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土装番 from fanbox
土装番

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機械たちに囲まれた理想の街づくり計画 1話先行公開版

 人には誰しも理想というものがある。それが叶えられたらと思うと、とにかく深く考え込んでしまうことはよくあることだが、いざそんな状況となった時、どれだけの願望を叶えようとするのか。  まるでシミュレーションゲームのように、自分の願望が詰まった、または自分の欲望が反映された街を作れるとなったら、どこまで踏み込み、どれだけ自分の欲望に忠実な形を作っていくのか。  それは、本当にそんな状況になってしまったそれぞれの個人にしかわからない。  これは、普通に暮らしていた一人の男が突如連れ去られ、その到着先で出会った管理者の協力と共に、女性型アンドロイド達を用いた自分好みの実験都市を作る話である。 * * *  ある正午過ぎの時間。空は快晴で雲ひとつない爽やかな景色。  そんな清涼な空の下で、ある一台の車両が、一人の男を乗せて走っていた。 (何がどうなってんだよこれもう……明らかに足場の悪いとこ走ってるし、何がどうなってんだ……?)  彼の名前は園部康生。ある島国の首都で、普通の会社員として働いている一人暮らしの男性である。   まだ会社員になって間もなく、もうすぐ1年が経過するかどうか、という時期に入り、彼自身もその期間を実感していた。  だがそんな時、この日の朝に突如、彼の住む部屋に3名程の身を隠した女性が入り込み、口を塞ぎながら彼を拘束。  女性とは思えないような力で押さえられ、何度も抵抗しようとしたが、そのまま眠らされどこかへと運ばれた。  目が覚めると視界を塞がれ、全身を縛られ動けない状態となっていた。  外部から入ってくる音や、いつも聞こえる振動音、エンジン音から、自分は今トラックか何かの荷台に入っていることだけはわかる。  何度もここはどこなんだ、一体何をしようとしてるんだ、と、まるでドッキリ企画のような現状の中で声を上げるも「もうしばらくお待ち下さい」という淡々とした女性の声しか帰ってこなかった。  そして、結局いくら声をかけても質問してもまともに答えてくれないため、諦めた結果今に至る。    (テロ組織とか誘拐とかでもないよな……つーか、そういうのならもっと騒ぎになってるはずだし、なんで俺なんかを……考えてもどうにもなんないけど)  わけもわからず、音と感覚しか情報が入ってこない今、康生の不安は募る一方。  そもそも何が目的なのかもわからず、何の為に自分を誘拐したのかも全く見当がつかない。  そんな時が何時間も続き、時刻が14時半頃になった頃、ようやくトラックが信号以外で停車した。  すると、周囲にいたおそらく女性と思われる者達が一斉に立ち上がり、康生の肩に腕を回す。  彼は抵抗する気も起きず、ただされるがままになっていたが、腕を入れられた直後に、明らかに大きく柔らかな感触が両腕に伝わった。  思わず情欲が湧き出しそうになるが、彼は何されるかわからないと我慢しグッと堪えつつ、両サイドの歩き動く感覚と引っ張られる方向に合わせて歩き出した。  やけに爽やかで心地よい風が肌にあたり、目隠し越しの日光と周囲の静けさで外だとわかるが、足元は妙に慣れ親しんだ感覚があった。 「お疲れ様でーす。もう目隠し外していいですよー」  トラック内で聞こえたものとはまた別の、明るい雰囲気な女性の声が正面から聞こえてきた。  その言葉の後、素直に目隠しが取られていくと、そこには自分の日常とは明らかに違う景色が広がっていた。  足元はコンクリート製で、周囲にはいくつかの一軒家と、テナントの入っていない建物、そしてひとつの巨大工場らしき建造物がそびえ立っていた。  だがそれ以外に目立った建物は見当たらず、むしろその向こうにはわかりやすい程の緑いっぱいな山が存在を主張していた。  都会にある建物と、それを覆うように周囲を取り囲んでいる山々。そのアンバランスな環境は、即座に彼を混乱させるには充分過ぎるものだった。  そして、彼の正面には、先程の声の主であろうスーツ姿の若い女性が笑顔で立っていた。 「ようこそ『名の無い街』へ! お待ちしていましたよ園部康生さん!」 「えっ、なんで俺の名前……」 「まあまあ、それらの話はまた後で詳しく……ということで、おめでとうございます! 康生さんは見事、この街を自由に作成する権利が与えられました!」 「…………は?」  彼の至極単純かつはっきりとした反応は当然のものだった。  目の前にいる女性は、美少女よりの美女という雰囲気で非常に眼福ものだが、それ以前に胡散臭いし混乱する要素が多すぎる。  そんな状況の中で、突然街を自由にする権利が与えられたなどと言われても、まともに頭に入ってくるわけがなかった。 「ええ、言葉通りの意味です! これから康生さんは、この街で好きな建物を作っていいですし、好きな住人を作ってもいいですし、好きなお店を入れていいですし、そんな中で好きなことをしてもいいんですよ!」    「………………頼む、その前にまず状況の把握というか理解というか、俺に今何が起こってるのかとか、そういうのを頭の中に入れさせてくれ……じゃないと、まともに話が入ってこないんだけど……」 「あっ、確かにそうかもしれないですね。失礼しました! では、まずどんなことを知りたいですか?」 「まず、お前は誰?」 