【skeb】負けたい少女 〜 夢見る姿は“雑魚化した私”
Added 2024-10-19 09:04:27 +0000 UTC【 OP(オープニング)をとばしますか? 】
▶︎ はい(※ 簡単な説明はあります。)
いいえ
ーーーーー
「…ま、負けましたぁ♡♡♡」
情けない声を上げ、裸で土下座をする少女が居た。
……私だ。
名前はユナ。
そう、“あのユナ” である。(参照:『重なる二人 〜 異世界転生した貧乳美少女と絵本の中の変態少女(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22646895)』)
ここゲーム世界に転生し、その特典として神様よりチート級のアイテム “クマセット” を授かった。
まんま “クマの見た目をした着ぐるみ” のそれは、ひとたび身につければ “強靭・無敵・最強” であり、“粉砕・玉砕・大喝采” の様相を呈する。
まぁ何が言いたいかのとすれば即ち、向かう所敵なしなわけだ。
そんなつよつよの私が何故、無様にも “敗北宣言” をしているのか。
否、言葉では『負けた』と言っているが、“本当に負けたわけではない” から敗北宣言とは違うのだ。
…だからと言って、予行演習でも、妄想でも、夢でもない。
モンスターを倒し、お金やアイテムを拾う。
依頼をこなして、報酬を受け取る。
問題を解決し……なんて生活を続けること早5年。
私ことユナは、“雑魚化性癖” に目覚め、“敗北で感じるマゾ” になっていたのである。
ーーーーー
とあるポルノ本を拾ったのは “パラレルワールド(別のデータ)” のお話で、この世界線のユナはその日、ギルドからの依頼を受けて “人身売買をしているという山賊の討伐” に来ていた。
「…呆気なかったわね」
そして山賊の討伐は、朝飯前と言うのも憚られるくらい簡単に終わった。
クマセットを着たユナにかかれば、腕を横に振るだけで森の木を切り開き、縦に振れば海に道を作ることだって可能なのだ。
山賊ごときが何人束になったところで、敵うはずも無いのである。
「…結構 “残ってる” ……間に合って良かったよ♪」
人身売買を生業としていた山賊の元には売り飛ばされる前の人々も居るわけで、どこから連れて来られたかも分からなければ、行く当てもないし、すでに身寄りのない者だっている。
そのうえ碌な食事も与えられておらず、気力も体力も底をつく寸前のこの者たちを放って置いて、“山賊を倒したから依頼完了” とするのは、あまりにも人の心が無さ過ぎる。
ギルドへと安全に送り届けて、保護して貰うまでが依頼だ。
………
……
…
「あっユナさん! お疲れ様ですっ!!」
ギルドに着くと、受付嬢が話しかけてくる。
「本当にありがとうございますっ!」
「いいよ、このくらい何てことないからさ」
「ユナさんにとってはそうかもしれないですけど、ギルドから派遣した “実力者” でも討伐の出来なかった山賊でしたから……」
力を持つ者が横柄になるとは往々にして起こることだが、ユナはその例に反して謙虚でとても人付き合いが良い。
だからこそよく頼られ、信頼されており、今回の話も回ってきたのだが……。
「…彼らのことは残念だよ……」
「…はい。」
助けられた人たちの中に、その実力者たちの姿は無かった。
早々に売り飛ばされたのか、あるいは危険と判断され殺されたのか。
ただ前者であれば早すぎるように思え、後者であるとは思えないほどに “山賊たちは弱かった” 。
