【6/15 9:00 - 追記あり】あなたが “人間であることを確認します” 。
Added 2024-06-14 15:00:00 +0000 UTCーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以下のアクションを完了して、あなたが “人間であること” を確認してください。
⬜︎ 人間であることを確認します。
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……‥。
「あれ、おかしいなぁ? いつもならすぐ “検証完了” って出るのに…」
この国では、“人間” と “それ以外” とで分けられる。
生まれてこの方ずっとそうだったから、“今日この日まで” 私は一切の疑問を持つことも、そして可能性についても考えたことは無かった。
『 “検証失敗” 』
それ故、その文字が表示されたことを、私は理解できなかった。
「失敗? そんなはずは無いわ。もう一度…」
《 “検証失敗” 、対象者を捕獲します。》
「え、捕獲!? 何? どういうこと???」
《 対象者には抵抗せず、大人しく従う義務が生じます。》
「……義務って言われても…そんなもの、守れるわけ無いっ!」
《 対象者の逃亡を確認。追跡を開始します。》
………。
「…はぁ…はぁ……。ここまで来れば平気かな…」
《 対象者の停止を確認。》
「!? あ、このスマホか(バンッ)」
《 対_者の_(ビー)を…。》
「これで位置がバレることは無いだろうけど、ここからは移動しないと…」
【速報】
本日16時ごろ、××付近にて、“非” 人間の存在を確認。
その後、義務違反を犯し、現在も逃走中。
最後に位置を確認できたのは△△。
見つけ次第、決して手を出さず速やかに “保健所” まで通報をお願いします。
対象者の名前は…。
「私の名前に、顔写真・住所……それにスリーサイズまで…町中のテレビ、ラジオ、スマホに号外から……指名手配されて、まるで犯罪者……これじゃあ家に帰れないどころか、どこに隠れてもすぐに見つかって……」
「…怖いわねぇ」
「まさか紛れてた奴がいたなんて恐ろしいよ…」
「…ニュースじゃあ、この辺りって話じゃ無いか?」
「おい、あれ…」
「まずい、見つかった!?」
「居たぞ、連絡しろ!」
「東へ逃げた」
………。
ーーーーー
いつからであろうか、この国に “非” 人間が誕生したのは。
店に入るにも、物を買うにも、何をするにも “確認” を必要とするようになったのは。
誰によって、誰のために、誰が…誰を……その全ては謎である。
しかし、“非人間とは何か” ということであれば、皆が知っている。
厳密に言えば、教えられたのだが……それ以外の術が無いだから、信じるしかない。
私もそう教えられ、そう信じてきた。
だから私も、これから同じことを君に教えようと思う。
何も “間違ったこと” は無い。
そう、信じて。
ーーーーー
人間とは、朝起きて、ご飯を食べ、活動し、休息を取る。
そのようなごく一般的な生活を送る、私みたいな人のことである。
…いや、訂正しよう。どうやら私は違ったようだが……。
それに対して “非” 人間とは、人間 “そっくり” だが、全く別の生物らしい。
人間から “非” 人間になるのではなく、突然変異で “非” 人間として生れてくる。
…だから私は、人間のフリをしていただけの “非” 人間ということになる……。
それが可能なほど “そっくり” ということでもあり、人の目で見分けることは “刻印” を除いては不可能である。
“非” 人間は、人間でないから人権も存在せず、国によって保護・管理される。
そうでもしないと、人間に何をされるか分かったものでは無く、これは “守っている” のだ。
その際に体に入れられるのが “刻印” であり、“非” 人間の証である。
…しかし、私の体に刻印は無い。そうであるならば人間のはずで、事実ほんの数時間前までは “人間であることを確認” 出来ていたのだ……。
ではどうして?
