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土装番 from fanbox
土装番

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血の通っていない姉と母と 1話先行公開版

 現代よりも離れた遠い未来の時代。  人類はより発達したテクノロジーを享受し、さらなる先進的な技術を日常の中に体感していた。  その中でも特に大きいのは、間違いなくアンドロイドの存在である。  長い時を経て積み重ねられた人類の叡智が結集し、人間にそっくりな機械人形、アンドロイドが製造されるようになったことで、人間社会は大きな変化を遂げた。  最初は富裕層や企業が購入する人型家電のような存在だったが、より人間に近づいていき、量産も可能になったところで、一般市民にも手を出せるようになり始めた。  さらに、アンドロイドが国民と同様に単体での稼働が認められたことで、本格的に扱いが一人の人間のようになり始めた。  それでいて、アンドロイドは人間社会の、そして人間の為に稼働しつつ、個人であるかのように振る舞えている。  人間とアンドロイドの境界は、殆ど無くなったも同然となっていた。  そして極めつけに、生身の人間の人口が減少し続けたことで、政府が人工子宮による人間の誕生を実行するようになり、その親や兄弟姉妹としての役目を、殆どの場合が人間の子をサポートするようにプログラムされたアンドロイドが受け持つようになった。  いつからか、アンドロイドの家族に囲まれた人間という図式まで発生するようになり、本格的に人間社会はある種の混沌とした状態となったのであった。  これはそんな時代の、とある18歳を迎える少年の話である。 * * *  とある島国の首都。その中心地からやや離れた郊外の一軒家。  そこでは、ある女性が二人の子供の世話をしていた。 「あらあら、どうしたの慎二? おっぱいが欲しいの? それともおねしょしちゃった?」  女性の名前は中橋真由子。現在二児の母である。  額を晒すように分けられながら後ろ髪を編むように纏めた、色合いの美しいブラウンのセミロングヘアーに、落ち着いた雰囲気を漂わせる目に、鼻筋やフェイスラインがスッキリした、20代後半の大人の色気が漂う女神と見まごうような綺麗な顔立ち。  シンプルで生地の薄めな肌着から主張する両乳房は、全体的に漂う雰囲気とは裏腹にハリがあり、柔らかさを持ちながらもまるで果物のように突き出している。  二児の母でありながらそのボディラインは非常にシャープで、くびれやスラッとした脚のラインはまるでトップモデルかのよう。まさに、美女という言葉がこれ程似合う女性は滅多にいないというレベルだった。  そんな真由子にあやされている赤子の名前は、中橋慎二。真由子の息子であり、長男である。  彼はまだ産まれて間もなく、何もわからずただとにかく泣いて主張することしか出来ない。人間ならば、生物ならば誰もが通る道の途中、その特に最初の方にいた。 「おむつはまだ濡れてないから……おっぱいが欲しいのね。ちょっとまっててね」  真由子は、幼い息子の状態を事細かに確認し、慎二が今何を求めているのかを推測する。  そうして、おそらくはお腹が減っているんだと予測し、彼女はまだ小さな息子をとても優しい手付きで軽々と持ち上げ、左手で支えつつ右手で衣服はだけさせた。  真由子の豊かでボリュームのある乳房が曝け出され、ピンク色の乳首が、乳を飲みやすいように固くなる。  慎二の口に優しく乳首を近づけてあげると、まだ二本程度しか生えていない口を当てて吸い付き始めた。 「あっ……ん…………そうそう、良い子ね慎二……いっぱい飲んで、大きくなるのよ……ん…………」  優しく頭を撫で、愛情に満ちた声で褒めてあげる真由子。  感じているような声を小さく漏らしているうちに、彼女の右乳からは白い母乳が噴き出し、慎二に数少ない栄養の供給源を与えていった。  我が子が満足するまで、細身ながらもしっかりとした安定感でその小さい身体を片手で支える真由子。  しばらくその授乳が続いていると、慎二の部屋に一人の子供が入ってきた。        「ねーねー、おふとんまだー?」  彼女の名前は中橋美沙。慎二の姉であり、2歳上の長女である。  顔立ちは真由子に似ており、まさに親子であることを感じさせる。  子供らしい無邪気さを持ちつつも比較的落ち着いており、母親の言うことはしっかりと聞いてくれる。 「ごめんね美沙、慎二におっぱいを上げたらすぐに入れるから、もうちょっと待ってて」 「はーい」  美沙は、真由子の声を聞いて文句も言わず、おとなしく部屋から離れていった。  それから、慎二はようやく落ち着いたのか、母乳を飲むのを止めて笑いかけた。  それと同時に、真由子の右乳から出る母乳も止まった。 「あら、お腹いっぱいになったのね、よしよし。すぐにベッドに戻してあげますからねー」  服を戻し、彼女は優しく愛する我が子をベッドに戻し、暖かな微笑みを向けた。  中橋家は現在、真由子一人と二人の子供で構成されている。  一軒家の下で共に暮らす三人家族は、いつの日も、とても幸せな空気に満ち溢れていた。  