「………(…人質を取られてた状況だってのはあるけど、彼らが負けるとは信じ難い。う〜ん、“私が強いから” で片付けるようなレベルの話じゃないんだよね。だとすればやはり “あの壺” が……)」
「…で、でも、ユナさんのお陰でこんなにも沢山の人が助かりましたっ!」
考え込んでいるユナを見て、責任を感じてるのではないかと受付嬢がフォローする。
「あ、うん。ごめんね、気を使わせてしまって…」
「とんでもないです! ユナさんにはいつも元気でいて貰いたいですからっ!!」
「ありがとう♪」
「はいっ!」
ユナが強いのは周知の事実だが、“胸がなく” 見た目が子どもっぽいからか、可愛がられたり心配されたりする事も多い。
「…ところで、山賊の “アジト” なんだけど……」
「それでしたらいつも通りで、しばらくはギルドの方で管理し、周辺の監視も行うつもりですよ?」
「…いや、それを私に任せてくれないかなって……」
「ユナさんなら信頼も置けますし、別に構いませんが…どうして突然?」
「…あ、え〜っとぉ……(どうしよう、素直に “壺のこと” を話すか? いや、もし私の考えが当たっていたら “惜しい” っ!)」
「ユナさん?」
「山賊のアジトってだけあって人里から離れてるから修行場にちょうどいいかなぁ〜って……そ、それに。あの場所を離れていた賊の残党が居ないとも限らないでしょ?」
「…なるほど。正直なところ実力の分からない賊ですから、今回の件はギルドの手に余ることかも知れません……ではユナさんには、ギルドから正式な形での依頼を出したいと思うのですがいかがでしょう? 内容は…そうですねぇ、“山賊アジト跡の管理・監督および残党の殲滅” ……と言いましても具体的な期限や完了目標はなく、他の依頼と並行していただいて構いませんし、どのような形でしていただいても結構です」
「ほんとっ!? それは願ってもない申し出だよっ♪」
「あ、それと修行場にするんですよね?」
「…えっ?」
「……えっ???」
「あ、いや。そうそう、そうだねっ♪(…そう言うことにしたんだった!!)」
「…でしたら、“周囲には誰も近づかないように” とギルドにお触れ書きをして置きますねっ!」
「そんなことして良いの?」
「もちろんです。これはユナさんのためであると同時に、私たちのためでもありますので…」
「………(まぁそうか。私が本気で修行なんて言ったら、山が一つ消えてもおかしくないもんな…しないけど。ん? でもそう言うってことは……やりそうに見えるの? 私ってそんな風に思われてんの???)」
結局、怖くて聞けず。
ユナはギルドを後にした。
「…しかしまぁ、予想外に “舞台が整っちゃった” な……」
先の討伐の際に、連れ去られた人と身を潜めた山賊の、どちらの意味でも残りが居ないかを確認した時に見つけた “奇妙な壺” 。
山賊たちの飲用水なら人々へと思ったのだが、壺の蓋を開けた中身は微かにピンクの色が付いた、それも魔力を帯びた液体。
加えて、甘く良い匂いと言うよりも “甘ったるい” と表現した方が適している香りを放っており、およそ飲み水ではないと判断できた。
では “何か” ……は追々として、ユナが “惜しい” とまで言ったのだから少なくともユナにとっては望む価値ある物で、多少なりとも予想はついているのだろう。
そんな家具付き物件ならぬ、壺付き物件の山賊アジト跡だけじゃなく、周辺の人払いまでセットで付いてくるなんて、こんなにもお誂え向きななことがあるだろうか(いや、ない)。
「これも日頃の行いが良いお陰? まぁこの世界に来てから、基本的に幸運な(ラックが高い)んだよね〜♪ 神のご加護かな? なんちって…」
