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【2-8】「一日撮影に付き合ってやる度、おにぎり3個報酬よこせ!」

「……不吉な天井だ」 目を覚ましたオレこと白井弟は、開口一番そうつぶやいた。 どうやらまだ月ノ宮にいるらしい。いつの間に客間のベッドに入り込み、寝てしまったのかは分からないが、この天井を見ると、今朝、メイドとナース2人組に襲われかけた事を思い出して軽く気分が落ちる。 外から入ってくる太陽光はオレンジ色に輝き、カラスの鳴き声も相まって、即座に『夕暮れ時』だと実感できた。 「起きたようだな。」 「!?」 突如、声をかけられ、ビックリした事で、跳ね起きる。 声の方向へ首をひねると、そこには―― 「ゲッ、山田!!」 「ニーナさんって呼べ!!」 オレの右手側に仁王立ちしていた山ニーナさんが、オレへと吠える。 なぜかメイド服着てるし……朝、オレを襲いに来たヤツのメイド服と一緒だし。 もしかしてオレの体を狙ってるのか?やらん、やらんぞ、オレの体は姉ちゃんだけのモノだ! 警戒心をあらわにしながらも、謎過ぎる状況に山ニーナさんをまじまじ見てると、それを察してか、山ニーナさんは自分の姿を確認しながら告げる。 「ああ、これは都のヤツに無理やり着せられたんだ。私の服はボロボロになっちまったからな」 「ボロボロ?一体、何やったんですか?まさか本当に自販機斬って爆発させたとか…?」 「チッ、やっぱ覚えてねーか。おい、白井弟。お前、今日の記憶どこまである?」 「どこまでって……」 なぜそんな亊を聞かれるのかさっぱり分からないが、オレは、斜め上を見ながら今日の出来事を思い出す。 朝、メイド×ナースの変態コンビに襲われそうになったこと。美弦さんとモンモのじゃれあい。平原姉妹の尊い光景。山ニーナさんとの出会い…そしてここに帰ってきて…………!! 「姉ちゃん!!!!」 そうだ、姉ちゃんと連絡つかなくて、心配で心配で。 オレは、それを思い出すと、即座に手探りで自分のスマホを探した。 それを見た山ニーナさんがオレを一喝する。 「落ち着け、白井弟!お前の姉は無事だ!!」 「へ?」 少し裏返ったヘンテコ声を出すオレに、山ニーナさんは冷静に説明をしてくれた。 ・ここ月ノ宮以外のすべては時間が止まっている事 ・オレのフラグメントが暴走して、みんなで止めてくれた事 ・山ニーナさんを除く他のみんなは、結構な疲労で、他の部屋で休んでる事 「そういうわけで、私が、お前の見張りと看病を任されてるわけだ。理解したか?」 「…………すいません」 「は?なんで謝る?まさかもう一回説明しろって事…」 「そうじゃなくて!」 オレは、山ニーナさんの言葉を手で遮り、頭をかきながら理由を続ける。 「なんか……みんなに迷惑かけたみたいだから」 「はあぁ?」 それを聞いた山ニーナさんは、一つ大きなため息を吐くと、めんどくさそうな顔をした。 「なあ、白井弟、お前、フラグメント暴走した時の記憶ないんだよな?」 「ええ……完全にわけわからんです。一体何が起こってて、自分が何をしたのかも」 「だったら謝るな。何したか自覚してねーのに謝られても迷惑だ。それにな、誰かの…チッ、これは受け売りだけどな、誰かの想いを守るのがリフレクターの使命なんだ。気にするな」 …気にするなと言われても。でも山ニーナさんの言ってる事は最もな気がする。確かに、オレが逆の立場だったら誠意も感じられない謝られ方されたらムカつくもんな。 陽桜莉さんや美弦さんに言ったら、困った顔をさせてしまうだけかもしれない。 よし、この件は後で考えよう。今は、他に聞きたいことがある。 「ところで山ニーナさん。」 「あ?」 「なんで、姉ちゃんの事知ってるんです?オレ、山ニーナさんに姉ちゃんの事、話しましたっけ?」 「ん?ああ、紫乃との記憶共有がきっかけだが……ちゃんと知ったのはお前のフラグメントを固定化する時だな」 「固定化?」 「そうだ、フラグメントに触れると、暴走した想いの原因が、指輪を通して私に流れてくる。誰かに悩みを聞いてほしい、助けてほしいって事なのかもな。お前の場合は、過去の記憶が、そのまま映像として流れてきたぞ。」 い、嫌な予感がする…。 「か、かっ、過去の映像って……ど、ど、どんな?」 