それから長い時が経ち、慎二は中学1年、美沙は中学3年になった。  二人共すくすくと元気に育ち、道を外れることなく立派に育っていった。 「ほら慎二、あたしと同じとこに入ったんだから、後輩としてちゃんとしなさいよ?」 「わかってるって。それくらい俺でもちゃんと出来るっての」 「あんたいっつも変なとこでヘマしちゃうもんね。ま、何か困ったらいつでもあたしに言ってよ。初めての中学なんだし、色々困っちゃうでしょ?」  美沙は頼れる姉として大きくなり、すくすくと成長した慎二の側にいつもいてくれていた。  少々過保護にも思える瞬間もあるが、基本的に勝ち気な態度でリードしつつも、別学年や年代であることもあって、干渉しすぎず見守ったりちょっかいを出す程度の位置で動いていた。  「うっさいなあもう、そんなに頼りっきりになる気は無いっての」 「はいはい。じゃ、中学生活楽しみなさいよね」  同じ家で同じ時を過ごし合っていた二人。次第に少しずつ、それぞれの時間が築き上げられる時が増え始めていた。  慎二は小学校、中学校と、徐々に友人や仲間も増え、一人の人間としての成長が着実に進んでいた。  同級生の友達とアホみたいな話で盛り上がったり、共に思いっきりサッカーやドッジボールで遊んだり、時には下ネタで沸点の低い湧き上がり方をしたりと、まさしく健全な中学生として順調に歩んでいた。 「そういえばさあ……慎二の姉ちゃんすげえ可愛くない?」  だがふと、彼の同級生の友達が口にした言葉から、ちょっとした疑問が浮かび上がる。 「…………まあ、確かに。けど、毎日見てるし慣れ……いやうーん?」  思春期に差し掛かった彼は気づいた。自分の姉はとても可愛い。美人なのである。 「てか、お前とあの姉ちゃん似てなくね? 言われないとたぶん姉弟って当てられる自信全くないかも」  ずっと近くにいる分、ある意味それが当たり前になっていた。外から指摘されなければ気づかなかったことに、彼はこの時ついに気づいたのだ。  母親に似てブラウン気味な、綺麗な色をしたストレートのミディアムヘアスタイルに、性格に違わず勝ち気な雰囲気が溢れる、アイドルと言ってもおかしくないような可愛らしく非常に整った顔立ち。  同年代の中では明らかに大きな胸の大きさに、ハリツヤがとても優れている色白の肌。  ボディラインも細身ながらしっかりと引き締まっている肉付きをしており、まさに美沙は学校で上位クラスの美少女と言っても過言ではなかった。 「もしかして、お前の姉ちゃんってアンドロイドなんじゃね? ほら、ウチのクラスにもいるじゃん? 由美ってめっちゃ可愛いアンドロイドの子。あいつみたいにさ、実はアンドロイドとかだったりして」  だが、この時代は家族がアンドロイドである、という事情が混ざり込んでくることがまま有ることになっている。  と言っても、やはり世間一般の感覚では、人間の両親に人間の子供がいる、というのが普通であり、両親や兄弟姉妹、または子供にアンドロイドがいるというのはマイノリティ側だった。  時にはそれが、偏見やイジメの対象にもなる。慎二は運良く、友人達にそういうことをする者がいなかった。 「そうかな……一応ウチの姉ちゃん、小さい頃から一緒にいたしなあ……うーん」  慎二は、頭の中で鮮明に思い出せるというわけではないものの、ずっと子供の頃から姉が一緒にいたことを思い出す。  小さい頃からだいたい年齢の差相応程度の違いがあり、少し背伸びをした先に姉がいる印象が強い。  まだ自分みたいに小さかった頃も知っている。それもあって、慎二は姉がアンドロイドだということがあまり信じられなかった。  だが、徐々に姉のことを意識し始めるようになる。   「ただいまー」 「お帰り慎二。まだ夕ご飯作ってないけど、何か食べたいものある? 今から買い物行ってくるから、好きなの作ってあげる」 「あー……それじゃあ、いっぱい生姜焼きを……」  同日、先に帰宅した慎二が家に帰ると、いつものように母が出迎えてくれた。  いつも優しく微笑み、いつも家でご飯を用意してくれている大好きな母親。  だが、今日は友人の発言からの連鎖によって、また別の意識が生まれていた。 「ん? どうしたの慎二? そんなにボーっとして」 「…………ああいや、なんでもない。部屋戻るわ」  姉が自分と似ていない。となれば、母親の方はどうなのか。  新しく芽生えた意識のフィルターを通して母親の顔を見てみると、確かに自分とは似ていないように見えた。  それどころか、似てる似てない以外の部分で、彼はある違和感を覚えた。  それは、子供の頃の記憶からずっと、母親の見た目がずっと変わっていないのである。  下手すれば歳の離れた姉と言っても通用しそうな若々しさ。記憶の中にある一番はっきりした最も昔の姿と比べても、変わっている部分が一切見当たらなかったのである。  慎二はあまり母親と言葉を交わさないようにしつつ、自室へと入っていった。 「……反抗期かしら?」  真由子はその様子を深く受け止める様子もなく、首を傾げた後で気持ちを切り替え、息子の言っていた料理の材料の調達をしに外へ出ていった。  それ以降、慎二はわずかに空いた時間や勉強後などに、色々な話をネット上などで収集するようになり始めた。  自分と似たような境遇の者はいないか、そういう事例はあったりするのだろうか。  