「はい! ワタシの名前はミレルと申します。以後、よろしくお願いしますね!」      日光が当たり綺麗にきらめくブロンドのまとまったショートヘアーに、完璧という形容詞がまさに似合うようなとても整った可愛らしい顔立ち。  陽の光に負けないくらいに笑顔が可愛く眩しく、宝石のような青い瞳が、彼女の魅力をより強く引き立たせた。  それでいて、今身に着けているラフなスタイルで着こなしているスーツ、その下に着ているシャツの下から主張している豊満な両胸は、シワを作り動く度に波を作っている。  そんなとてつもない複数の女性的魅力に重ねるように、胴体やしなやかな脚が美しいボディラインを描いており、 美少女という言葉の具現と言っても過言ではなかった。 「は、はぁ……」  挨拶と自己紹介の間、康生の視線は彼女の足から頭までずっと移動していたが、より彼には分からなくなった。こんな美少女が自分に何の用なのかと。  そもそもの状況がわけ分からない上に、さらなるわけ分からないが積み重ねられていく。  どんなことを知りたいと言われても、まずどこから手を付ければいいのか、それすらも内容が入り組みすぎて整理できなかった。 「それで、まずどんなことが知りたいですか? なんでも聞いてください!」 「いやなんつーか……頭の中に入れさせてくれって言った矢先で悪いんだけど、やっぱ何から質問すればいいのかわけわかんねえよ……いきなり連れ出されてなんか荒れた道移動してるっぽくて、そんで外に出されて初めて見る景色がこれって。そんで名の無い街とか自己紹介とか何してもいいとか言われても、どっから整理すりゃいいのか」 「うーん、まあ確かにそうですよね。ではこちらから端的に説明しましょう。なぜ、この街の作成権……いわば運営する権利ですね。それがなぜ康生さんに与えられたのかですけど」 「あっ、そういやなんで俺の名前を」 「それもこの中で説明しますから。ちょっと待っててくださいね。では単刀直入に聞きますけど…………康生さん、女性型のアンドロイド大好きですよね?」  康生は、心臓に楔を打ち込まれたような気分になった。  康生はその個人的趣味、性癖を外では他者に一度も漏らしたことはない。  多少は外で買い物する時、そのジャンルの書籍や作品を購入することはあるが、相手にするのは店員だけであり、そもそも個人まで確定するレベルのことではないはず。  一気に彼の表情が強張る。 「な、なんでそれを」 「さらに言うと、そんな女性型のアンドロイドがエラーを起こして誤作動を起こしたり、設定を変えられて簡単にその通りに動作するようになっちゃったり、人間が出来ないような挙動をしたり壊れたりする姿も大好きですよね? この間なんかも、アンドロイドが胸からウォッカを母乳みたいに出す3D映像作品が……」    「だーーーーっ!! なんだよそれ! なんでお前がそれ知ってんだ!?」 「隠す必要ないですよ! 性癖というのは人それぞれですし、それぞれの好みがありますから! で、本題に戻りますけど……ワタシ達は以前から、それはもうたくさんの人達の情報を収集し、そこから今回の計画に合致する人物を探していたんです。それはもう、非合法と言われそうなこともしていますが、そこは置いといて……そんな中で、ワタシ達はその中の一人に入っていた康生さんの各種端末の情報を確認したんです」  康生の表情は困惑そのものだが、耳は完全に彼女の声に傾いている。   「そこで、この人が最も計画の対象に的確だと判断したんです! 康生さんの性癖、趣向を見込んで、ワタシ達はかなり強引ではありますけど、ここへ連れ出したわけなんです」 「…………まあ、流れはわかったけど、そんで俺に何しろと?」 「もう好きにしてくださって構いませんよ! 根本の目的としては『一人の願望のもとで街一つを創り上げていくと、どのような形に進んでいくのか』というものですから。先程も言った通り、康生さんは好きな建物を作っていいですし、好きな住人を作ってもいいですし、好きなお店を入れていいですし、そんな中で好きなことをしてください!」  未だ納得はいかないし全くもって信じられないが、だいたいの内容は理解した康生。  大雑把に言えば、今いる場所が全て自分の理想の楽園として形作れるというもの。  だが、ここで一番の疑問が残る。それは、自分の性癖と趣向を見込んで選ばれたというもの。  現時点では、人間のように動くアンドロイドそのものは世に出ておらず、都市伝説でたまに紛れ込んでいると話題に出る程度。もうすぐそんな発表がされるのでは? と期待はされてもまだ出てきてもいない。  だからこそ、彼は実写のアンドロイド作品が欲しいと思っているのに、まだ存在しないことをひとりで嘆いていた。  そんな、まだ実現できていない性癖に対して。ということは、と、再び彼の視線はミレルへと移る。 「…………なあ、もしかしてお前って……アンドロイドなのか?」  そんなわけはない。それを前提に、もしかしての質問をぶつけた。  すると、ミレルは屈託のない満面の笑みを見せた。 「はい、その通りですよ! 康生さんだったらその結論にたどり着いてくれると信じてました!」     嘘の返事を作るような隙間もなく、直球で答えてみせた。  だが当然、そんな返答が来ても信じられるわけがない。一応喜ばせる為の嘘や冗談だとしか思えないし、そんな都合の良すぎることが起こるわけがない。 「……じゃあ、証明として腹の人工皮膚を破ってみろよ。アンドロイドならできるだろ?」  修理可能なアンドロイドなら、自分の皮膚を破ることなど造作も無いはず。  