新品アンドロイドとの同棲生活 1話先行公開版
Added 2024-04-21 04:25:26 +0000 UTC現代よりも離れたとある未来の時代。 各種技術系の著しい発展、発達によって生まれた人間そっくりに動き、会話し、対応する機械人形、アンドロイドが誕生し、それらは少しずつ社会に浸透していった。 そしていつしか、それなりの額を払えば一般人の手元にも置けるようになり、アンドロイドの存在はさらに広まるようになっていった。 アンドロイドを求める人々の理由は多種多様で、色んな用途に合わせた機体が世に存在している。 これは、とある女性会社員が、日常に好みの美女からの癒しを求めて機械人形に手を出して起きた、ちょっとした失敗からの話である。 * * * 時期は9月の中頃。真夏の空気から気温が下がり、ようやく過ごしやすくなってきただろうかという頃。 そんな時期の金曜の夜。とある比較的新しいマンションの一室に、とても大きく細長い箱が届いた。 「ありがとうございまーす…………ふふふ……やったぁーー!! ついに届いたーー!! からずっと待ってたんだよねーー!!」 配達員からの箱を受け取り、ドアを閉じて十数秒ほど経った後で、その場で跳ねるくらいに喜んでいる女性の名前は雪室香奈恵。とある会社に勤めている、二十代中頃の女性である。 髪は綺麗で明るくさらさらとしたミディアムヘアーで、気分によって髪型を変えているが大抵そのまま流している。 全体的にとても整った可愛らしい顔立ちで、それらしい服を着れば学生にも間違えられる。 それでいて胸は大きく、私服や部屋着を身につけると山がはっきりと目立っており、ボディラインも細くスラっとしてしなやかな線が生まれている。 まさに美人やアイドルという形容詞が相応しい女性だった。 「ああもう……専門店で一目惚れしてからどれだけ待ったことかぁ……もう6日も待ってたんだよぉ……あたしが配達日指定したけどさぁ……」 誰も見ていない室内なのをいいことに、箱に抱きつきスリスリと頬擦りし始める香奈恵。 そんな彼女が購入したのは、市販の新品アンドロイドだった。 事は6日前にさかのぼる。 職場環境などの問題もあり、日々の疲れが積もりに積もっていた香奈恵は、ちょうど休みとなっていた土曜日のこの日、フラっとアンドロイド専門店に立ち寄った。 『ああ……いいなあ……でも、全然決まんないんだよね結局……』 ラフでセットもあまりしていない格好で、立ち寄った彼女の顔は非常に疲れておりぼんやりとしていた。 アンドロイド専門店に入ると、そこには笑顔で佇む美少女や、ショーケースの中でプログラム通りの笑顔を振りまく美女が手を振ってくれていた。 それから一定距離まで進むと、その女性型はまた別の客へと視線を向けて手を振り、秘書の立ち姿のような姿勢に変わり佇んだ。 『いいなぁ……あんな綺麗な女の人に甘えたいなあ……でも、好みが見つかんない……』 香奈恵は以前から、自分の家に同居人となる女性型アンドロイドが欲しいと考えていた。 ちょっと自分より歳上なお姉さん系で、とっても美人で胸が大きく身長も高くて包容力のある女性型。それでいて造形がとても自分好み。 そんな美女に、帰ってきたら迎えてもらって、ご飯を作ってもらい、世話をしてもらい、夜は一緒に寝て、時には肉体関係になる。そんな心の癒しと便利さ、ちょっとの性欲開放が日常の中に欲しいと考えていた。 それを目標にして、日々の仕事に耐えながら貯金をしていたが、一向に好みに合致する機体が見つからない。 カスタム品を選べば早いが、その分さらに高くなってしまい、変えるのがいつになるのかわからない。 結局買えない日々が続き、だんだん心身共に摩耗し始めた香奈恵。 