基本的に、家族にアンドロイドが存在する理由は、それぞれに様々な事情があるため、まず学校では何も教えられない。人間もアンドロイドも同じように授業が行われる。  しかし、調べていくうちに、殆どの自立したアンドロイドやそれ以外の者の進路など、それらが人間とはまた別の道となっていることを長い時間をかけて知った。  それらの事情は、大抵間近にそういう疑惑のある相手や、親密な相手にアンドロイドが存在する者しか、まず調べようとしない。その分、出てくる情報も少なめになる。  ずっと姉と母に疑惑を持ちながらも、慎二は学校や友人、その他大人から教えられないことを少しずつ学びつつ、また、二人が人間ではないのではないかという疑惑を投げかけられないまま時は過ぎていった。 「ほら慎二、早く寝なさいよね。壁越しでも中の音聞こえてんだからさ。夜遅くまで無理に勉強しても意味ないから、ちゃんと睡眠時間取れっての」 「……うっさいな、わかってるっての。俺がやりたいからやってんだから、いちいち口出しはいいって」  時期は6月。慎二は高校3年、美沙は大学2年生となった。  慎二は大学受験の為に常日頃から勉強に打ち込み、しっかりと己の頑張りを結果として形にするべく、努力を重ねていた。  しかし、彼がひたすら勉強に打ち込むのには、また別の理由もあった。 「そうは言ってもさ、無理して倒れたらそれこそ本末転倒でしょ? 全力出すのはいいけど、ずっと走り続けるのは無理だって」 「わかってるから、いちいち口出しすんなっての……」  それは、中学2年頃から姉に対して、今までとは違う特別な意識を持ち始めていたことだった。  自分と似ていない可愛い姉の美沙に、友達からの鶴の一声でそれまでの発想に無かった疑問を抱くようになった慎二。  それから彼の頭の中には常に、本当は血の繋がった相手ではないのではないか? 姉と母もアンドロイドなのではないか? という思考がついて回るようになった。  そんな意識が芽生え始めてから、姉のことも特に可愛く見えるようになり、母にも美人だと感じてしまうようになった。  母相手には、今までずっと世話になったり色々と世話を焼かれていた分、そういう意識が比較的薄くはあるが、姉に対しては特に強かった。  彼女は大学2年生、20歳となってからは、持ち前の可愛さの上で美人な要素が加わり、さらに魅力的な女性となっていた。  順調に成長を続け、ロケットと見まごうくらいに突き出した胸は、私服姿でも谷間が目立ち、素肌の隙間がとても色っぽく感じる上、薄手の服だと軽く動いても胸が波打ち、扇情的な揺れが発生する。  顔立ちはよりシャープになり、成長するごとに大人っぽさが宿るようになり、格好良さとその中に宿る色気を兼ね備えた、理想の姉とも言うべき美貌へと変わった。  身長も伸び、女性の中では平均よりも高く、慎二よりもやや低い程度。脚が長くなった分、より洗練された美しいスタイルが映えるようになり、今になってもずっと容姿が変わらない母と同様にトップモデルかのような雰囲気が漂うようになった。  おっとりとした落ち着いた雰囲気の真由子とは対照的に、美沙は持ち前の勝ち気で活発的な印象がずっと残り続けている。母娘で見た目が似ていながらも、そこには全然違う雰囲気が宿っていた。  そんな魅力的な女性に成長した似てない姉に対して、思春期の頃から芽生え始めた疑念の上で意識しないほうが難しい。  中学2年生の後半頃から、余計にぶっきらぼうな対応を母と姉両方に取るようになっていたが、時間が経過するごとにそれがより顕著になっていた。  現在、家族には言っていないが慎二には同じ学園に通う同級生に好きな娘がいる。だがそんな相手がいても、それとは別に二人に対する意識は残ったままとなっていた。 「はぁ……あんたの為に言ってるんだからね。なんかあったらいつでも言いなさいよ」  一日の中で、食事や入浴、外出などの際に顔を向き合わせることはあっても、意思疎通の機会は極端に減った。  だが、どれだけ冷たい対応をしても、投げつけるような態度を取られても、美沙と真由子は決して突き放すようなことはせず、ずっと心配し続け、声を向け続けていた。  自分から距離を取っていても、悪感情があるわけではない。むしろ二人に向けているのは良寄りの感情ではあるが、どうしても自分の胸の内がかき混ぜられるような感覚が溢れてくる。それを彼は少しでも抑えたかったのだ。  美沙も真由子も、反抗的ではあっても本心から嫌っているわけではないということは、彼の声や表情、反応から理解しているのもあって、ずっと一定時間は構い続けていた。 「じゃ、あたしは先に寝るからね。無理はしないでほしいけど、勉強頑張りなさいよ。応援してるから」  姉がドア越しに向けてくれた応援の言葉に、慎二の手と口は一旦止まった。そして、胸の奥が熱くなった。  彼は自分の気持ちを落ち着かせようと深く息を吸っては吐き、火照ったように赤くなった顔を落ち着かせようとした。 「はぁ…………ダメだ……どうしても意識するってもう……」  通常向ける感情とは別の意味で、姉のことが好きになりつつある慎二。長い時間をかけて、奥に秘めながら蓄積していた気持ちを吐き出し遠ざけるように勉強に打ち込み続けてきた彼にとって、ドアの向こうから来る思いやりの声は、破裂しそうな風船を突くような行為だった。  