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JUDO(あるいはスサノオ) from fanbox
JUDO(あるいはスサノオ)

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清純「風」お嬢様にはお尻でも敵いません?

 唐突だが、俺――緑川(みどりかわ)サトルの恋人、エルゼ・シュミットは絶世の美女である。 長い銀色の髪に、エメラルドグリーンの瞳。 その美しい顔立ちとモデル顔負けのプロポーションから一部では「女神」とさえ称されている。 さらに成績は学園トップクラス、運動神経も抜群で、男女問わず学園中の羨望の的になっている。 とはいえ、すべての生徒から羨望の眼差しを向けられている訳ではない。 その証拠に、 「昼間からこんな往来で彼氏とイチャつくなんていいご身分ね、シュミットさん!」 今も昼休みに廊下を2人で歩いていただけで、1人の女子生徒からビシッと指を突き付けられていた。 制服からすると、俺たちと同じ2年生だろうか。 身長は170cm近いエルゼより低く、160cm強。 長いストレートへアが目を引く気の強そうな美少女である。 「あら、東川(ひがしかわ)さん。人を指差してはいけないって、小さい頃に教わりませんでしたか?」 自分を指差す女子生徒――東川に対し、エルゼは涼しい表情で言い返してみせる。 「くっ!」 エルゼの指摘を受け、女子生徒が悔しげに右手を引っ込める。 「えっと、誰だっけ?」 「ああ、サトルは初対面でしたね。この方は2組の東川・・・すみません、下の名前は何でしたっけ?」 「何で忘れてるのよ!」 「下の名前は、マチコだよ」 そんな声と共に、今度は髪の短い快活そうな少女が東川の隣に立った。 「そうそう、マチコさんでした。ありがとうこざいます、遠藤(えんどう)アイナさん」 「どういたしまして」 「ちょっ、何でアイナの名前は覚えてて、私の名前は忘れてるのよ!?」 「お、落ち着いて、マチコ!別にマチコの名前が覚えにくい訳じゃなくて、単にシュミットさんに覚える気がないだけだから!」 「なお悪いわよ!くっ、覚えてなさい!」 そんな捨て台詞と共に、東川が俺たちの横を擦り抜けて走り去る。 「待ってよ、マチコ!」 遠藤も慌ててその後に続く。 「今の、完全に遠藤がトドメを刺したよな?」 エルゼも割と酷い事を言ってたけど。 「アイナはビックリするぐらい空気が読めないですから」 頬に手を当てて微笑むエルゼを見ながら、 「・・・」 俺は走り去った東川に少なからず同情した。 *  ――マチコ視点 「ああもうっ!腹立つ~っ!」 放課後、帰宅してからも私の怒りは収まらなかった。 何故かアイナも家まで着いてきたが、そんな事はどうでもいい。 エルゼ・シュミット。 頭脳明晰、容姿端麗、さらにスポーツもできる優等生。 あの女との因縁は1年前に遡る。 当時、クラス委員に立候補した私は他薦で選ばれたあの女に負けた。 それだけでなく、あの女は「他薦の自分より、やる気のある立候補者を優先すべきだ」と言って、私にクラス委員の座を譲ったのだ。 おかげで、あの女の株は急上昇、私は「シュミットさんに勝ちを譲ってもらった威厳のないクラス委員」として1年を過ごす事になったのだ。 「マチコは本当にシュミットさんの事が好きだねぇ」 「何言ってるのよ、アイナ!そんな訳ないでしょ!」 「そんなにイライラしてると、血圧上がっちゃうよ。ほら、これでも飲んで落ち着きなよ」 そう言うと、アイナは鞄から赤い缶飲料を取り出し、私に差し出した。 