XXX4Fans
土装番 from fanbox
土装番

fanbox


謎に包まれた美少女だらけの女子高への転校 1話先行公開版

 とある島国の首都内にて、ある1人の高校生が、最初に入学した高校から居場所を変えて新天地となる新しい高校へ転入しようとしていた。 「ここか……本当に面倒なとこにあるな。本当に、なんで女子高への転校することになったんだよ……ていうかそもそも許可されたんだよ」  彼の名前は牧村智也。高校1年生の男子学生であり、まだ高校生になってから半年も経っていない少年である。  彼は母親がまだ幼い時期に他界し、天才プログラマーと謳われる父、牧村吾郎のもとで育てられたが、その父親は彼が高校へと入学する前に突如行方不明になっていた。  そんな智也は、都内の普通の高校に受験し合格。それからしばらくの高校生活を送っていたが、ある日突如、失踪したはずの父親からここへ転校するようにというメッセージを受け取った。  その場所こそ、彼が今、校舎の前にやってきた、私立絹華学園高等学校である。  最寄り駅から離れた場所にある、本来全寮制の女子高であり、敷地が広く様々な施設が建設されている非常に充実した校舎を構えている。  生徒達も先生達も美少女や美女ばかりと、外から景色を見たり周辺で生徒を見かけた者からはもっぱらの評判ではあるが、最寄り駅自体が閑散とした場所なのもあって、情報自体はそこまで広まっていない知る人ぞ知る女子高な上に、そこに関する情報も全くと言っていいほど出回っていない。  まさに謎に包まれた花園だった。  そんな場所へ転校することになった智也。父親が既にすべての手続きを済ませており、あとは一旦校長に会ってから教室に入るだけ、というメッセージを受け取ったはいいものの、あまりにも父親側からの説明がなさ過ぎる上に急速すぎる展開とペースに、智也の脳内には考え事と不満の数々が積もりに積もっていた。 「あんのクソ親父……もしどこかで見つけたらいっぺんてめえの持ってる機密ファイルぶち撒けてやるからな……!」  何も言わず突然失踪したかと思えば、いきなり辺境の、しかも女子高へとほぼ強制的に転校させられるという振り回しぶり。  近くにいないくせにどれだけ勝手なことしてるんだ、そもそもどうして女子高でかつ共学になったという情報もない高校への転校が許可されたのかも意味がわからない。  さらには全寮制という情報ではあるが、自分だけ家から通うことを許可されたという謎の特別待遇。彼にはもう何がどうなっているのか、どうしてこんなことをするのか、とにかく理解ができなかった。  智也はひとまず、携帯端末に送信されている高校側からのメッセージ案内に従い、そのルートに従って移動。見るからに新築であるという雰囲気が漂っている清潔感あふれる校舎の、教員側が使用する出入り口から中に入り、校長室を目指し向かっていった。 「中は相当綺麗だな……設備も整ってるし、外感も新しめだったからやっぱ建てられたばっかなのかな」  まだ校舎内に入ったばかりではあるが、施設内の環境は、彼がそれまでいた高校とは明らかにレベルが違っており、快適な環境という言葉が非常に似合う空調と綺麗さに溢れていた。  途中までまだ誰とも遭遇しておらず、どんな人がいるのかという様子を見ておきたかった気持ちもあるが、ひとまずそれらの興味は置いておいて、校長室のドアを叩いた。 「どうぞ」 「失礼します」    ドアの向こうから聞こえてきた、教員と思わしき女性の声。  校長は不在なのかと思いながらドアを開けると、その先には、校長の椅子に腰をかけた1人のスーツ姿の女性の姿があった。 「あら! 貴方が今日転校してくるという牧村智也君ね! 話は聞いているわ。さ、一旦こちらに座って」  校長という存在のイメージには到底似合わないような、おそらく多く見積もっても28〜30歳程だと思われる、肩書と比べると明らかに若い女性。  彼女はあらかじめ全ての事情を聞いているという様子でそそくさと席から立ち上がり、部屋の中央に設置された革製のソファに腰をかけた。  智也も誘いの通りに、対面するように腰をかける。遠目に見ても感じたことであったが、その校長と思わしき女性は世間一般から見ても明らかに美しくスタイルが非常に整っており、美女という形容詞が似合うスッキリとした顔立ちと共に、立っても座っても、スーツ下から膨れ上がったハリのある巨乳がはっきりと目立ち、下からネクタイを支え上げていた。 「改めて初めまして。