今日もまた、理想の機体には会えないんだろうなあト思いながら、フラフラと店内を歩いていたその時、新品の展示コーナーに入ってからまもなく、彼女はあるショーケースの前で立ち止まった。 『…………これは……!』 そこに入っていたのは、2週間程前に販売された、新品の女性型アンドロイドだった。 体型や顔の造形など、既に設定されてはいるが、髪型だけは新たに変更可能という風に記されていた。 香奈恵はそれを見た瞬間、一目惚れした。 『これだ……! あたしが求めてたの、こういう美人だった!! これ! これを買おう!!』 自分が大好きなタイプはこれだったんだ。こんな美女に、美女のアンドロイドが家にいてほしかったんだ。 まるで脳内でビッグバンでも起きたかのようにテンションが爆発した香奈恵は、もう何も難しいことを考える時間も捨てて、すぐに購入に踏み切った。 『そうなんです。髪型はロングにして……』 『これ! この音声が良いです! これにしてください!』 容姿はもうほぼ満点としか言いようがない。だが、あとちょっとだけ変えてほしいところがある。 香奈恵は髪型の変更と、この声で喋ってほしいという音声の要望を伝え、それ以外は完全に勢いのままに話を進めて購入に踏み切った。 最速ならば3日で届くが、休みの日の先で届くのなら。せっかくなら1週間の休みの直前くらいに届いてほしい。そして、仕事から帰ってきた時に出迎えてほしいと、香奈恵は土曜に仕事が入っている次週の金曜の夜に設定したのだった。 そして、現在に至る。 リビングへ重たい箱をなんとか運び終えた後で、開封の準備を整えた香奈恵。 「はぁ、長かったなぁ……アンドロイド欲しいなって思ってから今日まで、やっと理想の美人が来たんだから……」 突然目の前に現れた宝石がようやく自分の手元に来た。 思わず感じているような声を出しそうになりながら、香奈恵は早速、機械の女神が入っている箱を開いた。 「あーーーーー……ちゃんと指定した通りの髪型になってるぅ……! あぁ〜〜〜〜ほんっと美人……」 蓋を開いた先には、まさしく、彼女がずっと求めていた存在が収まっていた。 髪型は要望通り、左右に流しているが半分程額を晒している黒髪のセミロングヘアーで、後ろ髪は箱の中で広がらないように一旦編まれている。 顔立ちは香奈恵よりも歳上で、彼女よりも大人びた細くシュッとした造形で、鼻筋は通って唇は薄め。それぞれのパーツがはっきりとしている、まさに大人のお姉さんという言葉をそのまま形にしたような美貌だった。 何も着せられていない姿で露出している両胸は、元々普通よりも大きい香奈恵よりもさらに大きく、ピンク色の乳首が乳輪と共に存在を主張しつつも、あおむけながら正面に突き出しており、柔らかそうな雰囲気と確かなハリが両立している非常に魅力的なものになっていた。 胴部分ははっきりとくびれ、香奈恵よりも高い身長に担保された脚の長さと相まって、芸術品と形容できる完璧な人工のボディラインが描かれていた。彼女にポーズを取らせれば、どんな姿でも映えるだろう。 全身の人工皮膚には当然シミひとつなくすべすべで、まるで真珠のように色白。起動させる前にちょっと触ってみると、まさしくシリコン製の樹脂肌だとわかるが、それでいて人肌のように柔らかくすべすべとしており、我慢しなかったらいつまでも触ってしまいそうだった。 股間にはしっかりと女性器ユニットが備わっており、男性相手ならばその性機能を存分に使うことができる。 まるで絞り出すような黄色い声で身悶えしながら、ついにやってきた理想の女性型に視線を釘付けにする。 そんな調子でいつの間にか5分近く経過したところで、香奈恵の意識はようやくそれ以外にも向いた。 「あーいけない、こんなことばっかりしてちゃ何にも進まないって。えっと、それ以外には……」 付属されている周辺機器や説明書にも目を通し、一旦取り出してから、梱包材も箱の外へと出していく。 