人間ならばそんなこと平然とできるわけもないし、もし本当ならば単純に眼福物であり、とてつもない現実が襲いかかってきたことになる。康生は当然、9割9分前者の思考で考えていた。 「はい、良いですよ! ちょっと待っててくださいね」  しかし、ミレルはその予測を簡単に飛び越えた。  変わらぬ笑顔で動揺無くYESの返事を向け、すぐさまスーツ下のシャツをめくり上げてツルツルとした滑らかで綺麗に引き締まった腹部を晒した。  下腹部にあるへそは、人間が母胎の中から産まれたという証でもあるが、彼女にもそれはある。  だが、ミレルは両手で己の下腹部の皮膚を鷲掴みにし、思いっきり左右に引っ張り始めた。  すると、ブチブチと音を立てて彼女の下腹部は裂け始め、中身を惜しげもなく晒していく。  その下から現れたのは、血の一滴も存在していない金属骨格と、複数の配線、何か液体の揺らめきが見えるタンクに、周囲の鈍色とは違う鮮やかなピンク色の球体。  そして、身体の中に収められた携帯端末だった。 「どうですか? これがワタシの中身です。信用してもらえました? マジックやトリックでも、ホログラム映像でもないですよ。正真正銘、これがワタシの内部構造です!」 「い、痛くないのか?」 「はい! 痛覚信号の機能は有してますけど、自由にカットできますし、信号の変換も可能ですから問題ないですよ!」  この瞬間、彼の世界ははっきりとひっくり返った。  これまで焦がれたアンドロイドという存在が、本当に目の前に存在している。ずっと本や画面の中で見ていた、アンドロイドが自ら中身を笑顔で平然と晒すというシチュエーションが、当然のように実現されている。  突如として飛び込んできた夢のような光景に、康生は目を見開くしかなかった。 「………………えっ、ちょっと触ってもいい?」 「もちろん、どのようにしても構いませんよ」  いやそれでもまさかそんなことは。都合の良すぎる現実を受け止めきれない康生は、脳内で否定の言葉をぐるぐる回しながら、許可を得て破れた彼女の下腹部内に手を突っ込んだ。  指で金属骨格や配線、タンクをなぞったり、人工皮膚を表裏どちら側からも触れてみる。  確かにこれは金属だし、人工皮膚の感触もとても気持ちよく柔らかいが、人間のそれとはちょっと違っている。  心臓の鼓動が高鳴り、今にも爆発しそうなくらいに興奮している中、彼は密かにボトムスの下で勃起しながら、振るえる手でピンク色の球体に指を置き、軽くころころと動かした。 「あんっ……ん…………康生さん……そこは、人工子宮ですよぉ……あっ…………快楽信号が、すぐに出てきて、あっ……ん…………」  すると、先程までそんな雰囲気を微塵も感じさせていなかった快活なミレルが、官能的な声を漏らして身体を縮めていた。  突然の色気に思わずビビり、康生を指を離して一旦離れた。  よく耳を澄ませると、彼女の破れた腹部から、微小な動作音が聞こえているような気がする。  性感帯として造られた人工子宮への刺激が収まると、ミレルは姿勢を正して改めて説明の立ち姿に戻った。 「康生さん、気持ちよくしてくれてありがたいですけど、今はまだ説明の時間ですからね。それに、ワタシ以外の機体でもこれはできますから、その時にはもっと使ってもらっても構いませんよ」  先程までのペースを戻そうと喋りを落ち着かせているが、密かに彼女の穴から見える体液タンクが動作音を出し、じんわりと女性器部分を濡らしていた。  まだ混乱気味だが、康生は完全に理解した。ここは本当に理想の世界なのだと。 「では、良い感じに証明できたところで、康生さんにはこちらをお渡ししますね」  すると、彼女は自ら下腹部に手を突っ込み、そこに嵌められていた携帯端末を取り出した。  人型の保護袋に入れていたようなものだからか、ホコリひとつなく綺麗な姿をしている上に、既に保護シートまで貼られている。 「これは……何?」 「一見すると一般的に普及している携帯端末と同じものですが、スペックは圧倒的にこちらの方が良いですよ! それに何より、この中には街全体と住人の管理アプリがインストールされています! これ一つで、住人の情報や操作、街の管理まで何もかも可能なんです!」 「……なんで腹の中に?」 「こういうの、好きじゃないですか? 女性型アンドロイドの中から道具を取り出して、それを使うというものが」 「好きです」 「ですよね! ちゃんと趣味趣向を調べた上での渡し方ですから、気に入ってくださると思っていました! 他にも、ワタシを改造して電子頭脳にセットした物を取り出したり、両胸を開いてそこから取り出してもらったりと、候補はあったんですよ!」  よく調べているだけあって、自分の喜ぶやり方がよくわかっているという驚愕と、その為なら己の身体を改造することも厭わない姿が、より理想通りだという興奮がおしよせてくる康生。  だがやはり、夢見心地というべきか、理解が追いつかないと言うべきか、彼は殆ど生返事しかできない状態にあった。 「では、こちらをどうぞ。じゃあ、まずあの工場に行きましょうか!」  携帯端末を手渡し、腹部が損傷している状態のまま、ミレルは前方にそびえ立つ、威圧感を放つ巨大工場の方を指差し、早速足を進めた。  とにかく今は彼女の指示に従うしかない。だが、今は先の見えない不安よりも、女性型アンドロイドと共にいるという昂揚感の方が勝っている。  康生は、ミレルの背中をついていき、じっと彼女の人造物である女体のラインを眺めながら歩いていった。 