私がこの私立絹華学園高等学校の校長、川村絢子と申します」 「よ、よろしくお願いします」  言葉遣いから声色、立ち振る舞いの全てに至るまで気品に満ち溢れており、一挙手一投足が完璧としか言いようがない洗練ぶりを帯びている。  智也は先程まで悪態や腹立たしさを抱いていたが、何歳かはわからない上で彼の好みからは外れているとはいえ、思春期には刺激的な巨乳美人を目の前にしてやや落ち着かない気持ちが湧きながらも、それ以上に校長室という格式のある場所で真正面からきちんと対面して話すという状況に緊張し、少しだけ硬直しながらも自分もしっかりと礼儀正しく挨拶を向けた。 「今日からこちらの高校に転校するということですが、こちらの高校のことはわかっていますか?」 「ええまあ……というか、どうして女子高なのに自分がここに通うことになったのかもそもそもわからなくて」 「貴方の父親から正式な申し出がありましてね。本来男子生徒の入学は許可されませんが、今回は特別、特例として入学が許可されました。なので、手続きの不備など、それらに関する心配はいりませんよ」 「……つまり、父の働きかけということですよね」 「そうですね。全て父親である吾郎さんからの申し出です。学費や必要になる道具も全てこちらで預かっていますよ。そちらの方にある箱の中で保管してあるので、教室へ向かう際に持っていってくださいね。今日は初日なのでそのままでも大丈夫ですが、次からは特別に作成しました、男子生徒用の制服を着て授業を受けてくださいね」  何から何まで全て準備されていることに、むしろありがたさよりも妙に不快な胸騒ぎが止まらない智也。  一体何を考えているのか、そもそも何が目的でこんな転校をさせたのか、そんな目的が全然見えない異性の転校をこの校長が許したのか。  緊張の中で、色んな思考や疑念が無数に渦巻いていく。 「智也さんのクラスは1年A組になっています。マップは事前に指定のアドレスに送信されていますよね? 校内移動する時はそれを頼りに移動してください。ひとまず、説明することとしてはこんなところでしょう。何か、智也さんの方から質問はありますか?」  大まかな説明を校長から受け、改めてこの高校の一員になる前段階が整った。  最後に質問が何かあるかと聞かれたが、何かどころか何もかも色んな所にありすぎて、まずどこから突き詰めれば良いのかも怪しいところ。 「……あの、自分の父とはどのような関係なんですか? 女子高に特例で転校に許可が出るというのも、父が申し込んだからといってそうなるとは思えないんですが」  ホームルームの時間までもう間もなく。おそらく数々の質問を全てぶつける時間も無いだろう。  そう思い、智也は特に気になっていてかつ、行方不明になっている父親への手がかりになるかもしれない質問をぶつけた。  絢子は、その質問は予想していたとばかりに深く考える時間も作らずスムーズに答えた。 「貴方の父親とは、この高校の運営や管理に於いても、とてもお世話になっている方なんですよ。なので、その方からの申込みというので、私は許可を出させていただきました」  一見わかるようで、だとしてもそれはおかしいのではないか、という返答だったが、あまりに淀みなく堂々と答えるものだから、智也は一旦納得せざるを得なかった。  が、いずれはこの疑問に決着をつけてやろうとも思ったのであった。  その直後、校長室の入口からノック音が鳴った。 「どうぞ」 「失礼します。校長、もうそろそろ……その子が智也くんですね?」 「ええ、美夏先生。今日から貴女のクラスで新たに転入する生徒です。こちら紹介しますね。1年A組担任の井浦美夏先生です」  ちょうどホームルームの5分前。校長室に入ってきたのは、智也を教室へ案内するために入ってきた担任の先生だった。  髪はサラサラとした艶めきのあるブラウンのロングヘアーで、落ち着きがあり清楚な印象を抱かせる、校長よりもいくらか歳下なのは間違いない美しい顔立ち。  立ち姿からも全体的に細身でモデル体型ながら、両手を身体の前に置いて立っている姿によって、彼女の豊満な両胸が腕によって潰れていた。  清楚な印象と共にやってくる自然な色気に、智也は思わず息を飲みそうになり、なんとか自分の気持ちを抑えた。 「よ、よろしくお願いします」 「はい、よろしくね智也君。それじゃ、今から教室まで案内するね」 「荷物はしっかり持っていくんだぞ。もし全部持っていくのが難しければ、ここに置いて後から取りに来なさい。では、ようこそ絹華学園へ」  種類の違う色気を帯びた美女先生2人に囲まれながらも、なんとか理性を保ち続けていた智也は、ひとまずの説明と案内を全て終えることができた。  