「何よ、これ?」 「桐生(きりゅう)さんに貰ったジュースだよ」 「桐生さんに?」 「なかなか手に入らないレア物なんだって」 「へぇ」 桐生というのは、私たちのクラスメイトである桐生エリカの事だ。 彼女なら、変なジュースを持っていても不思議ではない。 そんな事を考えながら、私は受け取った缶を確認してみる。 それは350mlのアルミ缶で、赤い側面に大きな白い字で「白金芋 タイプF改」と書かれていた。 「白金芋っていうのは何となくわかるけど、タイプFって何?しかも、改って」 「私に訊かないでよ」 「確かにそうね。でも、本当に貰っちゃっていいの?」 「うん、大丈夫だよ。ちゃんと私の分もあるから」 「あら?そっちのは色が違うのね」 アイナの取り出した2本目の缶は、私の缶とは違って全体が白く、青い字で「タイプN」と書かれていた。 「そっちの『N』は『Normal』の『N』よね?じゃあ、こっちの『F』は・・・?」 「さあ?飲んでみればわかるんじゃない?」 そう言いながら、アイナは「タイプN」と書かれた白金芋ジュースを飲み始める。 「どう?」 「何というか、甘い野菜ジュースって感じかな。マチコも飲んでみなよ」 「う、うん」 アイナの言葉に頷き、私も「タイプF改」と書かれた缶を開けて、一口飲んでみる。 「確かに甘い野菜ジュースね」 「そうでしょ?あっ、そっちのも一口ちょうだい。私も一口飲んでいいから」 「いいわよ」 互いに持っている缶を交換して飲み比べてみるが、 「同じ味・・・だよね?」 「ええ、同じ味ね」 少なくとも、私たちには味の違いが全くわからなかった。 「味が同じなら、いったい何が違うのかしら?」 「実は缶のデザインが違うだけで、中身は同じとか?」 「そうかもしれないわね」 そんな事を話しつつ、私は「タイプF改」のジュースを、アイナは「タイプN」のジュースを飲み干した。 変化が訪れたのは、ジュースを飲み終えて10分ほど経ち、2人で宿題を始めた時だった。 ぐるるるるるる~っ! 「っ・・・!」 ふいに私のお腹が低く鳴ったのだ。 空腹から来るものではない。 ぎゅるぎゅるぎゅる~っ! 突如して腸内で生まれたガスが出口を求めて暴れ出したのだ。 (とにかく早くトイレに行かないと・・・) お腹を刺激しないように気を付けながら、ゆっくりと静かに立ち上がる。 「マチコ!」 「っ!?」 ブウッ!! ふいに名前を呼ばれ、驚いた拍子に大音量のオナラが出てしまった。 間を置かず、たくさんの卵を1度に腐らせたような強烈な腐卵臭が周囲に立ち込める。 「ここの英訳なんだけど・・・」 「・・・」 「その、マ、マチコだって人間だもんね!人前でオナラする事もあるよね!」 「っ~~~~~!?」 アイナの言葉に、自分の顔がみるみる赤くなっていくのがわかる。 そんな私を嘲笑うように、 ブウウウウーーッッ!!ブブブブブーーッッ!! お尻からは堰を切ったように、次々とオナラが溢れてくる。 「臭っ!マチコ、いくら恥ずかしいからって、そんなに開き直らなくても・・・」 「ち、違うのよ!オナラが止まらな・・・んんっ!?」 ブウウオオオオゥゥゥゥゥ・・・ッ! 「くっ・・・!」 必死にお尻の穴を閉じて溢れ出してくるオナラを押さえ込む。 後はこのままトイレに―― ブブブッスウウウウウ~~~ッッ!! 1歩踏み出したところで、またオナラの音が聞こえてきた。 しかし、今のオナラは私ではない。 「あははは・・・ゴメン、私までオナラしちゃった。でも、もうマチコのオナラで部屋中が臭くなってるから別にいいよね?」 「・・・」 確かにこの部屋の空気は私のオナラで強烈な腐卵臭に染まっているが・・・。 (こういう事を悪気なく言っちゃうのがアイナなのよね) 「それにしても、何でこんなにオナラが・・・ダメ、もう我慢でき・・・ひゃあっ!?」 ブウブブブブブブブブゥーーーッッッ!!! とにかく今はアイナと揉めている余裕はない。 一刻も早くトイレに向かうのだ。 「マチコ、もしかしてトイレに行こうとしてる?」 「そ、そうよ。こんな所でオナラする訳には行かないでしょ?」 「言いたい事はわかるけど、これだけオナラした後じゃ、手遅れじゃない?もう開き直って2人で仲良くオナラしようよ・・・んっ♪」 そう言うと、 ブッスウウウウウウウーーーッッ!! アイナがお尻を私の方に向けてオナラを放ってくる。 「いきなり何するのよ。臭いでしょ!」 「え~っ、マチコのオナラほどじゃないよ」 「言ったわね・・・んっ!」 ブボボボボボオオォォォーーーッッッ!!! 私もアイナの方にお尻を向け、オナラで反撃する。 「くっさぁ~!だったら、私だって・・・んんっ!」 ボッフウウオオオォォォーーッッ!! アイナが私の方に向かってオナラを放つ。 「んんっ!?こっちだって負けないわよ・・・ふんっ!」 ブオオオオオォォォォーーーンッッッ!!! 私たちがオナラを放つ度に、部屋に立ち込める臭気が濃度を増し、室内を強烈な腐卵臭に染め上げていく。 我に返った私たちが慌てて部屋の換気を始めたのは、それから30分後の事だった。 *  窓を全開にし、空気清浄機をフル稼働させた事で、ようやく室内に立ち込める臭気が薄まってきた。 「はぁ、酷い目に遭ったわ」 鼻腔に渦巻くオナラの残り香を感じながら、深々と溜め息を吐く。 「このジュースの『F』って、『Fart(オナラ)』の『F』なのかな?」 アイナが先程飲んだジュースの空き缶のラベルを見ながら言う。 「だとしたら、今すぐ開発者をぶん殴ってやりたいわ・・・」 いや、今すぐは無理か。 大量のオナラを吸い込んだせいで、今は殴る気力も残っていない。 「何でこんなジュースを2本も貰ってきたのよ?」 「えっ?2本じゃなくて、3本だよ?」 「なお悪いわ!!」 鞄から3本目の缶を取り出すアイナに、私は力いっぱいツッコミを入れる。 3本目の缶は私が飲んだ缶とよく似ていた。 しかし、書かれている商品名が違っており、「タイプF改」ではなく、単に「タイプF」と書かれている。 「これも飲んだらオナラがいっぱい出るのかな?」 「飲まないわよ」 期待の目を向けてくるアイナに、きっぱりと言い放つ。 「こんなジュース、誰が好き好んで・・・っ!」 その時、私の頭にある考えが浮かんだ。 「アイナ。このジュース、貰っていい?」 「いいけど、どうするの?もしかして、1人でオナラ遊び?」 「そんな訳ないでしょ。これを使って、シュミットさんに一泡吹かせてやるのよ!」 「お~っ、悪い顔してるねぇ。死亡フラグっぽいけど、がんばれ~」 アイナのやる気のない応援を聞きながら、私は今度こそエルゼ・シュミットに対する勝利を確信した。 *  翌日の昼休み。 「シュミットさん」 私は教室を出ていこうとするエルゼを呼び止めた。 傍らには彼氏である緑川君の姿もある。 「あら、東川さん。何か御用ですか?」 「大した用じゃないんだけど、昨日のお詫びがしたくて。このジュース、レア物らしいんだけど、飲んでみない?」 私は持っていた「白金芋 タイプF」と書かれた缶飲料を差し出す。 「あら、このジュースは・・・」 「も、もしかして、知ってるの?」 「いえ、ありがとうございます。ちょうど喉が渇いていたので、早速いただきますね」 そう言うと、エルゼは私から受け取った缶を開け、ゴクゴクと飲み始めた。 