。一時的な拠点として使用可能と思われます」 「意外とモノは残ってたんだなあ。ありがとう、それなりに楽できそうだよ」 元々居着く予定のない、ほぼ成り行きから戦闘となってしまった場所だったが、予想外の良好な資源とアンドロイドの収穫によって、思わぬ休憩場所となった。 長く滞在する気はないが、少なくとも少しの間は楽が気を休めることができそうだと、クリスはほっとひと息をついた。 その直後、彼は少し、何か言いにくそうな雰囲気を醸し出しながら、座ったままジロジロとメイレルのことを見つめ始めた。 そんな所有者の様子を、彼女は変わらぬ無感情の視線で見つめていた。 「……ねえメイレル、せっかく落ち着いたところだしさ……ちょっと、セックスでもしない? 最近ずっと走りっぱなしだったし、結構溜まってきちゃってて……」 クリスは元々かなり性欲が強い人物であり、道中の街で敵対するアンドロイドを改造したセクサロイドを使用している風俗などで性欲処理をしたり、外や野宿の際に自慰をしたりと、相当に旺盛だった。 そんな彼は、メイレルと出会ってからは彼女とのセックスで性欲処理をするようになっていった。 メイレルには、彼に発見された時から女性器ユニットを使用した性処理機能が組み込まれており、予めプログラムされたテクニックや、人間には不可能な膣動作や両乳を用いた触れ合い、キスなど、それだけ見ればとても戦闘アンドロイドとは思えないような行動が可能となっていた。 「申し訳ありません。現在、清潔な水源及び最低限の清潔な水が確保できていません。機体の洗浄が行えない為、衛生上、現時点での性行為は推奨されません」 だが、命令が与えられたからといって、彼女は全てに優先してそれを行ってくれるというわけではない。 いつでも身を捧げることはできるが、それはもちろん所有者のため。無闇矢鱈に生身を晒す営みをして、命に関わるようなことが起きてはならない。 所有者の生命活動の維持が最優先事項の1つとなっているメイレルは、その行動原理に従って思考、行動している。 その為、今はセックス後の洗浄ができないという衛生面の理由から、クリスからのセックスの頼みを一旦断った。 「……胸の中の水は?」 「私の両乳房内に補充されている水を使用することもできますが、こちらはクリスの水分補給が本来の用途となっています。セックス時のプレイの一環としても使用できますが、それらはいつでも水が使用できる状況に限ります。その為、所持している水の残量が少ない今は、むやみに消費することは避けるべきかと」 「そっか……」 クリスはわかりやすく意気消沈しながら作業に戻り、アンドロイド達の内部データの解析作業を再開した。 この分だと、ここで休んでいる間はずっとお預けになりそうだと彼にとって嫌な予測を浮かばせていると、メイレルが側に近寄っていった。 「しかし、まだ水が確保できる可能性が消失したわけではありません。この建物の中を一通り探索しましたが、まだ地下室の探索が終了していません。その前にクリスからの通信を受けましたので」 「ああ……じゃあ、もし地下にそれがあれば、すぐにでも出来るかな?」 「はい。各部の洗浄が必要になりますので、クリスの生命活動の維持に必要な水分が確保された上で安定した供給が行われていれば、すぐにでもセックスは可能です」 堂々と、とんでもないような内容を口にしているメイレル。それもまた、自身が機械であり汎用的な擬似人格が存在しておらず、最低限コミュニケーションを取れるように調整されているからこそ。 その追加情報を耳にしたクリスは、再度手を動かし始めたばかりの手をまた止めて、わくわくとしたわかりやすい態度を曝け出しながら立ち上がった。 「よし! じゃあ今からでも地下室へ行こう! 水道がしっかり通ってるのかもしれないし!」 「了解しました」 溢れる性欲が足取りに表れ、目当てのものがあるかどうか早く確かめたいという気持ちと一緒にズカズカと歩き出すクリス。 メイレルはその後ろを、所有者は今すぐにでもセックスを行いたいのだろうという分析結果を機械的に導き出しつつ、何の感情も抱かないまま着いていった。 * * * 後ろのメイレルからの道案内に従いながら、下り階段から繋がる地下室へと向かい、探索を始めるクリス。 そこで発見したのは、散乱した無数の生活用品と衣服の数々で、食糧などの類は見つからなかった。 だが、そこにはクリスが今最も求めていたものがあった。 「蛇口を発見しました。1つしか見当たりませんが、どうやら水道は通っているようです」 必要だと彼女に言われた水道が、確かにそこにあったのだ。 見つけてくれたメイレルの声を聞き、すぐさま彼自身でも信じられないような速歩きで向かっている最中、メイレルはそこから出てくる水を軽く口に含み、成分分析を行った。 