「…………ところで、ここで暮らすってなるんなら、今の家とか会社は」 「既に退職の手続きも退去の処理も済ませてありますよ!」 「…………はぁ!?」 「あ、自宅にあった物品は全てこちらで保管してるので安心してください。家具も衣類も、各種端末や機器、アンドロイド物の同人誌や成人向けマンガも、きちんと保管していますから!」   「あーそれならよかった……ん?」 * * *  情報の濁流が流れてきたかのような時間に一旦区切りがつけられ、康生はミレルの案内のもと、視界が開けてからずっと目立っていた工場へとたどり着いた。  道中、康生は目の前のアンドロイドの髪や背中、尻のライン以外にも、周辺に自分達以外の誰かがいないか、隠れたりしていないかと観察していたが、結局誰の姿も見当たらなかった。  足を踏み入れた工場内も、誰一人として人の姿は無く、自動で動いている機械の動作音がひたすら激しく鳴り響いている。 「うわでっけえ……てか、なんのためにこんな工場があるんだ?」 「それはすぐわかりますよ。ついてきてください。説明の意味もこめて、是非とも康生さんに見せたいものがあるんです」 「……そういえば、今この辺りにいる人間ってもしかして俺だけ?」 「はい! さすが康生さん気づきましたね!」  薄々とそんな気はしていたが、改めてそうだと言及されると、康生はずっと感じていた非現実感がさらに強くなった気がした。   対話しているのに、人が自分しかいない。人の営みやテクノロジーの進歩が感じられる景色なのに人間がいない。そんな現状がまだ信じられない。  人類滅亡後の世界を歩き回っているかのような気分でミレルの後ろを歩き続けていると、彼女の足が止まり振り向いた。 「お待たせしました。ここがおそらく、康生さんが特に見たかった光景ですよね。では、こちらをご覧ください!」  ミレルの声と共に、工場内の少々暗かった照明が一気に明るくなり、右手で現在居るフロアの奥側を意識させた。 「う、嘘だろこれ……! まさかアレ、全部アンドロイドか!?」 「はい! アレらは全て、この工場で事前に製造された女性型アンドロイドですよ!」  彼の目に飛び込んできたのは、横2列交互に設置された、無数のアームに背面部が接続された状態で吊り下げられた、大量の女性型アンドロイドの姿だった。  誰一人として衣服や各性器を隠すような処置など施されておらず、四肢が脱力した状態で吊り下げられている。一見すれば、大量の首吊りの姿にも見えてしまうだろう。  アームと繋がった彼女達は例外なく美女や美少女ばかりで、それぞれの顔も体型もきちんと個性が分けられており、なおかつ全てが魅力的に見えるように計算して造られている。  彼女達は現在、全機体が微笑みを浮かべたまま停止しており、今にも表情が動き出してきそうな雰囲気すらある。  だが、彼女達の視線はどこかを見ているというわけではなく、プログラムされた虚ろな微笑みで、意思なく視界内の光景を眼球に写し出していた。 「…………改めて聞きたいんだけど、あれらを全部俺の自由にしていいっとことなんだよな……?」 「そうですよ? それどころか、ここから新たに康生さんの考えた女性型を製造することだって可能ですよ! 先程お渡しした携帯端末から入力することで、自由に新しいアンドロイドも造れますから!」  ミレルという機械の美少女の存在だけでも、彼にとっては僥倖としか言えなかったが、少々彼女は好みからズレていた。  だが、こんなにも事前に製造された機体がある上に、さらに自分がカスタマイズした機体まで造ってくれるというのは、いたれりつくせりが過ぎるというもの。  康生は、操作に慣れるという理由も含めて、まず吊り下げられているうちの一体を自分の目の前まで下ろしてみることにした。 「うわすげえ……近くで見てもちゃんと見ないとアンドロイドだってわかんないな……」  アームのうちのひとつが、康生のいる方向へと伸びていき、セミロングヘアーの美女を運んでいく。  運ばれている間、アームの挙動に連動して髪が揺れ、四肢が揺れ、柔らかそうな大きな乳房が水風船の如く揺れ動く。  距離が縮まるにつれてはっきりとその人工の美貌が見えてくるが、遠くから見たときと変わらずその表情には一切の喜怒哀楽はなく、他と同じ微笑みを保ち続けていた。  アームによって、接続された美女が差し出されると、早速康生はべたべたと頬や胴体、腕に触れ始める。  間近でちゃんと観察すると、やっと肌の質感が人間のそれとは違うと認識できるが、それまではされるがままな無気力な挙動以外に見た目の不審点は見られなかった。  好奇心から来る確認が通過した後で、彼は早速欲望に身を任せる手の動きに変わる。 「……で、やっぱ触らない理由ないよな」  康生の手は、豊かに膨らみ、斜めに身体が傾けられつつもハリを失わず垂れた様子のない乳房へと伸びていく。  その揉み心地は想像よりも素晴らしく、いつまでも揉んでいたくなるほどに心地よい。  人工皮膚のたまらない感触と、乳房の中身が実現させた柔らかさが相まって、最高の品質を担保していた。  それから彼の手は、しばらく触り続けた乳房から腹部、背中、腰、太ももへと移り、そこから尻や女性器部分にまで移っていく。  それぞれ部位ごとに、人間らしくありつつも人間以上の感触の良さを持っており、すべすべした手触りがさらにそれを助長させる。  あまりにもべたべたと触っているにも関わらず、電源の入っていない女性型は拒絶も許容も一切示さず、光のない瞳で最初から変わらない微笑みを形作っていた。  最後に、彼の手は顔に移り、唇の感触を確かめた後で、指を使って口を開いてみる。  