よっぽど喉が渇いていたのか、350mlあったジュースをものの数分で飲み干してしまった。 「ふぅ、ごちそうさまでした。それでは、私たちはこれからお昼なので、失礼しますね」 「うん。じゃあね」 エルゼが緑川君と並んで教室を出ていく。 2人の姿がある程度まで遠ざかったところで、私は追跡を開始する。 どうやら2人は屋上へ向かっているようだ。 (屋上からトイレまでは距離があるし、上手くいけば廊下を歩いてる皆にあの女のオナラを聞かせられるわね) そうこうするうちに、2人が屋上へ到着した。 私は2人に見付からないように気を付けながら、ドア越しに2人の様子を窺う事にした。 *  ――サトル視点 昔から「天は二物を与えない」というが、これは大きな誤りだと思う。 その証拠に、俺の目の前にいる美女――エルゼ・シュミットは容姿、頭脳、運動神経、どれを取っても非の打ち所がない。 とはいえ、欠点がない訳ではない。 それはスカートに包まれている彼女の尻。 正確には、そこから生み出される気体だ。 ごろごろごろごろ~っ! 「効いてきたみたいですね」 昼食のサンドイッチ(エルゼの手作り)を食べようとしたところで、エルゼが片手でお腹を撫でながら、そんな事を言ってきた。 「効いてきた?」 (さっき東川さんから貰ったジュースは、飲むともの凄くオナラが出やすくなるジュースなんです) 首を傾げる俺に、エルゼが小声で説明してくる。 「なっ!?」 俺が驚きの声を上げると、エルゼは人差し指を唇に当てて「静かに」というジェスチャーをしてくる。 既にご存じの方もいると思うが、エルゼのオナラは異常なほど量が多く、悪臭(におい)も強烈だ。 そこに「オナラが出やすくなるジュース」が加わったら・・・。 ぐるるるるるるるる~っ! 「くっ・・・!やっぱり、食べ終わるまで我慢するのは無理そうですね。申し訳ないですが、先にいつものをお願いできますか?」 「・・・了解」 「ふふふ、ありがとうございます」 立ち上がったエルゼがその豊満な尻を突き出してきたので、俺はいつものように彼女のスカートの中に顔を突っ込む。 彼女の言う「いつもの」とは、腸内(はら)に溜まったオナラを出し切るガス抜きの事なのだ。 ガタッ。 「ん?今、何か音がしなかったか?」 スカートに顔を突っ込んだまま問い掛ける。 「気のせいでしょう。それより早くお願いします。まだ昼休みですから、このまま出しますね」 「わかった」 エルゼの言葉に頷いて、俺はブルマ型の白い下着に包まれた彼女の尻に顔を押し付ける。 このカバー下着は特殊な素材と編み方で作られており、彼女のオナラの悪臭(におい)を抑える効果があるのだ。 「行きますよ・・・んっ♪」 エルゼが息んだ直後、 ブウウウウウウウウウウゥゥゥッッッ!!! 彼女の尻から大音量のオナラが放たれた。 「むぐっ!?」 巨大な牛肉の塊を丸ごと腐らせたような腐敗臭が鼻腔で豪快に暴れ回る。 それでも、今までガス抜きに付き合ってきた経験とカバー下着のおかげで、十分に耐えられるレベルだ。 ガタガタッ。 「なあ、やっぱり物音が――」 「んっ♪」 ブッフウオオオオォォォ~~~ッッッ!!! 「ぐふっ!?」 エルゼの放った2発目のオナラが俺の言葉を中断させる。 これは鼻の奥に突き刺さってくるような刺激臭だ。 ガタガタッ。 (本当に何なんだ、この音?) 「もうっ、今は私のオナラに集中してください・・・んっ!」 ブウオォォオオォォオォ~~~ッッッ!!! 「んぐぅっ!?」 少しムッとしたようなエルゼの声と共に、トロンボーンのような重低音のオナラが俺の顔を包み込む。 