「あっ、口の中にも入ってるんだ」 香奈恵は、口内の状態の影響を及ぼさない為なのか、口の中にも入っていた小さな梱包材に気づいた。 早速、口を開けるために唇に触れる。すると、その感触はとても柔らかく肉感的で、一瞬心臓を熱いなにかが貫いた。 「唇やわらかい……良いなあ……触ってたいかも……」 人差し指でつついたり、そっと優しくなぞったりと、ソフトタッチな感覚で、小指で取り出した梱包材を掴んだまま触れていく。 まるで眠っている隙に好きな人に触れているような背徳感を覚える香奈恵。 その手は、そのまま頬の方へと移りかけたが、ここで彼女は正気に戻った。 「あーダメだいけない。起動まで相当かかっちゃいそう。早く起動させてあげないと…………そんな美人なのがいけないんだから」 購入した女性型の美しさに、自分でもわがままだとわかっているけど思わず言わずにはいられない文句をつぶやきながら、香奈恵は取り出した充電ケーブルを一番近くのコンセントに差し込み、女性型の首筋にある皮膚カバーニ手を付ける。 その下から現れたのは、充電端子と、外部端末と繋げるための接続端子、電源ボタン。香奈恵はそこにケーブルを差し込んだ。 すると、まだ動いていない女性型の喉あたりから、効果音のようなものが聞こえた。 「これで充電だよね……少し待ってから電源入れよっと」 運搬時点では既にある程度の充電は行われているが、香奈恵は新しく買った機器を動かすのに夢中になって、楽しんでいたのにすぐバッテリーが切れてしまったなどの過去の経験から、ちゃんと出来るかという確認もこめてまずは充電するようにしていた。 見た目は確かに人間離れした美貌と女体を持っていてもまさしく人間にしか見えないが、まだ動かしていない段階でも機械的な扱いやそれらしい動作や音を感じると、まさに人間の見た目をした機械なのだと実感できる。 「……よし、もういいかな」 1分1秒ごとに期待が高まり、そろそろ良いかなと感覚的に感じたところで、香奈恵は充電ケーブルを抜き、人工皮膚と違って硬質的な感触の電源ボタンに指を置いた。 「さ、はじめましてだよ〜〜……」 指でボタンが押下された感触を覚え、3秒ほど長押しし続ける。 直後、女性型の身体や頭部から、小さくPCの動作音のような音が聞こえてきた。 そして間もなく、閉じられていた目蓋がゆっくりと開けられ、口が開いた。 「電源が入力されました。この度は、ツーリー社のアンドロイドを購入していただき誠にありがとうございます。購入者様との快適で素晴らしい日々を作り上げるために、初回設定を開始します」 女性型の口から聞こえてきた、落ち着いていてかつ透き通るように耳心地の良い大人の女性らしい電子音声。 現在はシステム側から発される淡々としたメッセージであるため、やや抑揚がはっきりしすぎている雰囲気もあるが、まさしくその声は、香奈恵が求めたそれそのものだった。 箱の中に仰向けの姿勢で入ったまま、眼球だけを動かしてピントをもっと近くにいる香奈恵に合わせて喋り続ける女性型。 人間にしか見えない美女の姿をしていながら、短い間に人間とは離れた行動をする様は、まさしく機械らしいものだった。 「まずは所有者情報を入力してください。端末側からの操作、または音声認識を用いての入力が可能です。音声入力を使用する場合、同時に声紋情報も登録されます」 「ああもうこっからなんだ。私の名前は雪室香奈恵」 「雪室 香奈恵 様でよろしいですか?」 「うん、大丈夫だよ」 今から新たにケーブルを出して繋げるのは面倒だと感じ、香奈恵は口頭での情報登録を行うことにした。 「所有者の名前登録、及び声紋登録が完了しました。続けて、眼球内カメラの中に顔を収めてください」 それからは、音声ガイドに合わせて登録が進められ、作業自体は滞ることなく順調に進んだ。 