【skeb】「ねぇ、ゲームをしましょ?」メスガキに仕組まれた“貞操管理ゲーム”
Added 2024-10-05 03:00:00 +0000 UTC「あ"あ"あ"あ"あ"あ"〜」
………
「ん"ん"っ どうも〜 こんばんは〜」
ストリーミングが開始する。
『こんしお〜🌙』
『こんしお〜🌙』
『こんしお〜🌙』
彼女の声を聞き、大量のコメントが流れる。
彼女の名は紫咲 シオン(むらさき しおん)。
金色の瞳に、少し紫がかった白髪の魔法使い。
業界最大手のホロライブに所属し、チャンネル登録者数125万人を誇るVTuberである。
「…でさ〜」
『うんうん』
『めっちゃクソガキやん』
「あははははh」
『w』
『草』
「見てみて〜 新衣装どう?」
『かわいい!』
『エッッッ』
「明日は “メン限” にしようかなぁ〜」
『ごくり…』
『メン限!?』
『全裸待機っ!!』
お金を払って、メンバーシップ(メンシ)に入っている人だけが見ることのできる限定公開の配信。
“その内容” を話すよりも前に、コメント欄の雰囲気が一変する。
中でも大きな反応を見せるのは、名前の横に “バッジ” と呼ばれる絵文字のようなものを付けた色付きのリスナーたち。
彼ら・彼女らこそが、“塩っ子(しおっこ)” と呼ばれる紫咲シオンのファンの中でも屈指の、メンシに加入している猛者たち。
「あっそうだ。“新しいグッズ” はもう届いてるよね?』
『昨日来たよ』
『…俺、“買えなかった” 』
『俺も “当たらなかった” わ……』
『私は当たったよ〜』
『えっ!?』
そんなやり取りが行われた後で、無慈悲かつ舐め腐った言動を取る。
「そっかぁ。ダメだった人は残念だねっ♪」
他人事と言うか、実際に他人事ではあるが、それでも人の心がないかのように “買えなかった人を煽り、まるで残念とは真逆のテンション” である。
これこそ彼女が “クソガキ・メスガキ” と呼ばれる所以でもあり、塩っ子たちがシオンに “求めるもの” でもあった。
「じゃあシオン疲れたからもう寝るね〜」
配信の終わりが告げられ、リスナーたちは締めのコメントを送る。
『おつるーん🌙』
『おつるーん🌙』
『おつるーん🌙』
これはシオンのごく一般的な配信。
表面だけを見るならば “怪しい点” は一切見られない。
しかし一度でも深淵を覗いてしまったならば、もう以前の自分には “戻れない” 。
ーーー 配信後、シオンの部屋にて。
「はぁ〜 疲れたなぁ〜〜〜」
配信終わりの自室にて、シオンはポツリと呟く。
「…おい雌豚」
「ぶひっ♡♡♡」
豚のように鳴いて返事を返した彼女は、シオンのマネージャーである。
“雌豚” と呼ばれて喜ぶ女性は少ない? かも知れないが、語尾に♡マークを付けるくらいにはシオンのことが “好き” なのだ。
ただしこれは、よく言う “Like” ではなく “Love” の形であり、マネージャーとしては超えてはいけない一線を超えた証拠。
仕事相手という関係以上の感情を抱き、簡単に言えば “恋をしている” のである。
シオンはそれを知り、もしくはシオンが “仕向け” 、利用し、陥れたのかも知れないが……。
それでも所属しているタレントを、それもマネジメント担当しているタレントを好きになったと会社に知られでもしたら、担当マネージャーから外されるのは勿論のこと、最悪の場合は規約違反として解雇なんてのもあり得る話。
ファンがお金を積んでも会いたいシオンと会って、尚且つ関係を持つなんて職権濫用も甚だしく……。
彼女はシオンに “従う” しかない。
…そう “従う” である。
決して恋人ではない奇妙な関係。
恋は盲目で、マネージャーはそれでも良しとして、これも一つの愛の形だと信じていても…シオンにとってはただの “趣味” で、数いる豚の中の一匹に過ぎなかった。
シオンの趣味……それは “貞操管理” 。
当然マネージャーも貞操帯を嵌め、純潔を守っている。
元はと言えば、貞操帯の目的および役割はこれである。
しかし今日のそれは、“守る” というよりも “防ぐ” に近く、“拒絶する” に等しい。
堅牢な貞操帯を管理・守護するのは本人ではなく、守護者たるご主人様。
この場において、それに当たるのはシオンだ。
「…明日の準備は完璧なんでしょうね?」