ユナは冗談っぽく言うが、クマセットを与えたあの神様は…… <●> <●> 。
《 ………(見てるぞっ☆☆☆)》
…けれどもそんなことなどつゆ知らず、ユナはさっそくアジト跡へと向かうのだった。
ーーーーー
山賊のアジトは、存在や人・モノを隠すために山をくり抜いて作られており、中は入り組んだ洞窟のような形をしている。
「ギルドへ戻っている間に誰か侵入しているとも限らないし、何か見落としている可能性も…」
そう考えて、今一度探索をするユナ。
「……うん。他に異様な物は見つけられないし、壺が原因なのは火を見るより明らかだな…」
結局、実力者たちが消えた謎は解けず、例の壺を除いて他に残す物は無くなった。
「いくつか種類があるみたいだけど…」
壺は “一つではなかった” 。
「何かヒントになるものは…」
辺りを見回すがそれらしき物は見当たらない。
「試しに一つ割ってみるか。それとも中の液体に触れてみるか…」
ユナにとって、“クマセットさえ着ていれば” 何も心配することはないはずである。
しかしこれから先、“ユナがやろうとしていること” を思えば慎重にもなるだろう。
…とは言え、百聞は一見に如かず……いや、習うより慣れろ。
蒔かぬ種は生えぬし、虎穴に入らずんば虎子を得ず。
そして最後には、当たって砕けろだ。
不意に “クマセットを脱ぎ出す” ユナ。
この時点で “クマセットさえ着ていれば” の前提は崩れ去る。
惜しむほどの恵体を持っているわけでもないが、惜しげもなくその貧相な体を晒す理由にはならない。
だがこの場にはユナ以外に誰の姿もないし、この行動も誰かに命令されての事ではない。
脱いだクマセットを綺麗に折り畳み、差し出すように自身の目の前へ置くと……。
「…ま、負けましたぁ♡♡♡」
情けない声を上げ、裸で土下座をする少女が完成した。
…もうお分かりだと思うが、見紛うことなきユナである。
無人の、ある意味で密室とも言える空間で、誰にもバレずに行う敗北宣言。
これは山賊に敗北した “てい” で、ユナが “敗北マゾ願望” を満たすために考えた行為なのだ。
「ふぅ〜〜〜っ♡♡♡」
ユナは満足げに、興奮で体を震している。
…にしても、ユナが長らく敗北を望んでいるのは周知の事実だが……しかし何故この場所で、このタイミングなのか。
別に今だって相手が居るわけでもないのだから、これまでだって妄想で補完すれば “全裸で土下座して敗北宣言なんて行為” いくらでも行えたはずだ。
「よいしょっ、おっと…足に力が入らない……でも踏ん張らないと、本番はこれからなんだからっ♡♡♡」
クマセットのお陰で負け知らず、そんな中で “実力者が消えた” と聞いて “もしかしたら私も” と期待していたのだが、それは大きく外れた。
今回も “叶わず終いか” と思ってた矢先の “壺” である。
「この壺に “クマセット” を入れればいいのですね?」
クマセットはユナのアイデンティティであり、分身でもある。
自身と同様か、それ以上の価値の、“ユナの全て” と言えるクマセット。
「…はい、わかりました……」
それを壺へ投げ入れることを了承する。
ただしこれは “自問自答” 。
…きっとユナには、目の前に山賊たちの姿が見えているのだろう。
「………(…クマセットなら平気よね?)」
“ひとたび着れば、元通り” 。
汚れも、傷みも、一瞬で直るし、壊れて無くなることもない。
ユナが壺への捧げ物としてクマセットを選んだのには、そんな気持ちがあったはずで……。
「えいっ♡♡♡」
ボチャンっ! ボコボコっ!!