溜め息をつき、水を飲み、大学受験のために、己の掻き乱される気持ちを落ち着けるためにも机に向かう慎二。  その真実が明かされる日は、もう間もなく、彼の意思に反してやってくるのだった。 * * *  日時は6月10日。この日は慎二の誕生日の前日。  あと何十分かで年齢が18歳となり、成人向け作品の閲覧制限など、様々な縛りから解放される日。  彼にとってもある意味特別な日になるという区切りの日になるというのもあって、慎二はここしばらくの勉強漬けな日々から一旦立ち止まり、久しぶりにゆったりと過ごしていた。  夕食を食べ終え、風呂に入り、一旦自分の部屋でぐったりと過ごし、時刻は23時50分。  もうすぐ一日が終わるというところで、彼は部屋を出てリビングに移動し、せっかくだから18歳の誕生日は広々とした場所で身体を伸ばして過ごそうと思っていた。  ソファに座り、テレビ画面で何かしら配信映画や番組でも見ながらその時を待つ。今日くらいは深夜前の夜食も良いだろう。  そう思いながら移動すると、リビングには既に、美沙と真由子の二人が待機していた。 「えっ、なんでいるんだ……?」         「そりゃ、もうすぐあんたの誕生日だからでしょ? それがわかってるならちゃんと起きてるって」 「そうよ慎二。今日で18歳だものね。大きくなったわ……」  美沙は何を当たり前のことを、と言うような放り投げる雰囲気の言葉をぶつけ、真由子は我が子の成長を喜ぶ感慨深いような笑顔を向けた。  確かにいつも、二人は誕生日ごとに祝ってくれていたが、それはその日の朝のことであり、深夜まで起きているというのは初めてだった。  自分にとって18歳というのは特別な区切りではあるが、二人にとってもそうなのだろうかと思った時、慎二は未だなんとも言えない気持ちは残っていながらも、とても嬉しい気持ちになった。        親子や姉弟じゃないかもしれない、ずっと姉と母として過ごしてきた美女二人を前に、心臓の鼓動を二重の意味で早めながらリビングに降りる慎二。  食事以外で二人と同じ空間にいるのは久しぶりであり、何かを食べるという逃げ道が無い分、目をそらし続けると不自然な合間が生まれてしまうようになった。 「あたしもね、なんだか感慨深いわー。いっつも大丈夫かなって思ってたけど、案外しっかりしてたもんね。さすがあたしの弟」 「ふふ、そうね。最近は心配な時も多いけど、私は慎二が元気でいてくれて嬉しいわ。けど、美沙から何回も言われてると思うけど、夜更かししてばっかりだとダメよ? ちゃんと寝ないと」 「母さんまでそういうこと言う……」 「そりゃそうでしょ。クマまで出てたら心配するって。昨日はちゃんと寝たみたいだけど、明かりとか漏れてる分ちゃんとわかってっからね?」  いつぶりか、家族で他愛のない会話が繰り広げられるのは久しぶりな気がした慎二。  未だ家族相手ではない緊張は解けていないが、ここまで気を楽にして話が出来たのは中学生ぶり。そう言っても過言ではなかった。  素っ気ない態度を取り続けていたのも自覚している慎二は申し訳ない気持ちもずっと抱いていたが、こうして話してくれるのはなんとも言えない嬉しさがあった。  今だけは、もしかしたら二人がアンドロイドなのではないだろうか、という気持ちも置いておいて、楽しんでみてもいいのかもしれない。  そう思いながら時計を見ると、時刻は23時59分。あと1分足らずで日にちが更新される。 「ちょっと牛乳飲んでくるわ」  そろそろ18歳の時がやってくる。慎二は喋って少し乾いた喉を潤そうと思い、キッチンに向かい冷蔵庫にある牛乳をコップに注ぐ。  そして、飲み干したと同時に、日にちは6月11日。彼の18歳の誕生日が訪れた。 「あ、もう0時か…………?」  呆気ないタイミングで時刻が回り、なんだかしまらないなと思いながら、彼は視線をソファーに座る二人へ何気なく向ける。  しかし、彼の視界には予想だにしなかった光景が広がっていた。 「ちょっと、どうしたんだよ二人共」  それまで楽しく談笑していた美沙も、真由子も、それまでに比べてどこか作られたような微笑みを保ちながら、まるで時間が止まったように動かなくなっていた。  姿勢は丁寧すぎるという印象を覚えるくらいに綺麗で、まるでカタログ写真で座っているモデルのような手と脚の揃え方をしていた。  普段から落ち着いている真由子はまだしも、割といつも活発で男勝り気味な美沙までそんな状態になっているのは、かなり違和感が強かった。  二人に対して軽く呼びかけて見るが、慎二の方に反応を見せる様子がない。  一体何があったのか、それとも誕生日だから何かしらの仕掛けでもしているのか。そう思いながらキッチンから離れて近づいたその時、二人は表情そのままに、同時に慎二の方を向いた。  不気味さすら感じさせるその挙動の後、二人同時に立ち上がると、同じ姿勢から美沙が口を開いた。 「お誕生日おめでとうございます、中橋 慎二 様。慎二様が18歳の誕生日を迎えたことにより、新たな権限が解放されました」 「本日より、当機体は中橋 慎二 様が所有者として登録されます。それにより、当機体は慎二様の支配下に置かれます。