「はひぃ♡ 完璧ですぅ♡♡ シオン様ぁ♡♡♡ ”私が直接” 、17cm以上の雄豚たちを選別して来ましたので……」
ご存知かも知れないが、“VTuber” とは “Virtual YouTuber(バーチャル ユーチューバー)” の略称である。
…したがって、現実世界に姿を見せることはなく……(中の人が)人前に出ることもない。
そのためリアルとバーチャルを介する際に、その役割を担うのがスタッフと呼ばれる人たちなのだが……今回は大変に珍しいと言うか “異例” で、“シオンからの指示であること” と、“ホロライブとしての活動でないこと” から、マネージャー “個人が” シオンの駒として働いているに過ぎない。
…だからマネージャーは “その身分を隠して” 塩っこに接触し、ハニートラップを仕掛けて “童貞であるか” や “ちんこの長さ” を調べ上げ、これを “直接の選別” と言ったのだ。
まぁこれも企画と言えば、それを助けるのだってマネージャー業の一環だと言えなくも……しかし彼女がシオンに気持ちを向けているという事は紛れも無い事実で、少なくとも恋愛対象として見ているのは女性であるし、仕事と雖も男の相手をするのはあまり気が乗る話では無い。
ましてや相手がおいそれと女性に手出しをする勇気も持てない隠キャの童貞であっても、一概に無害とは言えず…マネージャーの貞操帯は、このための物だとも捉えられた。
「…待ちに待った。一年越しの “収穫祭” っ♪ 名付けて “きのこ狩り企画” っ♪♪」
周年記念のイベントとして企画され、今回で “6回目” の開催を迎える『きのこ狩り』。
頻繁に配信が少ないことを取り沙汰されるシオンだが、これほどの人気を誇り・維持し続けているのはシオンがホロライブの古参で、黎明期・発展期にデビューをしたからではない。
これはシオンの “裏の活動” が実を結んだ結果であり、それによってシオンを “物理的に” 掴んでやまない存在へと昇華させた。
シオンの言う “きのこ” とは、実に安直ではあるが “ちんこ” だ。
そうであれば、裏ヴァロやスト6をしているシオンに立つ “男性との絡みだったり、男遊びだったり” の根拠のない噂話から連想される『きのこ狩り』は、“きのこを食べ漁ること” かも知れないが……答えは否である。
ここで言う『きのこ狩り』は、巨根の塩っこ(雄豚)に対して一年間の貞操管理を行なって “巨根で無くすこと” 。
ちんこを “不能の存在” にすることは、ちんこを切除する “去勢と同義” で、“狩り” なのだ。
「明日自分たちがどうなるかも “知らない” で、今頃は貞操帯を嵌めてるんだろうな〜」
先ほどマネージャーが言っていた “直接の選別” に話を戻すが、それは書いた通りの内容で “事前審査” 。
そしてリスナーの元に送られたグッズ購入の “当選通知” は、“合格通知” であると同時に “地獄への片道切符” 。
…とは言え、あくまでグッズ購入の当選 “通知” であるからにして “権利が与えたれた” に過ぎず、公式グッズとして販売されているの物を自ら購入するのである。
しかし、アイドル売りをする会社が表立って貞操帯を売り出すのことなど不可能。
そこで考えた体裁は、“秘密結社hokoX(ホロックス)” が作った謎の装置。
“holoXの頭脳” と称される博衣 こより(はくい こより)が開発したと謳い、“ジョークグッズ” として売り出したのだ。
かの特級呪物として知られる “一生一緒エンゲージリング” よりもえげつないグッズではあるが……そんなことを気にする塩っこなど居ないどころか、普段しているスーパーチャットを考えれば多少の値が張ったとしても喜んで買うだろう。
そうして届いた貞操帯には、“スタジオの場所が示された地図” と “当日は貞操帯を付けてお集まりください” という直筆のサイン入りメッセージを添えられているのであった。
「それではシオン様、私はこの辺で失礼しますね?」
「そうね、帰っていいわよ」
「おやすみなさい、シオン様っ♡♡♡」
配信部屋から姿を消すマネージャー。
「う〜んっ♪ それにしても…明日が楽しみで眠れるかしら……」
まるで修学旅行の前日の子どものようなことを言って、シオンはベッドに向かうのであった。