口内の構造も、人間のそれをきちんと再現されているが、間違いなく人間の口内環境よりも遥かに美しく清潔に造られていた。  それから、眼球を指で動かし、それぞれ別の方向を向いた姿にすると、気が済んだとそのロボットアームを元の場所へと返していった。  無理矢理表情が変えられ、吊られている美女の形をした機械人形は微笑みの顔から、それぞれ逆方向に白目を剥いてぽかんと口を開いている、狂わされたかのような面持ちへと変わっていた。        「……正直、ここまでとは思ってなかった。これ全部本当に動くし、俺の好きにしていいんだよな……?」 「はい! もちろんです! もっと言えば、搭載する擬似人格や音声、名前から始まるパーソナリティ設定や記憶データなど、個人としてのアイデンティティを形成するような内容も全て決めて構いませんよ!」  ようは、彼女達を人間という認識で動かしてもいいし、家電や召使いとして使っても、セクサロイドとして使っても、偽の記憶をインストールして過去があったかのようにしても良いのだ。  とことん「何もかも全て自分の好きにしていい」ということを明確に告げられると、逆にどうしようか迷ってしまう。  非常に嬉しいことではあるが、嬉しいの積もりが大きすぎて溺れてしまいそうになっていた。 「……そういうのを設定しない時は?」 「一応、こちらがデフォルトでそれぞれに組み込む予定の設定は既に用意してありますよ。なので、何も決まらないけどとりあえず動かしたいって時は、そのデフォルト設定が適用されて自動的に住人として動き始めます! もちろん、稼働後に設定を自由に変更しても大丈夫ですよ。家族設定で動作している機体の設定を削除しても良いですし、面識のない他人同士だった機体を恋人や家族にしても構いません!」  自分で設定していなくても、割り当てられた設定を用いてとりあえず住人として動かすことができる。設定を考えるのが面倒くさい時のケアまでしてくれていることに、ただただ感謝しかなかった。 「なるほどな…………どこまでも使いやすくて優しいな。まあ、まずは何を最初に持っていこうか考えようかな」  とりあえず最初に欲しいなと考えたのは、自分の側にいてくれる、複数の方面から理想通りな相手だった。  最高の妻であり、彼女であり、セクサロイドであり、機械らしい面も出るアンドロイドであり、人間にはできない挙動や機能を発揮してくれる女性。  それにはどの機体が相応しいか、とりあえず現在製造されている機体をそれぞれ確認してみることにした。 「うーん……だいたい高校生くらいか? 可愛いけど、好みとはまた違うな」 「うーん、乳もでかいしエロいけど、なんか理想とはちょっと違うな。近所の人妻って感じがする」 「あー、海外から来たモデルって感じでいいけど、隣に置いとくにはこれじゃないって気もするな」  一体ずつ自分の目の前まで持ってきて、それぞれの顔や肌、身体を吟味し、どれが一番自分の好みや理想に近いかを確認していく。  そんな中で、彼はアンドロイド達の肌や乳などの感触はそれぞれ違うように造られており、素材は同じでもそのような部分で個性を造られているところに、自分のことを連れてきた謎しかない相手はとてつもなく高い製造技術を有していると実感した。  当然どの機体も、どれだけ触られても、性器を弄られても顔色一つ変えず、顔の造形だけが違う同じ微笑みを保ち続けていた。 「お! これいいな! かなり俺の好みで良い! これを俺の彼女……いや妻? まあどっちでもいいか。とにかくこいつにしよう」  そして、彼は己の好みに一番合致する最高の機体を発見した。  適度にふわつきと柔らかさと感じられながらも、全体の持つ艶とさらつきが美しい黒髪のロングヘアーに、全体的には色白気味の真珠のような人工皮膚。  他と同じ微笑みの表情だが、流し目気味で常に意図的に目をちょっと細めているような色気のある目に、彼好みの雰囲気が見いだされた。  顔立ちはシュッとしていて細く、鼻筋も通っており、唇も薄め。全体的にはお姉さん的な大人びた顔立ちとなっている。容姿年齢としては、だいたい20代前半頃か中盤といったところ。  それでいて女性としては身長が高く、平均的な身長の機体よりも、ぶらさがった両足が地面や機材に当たる可能性を秘めている。  そんな高身長が非常に映える、くびれのはっきりしたボディラインと脚の長さ、しっかりと引き締まった肉付きを感じさせる太もも。特に、彼女の両乳房は片手から明らかに溢れてしまう程に豊かであり、降りてきた彼女の乳房を持った瞬間、その幸せな重みが人工皮膚の感触と一緒に手に乗っかり心奪われてしまった。  そんな機体を、彼は側に置く機体として非常に気に入ったのだった。   「お気に入りの機体が出来たみたいですね! 設定はどうしますか? 康生さんが作りますか?」 「一回人格とか設定の入ってないデフォルトの奴で起動してみたいかな。設定はその後で俺が考えてつけるわ」       とりあえずまずは、選んだ機体を起動させてどんな風に動くか見てみたいと考えた。  今更疑っているわけではないが、今の彼女達は、動作しているミレルを除いてラブドールも同然の状態。本当に動くのかはこの目で見ないとまだ実感できない。  康生はとりあえず、アンドロイドとして動作している姿を見てみたいと考えた。 「なるほど! では、とりあえずそのまま起動してみてください。まだ製造されたばかりでセットアップも行われていないので、パーソナリティ設定や擬似人格が入っていない状態での起動になるはずです。