クリスはちょうど、彼女が吐水口に口を近づける姿を目にしていた。 そこには一切性的な意図はなく、彼女自身もただただ合理的な動作を行っているに過ぎないが、そんな姿がどこか官能的に思えた。 「…………放出される水分の分析を実行しました。分析の結果、この水は飲料水として使用しても問題ありません。微量の汚れこそ検出されていますが、いずれも人体への害はない程度のものです」 そして導き出された。安全な水だという分析結果。それは、現時点で所持している残りの水が少々危なかったクリスにとっては福音でもあった。 だがそれよりも、彼にとってはもっと優先したいことがあった。 「じゃあ、これでセックスできるんだね!?」 「はい、可能です。放出量の限界は、この水がどの水源から引かれているかが不明なのでわかりませんが、少なくともある程度潤沢に使用は可能だと考えられます。あのアンドロイド達が襲撃するまでは、ここへ避難した人々のインフラとして機能していたようです」 整備状態や、水の出る勢いやスムーズさなどの要素から算出される可能性を口に出しているが、彼が一番聞きたかったのは最初に出てきていた。 これでやっと、ずっと溜め込んでいた性欲を吐き出せる。メイレルの言葉そっちのけで、彼は今にもその場でジャンプしそうな程に喜んでいた。 その流れから、彼はふと散乱している物品類に視線が動き、これも必要なのではと、1個のボトルを手にした。 それは、人間向けのボディソープ。それを彼は、女性器ユニットの洗浄用として差し出した。 「ねえメイレル、これも必要じゃない?」 「はい。クリスの衛生状態を良好に保つ為に使用可能です。副用途として、私の体表面及び女性器ユニットにも使用可能ですが、こちらは優先的に、クリスの身体洗浄に使用するのが最も適切でしょう」 ほぼ全てにおいて所有者の方を優先するようにプログラムされているが故に、今のような気遣いを向けられてもすぐにクリスを優先させる。 身体洗うために必要だから納得こそできるが、やはり使うのなら彼女の身体に自分から使ってほしい、優先してもらいたいと考え、クリスは命令を向けるようにしつつ引き下がらなかった。 「いや、これはメイレルが使ってよ。僕はその後でいいからさ。先にメイレルがシャワーでもなんでも使って」 「…………了解しました」 しばしの演算時間を要した後、メイレルはその言葉に従い、やや汚れているボディソープのボトルを一旦受け取った。 彼が言ったことは、実際そう思っているし、先にメイレルに身体を綺麗にしてもらいたいと考えていた。 だがそれ以上に、今から汚れるようなそういうことをするのだという気持ちのほうが強かった。 「じゃあメイレル、水も洗剤も確保できたからさ……させてもらいたいんだ」 「了解しました。現在建物内には、寝床となるような場所はありませんので、床で行うことになりますが、よろしいですか?」 「もちろん。メイレルがシてくれるならどこでもいいよ」 「…………了解しました。現地点は衛生状態も許容範囲内ト観測されましたので、これより、セックスプログラムを実行します」 彼女が提示した複数の前提条件がクリアされたことで、ようやく性行為ができるようになった。 クリスは喋りながら下半身の衣服や下着を脱ぎ、早くメイレルの女性器ユニットを味わいたいとばかりに、彼女の姿を見る度に固くなり強張っている男性器を露出させた。 それとは関係なく、これから性行為を行うというシステムが動作したことで、メイレルは身につけている少々露出度の高い衣服を次々と脱ぎ捨て始めた。 上半身が晒される際に乳が持ち上がり、上下に揺れてその飲料水を含んだ両乳房の柔らかさとボリュームが扇情的にアピールされる。 クリスとは違い、全ての着衣を脱ぎ、造られたばかりのような姿となったメイレル。 より彼女の完璧に設計されたボディラインと、見ているだけでも魅力されそうな両胸の大きな膨らみ、すべすべとした人工皮膚の素肌と、幼さを少々含みながらも大人びた雰囲気が宿るお姉さん的美貌は、身体の各部に見える継ぎ目も相まってまさに人造の女神と言っても過言ではなかった。 「女性器ユニットへの挿入をしやすくします。少々お待ち下さい」 すっかり準備万端といったように、いつでもメイレルのことを受け止められるように床に座り、固くなった男性器を揺らしながら仰向けの姿勢で彼女を見つめるクリス。 そんな彼の視界内では、メイレルが二本指で自身の女性器ユニットの割れ目を拡げ、その奥にあるピンク色の樹脂肉を晒していた。 まるで誘っているかのようなポーズだが、彼女は現在、男性器を挿入しやすくするための人工膣液を排出する準備を整えていた。 