「あー顔が本当に良い……まだ擬似人格動いてないのに、このクールな顔いいなあ……」 だが、彼女を正面から相手にしている香奈恵は、むしろ音声とその人工的に造られた美貌から来る無感情らしいクールな顔に心臓の鼓動を高鳴らせていた。 「顔情報が登録されました。他にも所有者情報を登録しますか?」 「ううん、大丈夫。…………でも、何かあるならあとから確認してみようかな……」 「かしこまりました。では最後に、当機体の名前を登録してください」 初回設定の手順もこれで最後。あとはこの機械の美女に名前をつけてあげるだけ。 容姿は明らかに女性型の方が歳上にしか見えないが、こうして名前をつけてあげるという段階に入ると、まだ造られて半年すら経っていない製造品なんだという実感が湧いた。 そんな香奈恵は、彼女をひと目見たときから、家に届けられる時までにどんな名前が良いか、どんな名前が似合うかと考えていた。 「名前はね……知美でどう? 知美って名前が良いと思う」 「知美 でよろしいですか?」 「ええ、お願い」 言うまでもない程の美貌と、豊満さとボディラインを持つ綺麗な身体。そんな完璧な容姿と、自分よりも歳上だという雰囲気で色んなことを知っていそう、という印象から、才色兼備の意味も込めて「知美」と名付けた。 「かしこまりました。当機体の名前は知美 と登録されました。全ての初回設定が完了しました。お疲れさまです、香奈恵様。当機体は再起動後、通常稼働に入ります。では、知美を末永くよろしくお願いします」 名付けられたばかりの知美は、プログラム通りにそれを受け入れた後、一度再起動によって瞳の光が失われ、動作音も静かになった。 再び静寂の時間が訪れた後で、改めて知美の動作音と共に瞳に光が宿る。 「電源が入力されました。登録名 知美 起動します。システムチェック中…………ファイル確認中…………完了しました。擬似人格を起動します…………」 最初に聞いたそれとは違うシステムメッセージが発せられ、電子端末と同様の起動シークエンスが進められる。 そして、購入時に指定された擬似人格が起動すると、知美は感情を一切感じさせない無表情が解け、微笑みの顔を作り出した。 視線を香奈恵に合わせたまま、殆ど上半身だけの動作で起き上がり、その場でスムーズな動きで立ち上がる。 彼女の起立した姿は、箱の中に収まっていた時よりもさらに美しく妖艶で、少しだけ上半身を傾けた何気ない曲線的なポーズは、思わず香奈恵に強い情欲が湧き出しそうになった。 「あら、あなたが香奈恵様ね? 初めまして、私は知美よ。これから一緒によろしくね、香奈恵様」 それは、香奈恵が夢にまで見た光景だった。 目の前でとても美しい大人の女性が、自分に対して余裕ありげな振る舞いと態度を見せながら、惜しげもなく様付けで呼んでくれる。 まさに自分に絶対の自信がある、という雰囲気が溢れている美女が自分だけのものになったなんて、今でも信じられない。 香奈恵は頬を赤らめながら、一目散に知美の身体に抱きついた。 「うん! こちらこそよろしく知美! ああ……柔らかい…………」 手に、身体に伝わってくる樹脂製の人工皮膚の柔らかな感触。 顔を両乳の谷間に埋めると、そこから人間的な体臭は一切なく、うっすらとゴムのような匂いが入ってきた。 いきなり抱きしめられ、乳の間に頭を突っ込まれた知美だが、彼女はマスターの行動に動揺する気配もなく、むしろ設定された包容力で抱きしめながら、頭を撫でてあげた。 「ふふ、よしよし。お疲れみたいね、香奈恵様。私でよければ、付き合ってあげるわね」 まだ温かくない手で触れられ、香奈恵はもうこのままで良いかもと思うくらいに、とても良い気分になった。 耳から耳に突き抜けてくるような、幸せを具現化したような心地よい音声が、より知美への依存性を強めていく。 