ーーー 当日、レンタルスタジオにて。
無作為とは名ばかりの、抽選ではなく選び抜かれた巨根の塩っこ(雄豚)たちが一堂に会する “その裏で” ……。
「シオン様っ♡♡♡ 雄豚たちが集まって来ましたねっ!!」
「ええ、おむつを履いたみたいに不自然な膨らみをして……ぷぷぷっwww あの格好をしてここまで来たのよねwww あはははっwww」
貞操帯を嵌めた上にズボンを履いているのだから違和感極まりないのだが仕方がなく、そうは言っても普段オシャレとは縁のない雄豚がこれを気にするかと言えば、それも分からない。
こんな様子を、会場に設置したカメラを通して見るシオンたちが居るのは、配信用に用意した雄豚の集められた所とは別の場所。
「…シオン様? 一つお尋ねしたいことがあるのですが、どうして配信・実況するのでしょうか???」
マネージャーの言う事はもっともで、この行為をネットに流すのは…それがメン限という閉じた空間であってもリクスが高い。
「…不肖、この雌豚にも分かるように教えてくださいませんか?」
「まぁ一番の理由は “面白いから” よっ♪♪ 配信なんてそんなもんでしょ? 別にBANされたら転生……いや、したいわけじゃないけど…そのくらい軽く考えてないとやってらんないわ」
「…では、二番目の理由は……」
「お金になるからね! 噂でも十分に集客へ繋がるけど、実際に行われているのを見ると見ないのでは大きな差がある。そしてバカな雄たちは、“今度こそ” はと期待して応募するし、お金も落とすんだよね〜」
貞操帯で一儲けし、メン限で一儲けをする。
さらには来年の参加者までもを確保する。
「さすがです、シオン様っ♡♡♡ 一石何鳥にもなるんですねっ!!」
「そうね。ただ、あんたの言うことも一理あるから…この “きのこ狩り企画” を配信・実況するのは一年の期間のうちで一回目に当たる今回だけだし、アーカイブにも残こすつもりもないわ……てか、いつまでここにいんの? 早く行きなさいよ、この豚、ノロマ」
「ぶひぃ♡♡♡」
ボロクソに言われているのに喜ぶマネージャーは、そのニヤけた顔を隠すように “豚の耳が付いたラバー製のピンク色をした全頭マスク” を被り、さらには “鼻フック” を取り付け、雄豚たちの待つ会場へと向かう。
この日、会場に集められた雄豚を直接的に相手するのは、シオンではなくマネージャー。
まぁ相手をすると言っても、実際の豚たちのように交尾をすることはないのだけれど、それでも雌豚と呼ばれる彼女と雄豚と呼ぶ彼らで豚同士、きっと相性もいいだろう。
しかしなぜ、痴女みたいマスクを被るのか。
それはシオンの趣味であるだけでなく、事前調査をしたのがマネージャーであるからで、“あの時の!” とならないようにと言うのが主な理由だ。
それに彼女が “ただのスタッフじゃなくてマネージャー” だとバレでもしたら、そこからシオンを特定してやろうだなんて輩も出てこないとは限らない……いや、100%出てくる。
…だから顔を隠して鼻フック(は必要ないだろうけど)を装着し、まさかハニトラを仕掛けたお姉さんだとは気づかれないような、この場において相応しい格好に姿を変えたのである。
「シオン様〜 見えておりますか〜?」
会場に着いたマネージャーが、カメラを通してシオンに呼びかける。
その間、集められた雄豚たちへの説明は一切行われていない。
「こちらの準備はOKで〜す」
“この変態は誰で、どのような存在なのか”
貞操帯を嵌めた自分たちも大概変態であると言うのに、それを棚に上げる雄豚たち。
しかし、状況を見るに運営側であることだけは分かり、ざわつきながらも離れて見守る。
「…始まりますので、よろしくお願いしますね」
マネージャーが雄豚たちに向かってした発言はその一言だけで、それを確認したシオンはメン限配信を始める。
同時に会場に設置されたモニターにも配信画面が映り、会場のマネージャーと雄豚たちは開始したことを知る。
「こんばんわ〜」
シオンの第一声が聞こえ。
『こんしおー🌙』
コメントが反応する。
「今日はー シオンのために集まってくれて…クク、くふふっ! ごめんっ 笑うの我慢できないよー」
ネタバラシは “最後” のはずだが、ゲラであるシオンが…そしてクソガキであるシオンが、こんなにも “無様” な男を目の前……画面越しに眺めて、何もせずにはいられないのだ。