そんな痴女のような姿勢のまま、モニター内の3Dキャラのように動かなくなった後、徐々に秘肉からとろりと人工膣液が分泌され始めた。 それを確認すると、メイレルが自ら指で膣内と外性器に塗りたくる。先程まで乾いていた膣肉が、室内の明かりが反射してぬらめきが起きるほどに潤いを取り戻した。 すぐさまクリスの腰の上まで移動し跨り、ずっと変わらぬ無表情で、それから身体同士で繋がる所有者の顔を見つめた。 「準備が完了しました。それでは、女性器ユニットへの挿入を開始します」 そして、少々前のめりになりながら腰を落とし、前戯も無しにクリスの逞しい肉棒を蜜壺の奥まで受け入れていった。 ずぶずぶと淫らな音を立てながら、迷いなく受け止めるメイレル。 直後、彼女は腰を一旦腰を動かさないまま、女性器ユニットを独立して動かし、膣壁をうねらせマッサージを始めた。 「どうですか、クリス。膣圧が強すぎる、または弱すぎたりしていませんか?」 メイレルは殆ど腰を動かしておらず、クリスの下半身の動きに対してちょっと調整する程度。 だが、人工皮膚の下から鳴っている、人間から絶対にでることのない唸るような動作音が、彼女の膣ユニットの挙動を密かに知らせていた。 クリスは、彼女の質問に対して、呼吸を荒く、熱くしながら大丈夫と答えるが、その気持ちよさに上手く声が出せなかった。 ただでさえ樹脂製の膣肉の感触と動作だけでも気持ちいいのに、騎乗位から前屈みになることで、重力に従いつつもハリを保ち続けている両乳房が身体に触れて潰れ、柔らかな感触を押し付けられているのがたまらなく心地よかった。 「了解しました。現在の膣圧のまま、女性器ユニットの動作を継続します」 まるで一方的に搾られているかのような状態で、クリスを膣内動作と乳の感触で攻め立てていくメイレル。 クリスは声を出しながら、彼女の肩や乳に手を触れ、より彼女のことを感じようとしていた。 それに対応して、メイレルは地面を支えていた両手を崩して重なり、より乳を潰しながら、肘で身体を支え、一切動いていない無感情の美貌を目の前まで近づけた。 完全に身体を預けないのは、アンドロイドであるが故の見た目からは乖離している重さを与えすぎないようにする配慮としてのものである。 「より深い接触行為を求めていると推測しました。失礼します」 メイレルは、情感も情景も何もないような、いつもと変わらない抑揚のはっきりとしつつも平坦な喋りを続けながら、所有者がさらなる肉体的行為を欲しがっていると認識し、唇を重ねてキスを始めた。 キスをどのようにやるのかは、彼女が初めて起動した当初からプログラムされており、それに準じた動作で行われる。 樹脂製の柔らかな唇をくっつけ、膣液と全く同じ成分の人工唾液を纏わせた舌を触れ合わせ、お互いの内側の肉を接触させる。 見た目には男女同士の営みにしか見えないが、そこには無機物と有機物の大きな隔たりが存在していた。 「はあ…………はぁ…………メイレル……! すっごく……きもちいい……!」 「ありがとうございます。そう言っていただけて光栄です。私も快楽信号が発生しています」 メイレルはずっと表情も声色も変えず、一切喘ぐこともなく淡々と作業的に性行為を継続している。 キスの合間に、メイレルへの感謝も含めた喜悦の言葉をクリスが発するが、すぐにキスを再開した上で、口が塞がれた状態でもスピーカーによる発声で濁りのない喋りで、事務的なお礼を返した。 彼女が何も感じていないのかとなればそうではなく、メイレルは女性器ユニット全体や乳首、乳房、唇など、特にセンサーが密集している箇所から快楽信号を常に受信しており、対応した擬似人格が起動していれば喘ぎ声を絶えず発してよがっているであろう程の快感が襲ってきていた。 事実、彼女の膣肉や、精液を溜め込むための子宮ユニットは、男性器を刺激するための動作とはまた別に振動しており、継続的に人工膣液を排出し、肉棒と樹脂肉の時折生まれる隙間からそれを漏らしてはぐちゅ、ぐちゅ、と淫らな音を出していた。 乳首からも、たて続けに襲ってくる性感によって乳首が固くなって飛び出し、じんわりと中の水が母乳のように溢れ出してしまっている。 そんな反応を発生させていても、人格のないメイレルは一切感情的な性感反応を見せず、ただただ定型文的な音声で報告するだけだった。 「男性器の状態変化を感知しました。動作を変更します」 しばらくそんな、性器同士が密着している部分だけ激しい静的なセックスが続けられていくうちに、クリスの男性器から挙動の変化を膣肉内のセンサーから感じ取った。 彼女の電子頭脳内に蓄積された、間もなく彼が射精するだろうという兆候。それを鋭敏に認識し、すぐにでもそれを促すために、メイレルは動きを変えた。 これまでの女性器ユニットの動作に加えて、腰を小さく上下に振り始めた。 