着ぐるみの重さを感じさせる着水音。
空気を排出し、その代わりにピンクの液体を含みながら沈んでいく。
「あぁ〜♡♡♡ あはっ♡♡♡(必死にもがいて、口から空気を吐き出してるみたいっ♡♡♡)」
クマセットを自身に置き換え、溺れていく様子に興奮する。
さながら今のユナは、山賊の視点なのだ。
「…消えちゃったっ♡♡♡」
やがてクマセットが完全に浸かって見えなくなると、独りでに蓋が閉じ、そして壺の表面に描かれた模様が光り出す。
「壺にかけられていた魔法が発動したみたいね」
先ほど “ヒントを探しては見たものの” 、“多少なりとも予想は…” とあったように、これまでの経験から大凡の見当は付いている様子のユナ。
「…うん。不思議な力で閉じられてて、蓋を取ることは不可能だわ……」
壺は薄く発光を続けており、蓋は開かない。
これもユナにとっては “やっぱり” と言った感じだ。
「…だったら、“時間がある” か……」
クマセットが封じ込まれたというのに冷静なのは、“大丈夫だ” との確証がある。
それは壺の挙動がユナの想定通りであるからで、“時が解決する” と考えるからである。
そうは言っても、この場に何か暇つぶしの道具があるわけでも……居たらそれはそれで困るが…話し相手が居るわけでもない。
山賊を倒して、捕まっていた人たちをギルドに届けたその足でここまで来たから疲れている。
いっそ昼寝でもして待つか…否、この時間すら “もったいない” と思うほどにユナの気持ちは昂っていた。
「ここで寝てしまったら興が削がれるし、せっかくならこのまま敗北した状態を続けて、“無様に” 待たないとマゾが廃る」
せっかくも何もないし、そんなので失われる面目ならさっさと廃れてしまえばいいと思う。
「ご主人様の帰りを待つ忠犬のように土下座でもいいけど、さっきもやったし芸がないわね…なら、足を広げて手は頭の後ろ……少し腰を下ろしてガニ股に………っ♡♡♡」
赤面する顔も、ちっちゃい胸も、濡れた股も隠さない。
「………(動いたら叱られるっ♡♡♡)」
なんてことはないが、“そういう設定” なのだろう。
まるで石像のように微動だにしないユナ。
「………(……まだなの? そろそろ足が限界だよ…)」
ガクガクと震える膝。
崩れ落ちそうになるユナ。
ポーズを決めてから、もうすぐ1時間が経過する。
チンっ♪
突如、“出来上がりを知らせる” 電子レンジのような音が鳴ったかと思うと、壺が再び強く光りを放ち、そして蓋が開いた。
「…完成ねっ♡♡♡」
壺からクマセットを取り出す。
「……あれ? 失敗???」
見た目に変化はなく、クマセットが耐えたのだと思われた。
「…まぁクマセットだし、仕方ないか……」
落胆したユナは、いつまで裸で居るんだと我に返る。
「…早く服を着てしまおう……」
もちろん着るのは、ユナの一張羅であるクマセット。
「んん〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡」
イった♡
「えっ!? 何これっ♡♡♡ 感度がっ♡♡♡」
結果を先に言えば、壺の魔法は成功していた。
壺の正体は、“薬漬けの壺 - 装備” 。
装備をエロ改造することに特化し、要素を “固定する” 淫薬(ピンクの色をした魔力を帯びた液体)で満たされた壺。
着用者を発情させ、敏感化させる効果が付与されたエロ装備を生み出す “特殊アイテム” である。
“特殊な材質” や “魔法で保護された装備” でも、その表層に組み込むことで擬似的に上書きした形となり、“データを書き換えたのと同じ状態を再現できる” 代物だ。
「…はぁ♡♡♡ ……はぁ♡♡♡ ………おかしくなりそうっ♡♡♡」
感度が上がったのは体感で分かったが、それ以外にも何かあるかも知れない。
何せクマセットに影響を与えるほどの劇薬である。
ユナの気づいていない変化が起きていても不思議ではないのだ。
「私は戦えるのか? 魔法は使える? 他に付与されたものは?」
自身の置かれた状況と状態を知っておく必要があり、万が一に備えて解決策を考えなければならない。
「…外に出るのもぉっ♡♡♡ 一苦労……ね、はぅっ♡♡♡」
これならまだぴっちりとした全身タイツの方が良かっただろう。
体を覆うという点では同じだが、着ぐるみの形をしたクマセットは動けば肌が擦れるのを避けられない。
やっとの思いでアジトの外へと出たユナは、さっそく魔法の試し撃ちを開始する。
「…どれを狙って……そうだっ!」
試し撃ちであるからには、標的となる物が必要である。
別にそこら辺の木や石でも構わないのだが、一面焼け野原になる可能性を考えれば “専用の代替品” があるに越したことはない。