「ほんっと情けないオスたちね♪ シオンに会えると思ったのだろうけど、そんなわけないじゃんー」
会場に集められた時点では、まだシオン本人が登場する可能性もあると期待を持てる。
しかしピンクの変態が現れ、配信が始まってしまっては、その可能性は限りなく低く変化する。
さらにはモニター越しにされた挨拶でその期待は消え始め、雄豚たちの顔がみるみる暗くなる。
その様子を見てシオンは情けないと、嘲笑を堪えられずに笑ってしまった。
そして追い打ちをかける言葉を発し、可能性や期待を完全に打ち砕く。
「…けれどもしかしたら、ゲームに勝ち残れば……」
その後で、希望を与える。
会場は盛り上がりを見せ、コメント欄も早くなる。
…とは言えまだ、会場の雄豚たちも画面の向こうの塩っ子たちも、シオンが言った “ゲーム” について何も知らないのだ。
「そんなゲームの内容はこれっ!」
配信画面に大きくバンっと表示された文字。
読むのも億劫なやや複雑なルール説明が書かれている。
「特別にシオンが掻い摘んで教えてあげるけど…」
もともと読ませる気のない文章で、これは後で何か言われたときの保険。
“掻い摘む” とは、重要な部分の要約であると同時に、余計なことを知られないための手なのだ。
「もの凄く簡単に言うとだよ。“貞操帯を外すとこが出来れば勝ち” 。ただそれだけね!」
確かに単純明快。
ただしその事実を理解したならば、“負け = 外せない” ということも分かってしまったはずである。
養豚場の如く詰め込まれた雄豚たちが一斉にブヒブヒと鳴き出す。
“そんなの聞いてない”
“ゲームを降りさせてもらう”
“俺には結婚を約束した人が……”
最後の雄豚は、他の雄豚によって無かったことにされかける。
「言ってないしぃ〜 降りてもいいけど、貞操帯はそのままだよ〜 あとリア充は爆発しろっ!! …ってか雌豚ぁ? 童貞に限るって言ったでしょ?」
「申し訳ありません、シオン様。でも彼は歴とした童貞でして…」
「何っ? 言いわけするの???」
「いえ、私が悪いです…」
「ふんっ、まぁいいわ。リア充に仕返し出来るなんて機会も少ないし、それも良いかも知れないわね…」
シオンには詫びる気も譲歩する気もなく、まるでデスゲームのゲームマスターのような振る舞いを見せる。
『でもゲームに勝てば良いだけだろ?』
『それでシオンちゃんに会えるんなら良くね?』
『嫌なら俺と代わってくれよ』
コメント欄は呑気かつ自由なもので、シオンの狙い通り “来年の贄” の確保も完了したと見える。
『ところで貞操帯を外す方法って、宝探しでもして鍵を見つけるのかな?』
『いや、こんだけ集めたんだし争奪戦でしょ?』
『それだと全員にチャンスがないってこと?』
コメント欄は勝手に、次の話題へと切り替わる。
それを見たシオンが、急に大声を出す。
「ね゛え゛ぇぇえええ、コメント欄で会話するなって何度言えば分かるの?」
『ごめんなさい』
『ごめんなさい』
『ごめんなさい』
リスナーを調教し、統制してこそ真の配信者である。
「分かれば良いのよ」
『感謝!』
『シオンちゃん優しい〜』
『一生ついて行きますっ!!』
「…でね〜」
その切り替えの良さ、テンポの良さも一流。
「その貞操帯は特別な金属を使ってるから壊すことは不可能。体を切断すれば取れるかも知れないけど…まぁ正規の方法以外で外すのは無理だと思った方がいいかなぁ〜ってことで、満を持してのその方法を発表するねっ! ジャラジャラダラダラ〜〜〜ジャンッ!! 突然ですがここで問題です。“シオンの誕生日はいつでしょう?” 」
会場もコメント欄もポカンとしている。
「口に出したら失格、もちろんジェスチャーでの相談もダメだよ〜。その数字を貞操帯の横にあるテンキーに入力して、外れたら……」
“取れないぞっ!?”
雄豚などと呼んでいるが、流石は塩っ子。
誕生日なぞ朝飯前とでも言うかのように入力を済ませたみたいである。
しかし貞操帯が取れることはなく、“どうして” と言った様子だ。
「ばぁ~か、まさか一回で終わりだとでも思ったの? 頭よっわ〜い♪♪ それにシオンが言おうとしたのは “外れたら…” だし〜〜〜」
“痛いっ!”