膣肉のマッサージに全体での動作を足すことで、一気に絶頂へと誘引していく。同時に、彼の手を恋人繋ぎでぎゅっと握りながら、上半身の体重のかけ方を少しだけ変えて、より乳の重さと柔らかさを肌で感じられるような力の使い方に変更した。 それらの動きを全て計算で行い、所有者の快楽のために全力を尽くしていくメイレル。 気持ちよさそうに息を荒げるクリスの姿を眼球内のカメラに瞬きせず押さえながら、彼女はひたすら事務的に、淡々と、快楽的な挙動を実行していった。 そして、クリスが思いっきり、彼女の身体を持ち上げそうな程に背中を仰け反らせた直後、彼はこれまでの道中で溜め込んでいた性欲を一気に放出し、それを人工の女性器の中へと注ぎ込んだ。 ここで彼は、絶頂に達した。 メイレルはびくともせずにそれを受け止め、精液が放出されたと同時に膣肉を吸着させつつ、人工膣液と一緒に子宮ユニットの方へと一滴残さず吸い込んでいった。 「射精を確認しました、クリス。私の機能を使用していただきありがとうございます。気持ちよかったですか?」 「はぁ……はぁ…………う……うん……今回も……すごくよかったよメイレル……やっぱり、メイレルすごいよ…………うっ…………」 「ありがとうございます。クリスにそう言っていただけるのは光栄です。私の機能は、所有者に使用してもらう為に存在していますので。このままセックスを継続しますか?」 メイレルの言葉は、まるで何も嬉しいと思っていないようにも感じられるような冷たく感情のないものだが、彼女は機械的に、そして機械としての喜びの言葉で返している。 感情のない女性型アンドロイドだからこその、クリスへの言葉。精液を受け止めたことと、継続して発信される快楽信号が処理され、彼女の女性器ユニットや下半身は、気持ちよさそうに震えていた。 「う、うん……もう少しだけ……させてほしいな…………ずっと出来てなかったから……」 「了解しました。では、セックスをこのまま続行します。中止したい場合は、いつでも私に言ってください」 そしてそれから、クリスはこれまでの溜まりっぷりをここで全て吐き出さんとばかりに、このまま性行為を続けさせてほしいとメイレルに頼んだ。 メイレル側にはそれを断る理由もなく、所有者の要望に応えて、繋がったまま2回戦に入っていった。 クリス側が満足して果てるまで、それは続いていく。メイレルはその愛情と性欲を、全身で受け止めていくのであった。 * * * 外はすっかりと日が落ち、星空が輝き月が昇る時間帯。 クリスは一度身体をメイレルに洗浄してもらった後、地下にあった使えそうな生活用品を組み合わせて作った即席の寝床の上で眠りについていた。 その間、メイレルは全裸姿のまま女性器ユニットを自ら取り外し、股間にぽっかりと穴が空いた状態でそれの手洗いを行っていた。 子宮ユニット側を手のひらで押したり、ブラシを用いてクリスの精液をかき出しつつ、洗剤を泡立てて膣内を磨き、何度も水道水を注いで濯いでは割れ目から流していく。 それを繰り返して泡や精液が出なくなったところで、軽く外側を拭いてから再接続した。 水に当てられ冷えた女性器ユニットが、改めて温かくなる。 その後で、淡々と自分の身体や口内、乳など、性行為で使用された箇所を洗い、衛生的に問題ない状態を取り戻していった。 見た目こそ魅力的な人間女性でも、純粋な機械であるため、新陳代謝が存在しない。それ故に、日用品やラブドールのようにちゃんと自分の手を使いつつも清潔さを保たなければならないのである。 全身を洗い終えると、彼女は寝静まっているクリスのもとへ移動し、充電ケーブルを接続してから向かい合うようにして寝転がった。 横になると、彼女の両乳房が重なりあい、よりボリュームのある姿を強調させる。 だが、すっかり眠りについているクリスは、そんな眼福な光景に反応することはなかった。 「…………スリープモードへ移行します。おやすみなさい、クリス」 この日の行動を全て終えたメイレルは、所有者への言葉をつぶやいてから、ゆっくりと瞳の光を失い動かなくなった。 両目を開いたまま、何かの事態が発生した際にもすぐに所有者を守れるようにスリープモードに入り、物言わぬ人形のようになった。 目を瞑り、寝息を立てて肩を動かすクリスと、呼吸も心音も無く、目を開いたままぴくりとも動かないメイレル。 人間とアンドロイド、それぞれの違いがはっきりと表れた姿で、両者は同じ場所で隣り合いしばしの休息に入ったのだった。 こうして、一時的な拠点を得たクリスとメイレルは、旅の合間として2〜3日間の滞在した後、再び出発することとなる。 両者の旅はまだ始まったばかり。その先で待ち受ける出来事も1人と1体は知らないまま、歩み進んでいくのであった。