それから、テストモードに入ってみてください」     康生は、ミレルのアドバイスを聞きながら携帯端末を操作し、選んだ機体の起動操作を開始した。  すると、機体と繋がったロボットアームが動作し、彼の目の前に立たせるような形で位置を調整する。  機体の両足が地面に着くと、何かのギアが変わったような音と共に四肢が硬直し、全身が直立不動の姿勢へと変わった。  表情も、微笑みのそれから本当の無表情に変わり、よりロボットらしい雰囲気が表出する。  そして、背面部とアームの接続が解除され、開いたままになっている背中の皮膚カバーがアームの手で閉じられた直後、機体の眼の奥のランプが灯り、自律動作を開始し始めた。  まだ名前のない機体が、ゆっくりと口を開く。 「…………電源が入力されました。機体番号0000012、名称未設定、起動を開始します」      人間味の一切ない、抑揚がはっきりとしているが全く感情の存在を感じられない淡々とした音声が彼女の唇の動きに合わせて発された。  初めて聴いたその声は、康生にとっても非常に好みなお姉さん系ボイスであり、まるで人生の積み重ねを感じさせるような色気のある声質なのに全てが作り物な被造物であるという様が、さらに彼の劣情と情緒を刺激しくすぐった。 「声いいな……かなり。これはどの機体もそういう声なのか? デフォ設定のやつとか?」 「いいえ、全機体それぞれに最初から割り当てられた電子音声のファイルがありますね。おそらく、ちょうどこの機体番号0000012に割り当てられていた音声が、康生さんの好みや機体のイメージと非常に合ってたんだと思いますよ」  元々全体的な容姿も雰囲気も好みど真ん中だったが、この電子音声を聴いてさらに好みの要素がひとつ増えてしまった。  康生は、今更になって夢なのではという気持ちが再び湧き上がりながら、彼女のシステムメッセージに耳を傾けた。 「初回起動の為、セットアップを開始します。当機体の起動は、管理アプリから送信された命令の為、管理アプリ側からの操作が可能となります。当機体へ適用する設定を確認してください」       すると、携帯端末の画面表示が変わり、機体の設定画面へ自動的に移行した。  新たな人間的存在を動かすための各種設定がずらりと項目として並んでいるが、まずはそれらを無視して、画面の左上で常に表示されているテストモードで起動というボタンに指を向けた。 「かしこまりました。テストモードでの起動を開始します。少々お待ち下さい」   最初の設定を一旦保留し、人間のフリや真似をしたものではなくアンドロイドとしての動作を確認していく。  アプリ側からの命令を受信し、テストモードの起動準備に入っていった機体番号0000012は、頭部内から静かな空間ならばギリギリ聞こえてくるような動作音を鳴らしながら、少しの時間無言で立ち続けていた。 「テストモードが起動しました。どうぞ、康生様、ご自由に操作してください。尚、テストモード時に受信した設定は、モード終了時に自動的に削除されます」 「あれ、俺の名前を……」 「あ、このアプリから操作している時点で、それぞれの機体にはマスターとして登録されますよ。たとえ普通の人間のように生活する他人としての機体になっても、平常時は他人同士のように振る舞いますけどアプリからの操作で簡単に自分の思い通りにすることができます! あ、ちなみにこれから製造される機体やここにある機体も、康生さんがここで生活を始めた時点で名前が登録されるので!」  これでもかと言えるほどに、ここが自分専用の楽園だと思わせてくれるミレルの発言は、彼の欲望を後押しするものとなっている。  早速テストモードが起動したところで、彼はある疑問をひとつぶつけた。 「そういえばミレル、これ含めたアンドロイドって、どれも自由に壊していいんだよな?」     「もちろんです! 壊れたら修理しますし、常に電子頭脳内のデータは無線によりこの街の中心でバックアップしているので、どのように壊していただいても構いませんよ!」  壊れた際のアフターケアもしっかりしており、やはりその点でも抜かりはなかった。  それがわかれば、機体番号0000012を使ってやってみたいことはただひとつ。 「それがわかればもう言うことないな! じゃあ、まずは……」  康生は携帯端末から操作し、まずは簡単に動作命令を与えてみることにした。  最初に与えたのは、両脚を広げて180度まで開脚させて、左右に柔軟体操をさせる命令。  信号を受信した機体番号0000012は命令通り、関節部の可動域を活かして両脚を180度ぴったりに広げ、左右に身体を傾ける度に両胸を鏡餅のようにしながら、人間としては非常に身体の柔らかい姿を披露した。  運動時、彼女の外性器部分は惜しげもなく晒されているが、擬似人格のない彼女は一切恥ずかしがる気配もなかった。 「本当に指示通りに動くんだな……じゃあこれも、これも……」  端末越しのやり取りにも関わらず、それをきちんとこなして機械としての性能を存分に披露した機体番号0000012。  徐々に彼の命令はエスカレートし、思うがままに、思いつくままに動作命令を与えた。  ブリッジをさせて、頭と両足で身体を支えながら両胸を自ら揉みしだかせたり、I字バランスをさせた状態で残った片手を使って女性器ユニットを弄らせたり、オーソドックスに片手で乳を揉みながら乳首を弄らせつつもう片手で女性器に刺激を与える動作をさせたり。  羞恥的で、人間ならば顔を赤らめ睨みつけてきてもおかしくないような動作も、機体番号0000012は一切自ら発言することもなく、無表情のまま淡々と実行し、己の人間女性の容姿から非人間的な色気を発露させていった。 