ご自由に使用してください。擬似人格を復帰します…………」  これまでの日常では一度も聞いたことのない、淡々としていながらも抑揚のはっきりとした、感情を一切感じられないアナウンサーのような丁寧な喋り。  からかっているのかとしか思えないような喋りだったが、その内容は二人揃って耳を疑うようなものだった。  言動も内容も非常に機械的で、これまで抱いていた疑念が全て正解だと証明するような言葉ばかり。  真由子のセリフが終了すると、再び二体の喋りは止まる。慎二はそれをただ聞いていることしか出来ず、目の前の夢の中としか思えないような現実を整理することでいっぱいいっぱいだった。  そして、再び訪れた沈黙の数秒間が終わったところで、美沙も真由子も何事もなかったかのようにいつもの表情が戻ってきた。  しかし、二体の雰囲気はどこか、それまでとは違う何かを帯びていた。 「システムメッセージ聞いたでしょ慎二様? あんたが18歳になった瞬間、あたし達は慎二様の所有物になったから。これからはあたし達のマスターとしてよろしくね」 「慎二様が18歳の誕生日を迎えられて、改めてとっても嬉しいわ……これからも慎二様の役に立つ為に」 「ちょっ、ちちちちちょっと待て!! ちょっと待て!!! 何がどうなってんだよこれ!? 意味のわからないことを言って意味のわからないまま進めてんじゃねえ!!」 「意味がわからないって……あたし達の言ってることそのままだけど?」            表情や立ち振る舞いはいつもと変わらないが。その内容が大きく様変わりしてしまっていた。  まず、姉と母両方とも、視線にこれまで以上の優しさが宿っていた。  美沙に至っては、それまではまるで自分が優位に立っていると言うような態度を常にとっており、その代わりきちんと世話を焼いてあげているという状態だった。  そんな彼女の視線や表情には、明らかに下から上に向かって投げかけるような優しさ、もっと言えばどこか従属するような雰囲気が薄っすらと漂っていた。  母親の真由子に関しても、常に優しく温かな振る舞いを見せてくれていたが、まるで夫婦的な意味ではなく主人に使えるような従者としてのニュアンスが含まれているように感じた。  その要素が特に含まれているのは、姉や母なのにも関わらず慎二に向かって様付けしている部分である。 「それがわかんないって言ってるんだって! 冗談ならもうそろそろいいから」 「冗談って、別にそんなつもりじゃないけど? あたしと母さんは、ついさっきから慎二様の為に」 「その様付けをやめろって! すごいムズムズする!!」  二体は、彼からのやめてほしいという要望を「命令」として受け取り、従順に従った。 「わかりました慎二」   「わかったわ慎二。今まで通り慎二って呼ぶから」 「……なんか違うような気がするけど、まあいいやもう。つうかそれよりも、二人共なんなんだよ。いきなりあんなこと言い出して、アンドロイドみたいな喋りして」 「慎二には言わなかったけど、あたし達アンドロイドなの。ずっと黙っててごめんね」 「そうなの。私もずっと、慎二の母親として稼働してたけど、本当は貴方を育てる為に製造され、割り当てられたアンドロイドなの。ごめんなさいね」  慎二は思わず、大きく、深く、深く溜息をついた。  中学の頃に友達から指摘されてから初めて抱いた疑問。それからずっと胸の奥でちりちりと燻っていた感情。それらから出てくる憶測は全て正しかったのだ。  失望しているわけではない。ただただ、本当に自分の中で噴出していた、正解かどうかわからない疑念が、唐突に、しかもあっさりと解決されたことに、なんだか全身の力が抜けたような気持ちになったのだった。 「………………正直、どこかでそんな気はしてた。ずっと前に友達に姉ちゃん似てなくね? って言われてさ、それから母さんも似てないしなんかずっと見た目変わんないよなって思ってたんだ。けど、本当にそうだってわかるとなんか……わけわかんねえって。なんで今いきなり言い出したんだよ」 「慎二はね、元々人工子宮から妊娠、出産された子供なの。でも、人工子宮から産まれた子には両親がいない。だから、そんな子に割り当てられるアンドロイドが製造されるの。ここは授業で習ったでしょ?」 「……習った。去年。なんなら、もしかしたら俺のとこそうなんじゃってちょっと思った」 「それでね、私が慎二を育てる為に製造されたアンドロイドで、美沙は姉弟として一緒に育つように製造されたアンドロイドなの。私達は、貴方が18歳になると自動的にマスターとして登録される。正確には現在の法律上で成人として認められる年齢ね。だから今の私達は、貴方の母親や姉として役目を与えられた上で、思い通りに使っても大丈夫になったのよ」  ある程度は授業の中で聞いたことはあることだが、その中だけではわからなかったことに加え、その本の中だけの内容の当事者になると、どうリアクションしていいのかわからない気持ちになってくる。  真由子は礼節丁寧に、自分の息子でありマスターに向けて説明してくれているが、慎二はしっかり耳に入れつつも上の空になりかけていた。  すると、真由子の話に区切りがついたところで、美沙が自分の部屋着に手をかけた。 「そういうこと。