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第一回 インスマスを覆う影を覆う影

 東方外界異聞に登場するクトゥルフ要素を気ままに解説するコラムの第一回。テーマは魚の化け物の象徴となってしまったインスマス。ANGRIFFではインスマスが舞台になるので、この記事を含めクトゥルフ要素を存分に楽しんでもらいたい。


読みながら聞いてほしい歌↓ 【It's Beginning to Look a Lot Like Fish-Men】

youtube post: 3tTHn2tHhcI



・みんな大好きインスマス


 皆さんはクトゥルフの地名といえば何処を思い浮かべるだろうか。真っ先にルルイエと答えたあなた、戸籍調査と血液検査をオススメしよう。ドリームランドと答えたあなた、ちゃんと帰ってこれたようで安心しました。


 クトゥルフ神話には数多くの地名が登場する。マサチューセッツ州やボストンのような実在するものから、未知なるカダスやアーカムといったクトゥルフオリジナルのものまで様々だ。そんな中でも、おそらく、クトゥルフに関わる誰もが必ず知る事になる最も有名な地名がある。そう、インスマスだ。


元ネタは我らが創造者ラヴクラフトの小説『インスマウスを覆う影』に登場する、マサチューセッツ州の沼沢地にある漁業と精錬業で栄えた町。20世紀初頭に伝染病が流行り、さらに当時のアメリカ政府から大規模な摘発が行われ、沖の岩礁は魚雷で爆破、大量逮捕、そして廃屋は軒並み焼き払われた色々悲惨な街なのだが、その背景もまたなかなかに悲惨な街なのだ。我々人間側からすると因果応報というか、まぁそりゃそうなるわなと言わざるを得ないのだが。


 ANGRIFFのインスマスは、色々あったインスマスの約100年後、つまり現代のインスマスを想定している。本編の直接的なネタバレには出来るだけ触れないようにするが、 ANGRIFFを読む際にアクセント程度に楽しんでもらえると幸いだ。



・これだけ知っていれば旅先でも安心、インスマスの基礎知識 


1インスマスは、アメリカ合衆国マサチューセッツ州の湾岸にあるゴーストタウンである。

2深きものという、魚人間のような化け物がいた。

3インスマスは深きもがダゴン秘密教団という宗教を作り、支配していた。

4街が化け物だらけだったので一般人に通報されて摘発された。


おわり。これであなたもインスマス通!…とまではいかないが、膨大なクトゥルフに関する知識の中でインスマスについて抑えておくべき点は、概ねこの4つで十分だろう。以下ではANGRIFFに関わってくるものをいくつか詳しく解説していく。



・深きものども


 深きものとは、海に住む魚のような顔をした人型の神話生物だ。生息域は太平洋を中心とする、海がつながる全ての水域。地上にもそれなりの数が住んでおり、人との混血が結構社会に紛れ込んでいる。時々、海辺の村の住人全員が、深きものとその混血だった、なんてのも稀によくある話だ笑。(笑い事ではないのである)


身体的な特徴は、インスマス面と呼ばれる顔だ。目と目がかなり離れており、鼻は平たく、唇はとても太い。首元には魚のエラが付いており、呼吸に合わせてパクパク動いている。指と指の間にヒレのような膜が付いており、深きものは泳ぐのが非常に得意だ。彼らは水中でも地上でも呼吸ができる便利な身体をしている。


人との混血種にもこの特徴が見られる。若い頃は普通の顔をしているが、年齢を重ねる毎に深きものの特徴が現れ始め、その血が覚醒すると完全な深きものに変貌する。やがて深きものとなった彼らは、本能のままに海へと帰っていく。


深きものとその混血の寿命は人間より遥かに長い。何百年と生きているやつもいる。そのため、人生の殆どを海の中で過ごしている。この地球のどこかの海に、彼らの巣であり、信仰の本拠地であり、彼らの神が眠る伝説の都市、ルルイエが沈んでいる。