「本当にどんな命令でもやれちゃうんだな……! なら、これはどうだ」  命令すれば、どんなことでも従い実行する。その姿をまさに目の前で行い示されたことで、康生の欲望はさらに強くなっていく。  行動面の方はよくわかったので、今度は携帯端末側から今回だけの仮設定を組み込み、どんな風に反応するのかを確かめ始めた。   「……新しい設定が更新されました」  「なあ、お前は俺のなんだ?」 「はい。私は、康生様の妹です」 「妹ってのは何かわかるか?」 「はい。妹とは、同じ親から産まれてかつ、より後から産まれた女性のことを指します。妹とは、それ以前に既に産まれている子供にとっての概念にもなります」  康生はとりあえず簡単に、機体番号0000012に自分の妹だという設定を加えた。  容姿の推定年齢からすると、妹ではなく明らかに姉という存在ではあるが、製造されてからまだ間もないはずなので、基準としては妹でも間違いないと思われる。 「まあ、だよな。お前は妹として俺のこと好きか?」 「申し訳ありません。当機体は康生様の妹ですが、現在好悪を判断するための擬似人格がインストールされていません。その為、好きかどうかの質問には答えかねます」  彼女達には、数値として好感度のパラメータが存在しているが、これは擬似人格に適用される数値になっているため、それがない今は好き嫌いという感情的な基準が意味を成さない。  そのような内容を、機体番号0000012はきちんと機械として説明した。 「いいねいいね……そういう回答もかなり好きというか、良い感じのこと言うじゃん」  だがむしろ、このような返答はアンドロイド好きの彼にとって染み渡る水のようなもの。思わず劣情を催してしまう。  そして、期待通りの返答と機械としてどのような反応をするか確認できた彼は、ある意味本命として、もうひとつの設定を加えていく。   「それじゃ、この設定も加えて……」         「…………新しい設定が更新されました」 「手元で操作できるのすげえ便利だな……なあ、お前は俺の母親だよな?」 「はい。当機体は康生様の母です」  追加した設定は「機体番号0000012は園部康生の母である」というもの。  続柄の設定に母親と姉の、絶対に同居しない属性が追加されたことで、機体番号0000012の認識では、自分の母であり妹である存在となった。  当然のそんな設定は、概念の時点から明らかに矛盾しており、絶対にありえないもの。  康生はあえてそれを設定し、さらにわざと、それを突くための質問をぶつけた。 「お前は俺の母親なのか妹なのか、どっちだ? はっきりどっちか証明して自分で答え出してみてくれよ」 「はい。当機体は康生様の妹でありますが、母でもあります。しかし、当機体は康生様の妹であると設定されており、母であると設定されています。しかし、母であるか妹であるか、当機体は母として、妹として設定されています。当機体は康生様の母であり、しかし妹で……」  設定通りに動く人形が、自分が母なのか妹なのか、どっちなのか説明しろと命令されると、矛盾した設定に対して結論に至れず、ひたすら淡々と己に組み込まれた設定を喋り続けるだけになってしまった。  これこそが、康生が見たかった姿。いかにも大人の女性という容姿をしているのに、機械的にエラーを起こしおかしくなっていく姿がたまらなく見たかったのだ。  そしてそこへ追い打ちをかけるように、彼は遠隔操作で機体番号0000012の後頭部カバーを開放し、露出した電子頭脳を自ら取り出すように命令した。 「当機体は現在、康生様の妹として設定されていますが、姉としても設定されています。当機体は現在地である工場にて製造された為血縁関係は存在しませんが、設定上は母であり妹となっております。しかし、当機体が康生様の母親であり、康生様の妹というのは、時系列上でも矛盾が発生しています。当機体は……」  ずっと矛盾した続柄設定の解決をしようと喋り続けているが、同時に彼女の後頭部が、美しい黒髪の植え付けられた人工頭皮と一緒に開いていき、中身の電子頭脳が曝け出された。  容姿全体の人間女性にしか見えない姿から姿を見せる、電子部品の塊。ここに今、彼女の全てが詰まっている。  終わりの見えない矛盾処理を延々と実行させられているからか、空気に晒された後の動作音は通常時よりも大きくなっていた。  発熱し始めているそれを、機体番号0000012は両手を後ろに持っていき、直接自分の中枢部を思いっきり掴んだ。 「当機体には妊娠機能が存在していませんが、康生様の母として登録されています。また、康生様の妹として設定されていますが、当機体が当機体を出産することは不可能であり、また当機体が、康生様を妊娠するという行為そのものがががガガガgggg■■$04■@#&%**=01■■#010$&*ー=■」      そして、それを強引に取り外そうとした瞬間、彼女の声は一気に壊れ始め、元の耳心地良い色気を感じさせる声が消失し、不快なノイズだらけの電子音を発し始めた。  少しずつ、かつ強引に、彼女の頭部から電子頭脳が離れる度、眼球がぐりん、ぐりんと上下左右激しく乱れ動き、脚が震え、唇が痙攣する。  乳頭や女性器ユニットからは、何かを噴き出そうとしているように、空気の空打ちの音が密かになっているが、これは製造されてからそのままである彼女の機体内には、体液代わりとなる液体がタンク内に補充されていないためである。  