「…… “ちょうど良いもの” が…まずは確認も兼ねて、と “創造 - クリエイト”!」
それはトレーニングに使われる木人の用途を持っている。
しかしその形は、先人の…と言うにはあまりにも直近で、つい先ほど “そこに居た者” から得たインスピレーションによって創造された。
「…我ながら、なかなかの出来栄えだわ♡♡♡」
“ユナの姿をした裸のガニ股石像” を前に感嘆の言葉を発する。
見た目こそあれだが、あらゆる衝撃を吸収するように作られており、サンドバッグとしては一級品である。
「…さて、簡単な魔法が使えるのは確認できたし、次は動きの確認……ほえる、はねる、そらをとぶ、ユナアタック! ユナぱーんちっ!!」
体を動かし、次々とワザを繰り出す。
「…う、んんっ♡♡♡ 身体能力も、スキルも、魔法もそのまま、ねっ♡♡♡ ……さすがはクマセット、神様がくれた最強装備なだけあるわ」
クマセットの能力は何一つ “失われておらず” 、最強装備なのは今も変わらない。
あの壺に、クマセットの能力を “消すほどの力” は備わっていなかったのだ。
「…あくまでも “付与が限界” って感じかな?」
ただし、今現在のユナがそうであるように、“感度が上がる” といった淫薬による効果は加えられている。
「はぁぁあんっ♡♡♡」
そしてユナが様々な確認の末に知ったのは、感度上昇に加えて “発情効果” も備わっているということ。
また、これらの薬効は “魔法を使ったり、激しく動いたりすることで強度を上げる” とも分かった。
つまり、どこまで動けるかを検証し、全てのスキルや魔法を試し終わったユナは、立ち上がるのも困難な状態に陥っていた。
「だめぇ♡♡♡ 力を入れようとすると、そこに意識が集中して……っ♡♡♡ 立つことは愚か、向いている方向を変えるのだっt♡♡♡」
予想以上の効果に “このままではマズい” と、ユナは付与されたものを消す魔法を使う。
「り、“除去 - リムーブ”!」
…が、効果がない。
「おほぉうっ♡♡♡(うそ、消えてない!?)」
薬効はクマセットに “固定(セーブ)され” 、それが “デフォルト(初期値)” になっているのだ。
壺がクマセットの能力を取り除けないように、ユナだって不可能である。
「…だったら、“消去 - クリアー”!」
クマセットにではなく、“状態を元に戻す魔法” をユナ自身にかけることで無理やり解決をする。
見事な発想の転換ではあるが、若干の力技感は否めないのは……。
「ふぅ、落ち着いたけど……またいづれ…」
クマセットから薬効が消えたわけじゃないため、根本的な解決にはなって無いからであろう。
それにユナが平然を保つのには、この魔法を都度かけ続けなければならないの “であって……” 。
「まぁでも普段は…」
いや、“だと言うのに……” 魔法をかけず発情状態で居ることを選んだのは、淫薬がユナを蝕んでいる証拠だ。
およそ正常で、合理的な判断とは思えないが、淫薬の効果で増した欲望を抑えることができない。
「いざとなれば、“消去 - クリアー” の魔法一つで力を取り戻せるんだし…」
クマセットを身につけていても、むしろクマセットを身につけることで “自身を弱める事ができる” と、“雑魚化性癖” を優先したのである。
「このまま少し、お出かけでもしようかな?」
山賊はユナが壊滅させたが、辺りの森には多くのモンスターが残っており、“相手に困ることはない” 。
ユナの言う “お出かけ” とは単なる散歩ではなく、雑魚化した状態での戦闘であった。
「…はぁ…はぁ……」
ここに山賊がアジトを構えるくらいには、“強いモンスターが居ない” のは調査済み。
ただしそんな雑魚モンスターとの戦闘で息を上げるほどに、ユナが弱っているのも織り込み済みである。
「…はぁ♡♡♡ ……はぁ♡♡♡」
漏れる息の種類が変わる。
最初こそ善戦したものの、次第に薬効で苦戦を強いられるユナ。
戦えば戦うほどに強まる薬効は、数の多い雑魚モンスターとは相性が悪いのだ。
「…負けたぁ♡♡♡ ……本当に負けちゃったぁ♡♡♡ ………ユナ、いま負けちゃってるんだぁ♡♡♡」
こんな日が来ることを誰が予想できたのか。
この世界に生まれ落ちてからの約5年間、無敗を誇っていたユナの記念すべき初敗北の日。
そして、“百戦百敗” の偉業を成した日。
「ごめんなさいっ♡♡♡ もうやめてっ♡♡♡ 負けましたぁ♡♡♡ ユナの負けですぅ♡♡♡」
ユナは、日が暮れるまで負け続けた。
しかし負けることは望んでも、殺されるのは本望ではない。
「… “消去 - クリアー”!」
魔法を発動し、力を取り戻す。
「調子に乗るなっ!!」
どかーんっ!!!