そこで深きものどもは、長い時間をかけ、着実に数を増やしながら、世界の海に勢力を広げている。

いつの日かルルイエが海面へ浮上し、彼らの大いなる神…クトゥルフが目覚める、その時まで。


深きものを語る上で忘れてはならないものが、父なるダゴンと母なるハイドラだ。

どちらも聞いた事のあるような名前だろうが、おそらくその本質は全然違う。深きもの達におけるダゴンとハイドラとは、簡単に言えば、めちゃくちゃでっかい深きものである。そのデカさと強さと恐ろしさをもって、ダゴンは世界中の深きものを統率している統率者だ。ハイドラはその奥さん。


深きもの達のリーダーであるダゴンは、彼らの信仰の象徴でもある。彼らはその名を教団の名前に使い、「ダゴン秘密教団」を作った。教団の目的は。ダゴンとハイドラの崇拝、ルルイエ浮上のための準備、クトゥルフ信仰などなど。(噂では日本の築地にも支部があるらしい)


このダゴン秘密教団は、インスマスでも非常に重要なポジションを得るのだが、その辺の話は次の項目で解説したい。



・インスマス史



深きものの町と言えばインスマス、インスマスといえば深きもの、ぐらい両者の関係は広く知れ渡っている。一方で、深きものどもが人間社会へ本格的に進出したのは、実はここ100年ほどだったりする。インスマス史を通して、その契機となった出来事を見ていきたい。


1643年、アメリカのマサチューセッツ州の海沿いに町が作られ、インスマスが設立された。その時移り住んだいくつかの一族の中に、後々問題を引き起こしまくる諸悪の根源、マーシュ一族がいた。


マーシュ一族は造船所やら海運業やら漁業やらで他の一族と協力し、インスマスはとても発展した。高級住宅街なんかもできた。独立戦争後なんかは貿易の中継地の港としてとても栄えていたそうな。


1812年、米英戦争でインスマスの状況は一変する。


当時のイギリスであるニューイングランドの貿易商達もまた米英戦争に便乗して、敵国であるアメリカのインスマスにもブチ切れて、交易は断絶。さらに戦争で船や若手を大量に失ったインスマスは、緩やかに衰退の一歩を踏み出した。


どんどん不況の波に飲まれていくインスマスをなんとかしようと立ち上がったマーシュ一族は、金精錬工場を造るもののいまいち流行らず、昔からやってきた漁業も不漁が続き、いよいよインスマスも終わりが見えてきたとそんな時。1823年、インスマスを魚の化け物どもの地獄へ変えた張本人、オーベット・マーシュが登場する。


オーベット・マーシュは交易船の船長だった。不況続きのインスマスで、彼の交易船はそこそこ成功し、マーシュ一族はインスマス経済をなんとか持ち直させた。ここまでは良かった。


1823年、オーベット・マーシュは太平洋の地図に載っていない島を発見する。その島民と金製の装飾品を交易するのだが、その装飾品は原住民らしからぬオーバー技術で作られていた。そう、深きもの製100%の装飾品だったのだ。


なんとその原住民の部族は、人間の生贄を捧げて深きものから金品や魚を手にしていた。オーベット・マーシュが族長からその話を聞いた時、彼は深きものを見なかったが、深きものを呼び寄せる方法を、事もあろうにちゃっかりきちんと教えてもらって、インスマスへ帰ったのだ。


暫くは島の部族から(割とぼったくって)深きもの製金製品を交易していた。金精錬工場を建てたのも、金の出所を隠して財を密かに横領するためだったりする。


しかし1838年、オーベット・マーシュが島に立ち寄ると、部族は近くの島民によって虐殺され全滅していた。人を生贄に化け物と交流していたのだから、恐れられて襲われてもまぁ仕方がないのである。オーベット・マーシュは金製品を手に入れる事が出来ずに、ずこずこインスマスへ帰っていった。


マーシュ一族は金製品の隠し財産のおかげで割とウハウハしていたが、金精錬工場まで不調に傾いたインスマスはかつての栄華の見る影もなかった。そして1840年、ついに、オーベット・マーシュはインスマスを再興するために、運命の決断をする。深きものと密かに直接取引し始めたのだ。

何という偶然か、それともインスマスの運命は初めから定められていたのか。インスマス近くの海底には深きものの海底都市イハンスレイがあり、深きものはすぐさまオーベット・マーシュの要求に応じたのだ。


