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「陸に打ち上げられて」

先日、にこい様が上げてらした【要介護鎮守府】(https://www.fanbox.cc/@nikoi58/posts/5600776)というネタが素晴らしく、勝手にSSを書かせて頂いた結果、こちらでも掲載して良いとのご許可を頂いたので公開させていただきます。

にこい様、本当にありがとうございます。

ここでよくわからんSS読んでないで早く向こうのページで素晴らしい絵を堪能してきてください。


── ── ── ──





──退役軍人、という言葉がある。

軍を辞めた人の事だけを指す言葉ではなく、正確には『退役という役種になった軍人』という意味である。

つまり未だに軍属であり、階級なども保持しているが普段は現役を退き国によっては戦時に予備役の次に再招集される可能性があったりする人の事を指す。

そしてそれは、彼女達艦娘達にも適応されるのである・・・



「ふぅー・・・ふぅぅぅぅううう!!!」


汗を滝のように流しながら、一歩、また一歩と歩く女性。

全身に『重り』を付け、声すら出せない程キツイ状況でも前に進む彼女の名前は『大淀』。

艦娘の一人であり、旧日本海軍の軽巡洋艦大淀型一番艦の名を持つ艦娘である。


「ほら、あともう少し!!」


そんな大淀に声をかけるのは同じ艦娘である『明石』。

旧日本海軍工作艦明石の名を持つ艦娘であり、大淀の『歩行』の記録を取りつつその姿を見守っている──と、言えば聞こえは良いだろう。

だが実際は・・・


「10mを38.78秒・・・このままだと動けなくなる日もそう遠くないわね・・・」


単なる体力測定の話であり、しかもその結果は艦娘どころか人間でもなかなか見ないほど酷い結果だった。


「ぜぇぇぇ・・・ひゅぅうぅううう・・・だってぇ・・・ここ最近・・・まともにぃ・・・はぁぁぁ・・・はぁぁああ・・・う、運動なんて・・・!」


息も絶え絶えにそう告げる大淀。

それもそうだろう・・・彼女が全身に付けている『重り』・・・正しくは『贅肉』が彼女の動きを阻害しているのだから。

先程からやっている体力測定も、横にあるリハビリの補助で使う手すりに捕まってなんとか歩けているレベルなのだ。


「はぁぁぁ・・・ひぃぃぃぃぃ・・・!!ぶふぅぅぅ・・・・!!」


大きく息を吐きながら、今にも倒れそうな身体を手すりで支える大淀。

その腹は丸く前にも横にも飛び出して垂れ下がり、足首近くまで伸びて覆い隠す様はまるで肉でできたエプロンの様。

その隠された足は横に居る明石の腰と比べても倍以上太く、膝まで肉で覆われまともに曲げることすら出来ない。

胸は大きくなったが、その質量に負けてハの字に垂れ下がっており、飛び出た腹に乗って楕円の潰れた饅頭のようだ。

腕は特に二の腕がひどく、脇腹と重なってまっすぐどころか殆ど下に下ろせない状態だ。

首は顎との境目などなくなり、垂れた肉で完全に埋まっている。

当然頬も肉で覆われ、かつての面影は今もかけている眼鏡ぐらいしか無いだろう。

そんな大淀の着ている服はかつてのセーラー服に似た服ではなく、特別に作った超特大のキャミソールのみ。

それでも下腹・・・へその辺りから丸見えとなっている。

当然ズボンやスカートなど履けるはずがなく、彼女の贅肉で包まれた下半身が丸見えである。


「はぁ・・・退役軍人、いや退役艦娘ってすぐこうなっちゃうのよね」


そう言ってため息をつく明石。

世界を震撼させた『深海棲艦』と『艦娘』との『戦争』。

その終結を持って彼女達は『退役』するかの選択肢を与えられた。

そして彼女達艦娘達は現在その殆どが『退役』を選んだという。

彼女達が言うには、『自分達が居ることで別の戦争が始まってはいけないから』だという。

そこまでは良かったのだが・・・

一線から退いた彼女達はそれはもう食っちゃ寝食っちゃ寝生活・・・

比較的ゆるいとは言え軍属である以上はある程度規律に厳しく、規則正しい生活を送っていた彼女達。

それが平和になった事と自由な生活を与えられればどうなるか・・・この大淀を見ればよく分かるだろう。

特に彼女は戦時中秘書艦を務めることが多く、それ故に他の模範となるべく己に厳しくしていた面もある。

それがこうやって開放され、伸び伸びしすぎた結果身体が横に伸び伸びしてしまったということである。


「いい?私達はあくまでも『退役』扱い。いつかもしまた深海棲艦達が攻めてきたらその時は戦わなきゃいけないのよ?

 それがそんな体たらくでどうするのよ・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・!それは・・・そうなんだけどぉ・・・」


明石の言葉に大きな身体を縮こませて言い淀む大淀。


「はぁ・・・やっぱりこの体力測定しておいて良かったわ・・・大淀、貴方を『要介護艦娘の伍』と認定します」

「よ、要介護・・・伍・・・」


要介護艦娘・・・その言葉通り戦闘どころか動くことも満足に出来ない艦娘達が認定される物。

コレに認定された艦娘達は戦線参加に一定の制限が課せられ、軽い艦娘でも後方支援・・・重い艦娘はそもそも戦線に参加出来ないという物だ。

生まれた理由が理由だけに、艦娘達は戦線参加出来ない事を本能的に嫌うという。

ちなみに現在最上位の伍に認定されているのはここの大淀と、あの『戦艦大和』である。

大和もひどく、特大のソファに座ったが最後一人では起き上がれず武蔵が手伝ってようやくなんとか立ち上がれるというレベル。

ちなみに艦娘の力は人間の数十倍はあり、特に戦艦である武蔵の力は業務用冷蔵庫なら一人で持ち上げて動かせる程。

そんな彼女が全力で引っ張ってようやく立ち上がれるのだから推して知るべし。


「ほら、それが嫌なら痩せなさい!少しでもいいから!!」


明石にそう言われた大淀は痩せるためにその重すぎる身体を引きずるようにしてまた歩き出す。

・・・だが、数歩歩いたところで・・・


「はぁぁぁ・・・もう・・・だめ・・・!!」


そう言ってその場にドスゥゥゥゥウウンと倒れ込んでしまった。


「ちょ、ちょっと!!ここじゃ艤装展開出来ないから私じゃ貴方起こせないんだけど!?」

「ぶひぃぃぃぃ・・・ふひぃぃい・・・だってぇ・・・もう・・・あるけ・・・ない・・・!!」


倒れ込んだ大淀に声をかける明石だが、大淀はこれ以上動けないとその身体をただただタプタプと揺らすのみ。

コレが要介護艦娘の伍かと、明石はまた深くため息をつくのだった。



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