モンスターたちをボコボコにすると、ユナはアジトへ帰って眠りに落ちた。
ーーーーー
……私は、ショートケーキのいちごを最後に食べる。
いきなり何の話かと言うと、壺が “一つではなかった” ことを覚えているだろうか。
あのクマセットを変えて見せたのと同種の壺。
それこそが “実力者たちを堕とした壺” だと最後の楽しみに取って置いた……まさに “とっておきの壺” のことである。
私は昨日、敗北を決めた。
自らそうなるように仕向けたとは言え、負けたことは紛れもない事実。
そして敗者には “ペナルティー” があって然るべきだ。
私を負かしたモンスターは昨日ボコボコにしまったから、“私 > モンスター > 私” となっているはずで、ならば私が私を罰するしかない。
「…外でその格好は冷えるでしょう?」
ユナはクマセットを脱ぐと、入り口に置かれている裸のガニ股石像に問いかけた。
それから、まるで地蔵に笠でも被せるようにクマセットを身につけさせる。
「遠くからなら顔までは見えないだろうし、本物の私が無様な格好をしているように思うのかな? …まぁ人が来ることはないはずだけど……」
ユナはクマセットを石像に着せたまま振り返り、自身は裸でアジトへと戻っていく。
そうしてユナが行き着く先、そこで待っていたのは案の定 “薬漬けの壺” だ。
私が私に課した罰……それは “自身が壺に浸かること” であった。
「…負けて汚れたこの身を淫液で清めさせていただきますっ♡♡♡」
例の如く土下座をした後、ユナは自らの意思と足で壺の中へと入る。
「はわぁぁぁああああああ♡♡♡(ドクンっ♡♡♡)」
心臓の音が鳴る。
チャポン!
ユナの全身が壺に沈む。
ギィーーーッ!!