美夏のまるでファッションモデルのように綺麗な歩き姿の少し後ろに立ち、少しだけ解決した疑問とさらに増えた謎を抱えながら、彼はこれからお世話になる新しいクラスの方へと足を動かすのであった。 * * *  そして朝のホームルームの時間。1年A組の生徒は全員きちんと集まっており、誰ひとり欠けることなく席についている。  そこにいる生徒は、全員がそれぞれ個性豊かな美少女ばかりで、それぞれに予習を行ったり読書をしたり、隣の席の友達と談笑したりボーッとしたりと、先生が来るまでの間にそれぞれの時間を過ごしていた。  そんな外から女子達の声が聞こえる中、智也は先生と共にドアの前に立っていた。 (うわー……マジで本当に女子の声しか聞こえねえ……嬉しいには嬉しい状況なんだろうけど、今までの流れもそうだしで怖さの方が勝ってるぞこれ完全アウェーじゃんか……)  教室の前に来ると、改めてここが本当に女子高だということが嫌でも実感できる。道中でも、男子の存在や空気を感じさせるものは何ひとつ存在せず、本来ならばハーレムライフに浮足立つような状況なのだろうが、彼にとっては孤立無援の環境でこの先どうなるかわからないという恐れの方が勝っていた。    「それじゃあ、転校生の紹介の時に呼ぶから、その時になったら入ってきてね」 「わかりました……はぁ」 「ふふ、大丈夫。みんな良い子ばかりだから、きっと友達になれますよ」  彼を安心させようとしているような笑顔を向けながら、美夏は彼女がいつもやっているように悠然と教室へ入り、教壇の後ろに立った。  教室の扉が開いた直後に、それまでやや騒がしかった室内の声は一気に静まり返り、生徒達は先生の方へと注目した。  外から音のみで室内の状況を聞いている智也は、かなり真面目に寄ったようなクラスな気がするという印象を受けていた。  それから、いつものように朝のホームルームの流れが進んだ後、ついにその時が訪れた。 「はい、それではここでですね、皆さんに大切なお知らせがあります。今日はそこに新しく空いている机があるよね? ということは……今日は転入生が来ています!」  室内の女子達がざわっ、と盛り上がる。その分、ここに男がはいる事になるんだよなあと気が重くなって来る。 「それじゃあ入って、智也くん!」  そしてついに直接名前を呼ばれると、智也は呼吸を整えてから堂々と教室内へ入っていった。  中に入ると、室内は自分が通っていた高校に比べてかなり綺麗で清潔感が高く、各種設備も非常に整っている。  何より、入ってから目に入った、席に座っている生徒の一人ひとりが、先程までの教員たちの例に漏れず美少女ばかりだった。  そんな彼女達は、智也の姿が見えた瞬間に、それぞれ驚きの声が漂っていた。 「えっ、男子? ここ女子高だよね?」 「男子が入ることってあるんだ……すごく意外なんだけど……ていうか大丈夫なの?」  彼女達の声は、智也からしても当然としか思えないようなものばかりだった。 「それじゃ、黒板に名前を書いてね」  智也は、後方の新しめな液晶タイプの黒板に、自分の名前をはっきりとわかりやすく書き込んでいく。  どうやら教室の黒板は、電子タイプの液晶型と、チョークを使うアナログ型がそれぞれ入れ替えられるらしいと、思考を落ち着かせる為の観察をしながら思っていた。 「どうも、牧村智也です。よろしくお願いします」 「はい、今日から皆さんと同じクラスメイトになる、牧村智也くんです。本来男子生徒はこの絹華学園には来ないんですが、今回彼は特別に校長からの許可を得てこの高校にやってきました。皆さん、仲良くしてあげてね」  一通りの説明は先生がやってくれたが、果たして校長が特別に許可を出した、というだけで納得してくれるのかという不安しかなかった。  むしろここでブーイングが一旦巻き起こらないあたり、とても治安が良い、不満はひとまず留めておく理性があるんだなあという印象を抱いていた。 「それじゃあ智也くん、あそこの空いている席に座ってね」  智也は先生の指示に従い、通り道で新しいクラスメイトからの視線を集めながらも用意された教室後方の空き席に座り、荷物を置いていく。 「ねえ、本当に転校生なの? まさかうちに男子が入ってくるなんて予想もしてなかった」 「あはは、俺もそう思うよ。なんか、流れでこうなったっていうか……」  席についてから間もなく、隣の席になった女子生徒が早速話しかけてきてくれた。  前や左右どこを見渡しても美少女ばかりだが、隣り合う距離で見ると、よりその可愛さがはっきりと視界に飛び込み、胸の鼓動が早くなった。  