アンドロイドの胸ってこんなに柔らかかったんだと思ってしまうほどに香奈恵の頭を受け止めながら、同時に潰れるだけじゃないハリのある弾力性も直接肌に感じる。 もうこのまま、立ってくっついたまま寝てしまおうか。そんなことすら思い始めた辺りで、香奈恵はふと、お腹の虫が鳴った。 「あっ……そういえばそっか……」 知美が来るのがあまりにも楽しみで、帰ってからずっと彼女のことを待ちわびていた分、他の日常がおろそかになっていた。 そこで香奈恵は、動かしたばかりの知美に料理を作ってもらおうかと思いついた。 知美自身には、起動したばかりでまっさらな状態だが、購入時にどんなデータをインストールしておくかで、それに応じた命令をこなせるようになっている。 家事や料理はもちろん、単独行動から夜の営みまで、万能になんでもできるハイスペックなアンドロイド。その性能を今、早速発揮する時が来た。 「ねえ知美、冷蔵庫の具材からなんでもいいから夕ご飯作ってよ」 こんな美人アンドロイドが作る料理はどんなものになるんだろう。もう何ができても美味しい気しかしないし、なんでも許せてしまう。 香奈恵は気軽な気持ちで命令したが、彼女の予想とは全く違うベクトルの言葉が帰ってきた。 「知美、冷蔵庫って何かしら? あと、夕ご飯って何? ごめんね、私の中にそれに関するデータがないわ」 知美はちょっと困り眉になりながら、堂々と日常的な単語を知らないと答えた。 これほど人間らしい振る舞いのアンドロイドであれば、何気ない会話でも簡単に返してくると思っていたが、それを大きく下回った返しに、撫でられながら思考が別の意味で止まった。 「…………えっ、じゃあ……マンガって知ってる?」 「マンガって何かしら?」 「掃除は?」 「掃除って何かしら?」 「セックスは!?」 「セックスって何かしら?」 手を変え品を変え、色んな単語や事柄、知美が機能的に行うことができるはずの言葉まで色々聞いてみるが、彼女は殆ど同じ調子で返答した。 困り眉でちょっとのらりくらりとするような、大人のお姉さん的擬似人格の反応。だがそれを繰り返し続けると、逆に機械的な定型感が感じられる。 むしろそれも良いかもと思うと共に、香奈恵は知美の胸の中で頭を悩ませた。 「あっれぇ……なんでこうなってんの……? 色々ちゃんと設定は事前に申請してたはず……………………あ!」 これまでのやり取りや購入時の状況を回想し、何か原因があったかどうかを探していく。 そして彼女は、ひとつ思い当たることを思い出した。 香奈恵は購入当時、あまりにもテンションが上がりすぎていた結果、詳しく中身を見ないまま、知美を一番安いプランで買っていたのだ。 アンドロイドを購入する者の中には、成長した外見ながら空っぽの状態を好む者もおり、そこから自分の趣向に合わせたデータや新しい知識を学習させてカスタマイズしていくという層の為に、または学びに時間がかかっても良いから安価で購入したいという層の為に、事前の学習データがないプランが設定されている。 香奈恵が選んだのは、まさしくそれだった。結果、才色兼備と言いながらも、成熟した外見と人格以外は赤子も同然のアンドロイドがここに誕生したのだった。 「そっか……それだったかぁ…………やっちゃった…………目の前見えてなさすぎだってあたし……」 「ん、どうしたの香奈恵様? 私でよければ話聞くわ。ほら、なんでも話してみて」 自分の突っ走った結果を反省した言葉に反応し、ちょっと首を傾けて可愛げのある仕草を見せながら、マスターの精神状態をより良好にしようとする知美。 データが無く無知ではあるみたいだが、どうやら対人用のコミュニケーションプログラムはきちんと実装されているらしい。 それは、ちょうど自己嫌悪に陥りそうだった今の香奈恵に突き刺さるものだった。 