それは簡単な話である。
…私が現在進行形でしているように、“非” 人間であることを否定して逃げているのを見れば分かるだろう……。
これは本能的なものだとされており、“非” 人間自身も無意識下による行動のようだが、自分を完全な人間だと思い込んで共生を始めるのだと言う。
…そのため、私のように真実を告げられても受け入れられないのだが……。
こうした事情も重なって、人間と “非” 人間とを判断することは極めて困難と言われる中で生まれたのが、“認証システム” だとされる。
生まれた瞬間に確認するため、その9割以上がここで “非” 人間だと認められるが、ごく稀に洩れることがあるらしい。
…おそらく私も、そうだったのだろう……。
ここまでの話を聞けば、案外 “非” 人間の扱いも悪く無いように思える。
守って貰えるなんて、まるで “天国” ではないかと。
逃げずに保護された方が “幸せ” になれるのではないかと。
…それでも、私は人間でありたい。“非” 人間としての幸せではなく、人間としての幸せを享受したい。少なくとも私から見える “非” 人間の幸せは、“地獄” にか見えないのだから……。
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W - D098553「イラッシャイマセー^^。ゴチュウモンハ……ハイ、カシコマリマシタ。」
W - H004327「タダイマ、セイソウチュウデス。シバラクオマチクダサイ。」
A - S112373「ミルクデスネ? イマオダシシマス。ハイ、シボリタテデス。」
W - F005483「××マデ? ショウチシマシタ。ゴアンナイイタシマスノデ、セナカニオノリクダサイ。」
これが “非” 人間の日常であり、その一例である。
国から保護して貰える代わりに、社会へ奉仕をして返す。
お店の店員であったり、清掃員であったり、ミルクサーバーからポニーガールに至るまで、およそ全ての仕事・道具を担っているのだ。
保健所で保護された後、これらへ従事するために必要な教育を受けると聞くが、その内容は定かで無い。
しかし、皆一同に笑顔であることからも、非人間の受けるその教育が、適切かつ優れたものであることは言うまでもないだろう。
…今現在なんとか逃げ果せている私だが、そろそろ追っ手の追及も厳しく、もう……
O - A053672「タイショウシャヲハッケン」
…見つかってしまった。私を捕まえるのも “非” 人間か……
O - A053672「リョウテヲ ウエニアゲ、ソノママヒザヲツキナサイ。メイレイニシタガワズニ イチドトウソウシタタメ、テーザージュウノシヨウガ ミトメラレテオリマス。ムダナウゴキヲスレバ ウチマス。」
…どうやら私が人間として振る舞えるのは、ここまでのようですね。もし今度また君に会うような事があったとしても、その時の私はきっと……
「…さようなら。」
バンっ!
O - A053672「タイショウシャノ チンモクヲカクニン。キョカノナイハツゲンガ アッタタメ、タイショウシャヘ ハッポウシマシタ。コレヨリ、ホケンジョヘノイソウヲ カイシシマス。」
《 了解。》
ーーーーー
《 対象者の収監を確認。これより “非人間化” プロセスを開始します。》
「………。」
《 第1シークエンス。人権を破棄の手続きを開始します。》
《 新田 真里(にった まり)の個人情報を収集。》
《 項目:人間ー削除。》
《 項目:非人間ー追記。》
《 用途ーマネキン。》
《 個人番号ー削除。》
《 管理番号ー付与。》
《 住所ー削除。》
《 現住所ー変更。》
《 スリーサイズー保留。》
《 人権ー破棄。》
《 認証システムー更新。》
《 人間であることを確認します。》
《 検証失敗ー正常。》
《 手続きを無事に完了しました。第1シークエンスを終了。》
《 続いて、第2シークエンスに移行。フェーズ1『管理番号の刻印』を開始します。》
《 刻印装置を用意。》
《 エネルギー充填。》