蓋が閉じる。
ユナには見えないが、そろそろ壺が光っている頃だと “予定調和” に事が進んでいることを想像する。
これは “罰ゲームの一環” で、ユナは薬漬けの壺を完全に理解した “つもり” でいるのだ。
…だが、それは間違いであった。
淫薬がもたらすのは “デバフ” か、あるいは “呪い” か……いずれにしても、“付与による弱化” 。
そう決めつけてしまうのも無理がないと思えるのは、“クマセットがそうであった” という昨日の “実体験” があるからである。
しかしそれは “クマセットの実体験” であって、“ユナの実体験” ではない。
…けれども、ユナがクマセットを自分の “写し身” として認識していたからこそ、この決めつけに至ってしまったのだろう。
己を過信せず、クマセットだから “あの程度で済んだ” のだと考えられたならば……ユナの運命は変わったのかも知れない。
でもそれを、“淫薬に蝕まれたユナ” に言うには酷であるし、なにより “遅すぎた” 。
料理の工程で言えば、ユナはすでに “下味がつけられた状態” 。
その上、水気も切られていて油ハネもせず、薬漬けの壺という名の揚げ物鍋で今まさに調理されている最中。
「(えっなに!? これは…記憶? ……それも、私が “負けた記憶” だぁ♡♡♡)」
この薬漬けの壺には精神魔法がかけられていて、使用者の戦闘に関する記憶が呼び出される。
本来であれば、その者の輝かしい記憶を徐々に徐々に、時間をかけてゆっくりと刷り込むように…。
圧勝した記憶が接戦だったと誤認させ…
それが今度は引き分けに…
最終的には “あの時の戦いは負けたんだっけ?” と存在する記憶を、存在しないに改竄する。
使用者に “敗北の味を教えるため” の壺。
それがこの壺の正体で、真の名を “薬漬けの壺 - 強者” と言う特殊アイテム。
「(また負けてる♡♡♡ ざっこ、私ざっこぉ♡♡♡)」
そうは言っても、ユナには前述したような小細工や回りくどいことは不要である。
なぜなら材料となる負けた記憶が存在するからで……少し前までならば嘘の、偽物の記憶だと一蹴できた出来事も、今のユナには不可能。
“敗北” と対極にあったはずなのに、一夜にして刻まれた百戦百敗の記憶が邪魔をするのだ。
この壺は強者を弱体化させるほど強力なもので、傍から見ればユナは強者だが、それはクマセットを着ているときの話。
ユナ自身はただの貧弱な美少女であるため、“薬漬けの壺 - 強者” の効果をまともに受ければ “超絶発揮” は逃れられず、肉体も精神も記憶もすべて完全に雑魚化するのは必至であった。
たとえ “仮想” 現実であっても、現実に影響するものがある。
それは “思考” だ。
壺が触手で満たされてたら別だが、淫液で満たされているこの壺は、直接的にユナの体が作り替えることはない。
しかし記憶を書き換え、負け癖をつければ、モンスターと対峙した瞬間に “頭が勝てない” と錯覚をする。
…すると恐怖で体が竦み、動けず、結果として本当に負ける。
勝てば経験値を得られるのが当たり前であれば、負ければ経験値を失っても不思議ではない。
中には “失敗は成功の…” であったり、“負けも経験として……” と言う者も居るが、“ユナのような負け方” で得られるものがあるとすれば堪ったものではない。
「あぁあんっ♡♡♡ 私はもう、ただのスライムにも勝てないのね…♡♡♡」
記憶の中のユナが負けた。
〔 ユナの レベルが “1” 下がった 〕
ユナの強さはクマセットに由来するもので、レベルは単なる数字に過ぎなくとも、5年間の経験が詰まった大切なものである。
その、まさに “経験値” と呼ばれる物をユナは失った。
そして、一度なってしまえば後は早い。
負のスパイラルが回り始める。
レベルが下がれば、弱くなり、負ける。
負ければ、レベルが下がり、弱くなる。
弱くなれば、負けて、レベルが下がる。
〔 ユナの レベルが “1” 下がった 〕
〔 ユナの レベルが “1” 下がった 〕
〔 ユナの レベルが “1” 下がった 〕
〔 ユナの レベルが “1” 下がった 〕
……………
………
…
〔 ユナの レベルが “1” 下がった 〕
半日が経過してもなお、ユナのレベルは下がり続ける。
するとそこに “一手間” が加えられる。
…負けた、イった、レベルが下がった、イった、負けた……
ユナのレベルダウンは加速する。
〔 ユナの レベルが “2” 下がった 〕
〔 ユナの レベルが “3” 下がった 〕
〔 ユナの レベルが “4” 下がった 〕
……………
………
…
淫薬は脳までも薬漬けにし、敗北した “思い出” を快感でつなぎ、勝った喜びを覆い封印する。
〔 ユナの レベルは もう下がらない 〕
チンっ♪
出来上がりを知らせる音が鳴る。
壺の蓋が開き、ユナが出てくる。
ここに “敗北マゾ雑魚化” が完成した。