「……じゃあ、話聞くよりもちょっと、知美とえっちなことしたいかも……」 「えっちなことって何かしら?」 慰める言葉を、理想の美女から美しい音声で向けられたら、ドキドキする以外にない。 それに連なり、香奈恵は乳房から顔を離すと、人生経験豊富そうな大人の女性の余裕いっぱいな微笑みの顔が改めて入り込んだ。 改めてこれが自分のものだと思うと、気持ちが昂ぶらずにはいられない。 最初は料理してもらおうと思っていたが、予定を変更し、空腹を無視して彼女で弄んでみたくなった。 「それは……これからわかるかも」 むしろ自分がリードされる側だろうに、5歳児よりも乏しいであろう認識のお姉さんに一方的に攻め立てたらどんな反応をするんだろうか。 香奈恵は自分から知美を抱きしめながら、部屋着の上から彼女の人工の柔肌を感じる。 「知美、ゆっくりと床の上に寝て」 「いいわ、香奈恵様。ふふ、私と一緒に寝たいのね」 まるで知美の方が導いてあげているような雰囲気で、命令通りにゆっくりと仰向けの姿勢になった知美。 移行の間、常にバランスが崩れたりすることなく、膝を曲げて屈んでから身体を後ろに倒し、最後に膝を真っ直ぐにするという普通の人がしないような工程を行った一連の姿は、どこか機械的な要素が強く見えた。 背中と冷たい床が密着しても、小さなリアクションを取る様子もなく、徐々に人肌に近くなり始めた体温で床が温まっていく。 不慮の事態で一緒に倒れないように離れた香奈恵は、彼女の仰向け姿を改めて上から目にするが、箱の中に入っていた時よりも動の空気が現れたことで、綺麗な人形らしさのあったそれまでとはまた別の、人間的な艶めきが剥き出しになっていた。 普通のポーズをとっていても誘っているかのような風体、セックスどころか前戯全ての知識すらないお姉さんに付いた、下着もなく晒された女性器ユニットと豊満な乳房が、心臓の鼓動をさらに早めていく。 香奈恵は、抱き枕に描かれたイラストのようになった知美の上に覆い被さり、今にも鼻先が触れそうな距離まで顔を近づけた。 「ふふ、こんなに甘えちゃって。よしよし」 すぐにキスが始まりそうな距離だが、知美は蠱惑的な表情と声をしているにも関わらず、甘えてきているのだと認識して、先程と同様に頭を撫でた。 母性が溢れているのに、あまりにも認識が純粋すぎる。そんな彼女をすごく弄ってみたい。肉欲的な行為をしてみたい。 香奈恵は、己の中に湧き上がる情欲に身を任せて、少しだけ開いた知美の唇にキスをした。 「あら、どうしたの香奈恵様? なんだかこそばゆいわ」 唇に仕込まれた鋭敏なセンサーが、マスターの唇を感知する。しかし彼女には、キスや快感の概念がない。 愛情行為であったとしても、知美は指で触れられたのと変わらない反応を返した。 「うっ」 口が塞がれていても明瞭に発せられるスピーカー式の音声、舌や唇から伝わる、知美の口内のゴムの味。 起動後から分泌され始めたのか、わずかに人工唾液が含まれていたが、まだまだ知美の口の中は乾いており、ダイレクトに苦味が伝わってきた。 でもそんな彼女がとても愛おしく感じる。一方的にキスが始まったのに平然としているアンドロイドの美女への感情がより湧き上がり、抱きしめながらキスを続けた。 「もう、そんなに抱きしめられたらいつか痛くなっちゃう。私も愛してあげるから、ね? 良い子ね香奈恵様」 感圧センサーから生じる信号によって擬似人格の反応を調整し、それに合ったセリフを導き出して脳をくすぐるような音声で形にする知美。 たとえそれが今の状況に合っていなくても、インストールされているデータに基づいた最も適当であると判断された音声が出力される。 一方的なキスを続けられ、受け身のまま人工と天然の舌と唾液が絡み合っていく。 