咄嗟のことでど忘れをしたか、あるいは入力する手元が狂ったか。
いずれにしても間違えた雄豚が居たようで……。
「あはっ♪ “貞操帯が金玉を握り潰した” ようねっ♪♪」
それは、ちんこと金玉を完全に包み込む形をしたこの珍しい貞操帯に隠された機能の一つ。
完全密着したその内側の繊維が縮むことで、まるで人の手で握りつぶされたような感覚を与えるのだ。
「じゃじゃん、第二問。“シオンの初配信はいつ?” …あ、コメント欄は自由に書き込んでいいよ〜」
『8/17』
『8月17日』
『8.17』
「はやっ!? さすがじゃん!」
先ほどは違って悠長にコメントとやりとりをする時間があるのは、外した時の罰を恐れて参加者の手の動きが鈍っているからである。
「そんな考えたって分かんないもんは分かんないよ? …てかぁ〜 いま思い出したんだけど、“時間制限がある” の言い忘れてたわ♪」
ぴーーーっ!!
シオンが言うが早いか、それとも音が鳴ったのが早いか。
貞操帯から、シオンの言った “ソレ” と思わしき音が鳴り、同時に入力を済ませていない雄豚たちを痛みが襲う。
“あ"あ"っ!?”
“い"ぎぃぃいいっ!”
「う〜ん、良い声で鳴くねぇ〜♪」
“さっきより痛くないか、これ…”
中には二度目の雄豚も居たようで、一度目との差を感じていた。
「ふ〜ん、察しがいいのも居るみたいね。貞操帯の横を見なさい」
雄豚たちが一斉に目線を下げる。
“2だ”
“俺は0”
“1のやつも居る”
そこには数字が浮かび上がっており、その数は現時点で3種類であった。
「それはクイズを外した数……より正確なことを言えば、“ロックの解除を試みて失敗した数” よ。その数に応じて外した時に与えられる痛みも段階を増すの。今日はクイズだったけど、シオンが出すお題には様々あって…例えば “配シオンの信中に言った数字を入れる” とか。“どっかのお店に展示されたシオンのパネルに書かれた数字を入れる” とか……これを “一年間” やって、“とある数字” を見事入力できたら勝ち…即ち、貞操帯が取れるってことね」
“例えば” で出したのは、メン限を見ている塩っ子向けの本当に一例で、実際にはもっと過度な要求が用意されていることを雄豚たちは知らない。
それよりか今は、“一年間” と告げられたことの方が重大で……。
例の “結婚を約束していた雄豚” は、このまま貞操帯を付けた姿を晒すことになるだろうし、他の雄豚たちだってこの先一年は、周りの目を気にしながら隠して生活を送らなければならないのだ。
それも、“一年後に貞操帯が取れるとの確証が持てない中で” である。
「そろそろいい時間ね」
二時間が経過し、そろそろ頃合いと言った感じで配信を終わろうとするシオン。
阿鼻叫喚が犇く豚箱には、あの有名なコミケ雲が発生しそうなくらいに熱を帯びる雄豚たちが詰まっている。
その画面が徐々に、徐々にフェードアウトしていき、枠が閉じた。
「…本日はこれで解散となります。足元のよろしい方から、どうぞお帰りください……」
必要最低限の連絡事項を、淡々と伝えるマネージャー。
当然、雄豚たちからの抗議は絶えない。
「……はぁ。これはどうしてもの時にと、シオン様から言われてたのに…」
マネージャーが手に持ったスイッチを押す。
ばばんっ!
どこからともなくSEが鳴り、続けてシオンの声が流れる。
“シオンの身長は何cm?”
ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、ちっ……
ちっ、ちっ、ちっ、ちっ…
ぴーーーっ!!