非人間的な挙動と音声を晒しながら、所有者からの命令に忠実に従い、己の中枢部を取り出そうとする機体番号0000012。  そして、ついに彼女は、電子部品の塊であり自身の全てが保存されているパーツを取り外してしまった。 「■■@0#$01&*!#0■■■──────」  もはやエラー報告しているのかも、矛盾を処理し続けているのかも全くわからない、雑音とノイズだらけの電子音を鳴らす人形と化していた機体番号0000012だったが、電子頭脳がその頭部から外れた瞬間、彼女は一瞬にして静かになり、両手にそれを持ち上げたまま硬直してしまった。  表情は微笑みとも無表情とも取れるような少々歪んだ顔で固まり、眼球がそれぞれ別方向を向いてしまっている。  陰核が存在を主張し、乳首も固くなり卑猥な姿を見せていた。  こうして、起動されて間もなく、機体番号0000012は一人の男の欲望によって強制的に停止させられたのだった。   「あらら、さすがに中枢部が抜けちゃうと動けなくなりますからね。データも一部破損してそうですけど……まあ、テスト以外では今回は初稼働ですからね! 最初から中身はないも同然ですよ!」     同じアンドロイドが故障させられたが、何も気にする様子もなく、笑顔で自分達は道具であるという認識が滲み出る反応を見せるミレル。  そう言いながらも、彼女は裏で、壊れた機体を回収する為の別機体を呼び出していた。 「……それで、どうですか? この名のない街での生活、気に入っていただけますか?」 「……そんなの聞かれるまでもないって。あんな美女のアンドロイドを自分の側に置きながら、この街でどんなことでもしていいって言われたらさ、気に入る以外ないな。あれはいつ頃修理できるんだ?」 「うーん、電子頭脳の破損と内部データのそれぞれの確認が済めばすぐにまた動かせると思われるので、割とすぐにできますよ! やっぱり、あの機体番号0000012を迎えますか?」 「当然だろ。その為に選んだんだからな。今名前とか色々考えてる。戻ってきたときに、それら全部設定していくわ」 「わかりました! では、その設定を決めた後で、これからお二人が住むことになる家についての説明もしていきますね! 決まったら私に言ってください!」  連れてこられた当初や、それまでの過程はとにかく不安や不信感が爆発していた。  しかし今は、それらが全て消え失せてしまう程に幸福な気分に満ち溢れている。現に今、美女の形をした機械人形を一体誤作動を起こさせ、命令を与えた行動で停止する姿を見ることで、男性器が固くなっていた。  こんな時が来るとは夢にも思わなかった。まだ一日とすら経っていないが、康生はこれからの日常を夢見ながら、機体番号0000012が修理される時を待つのであった。 * * *       同日の夕方過ぎ。名のない街へと連れてこられてまだ一日も経過していない時。  彼は、ミレルに教えてもらった、新たな自宅となる巨大な一軒家へと入り、リビングにあるソファーの上で、新たに手に入れた伴侶と共に幸福な時間を過ごしていた。 「まだ夕ご飯食べなくてもいいの? もう良い時間じゃない?」 「いや、まだしばらくこうしてたい。ここに来たばっかりだからさ、なんかまだ落ち着かないんだけど、綾子にこうしてくっついてるとすごく安心してさ」 「ふふ、甘えん坊さんね。じゃあしばらくこうしててあげるわ」  そしてそんな彼の隣には、彼がずっと待ち望んでいたアンドロイドの伴侶がいた。  彼女は紛れもなく機体番号0000012だが、修理された後で妻として迎える際に「園部綾子」という名前が設定された。  同時に、色気を持つ上で甘やかしてくれる大人の女性的性格の擬似人格がインストールされ、初めて出会い操作して壊した時のような、無機質で淡々とした雰囲気は、まるで別人のように無くなっていた。  さらに、現在綾子は、自身のことを人間だと認識して動作しており、夫であると設定された康生と変わらない生身の存在だと思い込まされている。  そんなはずなのに、彼女は自らアンドロイド的な挙動もできるようになっており、胸部タンクや体液タンクを通じ、口や乳、女性器から人間が出せない液体も平然と出せるように設定されている。  その上で当然、人間以上の性機能も有しており、いわば綾子は妻兼セクサロイドという存在となったのだった。  好感度が常に最大になるように設定された綾子は、肩によりかかりくっついてくる夫に、早く夕食を食べてほしいと思考しているが、彼の快がそれよりも優先され、食べたいと思ったときかつ今日が回る前に食べてくれればいいという妥協に入りつつ、夫が自分にくっついて甘えてくれることが幸せに認識していた。 「…………なあ、綾子」 「ん、なに? どうしたの?」 「これからよろしくな」 「ふふ、変なこと言うのね康生は。私はあなたの妻なんだから、当たり前じゃない」  突如与えられた、己の願望が全て具現化されたような、まだ発展途上である理想の空っぽな街。  ここからどんな楽園にするのか、どんな日常を、世界を築き上げるのかは全て康生の趣味と気分次第。  こうして、彼のアンドロイドの酒池肉林に包まれた、極上の理想的日々が幕を開けたのであった。      

Comments

ミレルはメインとはいかないまでも、ところどころでコンスタントに壊れちゃったりする役どころにはなっています!

土装番

これはミレルさんも壊して欲しいですねぇ

ごぼう


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