「ぷは……ぁ…………苦いけど……柔らかくて……やっぱり買ってよかった……」 「苦いって何かしら? そう言ってくれると嬉しいわ。私も、香奈恵様に買ってもらった甲斐があるもの」 人間と無知なアンドロイドのちぐはぐな反応の差異が、より形だけが同じな違うものという姿を引き立てる。 キスでそれなりに反応するのなら、もっと別の性感帯はどんな反応をするんだろう。噴き出す性欲のままに、香奈恵は起き上がって知美の胸を鷲掴みにし、乳首を摘んだ。 「快楽信号が発生してるわね。私の胸は最新式の耐久性と弾力を持ってるから、どんなに使ってもらっても構わないわ。枕にしても、クッションにしても……」 性知識がインストールされていない彼女の口から飛び出た、快楽信号の単語。 どうやらそれそのものはシステム側の単語としてデフォルトで存在しているようだが、喘ぎ声の類を漏らしたり、声色が曲線的になる様子はなかった。 柔らかく潰れ、樹脂製の艷やかな乳首が摘まれ弄られても、知美はあくまで癒やし用のアイテムとしての用途を提示してくる。 だがそれとは裏腹に、乳首部分からは小さなバイブのような振動が伝わり、女性器ユニットもひくひくと開閉と反応を起こしていた。 もしかしたら、擬似人格側の反応はなくとも、身体の方も同じように性的快感による挙動は発生するのではないか。 そうときまれば、憧れであり理想である目の前の美女が、平然とした振る舞いのまま絶頂に達する姿がとても見てみたい。 香奈恵は左手で知美の乳房を揉みしだきながら、右手で陰核と転がしつつ中指で膣内を弄り始めた。 「あら、快楽信号が発生しているわ。快楽信号が発生しているわ。快楽信号がとっても多く発生しているわね。私の女性器ユニットにはまだ用途が設定されていないけど、香奈恵様は楽しんでくれてるわね」 変わらぬ定型文を繰り返し発しながら、より快感が増大していることを説明的に話す知美。 アンドロイドに実装されている生殖器官の使い道などほぼ限られているが、その数少ない使用法すらもインストールされていない彼女には、ただの快楽信号を発信する部品としか認識されていない。 その効果は凄まじく、相変わらず平然と喋っているが、両脚がピンと張り、下半身がびくっ、びくっ、と震えながら、ぐちゅぐちゅになるまで人工膣液が分泌されている。 身体の動きも、下半身の挙動も、まるで淫らな機械人形にしか見えないが、それどもクールなお姉さん的な表情を継続している顔のほうが、むしろ違和感のある部品のように思えた。 「えーっと、快楽信号が発信されてるわ。ふふ、私の身体をそんなに触っちゃって、悪い子ね。えーっと、どれだけ気持ちを抑え、おさ、えていたのかかしら香奈恵様ままったら」 用途のない信号の発信情報を口にし、目を細めていたずらっぽく笑いかける知美。 大人の女性的な余裕が伺える反応とは裏腹にあらかじめプログラムされた快楽的な挙動が下半身と胸に生じ続けている。 信号量が膨大で電子頭脳に負荷がかかっているのか、思考時間を挟むような声や、喋りの間に不自然な途切れ目や音飛びしたような声が混じる。 「すごい……デフォの機能だけでもこんな風になるんだ……!」 香奈恵は、彼女の人間らしい挙動なのに明らかに様子のおかしい淫らな姿に夢中になっていた。 弄れば弄るほどよがり、それでも知美は、色気があるのに現状とはズレた魅力を放つ声と表情を見せている。 性行為関連のデータが入っていないことは事故でしかなかったが、むしろ今しか見られない魅力を見ているようで、より彼女が自分のものだという独占欲が湧き上がった。 「知美! 知美の初めて、あたしが満たしてあげるから!」 「快楽信号が発信されてるわ。えーっと、初めて? 何を示して、えーっと、示してるのかわからないけど、いいわ、えーっと、いいわよ。香奈恵様がしし、したいように、えーっと、私が付き合ってあげる。