「今日のサトルは集中力が足りませんね・・・ふんっ!」 ブウウウ~ッッ!!ブブブブブゥ~~ッッ!! ブボボボボボオォォォォォ~~~ッッッ!!! 「むぐううううっ!?」 エルゼの放った、段跳びならぬ3段オナラが次々に俺の鼻へと流れ込んでくる。 次の瞬間、俺は全身の力が抜け、その場に尻餅を着いてしまった。 「さて、そろそろいいでしょう」 そう言いながら、エルゼがスカートの中に手を入れ、ブルマ型のカバー下着を脱ぎ去る。 前述のように、このカバー下着にはオナラの悪臭(におい)を抑える効果がある。 それを脱いだという事は・・・。 「ふふふ、心配しなくても、ガス抜きの相手はサトルじゃありませんよ」 「えっ?」 ガス抜きの相手が俺じゃない? じゃあ、いったい誰なんだ? 事情が呑み込めない俺を他所に、エルゼは俺の後ろ、屋上に続く出入口に視線を向ける。 そして、 「いつまでも隠れてないで、出てきたらどうですか、東川さん?」 エルゼの口から出た言葉に、俺は自分の耳を疑った。 *  ――マチコ視点 「な、な、な・・・っ!?」 全く訳がわからなかった。 いったい何が起きているのだ? 私の計画では、あの女に「オナラの出るジュース」を飲ませて、緑川君の前で恥を掻かせるはずだった。 しかし、現実はどうだ? 緑川君が自分からあの女のスカートに顔を突っ込んでオナラを嗅いでいる。 それだけではない。 ブウウウ~ッッ!!ブブブブブゥ~~ッッ!! ブボボボボボオォォォォォ~~~ッッッ!!! あの女のオナラは昨日、私やアイナが出したオナラの比ではない。 「っ・・・!」 その証拠に、結構な距離があるはずの此処まで悪臭(におい)が漂ってきているのだ。 (あの女、いったいどんな腸内(おなか)してるのよ!) 「いつまでも隠れてないで、出てきたらどうですか、東川さん?」 「っ!?」 私が心の中で叫んだ瞬間、エルゼが私に声を掛けてきた。 「覗き見なんて、あまりいい趣味ではありませんよ」 「それはこっちの台詞よ」 隠れているのは無理と判断し、私はドアを開けて屋上へと足を踏み入れる。 「彼氏にあんな臭いオナラを嗅がせるなんて、あまり言い趣味とは言えないんじゃない?」 「確かにそうですね。でも、愛の形は人ぞれぞれです。他人が口出しをしないでもらえますか?」 私が向ける侮蔑の視線を、エルゼは涼しい表情で受け流している。 「それに、これはあなたのせいでもあるんですよ?」 「何を言って・・・えっ!?」 問い掛けるより早く、視線が大きく傾いた。 それがエルゼに押し倒されたのだと気付いた時には、 ずしっ。 黒いTバックが食い込む彼女のお尻が顔めがけて降ってきた。 「むぐぐぐ・・・!」 「あなたから貰ったジュースがどんなものなのか、私が知らないと思いましたか?」 「っ!?」 (う、嘘っ!?バレてたの!?) 「覗きへのお仕置きも兼ねて、ジュースのお返しに、オナラの『フルコース』をご馳走しますね」 ブウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ~~~ッッッ!!! 「っ~~~~~!?」 「むうううううううっ!?」 臭い、臭過ぎる! 筆舌尽くし難い強烈な刺激臭が鼻の奥に突き刺さってくる。 ある程度は予想していたが、この悪臭(におい)はそれを上回っていた。 私とアイナ、2人分のオナラを合わせても敵わない。 1発浴びただけで、脳が腐っていくような感覚に襲われる。 (た、助けて、臭い、臭くて死んじゃう・・・) 「お、おい、エルゼ。そこまでしなくてもいいんじゃないか?」 緑川君の声が天使の声に聞こえる。 「大丈夫ですよ。