「お前が、姉のために、色んなとこの情報まとめた紙持ってきたり」 「んなああああああああああああああ」 「お礼言われて、ガッツポーズして喜んでたり」 「ちょおおおおおおおおおおおおおおお」 「お前が姉の事を愛して…」 「いやああああああああああああああああああああああああああ」 知られた、山ニーナさんに知られちまったよ、姉ちゃん……。 恥ずかしい~!恥ずかしすぎて心臓が爆発するー!もし本当に爆発したら『俺の部屋の本棚の一番下の二列奥』に隠してる姉ちゃんの写真コレクションは見ないで処分……んがあああああ、んなことさせるかぁ!生きろ!そなた(姉ちゃん)は美しい!!!!! そうベッドの上をゴロゴロ転がり狂乱するオレを見て、山ニーナさんは不思議そうに尋ねる。 「なんだ?知られたくなかったのか?」 「当たり前だろ!実の姉をあい…あい…しゅ、好きなんて、普通はおかしいと思われるだろ!?山ニーナさんだってそう思ってるんだろ!!?」 「はぁ?お前、意味不明すぎるぞ。そんな事、一ミリも思わない!! ここじゃ、そんな事気にするやつはいない。陽桜莉なんて……チッ、お姉様に何度、愛を告げたか…」 それを聞き、オレはピタリと動きを止めると山ニーナさんに再度確認する。 「ほ、本当に?」 「ああ、事実、私もお姉さまに何度も愛を誓っている!陽桜莉の奴が宇宙規模だとすると、私のは銀河規模だ!!」 へ?そうなの?ここでは、そういうの普通なの?マジかよ。実は住みやすい街ナンバーワンとかかよ、月ノ宮。 「あっ、でも紫乃や詩に知られたらいじられるな」 「奴らには内緒でお願いします!山ニーナ様」 「ニーナさんでいいんだよ!全く。おい、土下座をやめろ!」 オレが姿勢をもとに戻すと、山ニーナさんは、出来の悪い子供を叱るようなトーンで続ける。 「とにかく、今はごちゃごちゃ考えずに体を休めろ。明日は休日だから写真撮りまくれるだろ」 「?……どうして山ニーナさんが、写真の事気にして?」 なぜ、いきなり写真の話題になったのかわからない。脈略がなさすぎる。そんな心境できょとんとしてると、山ニーナさんがボソッと呟くように口を開いた。 「……協力してやるからだよ」 「は?」 「私は、お前の写真撮影に協力してやるって言ってんだよ!」 ビッと人差し指をオレへ突き出し、宣言する山ニーナさん。 え? ええ? 「えええええええええええ!?」 何? なんだ、この展開!?寝て起きたら状況が180度変わってて怖いんですけど! 「あん!?テメ―、いやだってのか?」 「いやっていうか、だって…朝はもう協力しないって」 「うるせー、気が変わったんだよ。だってお前の想いは私と……」 そこで言葉をつまらせ、オレから目を背けると、しばしの間沈黙する山ニーナさん。 まるで「同レベルと認めるのはどうなの?」みたいな渋い顔をしている。そして、キリッとした表情に変わり、再び俺に焦点を定めると―― 「…おにぎり3個だ」 「へ?」 「一日撮影に付き合ってやる度、おにぎり3個報酬よこせ!そうすればどんな写真でも撮らせてやる!」 立てていた人差し指に二本を足して、三本指をオレに突き出した。 その提案にオレは動揺する。 「はああ!?一日3個って…オレそんなに金持ってきてな…」 「金なら紫乃に頼んで何とかしてやる!それならお前のリスクは低いだろうが。」 「う~ん…でも被写体、山ニーナさんって……変顔するからな~」 「テメーの体に電気が流れるお宝写真、撮らせてやろーか?(バチバチッ)」 「いえっ!山ニーナさんの可憐な笑顔に不満などございません!」 「よし、約束したからな。明日からビシバシいくぞ。分かったらとっとと寝て明日に備えろ!」 そういって近場の枕をオレの顔に投げつけ、契約完了とばかりに、サッときびすを返す。 しかし、部屋を出る直前、ピタっと足を止めると。 「…姉の足、治すんだろ」 そう優しい声でつぶやき、その場を後にした。 「・・・・・・・・・・・・」 拝啓、ヒナ姉ちゃんへ 知らない間に大きな事が終わってたり、オレを拒絶してた人が、いきなり協力してくれたり、月ノ宮はやっぱり魔境です。 でも。 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ…いいとこなのかもしれません。 『第二次フラグメント攻略戦』編 完

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