智也はなんとか気持ち落ち着けと内々で言い聞かせながら、初めての会話相手に平然とした会話を継続させていった。 「そうなんだ……あ、自己紹介まだだったね。私は小田切花梨って言うの。よろしくね」  初めて話しかけてきた、アイドルのようなクラスメイトは、普通の高校ならば一番人気になってもおかしくないような雰囲気を抱いていた。  少し青みがかっているような黒のサラサラとした、しっかり切り揃えられたセミロングヘアーに、年相応の可愛らしさと、どこか大人びた雰囲気を感じさせるお淑やかさや気品を感じさせる綺麗な顔立ち。  制服の下から盛り上がる胸は、他の生徒達に比べると控えめだが、それまでいた高校基準で考えると、間違いなく大きい方に割り振られるような膨らみを持っていた。  綺麗な姿勢と一挙手一投足に魅力が溢れており、姿勢の美しさやスカートから出ている太ももや脚のラインから、彼女のスタイルがどれだけ美しいものなのかが、座っている状態からでも察せられた。   「こちらこそよろしく」  智也はひとまず、まだホームルームの途中なのもあって、初めての会話相手と名前を交わし合い、はにかみつつ頭を下げて、改めて先生の方を向いた。  教室の後方から室内の光景を眺めると、良い香りの幻覚をみてしまいそうなくらいに、綺麗な女子の髪ばかりが視界に飛び込んでくる。彼にとってもそうだが、この光景は男子にとっては天国に思えるだろう。  ひとまず大きな波乱や露骨な文句などもなく、なんとかホームルームは切り抜けられた。  一体この先どうなってしまうのか。かなり不安が残っているが、果たして自分はこの女子しかいない場所で無事に過ごせるのかどうか、大きな不安と花園の中に飛び込んだ期待の中で、新たな学園生活が幕を開けたのだった。 * * *  本来入れないはずの女子高へと転校し、ホームルームを経て1年A組の一員となった智也。  こんなアウェーな状況で無事に高校生活を過ごせるのかどうか。最初に彼はそう思っていたが、それはすぐに破られた。 「ねえねえ、どこの高校から来たの?」 「ていうか、なんでうちに来たの? 特別に入学許可されたってすごくない? 初めてそういうの聞いたかも!」 「実は女だとかそういうのだったりしない!? まあなさそうっちゃあなさそうだけど、女子高に男子が来るって予想外でしょ!」       ホームルームが終わったあと、隣の席の花梨含め、複数人のクラスメイトが一気に彼のもとへ集まり、悪意なく興味津々に次々と質問攻めを始めた。 「俺が元いた高校はさ……」 「それがさ、俺にもなんでここに来たのかマジでわかんないんだよね……いきなりここに転校しろって言われてさ」 「流石にそういうわけじゃないって! 俺も女子高に行くことになるなんて思いもしなかったからさ」  智也は複数の美少女に楽しそうに詰められ、幸せな光景が広がっていると思ったが、同時にまだ混乱が続いている中でここまで一気に質問がなだれ込むのは、正直しんどいとも思っていた。  誰もが羨むようなハーレム的状況だが、元々彼は一人でいることが好きな気質でもあり、夢としていいなと考えてはいても、いざいきなりこのような状況に陥ると、対処の難しさの方が勝ち始めていた。  それからそのような状況が、授業の合間合間の休み時間でも続き、しばらく人気者のような状態が続いた。  それからの昼休み。智也はチャイムが鳴ったと同時に荷物を持って早めに教室を出て、マップを見ながら特に人の通りが少ないであろう場所を探した。 「おっ、あそこなら休めそうだな」  智也が探し当てたのは、校舎と繋がっている外側の階段、その1階部分の裏側にある小さなスペースという、誰も使わないような場所だった。  校舎側からは左右にある壁で誰にも見えず、正面から誰かが来ればわかりやすい。ある意味今の彼にとっては一番の安息の地ともなるであろう地点となっていた。 「はあ……ようやく落ち着けるわ。拒絶されなかったのは良かったけど、いくらなんでもあんなに可愛い子たちの中に放り込まれたら落ち着かないし、まだわけわかんねえのに頭が追いつかないっての……」  女子高かつ周囲がとても綺麗で可愛い多種多様な美少女ばかりで、それぞれの教科でやってくる先生達も多種多様な美女ばかり。  こんな桃源郷のような学校があるのかと叫びたくなるが、今彼は自分自身でその桃源郷を体験している。  そんな場所に自分のような異物が来たことで排除されないかと思っていたが、ひとまずそんなことはなく、むしろ積極的に仲良くしてくれるような相手が多かった。  