《 3、2、1、照射。》
《 刻印完了。》
《 対象者の呼吸・脈拍、共に正常。そのままフェーズ2『バーコードの刻印』及び、フェーズ3『非人間マークの刻印』を開始。》
《 エネルギー再充填ー完了。》
《 3、2、1、照射。》
《 刻印完了。》
《 エネルギー再充填ー完了。》
《 3、2、1、照射。》
《 刻印完了。》
《 第2シークエンスを終了。》
《 第3シークエンスを……。》
《 対象者の覚醒を確認。筋弛緩薬投与。》
《 確認中。》
「……ん。いたっ、何か打たれた…体に力が入らない…」
《 確認完了。》
《 問題を解決しました。》
《 第3シークエンスを続行します。》
《 用途を確認中。》
《 用途:マネキン。》
《 確認完了。》
《 フェーズ1『関節部の切除』を開始。》
《 高出力レーザー裁断機起動ー固定。》
《 対象の位置を固定ー完了。》
《 出力開始。》
「あ"っ"!あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!(痛い、痛い痛い痛い痛い痛いっ!)」
正確には、“痛い” なんていう言葉では表せないほどの激痛が真里を襲う。
そしてその痛みで、真里の意識は完全に目覚た。
“焼き切る” と言うのが正しく、気づいた時には手足が切断され、真里は達磨と呼ばれる状態になっていた。
「嘘っ!? 私の手足が……」
高出力で一気に切断するため、切断面は溶接されたように止血され、大量出血による死は起きない。
《 心拍の上昇を確認。枷を装着。》
「んぐっ!?(口に何か詰められたっ!)」
しかし現状を受け入れられず、ショックから舌を噛んで自ら死を選ぶ個体も多く、それを防止する目的で口枷が嵌められた。
《 フェーズ2『パーツ加工』を開始。》
機械のアームによって、切断された手や足が持ち上げられる。
《 高出力レーザー裁断機起動ー固定。》
再びレーザーが起動し、そこに手が通される。
「う"う"…(……ああ、私の手が、足が…)」
すでに真里から離れているため痛みは無いが、目の前で自分の手が切られるのをただ何も出来ずに見るというのは、何とも言えぬ苦しさがある。
何度もレーザーを通され、関節ごとに分けられる。
手が終われば、次は足。
同じように、膝から上と下……くるぶし、指と細かくパーツに加工される。
《 フェーズ3『切断面の加工』を開始。》
「う"っ!?(今度は何っ!)」
切断面、それは手や足のパーツだけでなく、真里の体にも存在する。
止血こそされているが美しいとは言えず、そもそも単なる切断面であることには変わりない。
《 各断面へ鉄杭の打ち込みを開始。》
「あ"が"っ"…い"ぎっ"…う"ぐっ"……お"ごっ"…」
両手足を合わせた計4箇所の切断面に埋め込まれ、真里は声を上げる。
しかし口枷によりその声は、くぐもった呻き声にしかならない。
同時に、他のパーツにも鉄杭が埋め込まれているのが視界の端に見えたが、先ほどと違って今の真里にはそれに対して何か思う余裕は無かった。
《 続けて、凹半球に加工。》
球体の電動やすりのようなものが当てられ、スプーンみたくカーブを描く。
とてもスムーズに滑らかに削られていくが、当然真里は穏やかでは無い。
「い"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"い"い"い"い"(痛"い"痛"い"痛"い"痛"い"痛"い"痛"い"痛"い"痛"い"!!!!)」
《 人工皮膚膜を縫合。》
《 縫合および止血ー完了。》
最後に削られた表面を覆う形でラップのようなものが被せられた。
《 磁石球の接着を確認。》
《 パーツを再構築。》
本来であれば人の体に磁石がつくことなどおかしな話だが、鉄杭を打ち込まれた真里の体は違う。
凹面に磁石の球が付けられ、その反対に別の凹面が繋がる。
まるで元の体を再現するかの如くカチッ、カチッっと音を立てながら組み立てられてられていき、フィギュアの関節のように変化した真里が出来上がった。