それにね、さっきシステムメッセージ上で機能が解放されたって言ったでしょ? それも貴方の為のシステムなのよ。18歳になったら成人向けのコンテンツにも問題なくアクセス出来るようになるでしょ? それはあたし達も同じなの。あたし達にはね、18歳以降になった対象者の健全な性教育とこれから同じように人工授精のサンプルを得る為に、それぞれ性機能が実装されてるの」  美沙は平然と自分自身を機械と扱っている言い回しの説明をしながら、下半身を曝け出し始めた。  身につけている下着を脱ぎ捨て、無毛でつるつるとした綺麗な女性器ユニットを堂々と曝け出した。 「何脱いでんだよ!? ていうか母さんも!」  「? 私にも同じ機能が実装されてるんだから、自由に使ってくれていいのよ?」  ただでさえ目の前で姉が脱ぎだしたことに、顔を赤らめながらツッコんでいる最中に、母親も同様に女性器ユニットを平然と曝け出した。  それぞれ設定年齢の違いはあり、形状の個性はありつつも、その見た目は両者ともとても綺麗であり、まるで設定年齢の差を感じさせない。  だが彼にとってそんなことは今はどうでもよく、両者がいきなりそんな行為を働いたことそのものにとてつもない違和感を覚えていた。 『ちょっとまだ着替え終わってないったら!? ちゃんと確認してよ!?』 『あーもー悪かったって! けどそっちが遅いんだろ!』  これまでの共同生活の中でも、何度か予期せず美沙や真由子の裸を目の前から対面してしまったことはあった。  その時はいつも声を荒げて身体を隠して恥ずかしがったり、片手で叩いて早く離れるように払っていた。  その後も彼に向けて悪態をついたり、デリカシーがないと散々な言い様をしており、まさしく真っ当な反応だった。  だが、そんな反応をいつもしていた姉が、今では自ら堂々と女性器を晒し、母親と共にそれを使っても良いとすら言っている。  血が繋がっていないどころか、血が通ってすらいなかった二体の家族。18歳の誕生日を迎えた瞬間に、全く変わっていない性格や言葉遣いのまま、まるで全てを捧げる従僕のような振る舞いをし始めた姿は、慎二の頭の中を混乱させるにはあまりにも足り過ぎていた。 「…………てか、なんでそれ言ってくれなかったんだよ。二人共アンドロイドだって」 「何度も追求されれば私達も答えたわ。でも、軽く聞かれたり探るような感じで質問された時は、はぐらかす様にプログラムされてるの。でも、慎二はそもそも質問自体しなかったでしょ?」 「そりゃそうだけどさ……」  「追求する場合は真実を知りたいという強い意志がある場合が多いから、その際はきちんと自分達がアンドロイドだって説明するわ。でも、そうでない場合はまだ受け入れる準備が整っていないと判断してはぐらかすの」 「けど、必ずあたし達のことを血の繋がってないアンドロイドだって知る日は来る。だから、その日の基準を18歳の誕生日と統一されたの。その日がついさっき、慎二のところにもやってきたってことよ」 「……それじゃあ、母さんがずっと見た目変わらないのはわかったけど、姉ちゃんが俺と同じように成長してたのはなんなんだ? 確かに小さい頃並んでた記憶もあるぞ?」 「あれはね、あくまで同じ姉弟として一緒に育つようにしてるの。その方が、より家族としての意識や愛情、経験が重なるでしょ? あたしの身体は2年ごとに更新されてて、その度にあたしの容姿と年齢に合わせたボディに電子頭脳を乗せるの。だいたい20代前半か中盤か後半か、その辺りで自由に容姿の更新は止めることはできて、それ以降は修理か同じボディへの換装をするって感じ。だいたいわかった?」  一気に濁流のような情報の波に押されるが、今日は勉強を休んだおかげか、なんとか頭の中で受け止めることは出来た慎二。  だとしても、論理や内容の部分の理解は受け止められても、心情面では今まで疑っていたとしてもすぐに全てを受け入れるというところまでは出来なかった。その状態が、未だ困惑している表情によって表れていた。 「ああまあ、うん……だいたいはわかったけど……やっぱいきなりこんな風に宣言されたら色々ビビるって」 「うん、まあそうよね」  誕生日に入って早々、慎二が見せた疲労困憊の表情。わずかな時間の間に目まぐるしい日常の反転が起きれば、それも無理は無かった。  そんな彼に向けて、美沙と真由子は下半身の素肌を曝け出したまま、真っ直ぐ彼の方へ近づいてきた。  そして、両サイドから彼を挟み込み、優しく抱きしめた。  二体の柔らかな両胸が腕に押し付けられ、挟み込まれる。 「明日もあるし、日を跨いで18歳になる瞬間も過ぎたからさ、今日はもう寝る? あたしを抱いて寝てもいいよ? あたしの身体の用途って、そういうモノでもあるからさ」 「私と一緒に寝てもいいのよ? それとも3人で寝る? 模造品でも、人肌を触れ合わせているとより眠りやすくなるの。慎二が望む体温にも調整できるわ」  様付けで呼ばせるのは止まったが、それ以外の部分は、アンドロイドとしての自身を曝け出した時と変わっていなかった。  自分達が慎二の所有物であり、マスターへ奉仕する為に稼働する機体であることを示すような従属的振る舞い。  その様は姉や母のような関係ではなく、人間とセクサロイドの関係のようにしか見えないものだった。 