特に、隣の席にいる花梨は、高校に関することや、この高校でのみ使用しているらしい道具など、困った時にも親切にアドバイスしてくれる上に笑顔が可愛らしく、とにかく素晴らしい人物としか言いようがなかった。  他にも印象に残っているクラスメイトは何人もいたが、まずは気持ちを落ち着けつつ情報を整理するために、彼は持ち込んだ鞄から、所持品であるノート端末を取り出し、独自のプログラミング学習を始めた。 「ふう…………やっぱこうしてる方が今は気持ち楽だな」  彼は父親の影響から、幼少の頃からコンピューター系の知識を学んでおり、その過程で培った知識を活かしてハッキングを行ったり、様々なソフトウェアを製作したりと、一般的な高校生の枠を超えた、まさに血を受け継いだような能力を持っていた。 「…………ああそうだ、一応一通りの出来事もまとめとこうか。そういや、ここって無線通ってるんだよな」  1人の時間をようやく作れたことで、自分の気持ちを落ち着かせられる作業に没頭できるようになった智也。  そんな途中、彼は今日ずっとバタバタしてまとめることの出来ていなかった、この学校で一通り教えてもらった注意事項や必要事項などをまとめる為のドキュメントを開き、一旦それを外部のクラウドへ保存することにした。  一度校内を歩き回った際、彼は校内の至るところに無線ルーターが複数設置されていることを確認していた。  絹華学園では、授業の際にアナログの筆記道具を使用するのが自由で、基本的にタブレット端末を使用して授業することが必須と定められている。  それによる環境整備なのか、この学校のネットワーク環境は類を見ないレベルで整っており、ある意味ではこれの存在だけでもこの高校に転校して良かったと思える程だった。 「流石にパスワードは設定されてるんだろうけど……あれ、これもしかして設定してないのか?」  智也は早速、ノート端末を無線LAN接続でネットワークに繋げようと、回線を選択しようとした。  セキュリティのために何かしらのパスワードは設定されているかと思っていたが、実質誰でも接続できるような状態になっている。  これはこれでありがたいが、不用心だなと思っていた直後、彼はある強い違和感を覚えた。 「…………なんか、接続先が多すぎないか?」  設置されたルーターが多いとはいえ、明らかに表示されている、または受信した無線接続先が異様な程多いのである。  その数は、彼が視覚的に確認できた数よりも少なくとも10倍以上はあり、全て検出しても確認しきれない程。 「それにこれは……人の名前か?」  それらのアクセスポイントには名前がきちんと設定されているが、そのどれもが女性の名前になっており、智也がその場から動いていないにも関わらず電波の本数やアクセスポイントとの距離が近い順位が変動し続けていた。  彼はここに、何かおかしなものがあると強い疑念を抱いた。  最初は生徒それぞれに持ち運び用の無線ルーターでも配布されているのかとも考えたが、校長から支給された物の中にそれらしいものは無かった。個人で持ってきているにしても、接続先名称の名付け方があまりにも統一されすぎている。  全てがMisaki_YamamotoやHitomi_Aikawaなど、先頭大文字と中央アンダーバー、名前先の表記で固定されている。  これは何かある。趣味で行っているハッカーとしての経験がそう脳裏で叫んでいる。そう感じていたその時、ちょうど偶然にも、彼の座っている階段の上の方から、誰かが降りてくる足音が聞こえてきた。  それに合わせて、距離順で表示されている接続先リストの上に、1人の女性の名前が上ってきた。 「…………試してみるか」  彼は好奇心から、たった今一番上に表示されたKeiko_Aoyamaという名前のアクセスポイントにカーソルを合わせ、ちょうど階段から降りてきた生徒の足が見えた瞬間に、それへの接続を実行した。  その時、階段から降りて校舎に改めて入ろうとしたであろうその生徒の足が途中で止まり、がくん、と一瞬震えたような様子を見せた。 「……え? 大丈夫かこれ」  接続は無事成功した。だがそれ以上に彼の視線と興味は、突然立ち止まった知らない生徒の方へと移っていた。  智也は、そーっと足音を立てないようにして近づき、立ち止まっている生徒の前に顔を出してみる。  その人物は、容姿や雰囲気から校舎の3階にグラスが設置されている3年生と思われる。  相変わらずクラスメイトや見かけた他生徒に負けず劣らずの美少女だが、まるで魂が抜けたように虚空を見つめ、呆然とした顔で立ち止まっていた。 「…………大丈夫ですか? あのー、すみません、おーい」  智也は目の前で手を振ってみて反応を確認するが、視線一つ動く気配がない。  