《 加工が完了しました。第3シークエンス終了。》
《 第4シークエンスへの移行準備。》
《 用途の再確認中。》
《 用途:マネキン。》
《 確認完了。》
《 フェーズ1『 “非” 人間教育』ー不要。》
《 フェーズ2から開始。》
マネキンの真里には、考える必要も考えた結果による行動も必要では無い。
そのため、“非” 人間の在り方などの教育も不要である。
必要なのは、求められた感情表現とポーズを客の前で取ることだけなのだ。
《 移行準備完了。第4シークエンスを開始します。》
《 フェーズ2『感情チップの導入』を始めます。》
《 頭部の皮膚を一部切除。》
切除とは大袈裟に表現しているものの、実際には痛みを感じない程度の小さな傷を付けただけである。
《 感情チップの埋め込みー成功。》
そして、ナノレベルのサイズのチップを脳へと取り付けた。
《 チップの動作確認ー笑顔。》
「^^(……嘘でしょ、勝手に…)」
枷のせいで口角こそ上がりはしないが、目はにっこりとスマイルを浮かべる。
《 チップの動作確認ー悲しい。》
「TT(うっう、涙が出てきた…)」
表情だけでなく感情にも左右し始め、徐々に真里の脳へチップが馴染んできていることを示す。
《 チップの動作確認ー完了。》
《 感情チップは正常に働いております。第4シークエンス終了。》
《 最終、第5シークエンスに移ります。》
《 洗浄します。》
真里は、洗車でもするように洗体される。
薬剤をかけられ、高圧洗浄機を浴び、体に付着した血を流す。
《 剃髪ー不要。》
《 拘束ー不要。》
《 梱包作業に入ります。》
段ボール箱に手足をぐにゃぐにゃに折り曲げられ詰められる。
見た目では連結されているが、実際には神経の繋がっていないため、自分では動かせないし、真里が痛みを感じることはない。
箱の蓋が閉じられ、テープで塞がれた。
《 梱包作業ー完了。》
《 発送先を指定。》
《 第5シークエンス終了。》
ーーーーー
W - T820572「オトドケ モノデス。“ナマモノ” ニナリマスノデ、トリアツカイニハゴチュウイクダサイ。」
私はD - G006354の “非” 人間(マネキン)として、衣服を取り扱うお店に届けられた。
W - K468220「ゴクロウサマデス。カラダハイキテイルカラ、ショクジガヒツヨウナノハ、コノマネキンノケッテンダナ。シカシ、リアルナシツカント テアシガチャクダツカノウ ユエノジユウドノタカサハ、ディスプレイヲスルウエデ ベンリデモアル。ソレニ、チュウモンシテカラ スグニノウヒンサレルノモ スバラシイ。“ヒ” ニンゲントハ、ムゲンニソンザイスルトイウコトナノカ。ザイコギレヤ、ヒトデブソクトイウハナシヲ キイタコトガナイシ……オットワタシモ、シャカイヘノ ホウシヲシナケレバ…」
気温も高くなりジメジメし始めたのこの時期は、半袖Tシャツ一枚に、電車や夜など冷える場所で軽く羽織れるのを持ち合わせるのが良いでしょう。
…といった具合で、マネキンをコーディネートしていく。
W - K468220「テトアシハコノカクド。ヒョウジョウハニッコリ。ア、オキャクサマダ。イラッシャイマセ^^。」
W - K468220は笑顔を浮かべ、接客をしている。
D - G006354「^^」
私もずっと笑顔である。
そう言えば、W - K468220という “非” 人間がマネキンを注文したのと時を同じくして、真里の認証が通らなくなったのは果たして “偶然” か。
D - G006354「^^(……ああ、幸せだな…)」
……ところであなたは本当に、人間ですか?
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以下のアクションを完了して、あなたが “人間であること” を確認してください。
⬜︎ 人間であることを確認します。
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『 “検証失敗” 』