不漁続きだった海は連日大量、金精錬工場は再びフル稼働。オーベット・マーシュはダゴン秘密教団を作り、本当に信仰すべき神は何なのか、町の中で影響力を高めていった。


しかし、ただより高いものは無し。深きものはすぐに対価を求めるようになった。そう、生身の人間の生贄である。インスマスでは次第に行方不明者が増え始めるたが、信者だけ魚がたくさん採れたりしたもんだがら誰も気にする事なく…あえて見て見ぬ振りをしていたのかもしれない…信者は順調に増えていった。


人間とはなんと愚かな生き物だろうか。流石にオーベット・マーシュに不信感を抱く者も現れたが、そんな人達も謎の失踪を遂げる。


1840年、運命の夜がやってくる。オーベット・マーシュはインスマス沖の岩礁で深きものへ生贄を捧げたその帰り、殺人と誘拐で信者数十人と共に現行犯逮捕される。警察の良心が機能していた最後の日である。


しかし2週間後、生贄が途絶えた事で怒り狂った深きものどもの大群がインスマスを襲い、オーベット・マーシュを解放した。彼に従わないもの、深きものを信仰しないものは軒並み殺された。深きものの圧倒的な数と暴力により、インスマスは彼らの造反者の血に染められた。

一夜にして町民の半数が消され、インスマスはオーベット・マーシュと深きものの手中に落ちたのだった。深きものが生き残った者へ求めたのは2つ。恭順か、死かである。

深きものどもはインスマス住民との交雑を要求し、住民はそれを飲まざるを得なかった。やがて町民の子供に混血が増え始めた。近親交配が繰り返され、インスマスはより排他的に、そして冒涜的な町へと変わっていった。


1878年、インスマスを散々引っ掻き回し、深きものの巣窟へと変えた、オーベット・マーシュが没す。しかし彼の子孫が…中には深きものとの混血も…後のインスマスを支配していく。


そして、1927年。「インスマウスを覆う影」の舞台の年。1人の青年が退廃し呪われたインスマスへ訪れる。彼はわずかに残る人間の住民からオーベット・マーシュの秘密や深きものの存在を知り、命からがらインスマスを脱した。


翌年1928年2月。青年から通報を受けたアメリカ政府はインスマス一斉取締りを行った。廃屋は全て焼かれ、混血や秘密教団の信者は逮捕され…戦闘と殺戮があった事は言うまでもあるまい…インスマス沖の岩礁へは魚雷が打ち込まれた。


町に蔓延る深きものは駆逐され、海へ追い払われ…こうして、インスマスは深きものどもの手から救われたのだった。


・インスマスを覆っていた影は…



インスマスに蔓延る深きものは一掃された。しかし、この一連の事件によって、深きものどもが新たなインスマスを求め世界中の海へ拡散してしまった。


そして忘れてはならないのが、混血の存在だ。当時大人に成長していた混血達はインスマスから近隣の町へ出ており、取締りを逃れていた。その混血はほかの町の人間と子供を産み、そしてその混血と人間の子がさらに他の町へ…深きものの呪われた血統は、着実に世界へと広まっている。意図的に、あるいは偶発的に。


かつてインスマスを覆っていた影は、今や世界中を覆い始めている。契機となった政府の取り締まりからすでに100年経とうとしているが、その間どれだけの混血が生まれ、そして世界の海へ広がっているのか。あなたの隣人は、目と目が離れすぎていないだろうか?海辺で失踪した友人はいないだろうか?


・そして現代のインスマスへ



というわけで晴れてゴーストタウンとなったインスマス。現代のインスマスはどうなっているのかは色々な解釈がある。


ANGRIFFの現代インスマスでは、深きものが勢力を取り戻しつつある。世界大戦後に訪れた2人の混血が再びインスマスの地に足を踏み入れ、各地の神話生物達を招き入れ、彼らのオアシスを形成しつつあった。そしてその先は…またANGRIFF下にて、描いていきたいと思う。


ああ、最後に、これだけは書いておかないといけない。もし深きものと関わる機会があったら、是非一緒に唱えてもらいたい。きっと彼らと仲良く(笑)なれるだろう。


 あなたにもクトゥルフ様のご加護があらんことを。      



イア イア フングルイ ムグルゥナフ クトゥルゥ ルルイエ ウガフナグル フタグン!

イア イア!





(YouTube)


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