さ、いっぱい私に、えーっと、甘えていいわ」 エスカレートしていく香奈恵の興奮した顔に、知美は処理落ちしながらも、とても楽しんでいるという演算結果を導き出す。 乳房や女性器ユニットを扱っていることでそれだけの幸福がもたらされるのならば、それだけ自身の母性的、女性的パーツに魅力を感じ、密な接触を行いたいのだろうと結論づけ、より甘えてくるようにと両手を突き出した。 だが、彼女の演算結果に基づいたセリフが吐き出された頃には、背中は仰け反り、下半身は小刻みに痙攣し、人工膣液の潮が噴き出し絶頂に達していた。 これからめいいっぱい甘えさせてあげるという始まる前のような言葉とすれ違い、彼女の制御システムはフィニッシュに至ったのだった。 「はぁ……知美とっても可愛くて美人…………本当に買ってよかった……アンドロイドってすごいなあ……」 淫らに乱れた後の知美は、床に人工膣液の水跡を無数につくり、陰核と乳首をひくつかせながら、電子頭脳冷却のための吐息を頻繁に繰り返していた。 流し目で微笑み、ちょっとだけ誘惑的な雰囲気を出している表情と、はっきりと生殖的な淫靡さを醸し出している身体で、アンバランスな様を惜しげもなく晒し続けている。 「えーっと、ありがとね香奈恵様。えーっと、えつーっと、私は、私はそういう風にデザイン、えーっと、されてるから、香奈恵が気に入ってくれてるのなら、アンドロイドとしてはえーっと、最高の喜びだわ」 言葉に含まれている意味ではなく、言葉のそれそのままの意味を受け取り、お礼を返した知美。 こんなどこか機械的に抜けがある美女と一緒に過ごし続けていたら、いつかとんでもないことになっちゃうんじゃないだろうか。 香奈恵は、密かに下着の下で愛液を滲ませながら、しばらくの間、知美のあられもない様を堪能したのだった。 * * * 購入したアンドロイドとの倒錯した対面からしばしの時間が経った後。 香奈恵は早速知美と一緒にベッドインし、これから一夜を共にし続ける最初の夜を始めようと、寝室に連れてきていた。 だがその前にと、知美の各種設定の確認と更新をしておこうと、巨乳の形がはっきりと際立つ、彼女のために買った縦セーターを着せた上で一時的に機能停止させていた。 後頭部カバーが開かれ、電子頭脳が露出した状態でケーブルを繋ぎ、ノート型の端末と繋いで設定操作を行う。 その間知美は、下を向いて虚ろな微笑みを見せながら、人形らしく動かずにいた。 「これでよしと。これで万が一消えてもなんとかなるかな」 設定の確認と更新が終わったところで、香奈恵はふと、知美のストレージ容量はどうなっているのかと気になり確認する。 「うわウッソ……思ったより空っぽじゃんこれ」 各種データがインストールされていないまっさらな状態だから、彼女の電子頭脳内は、香奈恵が所持しているデスクトップ端末よりも圧倒的に空き容量が存在していた。 人型でない道具よりも空っぽなら、そりゃあんな無知でズレた反応をしてしまうのも無理はない。 香奈恵は、データ容量のプロパティを見て可愛いと思う、予想外の新感覚を覚えた。 「でも、これからあたしが満たしていくんだよね。どういう風にってのは色々あるけど……楽しみだなあ、この先の知美との日々」 今日から家には、この絶世の黒髪巨乳モデル体型美女がいる。そう思うと、毎日がとても華々しくなるだろうと、ウキウキとした気持ちを隠さない香奈恵。 後ろから知美を抱きしめ、背中の人工皮膚と乳房の感触を味わいながら、これからの日々に思いを馳せるのであった。 一方の機能停止している知美は、虚ろな微笑みをぴくりとも動かさず、背中から来た力に従ってぐらぐらと揺れていた。 こうして、日々にくたびれた人間の美女と、まともに知らないアンドロイドの美女の同棲生活が始まったのであった。