そこから次第にエスカレートし、手を動かしたり、髪に触ったり、頬をつねったり、服の上から腹部や胸に触ったりと、より過激な方向で接触してみるが、まるでマネキンになったように反応していなかった。  それ以上に妙だと感じたのは、そんなセクハラどころではない直接的な行為を、途中で通りすがった何人かが目撃しているはずなのに、誰も意に介する雰囲気が見られないことだった。  彼は思わず上級生女子の柔らかい感触に夢中になって、本来なら凝視されている状態に途中で気がついて元の場所に戻ったが、結局大きな騒ぎになる様子はなかった。 「なんだこの状況……一体、何がどうなってんだ?」  ありえない転校の先でやってきた、また別の方向にありえない状況。  彼は新たに増えた謎に対してどのように考えるべきか悩み始めそうになったが、ここで、ノート端末から自分の知らない外部機器にアクセスできるようになっていることに気づいた。 「これは……さっきのアクセスポイントと同じ名前か」  Keiko_Aoyamaという名前で表示された、謎の機器。ストレージ内にも自由にアクセス出来る事に気づいた智也は、迷わずその中身を覗き始めた。  その時、彼の両目が見開く程の衝撃を受けた。 「────!! 嘘だろこれ、マジなのか? 本当に言ってんのか……!?」  そこにあったのは、まだまだ空きのある大容量のストレージ内に収められた、ほぼ一日中かつ毎日録画されている大量の一人称視点の動画に、自分の知らない形式のデータファイル、何かしらの履歴に、大量の圧縮データ。  そして、青山景子という名前と共に記されたプロフィール欄に、先程ベタベタ触れたばかりの硬直した女子生徒の機械的な設計図、内部構造と思われる画像など、それそのものの実在を疑いたくなるような代物がその中から見つかった。 「…………いや、そんなわけないだろ。そんなニュースも情報もどこにもなかったし見たことも聞いたこともない。けど、もしこれが本当なら…………」  だが、これらのデータを目撃した瞬間、彼の灰色の脳細胞が弾けだした。そう考えれば全てが繋がると。  直後、彼の指は一気に動き出し、静止した知らない先輩を放置したまま、ひたすら夢中になってノート端末に向き合い始めた。 「面白いことになってきた。簡単なものなら今からでも作れる。こんなセキュリティが甘いのなら、すぐに形にできるぞ……!」  彼は今、繋がった全てと得られた情報をもとにして、新たな自作アプリをとてつもないスピードで製作し始めていた。  自分がこの女子高へ連れてこられた意味、自分がここにいる、いて良い理由、全てが理解できた。  その確信と共に、彼は人形と化した先輩の側で、ひたすらキーボードを叩く音を鳴らしていたのだった。 * * *  そして放課後。ホームルームを終えて一日の授業が終了しそれぞれ生徒が解散し始めていった頃。 「どうだった智也くん、うちの学校、楽しい?」 「ああ、色々と今日は楽しかった。最初はどうなるかと思ったけどみんな優しいし、このままいけばいい感じに過ごせそうな気がする」 「良かった! 智也くん、男子たった一人で肩身狭いかなって思ったから心配だったんだよね」  荷物をそそくさとまとめている最中、隣の花梨が心配そうに話しかけてきてくれた。  智也が率直に、素直に思った偽りのない感想を伝えると、花梨はとても嬉しそうな笑顔で、まるで自分ごとのように喜んでくれた。 「ねえ、もし良かったら、この後少し一緒に出かけない? 確か智也くんだけは寮に住むんじゃなくて家通いだったよね?」     「まあな。けど悪い、ちょっと今から行かなきゃ行けないとこあるんだ。誘ってくれてありがとな、また次の時に!」  花梨はより交流を深めようと、一緒に放課後に遊ぼうかと誘ってくれたが、智也は他の生徒達と交流を深めるよりも前に、今は自分がたどり着いた仮説と実験を同時に試すべく、同時に残りの荷物を取りに足早に校長室へと向かった。  彼の手はずっと、いつでもノート端末を取り出せるように左手を鞄の中に入れつつ、右手はいつでも携帯端末を取り出せるようにポケットの中に突っ込まれている。  通りすがりの美少女や美女の先生達には一応の挨拶は交わしながら、既に一度通った道を迷子になることなく進んでいった。  それからノックも無しに、まるで物入りの如く校長室へと入り込んだ。  そこでは朝と同様に、校長の絢子が椅子に座り腰を落ち着かせていた。 「あら、智也さん。転校初日お疲れ様です。我が校の雰囲気はどうでしたか? 馴染めそうですか?」    