「…………頼むから、ちょっと今まで通りにやり取りをさせてくれ……」  いきなりそれまでの関係を無視したような触れ合いをされても、慎二にとっては困惑しかない。  一旦そういう振る舞いをやめてこれまで通りに対話させてほしいという言葉をぶつけると、2体はその「命令」を受け取り、一度その素肌や胸を寄せた触れ方を止めて離れた。 「ごめんなさいね、慎二。私達、制限解除が行われた後はまず、マスターの性欲を刺激するようにプログラムされてるから……」 「あたしも、慎二が疲れてるならまずベッドに行って、あんたの部屋で休ませてあげながら、可能ならセックスしようと思ってたの」  マスターに使われることを優先した行動を行う様は、まさしく女性型のセクサロイドと言っても過言ではなかった。  いきなりの行動に彼は驚き戸惑いはしたものの、実のところ彼の男性器は固くなっており、彼女達の柔らかな感触に心臓の鼓動は早くなっていた。  精神的に疲れたが故に甘えたいという気持ちが染み出して来てはいるが、今の状態の真由子とは触れ合いたくないような気がしている。  となると、彼の気持ちは、ずっと中学時代から特に悶々とした感情を抱いた姉の方へと向き始めた。 「…………じゃあ、姉ちゃんは俺の部屋に来て」 「ええ、わかったわ」 「母さんは早く寝て。今日はもう寝るから」 「わかったわ慎二、おやすみなさい。18歳のお誕生日おめでとう」  それぞれの言葉を2体は命令として受け取り、真由子はその場で立ち尽くし、姉弟の背中が見えなくなるまで、下半身を曝け出したまま笑顔で手を振り続けた。  そして、文字通り血の繋がってない姉弟は、一つの部屋の中へと入っていった。  ようやく自分の領域に入った慎二は、とても疲れた溜息を吐き、ベッドの上に転がった。   「はあ……もうわけわかんねえ……」 「まあ、18歳の誕生日で公表される場合のパターンだとそんなもんよ。そういうデータだって出てるし」  それまでの姉ではしないような言い回しで、弟の気持ちをカバーしているのかどうかわからないような言葉を向ける美沙。  直後、彼女は残った上半分の衣服を脱ぎ捨て、とても慣れた手付きでブラを取り外し、増量されきった豊かな胸まで曝け出した。 「それで、どうする慎二? 今からする? あたしはいつでも大丈夫だけど」  美沙は誘うような言葉を慎二に向けながら、彼の下半身を右手で少しずつ降ろしていく。  彼女の慣れた手付きはこれまでの経験からのものではなく、組み込まれたプログラムによるもの。  慎二は何も言わず、抵抗もしないまま実質的にそれを受け入れ、されるがままに脱がされると、すっかり固くなっていた男性器が姿を現した。 「今日はあたしの機能解放が起きたばっかりだからさ、お試しくらいで大丈夫。あたしがガイドしながらサポートしてあげるし、なんなら慎二は自分から何もしなくてもいいから。試しに使ってみなって。その後、一緒に寝よっか」  時刻が時刻なだけに何度も促すことはできないが、自身の性機能は使用してほしい美沙は、一度だけでも、軽いものでもセックスをするように進言していく。  「……じゃあ、一回だけ」  2体からの言葉に対して、姉だけを自分の部屋に招き入れた手前、そういう気持ちが無いと言えば嘘になるし、ずっと前からそんな気持ちは燻っていた。  だが、今はそれをしたいという気分よりも情報の濁流にのまれた疲労感の方が強く感じる。と体感で思いながらもちょっと姉とそういうことをしたいという気持ちもあるぐちゃぐちゃした感情が、かき混ぜられるアイスクリームのように重く渦巻いていた。  血が繋がっていないし、人間ですらないという事実が示されたことから多少の罪悪感は払拭されたものの、感情的にはずっと一緒に育った姉という引っ掛かりはどうしても残っている。  それでも今は、疲労を少しだけ上回る性欲が溢れ出している。そんな複雑な感情から絞り出された結論が、一回だけというものだった。  美沙はそれを受け取った瞬間、ベッドの上で彼の下半身の下で膝立ちになり跨った。 「じゃあ、早速シよっか。あたしの女性器ユニットはね、人間のように前戯とかしなくてもすぐに濡れるようになってるの。人間の女の子とする時は、ちゃんと準備はしてあげなよ?」  割れ目を指で拡げ、つやつやした樹脂製の女性器を見せてあげる美沙。  構造そのものは人間に限りなく近づけられているが、卑猥な外性器の周囲には、間近で見ればようやく気付けるかどうかというレベルの継ぎ目が、とても薄っすらと走っている。  ひくひくと自ら動かし、じんわりと人工膣液が溢れ始めると、部屋の明かりに照らされ、さらなる淫猥さを醸し出した。  初めて目の前で見る女性器が、続柄上姉となっている、血の繋がっていない機械人形のそれとなったが、慎二は元々そういう疑いを長く持っていたこともあって、他人の女性相手と変わらない程の反応を男性器が起こした。  機械仕掛けの姉が、目の前で淫らな振る舞いをしている。これまで見せてきた彼女の姿からは到底想像できない振る舞いや言動だが、彼がそれに抗うことはできなかった。 「ふふ、じゃあ今から受け入れてあげるね…………あっ……ぁ……あんっ…………これが……慎二の男性器……とっても……元気じゃない……あっ……あんっ…………」  美沙は躊躇なく、自らの人工愛液で濡らした膣内に、ゆっくりと慎二の男性器を深くまで受け入れ、まるで慣れているように腰を動かし始めた。  