時間切れを知らせる音が響き。
気づけば、マネージャーの姿は消えていた。
「……ふぅ、何とか逃げ切れました…」
「そのようね」
「ふごっ! シオン様っ♡♡♡ …でも、いいんですか?」
「何がよ」
「これまで言葉巧みに穴をついてきたのに、ここにきて “嘘” を言ってしまっても…です」
「嘘? …ああ、最後の “とある数字で” って話???」
「そう、それです!」
「別に嘘は言ってないでしょ?」
「…だってこの貞操帯には “取り外しの機能なんて無い” じゃないですか?」
「そうね、あなたがしてるのと同じだものね?」
「はいぃ♡♡♡ …じゃなくて、どうして取れるって言ったんですか?」
「シオンは “とある数字を入れれば勝ち” と言って、“勝てば貞操帯が取れる” と言ったのよ? 数字を入れれば取れるとは一言も言った覚えはないのだけど……それに、罰を恐れてあいつらは正解の数字を入れようと必死になるはずだけど、そこに “とある数字” が出てくることはない」
「(……それって “要求する数字” と “とある数字” が違うってこと? とある数字を入力するには、わざと間違えないといけないのね。なんて恐ろしいんだシオン様は…でもそこが素敵っ♡♡♡)」
「(…何か勘違いをしているようだけど、最初から取り外しの機能がないって言ったのだから、とある数字だって存在しないだけなのよね……)」
ーーーーー
“シオンの〇〇は?”
“シオンの××は?”
“シオンの……”
それからしばらくは会場で出されたのと同じで、シオンに関する基礎的な問題が出される日々が続き。
一ヶ月が経つと、それに配信内で発表される数字が追加された。
二ヶ月目には、店頭ポスターやパネルに隠された数字。
ここまでは、あの日のメン限配信で言っていた通りで、雄豚たちも案外ゲーム感覚で楽しめると浮かれていた。
しかし三ヶ月目になって、CDにランダムで封入されている券に記された数字を要求され…
次の月には、何組か限定のグッズに付属するポストカードにある数字……
半年も経てば、一定のスパチャ額を超えたら数字が送られ………
一年を迎える頃には、土地や家、車などと引き換えに教えて貰えるようになっていた。
それでも雄豚たちが必死に貢ぐのは、後になればなるほど、回数を重ねれば重ねるほど “彼らのちんこと金玉を襲う痛みが強くなる” からである。
初めこそ誰もが簡単に応えられた要求も、限定品という物理的な問題だったり、金銭的な問題だったりとで次第に応えられない者たちが増え、それも数回なら強まる痛みに耐えられた。
前述の通りで、仕方のない部分もあったにはあったけれども、それに甘んじて “まだ大丈夫だから今回は” とこの先に要求されるものも知らずにサボり出したのが問題だった。
たとえ要求されるものが大きくなろうとも、この頃にはすでに襲う痛みが尋常じゃないほどに強まっており、何が何でも差し出さなければ耐えられないほどになっていたのだ。
それも全てシオンの思う壺であり、相手が断れなくなると分かって要求の段階を上げているのである。
「シオン様、ハワイの旅行券が届きましたよっ!! 一緒にいきましょ♡♡♡」
「何で雌豚のあんたと行くのよ。おかゆと行くわ」
こうして瞬く間に一年が経ち、再び会場に集められた雄豚たち。
こんなにされたと言うのに律儀に参加するなんて、何とも健気でかわいいのだろうか。
まぁ実際はそれに縋る他なく、ようやく今日この日に “貞操帯が取れる” と一縷の望みに賭けているのだ。
ふぉわぁ〜〜〜〜ん。
マイクのハウリングしたような音が鳴る。
「ようこそお集まりくださいました」
前回とは異なり、声の主であるマネージャー姿は会場には無く、音がスピーカーから流れてくるだけである。
「早速ですが、シオン様からゲームの結果発表がなされます」
それを聞き、会場が響めく。
“結果発表” 、聞き間違えでなければ彼女はそう言った。
これが意味するのは、すでに勝敗が決しているという事。
この場所で最後の、とある数字が知れるのだと思って来た者が大半であろう中で告げられた事実に、皆ついて行けていない様子だ。
それでも会は進行し、シオンによる結果発表が行われる。
「あーあー。シオンの勝ちっ♪」
しかしそれは、先ほどの事実以上に衝撃的であった。
パチパチパチパチ。
スピーカー越しに聞こえる拍手は、勝者であるシオンを称えているマネージャーによるものだろう。
なぜなら多くの雄豚たちが理解に苦しんでおり、今はそれどころではないからだ。
「分かんないかなぁ? ずっとシオンに騙されてたの、だからシオンの勝ちで、お前ら全員負けってこと。でもよかったじゃない、これでみんな仲良く “永久貞操” ねっ♪♪」
改めて説明し、現実を突きつける。
「ゲームは “無事” 終了。一年間お疲れ様〜 じゃーね、ばいばい!」
その言葉を最後に電源が切られ、二度とスピーカーから音が出ることはない。
彼らがこの一年で失った物は大きく、貞操帯だけが虚しく股間に残るのだった。
〜 完 〜