「ええまあ、おかげさまで。とても馴染めそうです」 「それはよかった。男子ひとりが現在教員も含めて女性しかいないこの学園に入るとなると、とても大変でしょうからね」  まるで歳の離れた姉が優しく見守るような目線で、彼への心配は稀有に終わったことに温かな微笑みを向けた絢子。  彼女はその後も、何気ない会話を続けようとしていたが、その最中、智也は唐突にポケットから携帯端末を取り出し、画面内の操作を始めた。 「やっぱりそうだな……よし」 「であれば、この学園での生活、続けられそうですか? 今のところはさしたる問題は無さそうには見えますが」  絢子はその後も、彼の真意やこれからの意向を聞くために、質問を続けていく。  しかしその途中、突如彼女は校長席から立ち上がり、視線を泳がせながらソファの側まで歩き始めた。  そして、何の前触れもなく自身が身に着けているスーツを両手で掴み、ボタンの存在を無視して強引に左右に引き破り始めた。  ボタンが弾け飛び、インナーごと左右に破れ、彼女の想定される年齢相応とは思えない、先生達や生徒と比べても遜色のない素肌と、下着を身に着けていない上半身が空気に晒された。 「貴方がよ、よけ、よければ、これからもここ、この学園、学園、ガクエンで、のの登校を継続し、ししていた、だけま、まますかぁぁぁァァ?」  唇が震えだし、突然立ったまま背中を後方まで仰け反らせたと思えば、意味もなくブリッジの体勢を作り始めた。  絢子の声は、不自然なポイントで途切れ途切れになり、音程の高低も人間として不自然なものへと変わっていく。  そんな狂った声を口から漏らしながらも、まるで彼女は何も起きていないかのように平然と会話を続けようとしていた。 「よし、上手くいった。やっぱそういうことなのか。ええ、もちろんこの学園に通い続けますよ。すごく楽しめそうですし」  智也は確信を得られた笑みを浮かべながら、最初は文句ばかり抱いていたものの、予想外の事態と事実によってこの学園に強い興味と邪な欲求が湧き上がり、ここにいる以外にないと確信した。  それを聞いた絢子は、一瞬だけがくんと全身を痙攣させた後、ブリッジの姿勢からゆらりと上半身を起き上がらせ、瞳は無感情なのに口元の右側だけ笑みを浮かべた不気味な表情を見せた。 「そそそ、それ、ははははよかったよかったたたたですデスです! 私自身もわたしワタシわタし、吾郎ささササんから、から、かかか、任されましたたたたぁぁぁあアア? の、で、でで、します、しまし、しし、しました、ををを実行として、としててててて?」  直後、彼女は自ら曝け出した素肌の、艷やかな腹部の皮膚を両手で掴み、激しいシワが出来るほどに握った。そして、まるで意味が通っているようないないような、ぐちゃぐちゃになり始めた言動を喋りながら、突如自分の腹部に指で穴を開け、自ら左右にブチブチと引き裂いてしまった。  絢子の柔肌の下から姿を現したのは、内臓や血液など欠片も含まれていない、金属部品と電子部品の集合体だった。  下腹部からはわずかに、生身のようなピンク色をした球体が顔を出しており、わずかな生っぽさと中身の無機質さ、そして外見の人間にしか見えない様が、奇妙なコントラストを生み出していた。  そしてここではっきりとわかった。絢子は人間ではない。アンドロイドだったのだと。 「…………確信してからも半信半疑だったけど、マジでアンドロイドだったのか……けど、こんなに人間みたいに動けるし話せるアンドロイドが造られてるとか聞いたこともねえぞ」  智也は昼休みの間に起きた出来事から、この学園にいる者達の一部または殆どがアンドロイドなのではという仮説を立て、そこから、偶然接続できた上級生の内部データをもとに、無線接続から自由に彼女達を操作できるアプリを即興で開発した。  彼はそれを、いの一番に校長へ試すことを画策し、自分がこの女子高に連れてこられた理由を探ることにしたのだった。  絢子が異常な動作を起こしているのは、同時に彼が即興で作成したウィルスを、遊びで仕込んだことによる誤作動であり、それ自体は内部にあるファイルへの影響は及ぼさない。人間として明らかにおかしい、自らを曝け出すような異常動作を併発させるだけである。  だが、ここまで上手くいくというのは、彼にとっても予想外だった。智也は、接続した絢子の内部データを閲覧し、何かこの学園に関する情報がないかと、まるでめちゃくちゃに操り糸で動かされているような挙動を繰り返す絢子を放置して探り始めた。 「これは…………俺宛ての音声ファイル?」  