私の知る限り、オナラの悪臭(におい)で気絶した人はいても、死んだ人はいませんから・・・んっ!」 ブブブブブブブブブブブブブゥ~~~ッッッ!!! 「むぐううううううっ!?」 緑川君の言葉を一蹴し、エルゼがさらにオナラを浴びせてくる。 2発目は腐ったキャベツやニンニク、タマネギなどの野菜のエキスをギュッと濃縮したような悪臭(におい)だった。 「凄いですね、東川さん。まだ声を上げる元気があるなんて・・・んんっ!」 ブシュウウウウウウウ・・・。 「んんーーーーっ!?」 3発目は今までと違い、すかしっ屁だった。 しかし、控えめな音とは裏腹に悪臭(におい)は強烈で、癖のない刺激臭が鼻の奥まで一気に流れ込んでくる。 「ふふふ、これでフルコースの『前菜(オートブル)』、『サラダ』、『スープ』が終わりました。さて、問題です。次は何でしょうか?」 「あ、ああ・・・」 まだ辛うじて動く頭を働かせ、答えを導き出そうとする。 そんな私を嘲笑うように、 「残念ですが、時間切れです・・・ふんっ♪」 エルゼが再び息み始める。 直後、 ボブブウウウウウウウウウウウ~~~ッッッ!!! 無情にも4発目のオナラが私の鼻に流れ込んできた。 ジンベイザメ並の巨大魚を腐られたような重厚な腐敗臭が鼻腔を暴れ回る。 「っ・・・!」 もはや声を上げる事もできなかった。 ただ、生物としての本能がけたたましく警鐘を鳴らしている。 「正解は『魚料理』でした♪」 そう言いながら、エルゼが私の顔からお尻を持ち上げる。 「!」 この時とばかりに、私は新鮮な空気を補充すべく、大きく息を吸い込む。 しかし、 ブボォッ!! 鼻に入ってきたのは、鼻を突く刺激臭と甘ったるさが混じり合った独特の悪臭(におい)だった。 「っっっっっっ!?」 朦朧としていた意識が強制的に覚醒させられる。 「ふふふ、『メインディッシュ』の前に、ちゃんと『ソルベ』で意識をすっきりさせておかないとダメですからね」 (メ、メインディッシュ・・・!?) エルゼの言葉に、背筋が凍り付いていく。 「では、行きますよ・・・ふんっっ!」 エルゼがひときわ力強く息む。 ブボボボボボボボオォォォォォ~~~~ッッッ!!! 「っ・・・」 もはや「臭い」とすら認識できなかった。 「メインディッシュ」の名に相応しい壮絶な1発を浴びて、私は意識を失った。 *  結局、私は午後の授業を保健室で過ごす事になった。 そして現在、私はアイナと並んで下校路を歩いている。 「大丈夫、マチコ?」 「ええ、大丈夫よ・・・」 心配そうに顔を覗き込んでくるアイナに、私は力なく応じる。 「あんまり大丈夫そうに見えないけど・・・。あっ、そういえば、私があげたジュース、どうしたの?」 「その話はしないで。正直、思い出したくもないわ」 「思い出したくもないって、もしかして自分で飲んだの!?あっ、保健室で寝てたのも、自分のオナラの悪臭(におい)で気持ち悪くなったから、とか!?」 「ちょっ、これが大きいわよ!そんな訳ないでしょ!」 とんでもない事を言い出す友人に、即座に抗議する。 「まあ、そうだよね。おっと、忘れるところだった」 ふいにアイナが鞄の中に手を突っ込み、あの忌まわしい赤い缶を取り出した。 「昨日の事を桐生さんに話したら、また新作のジュースくれたんだ。今度のは『タイプFダッシュ』だって。飲んでみる?」 「・・・」 私はアイナが差し出した缶を受け取り、 「誰が飲むかあああああああああああああっ!」 前方に人がいないのを確認してから、力の限りにぶん投げた。 終


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