人間が最も心地よいと感じる温度に調整された膣内は、下半身の動作とはまた独立して上下左右に動作し、膣肉単体でうねり、肉棒を擦り撫でていく。  それに加えて下半身の動作は、一定のスピードと感覚を保ちつつ上下し、よりマスターを気持ちよくしてあげる為に動いていた。 「うっ……あっ…………姉ちゃ……ん…………あっ…………!」 「あっ、あっ、あ、あんっ! どう? あたしの女性器ユニット、気持ちいいでしょ? あんっ! あたしも、慎二のあそこが、いっぱい膣内を刺激して、あんっ! 子宮口まで届いて……ああっ! あんっ! とっても気持ちいい……ああんっ!!」  身体を前に傾け、より腰を振りやすい体勢に変えながら、今まで見せたことのない紅潮した表情と喘ぎ声を晒す美沙。  自分と似ていない分、今まで一緒に生きてきた姉だとしても非常に魅力的に見える。  全身が揺れる度に豊満な乳房が揺れ、ピンク色の乳首が固くなり、マスターの興奮度合いを高める為の誘引要素を余すことなく使用していく。  ゆっくりと身体を前に倒し、慎二の身体に乳首が触れ、両乳房がくっつき潰れるくらいに傾けると、美沙は人工唾液をまとった舌を絡めて優しくキスをした。 「どう? 気持ちいい……? あんっ! あっ……んん……あたしの機能、いっぱい楽しんでよ……あっ!」  腰の挙動とペースは一切変わらないまま、樹脂のちょっと苦い味と、人間のそれと違う無味無臭な唾液が舌に伝わる。  よく例えられるキスの味とはかけ離れた、ほんのりとしたゴムの味。それが、慎二が味わう最初のキスの味だった。  だが、彼にとってはそれが、とても甘美な味のように感じられた。  慎二は口が塞がり、発声がスピーカー式な姉と違って上手く喋れない状態となっているが、首を縦に振って最高の気分であるという意思表示をしながら、腕を回して柔らかな姉の背中を抱きしめた。 「あんっ! あ、あ、あ、あ、ああっ! 慎二、も、もうイキそうなの! あた、しも、あんっ! あ、あ、あ、はあんっ! 一緒にい、イこっか……あああっ!!」  美沙の膣内いっぱいに仕込まれているセンサーは、男性器が間もなく絶頂するであろうことを検知した。  既に快楽信号の基準値に達している彼女は、それに合わせて反応を起こすように動作を調整。腰と女性器ユニットの挙動を早めながら、フィニッシュに向かうように抱きしめ返しながら、子宮口をしっかりと開いた。 「あっ! あっ! あっ! はあんっ! あ、あっ! あ、あ、あ、あ、も、もうイ、イくの、慎二、あたし、と、とっても幸せ、あ、ああああああああっ!!」 「ね、姉さ、うっ! 俺、も……ぐっ! も、もう出そ……う……あ、あっ……はぁ……はぁ……ううっ……!」  そして、存在の根本から違う設定上の姉弟は、互いの性器を絡み合わせ続けた末に絶頂に達し、初めての精を注ぎ込んだ。  自然妊娠することのない樹脂製の子宮ユニットの中に精液が溜め込まれていき、一滴残らず吸引していく。  絶頂後の震えを抑えるように、一人と一体は互いに強く抱きしめ合い、タンパク質の肌と樹脂製の肌を重ね合わせた。  初めてのセックスに、荒い息を細かく吐き出す慎二と、スピーカーから出る呼吸音を発しながら、人間らしく身体を揺らす美沙。  自然と、なんだかそのままキスしたい気分になり、軽く唇を重ねた後、頬を赤くした互いの顔を見つめ合った。 「あっ……ん……ぅ…………どうだった慎二……あたしの、女性器ユニットは……あっ……ん……気持ちよかったでしょ…………?」 「ああ…………はぁ……はぁ…………すっごい……気持ちよかった……けど、すげえ眠たい…………」 「ふふ……じゃあ……このまま寝ちゃおっか…………あんっ……ん…………」  ずっと心の中で積もり続けていた好意や、思春期の真ん中から溜まり続けていた密かな性欲がこの一瞬で吐き出されたことで、慎二は何かから解放されたような気分だった。  だが同時に、誕生日を迎えて数十分間の間に起きた多すぎる出来事による疲れも同時に限界に達し、彼はそのまま自然と眠りについた。  美沙は、弟でありマスターである彼にずっとくっついたまま、力加減を調節して優しい抱きしめ方に変え、男性器が挿入されたまま包容した。  彼の睡眠度合いを観測しつつ、しっかりと寝静まるまで待機する。  子宮ユニットに溜まっている精液はそのまま保持し、回収の時までしっかり子宮口を閉じておく。  そして、彼の眠りが深くなったことを確認した瞬間、母性を感じさせるような美沙の表情は一瞬にして消失した。 「マスターの睡眠を確認しました。スリープモードへ移行します」  彼女の擬似人格からではないシステムメッセージが発された後、美沙はプログラムされた動作で目蓋を閉じ、そのまま人間と同じような眠りについた。  慎二の家族は、18歳の誕生日を迎えた瞬間に何もかも様変わりした。家族との触れ合いも、生活も、これを機に大きく様変わりすることとなる。  こうして、産まれた頃からずっと一緒に過ごしてきた、血の通っていない家族との、新たな共同生活が幕を開けたのであった。


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