その中に一つ、明確に「智也へ」と記されていた音声ファイルだけが入っているフォルダを発見した。  嫌な予感がする。彼はふとそう思ったが、当然開かないわけにはいかない。  彼は携帯端末側からそのファイルを開いた瞬間、両手で自らの頭を掴んでいる途中だった絢子の動作がぴたっ、と止まり、片側だけ笑みを浮かべて硬直した口から、スピーカーの如くやや音質の悪い電子音が流れ始めた。           『…………よう智也。この音声ファイルを開いてるということは、お前はこの学園の秘密にたどり着いたというわけだな』 「この声、あんのクソ親父!?」  その声の正体は、忘れるわけもない。突如姿をくらまし、彼をいきなりこの女子高へ転校させた張本人であり父親である牧村吾郎のものだった。 『その通り。この絹華学園高等学校は、生徒から職員に至るまで、女性型アンドロイドしか存在しない高校なんだ。正確には高校でもなく、アンドロイドだけの環境を構築し製造、稼働させる実験場なんだ。ちゃんと高校として存在はしてるから、卒業すればきちんと高卒認定にはなるぞ』  それまでの大人の女性らしい音声を出していた口から、知っている男の声へと切り替わっている様は、いかにも機械らしい姿と言える。   『この実験自体は何年も続いててな、今のところ関係者以外誰にもバレることなく継続してきた。新入生として製造されるアンドロイドの性能も年々上がってきてな。その協力をしてる俺としても中々鼻が高い。が、そろそろ新たなデータが欲しくなってきた。そこで、お前をここへ転校させたというわけだ。お前の、俺の息子としての能力を見込んでな』  つまり智也は、この実質的に閉鎖された環境をかき乱す存在として投入された外部要因、ということを示していた。 『お前はこの女子高で何をしてもいい。どんなにデータ改竄しても改造しても、何をしてもいい。破壊しても生徒や先生の修理は可能だし、データも常に毎日バックアップを取っているからな。それでだが、校長のストレージの中に本当の敷地内マップがある。転校してからいつ頃これにたどり着いたのかわからないが、入れなかった施設やなんでこんなものがあるのかわからないというのもあっただろう。それの答えがきちんと記されている。それらを使って、自由にこの学校で過ごしてみろ。では、俺からのメッセージはこれで以上だ。それじゃあな』  音声ファイルの再生が終了すると、スピーカーとしての役目を終えた絢子の誤作動が再び始まった。  彼女の思考はウィルスによっておかしくなり、自ら頭部を捻って首を折ろうとしていた。 「あらため、てて、改めてようこそこそこここ、こ智也さささサん智也さん、toもヤさん3年かンよよよよろしクお願いしますお願いしマすお願いシます3ねンかかかかかか#&〃ゞ@1#$8$0$■■──────」  絢子の首は、人間を超えた出力のパワーで徐々にネジ曲がり、内部機構からの悲鳴が鳴る。  音声機構が破損し、それまでの大人の色気をどこか帯びた音声はノイズまみれの電子音へと変貌し、頭部からの信号が途絶し始めたことで、両胸が激しく揺れる程の痙攣が全身に発生する。  そして、ついに彼女の頭部は180度以上回転してしまい、内部機構ごと人工皮膚がねじ切れてしまった。  彼女の首は、文字通り首の皮一枚で繋がったような状態となり、フラフラと力無く揺れ動いた後、テーブルに躓き転倒。もはや元の女性らしい音声の名残もない電子音を口から漏らしながら、股間から誤作動によって人工膣液を垂れ流し、ガクン、ガクンと床の上で痙攣を起こすだけの壊れた機械人形と化してしまったのだった。 「…………まあ、だいたいのことは理解はしたよ。結局姿を現さねえのはムカつくけどよ」  まるで父親の手のひらの上で転がされているようで強い腹立たしさを覚えるが、それ以上に彼は価値のあるものを手に入れた。  この学園で稼働しているアンドロイドを好きにしても良いというのならば、いわば単なるハーレムとは比べ物にならない程に彼女達という存在を操り、どんな風にもできるということ。  ずっと一日中、一線級の美少女や美女ばかりに囲まれた男一人で、この欲望に抗えるはずもなかった。   「何をやってもいいってんならやってやろうじゃん。今日一日いて、試したいこととかやってみたいことたくさんあったからな……! ようはエロいことだって壊すことだってなんでもいいんだろ? なら存分に楽しんでやるよ!」         こうして、アンドロイドだらけの学園に送り込まれた訳あり少年の、機械仕掛けの美少女達に囲まれたハイスクールライフが幕を開けたのであった。   


Related Creators