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macaroon(まかろん) from fanbox
macaroon(まかろん)

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【skeb】ドSな私とドMな私、“本物の私”はどっちの私?

 ここは、女性犯罪者の “無害化” を目的とした超法規的な “矯正施設” である。


「…ごきげんよう犯罪者ども、更生するまでここから出られるとは思わんことだ」


 この日も何人かの女性犯罪者が運ばれてきて、私はその引き渡しに立ち会う。


「…まぁなんだ、そんなに心配する必要も無いさ。なぜならここに、“1週間と居た者など存在しない” のだからな……」


 その事実が示すのは、この施設の “厳しさ” であり、“恐ろしさ” でもあった。


「ほら歩け、遅れるなっ!」


 ロープで数珠繋ぎにされた女性犯罪者たちがまず向かうのは、“マグショットの撮影” や “淫紋の刻印” などを行う “処置室” と呼ばれる空間。


「…さぁ、目の前にある “薬” を飲むんだ」


 小瓶には、発光した緑色の液体が入っている。


「…そろそろ “始まる” 頃かしら?」


 皆が飲み干したのを確認し、そう言い放った直後、女性犯罪者たちの恥骨付近に “淫紋” が刻まれた。


「それは “刻印蟲入りの薬” でね。その淫紋は、宿主に寄生した証さ。これでお前たちは魔力を使えなく……いや、正確には “魔力を使うことはできるが、それは全てゼリーに変換されてしまう” と言った感じだな…」


 これ以降の魔力による抵抗や反抗は、自らの無様を晒すことになり、ただ矯正の効率を上げるだけである。


「大丈夫、一生ものってやつじゃないんだ。希望すれば、この施設を去るときに “虫下し” を使って取り除くことも可能にしてある…まぁ後遺症で、およそ半数は……私が出来るアドバイスとしては、“矯正師に逆らわないこと” 。そうすればゼリー排泄の回数も減るし、自ずと早くこの施設からも出られるわけで、結果的に “アナルゼリー中毒” にならずに済むって話さ」


 言うは易く行うは難しで、『はい、そうですか』と素直に従うような人間は、犯罪者にならないのである。


「もう拘束は不要ね」


 犯罪者同士を繋いでいたロープを解く。


「お前たちの部屋へ案内するわ、着いてきなさい」


 今度はロープによる強制ではなく、自らの意思で歩かせる。


「ここでは一人ひとりに部屋が与えられるわ。たまに “独房” だって騒ぐのも居るけど、ちゃんとした “個室” よ」


 いくつもの部屋が並び、どこまでも続くような長い廊下を歩く。

 それらの部屋からは、様々な音や声が響いてくる。

 隠れていて中の様子は伺えないが、これから我が身にも降りかかるであろう事を想像させるには十分だ。


「…1083、お前の部屋はここよ。あとは中の矯正師に従いなさい」

 “空室” と書かれた札が掛かる扉の前で止まると、名前を呼ばれた一人が “矯正部屋” の中へと入っていく。

 それからは同じことの繰り返し……。


「1084、お前はその部屋。1085はそっち。1086は……」


 各部屋には、“専属の矯正師” が待機しており、その部屋の “女王様” として治世を敷いている。


 中での出来事は全て不問。

 矯正させることが最低で、最大の目的。

 その方法に制限は無く、自由かつ無法。


 これこそが “超法規的” と言われる所以であり、ここだけが “治外法権” を有する、まさに “独立国家” である。


「…1092、お前はそこだ」


 …そうして、最後の犯罪者が部屋へと入る。


 次に彼女らが部屋を出る時は、矯正され、この施設からも出る時であろう。


ーーーーー


 犯罪者の収監を終えた私は、“自室” 兼 “仕事部屋” でもある “所長室” へと……。

 ああ、さっきから “私わたし” と繰り返し言っている自分は、リリーナ・フォン・バルクレイン。

 異世界転生者にして、この施設の所長だ。


 転生した時は、それはもうビックリしたものさ。

 何しろ遥か彼方の上空から落とされて、体のあちらこちらが拉げていたのだからね。


 うんうん、それならどうして “生きているのか” だって?

 …それは私が、“不老不死” だったから……かな。


 誰が、どうやって、何のために転生させたのか。

 あるいは超自然的な理によって意図せず転生したのか。

 性悪な女神様に会ったわけでも、じじいのようにボケた神様に会ったわけでもなく、気がついた時には空の上で…次の瞬間には地面に打ち付けられていたのだれども……この出来事のお陰で “不死” なのも発覚したし、その後で “不老” なのだということにも繋がったから、今になって思えば良い経験だったな。


 …うん、本当に。

 ……めちゃくちゃ痛かったケド。

 ………ダレヲ、ウランデモイナイヨ。


 そんなこんなで始まった異世界生活も、第2の人生として余生を送る感じのまったりスローライフとはいかず、私は “大陸全土を巻き込んで100年続く戦乱” とやらに巻き込まれた。

 まぁ、当然と言えば当然だよね。

 不老はさておき、不死なんて戦場で最も厄介な存在でしょ?


 これぞまさにゾンビアタック極まれりといった感じで、その身一つで戦場を駆け回って自殺攻撃を仕掛けたの。

 …自分で言うのはあれだけど、害悪プレイにも程があるわね。


 『 鉄壁、よって無敵。されど私の胸は絶壁… 』


 そうこうしている間に “胸壁のリリーナ” と恐れられ、難攻不落の移動要塞かつ際限のない私と戦っても無意味だと、次第に争いは止んでいったのだけれども……計らずも戦乱の世を平定する形となってしまった私は、結果的に大陸を統一した覇王としてこの世界へ平和と安寧をもたらす存在に…というわけで、私自身 “なぜ?” と嘆きたい気持ちはある。

 しかしながら、斯くしてスローライフを始められるに至った私であったが……特にやることもなく、すぐに “暇” を持て余す次第と相成ったのだ。


 不老が故にこのまま一生、覇王としての不労所得でキャッシュとフローを…とも思うが、不死であることが “一生” という事柄に重みを与えてくる。

 この暇な事態をどうにかせねば、これから永遠に続くであろうご隠居生活はお先真っ暗。

 楽しみの一つも無い状態で、時が流れるのを見守る観測者として、ただひたすらに在るだけの身へと成り果ててしまう。

 それはあまりもに悲しきことで、だからこそ私は “この施設を作った” のである。


 いかに世界が平和になったとは言え、未来永劫それが続くということは無く、悪はどこにでも…どこからでも発生する存在で、“無害化” することは限りある人的資源の有効活用に他ならず、曲がりなりにも善なる者が増えるのは大陸にとっても都合がいい。

 ……まぁその “ついで” に、私のストレス発散ないし暇つぶしだったり、性癖を満たせたりなんて出来たら最高じゃない? ってことで、天下り…ではなく、覇王権限を使って初代所長になったわけだ。


ーーー


 …ふぅ。

 ようやく生い立ちと言うか、ここまでの成り行きと言うか、事のあらましと言うか。

 私について “少し” は分かって貰えたと思う。

 …けれども、私という人物を完全に理解するには些か足りないとも考える。

 どうして、どのようしてここを作ったか以上に、“この施設で行われていること” を知らねば、私の “性癖に関して” 真に理解したとは言えないだろう。


 一般に示されている無害化とは、“矯正を施すことによって、善なる民に更生させること” だとされている。

 そして、その行為を担うのは “矯正師” と呼ばれる者たちで、彼女らは “調教技術に優れた犯罪者” なのだ。


 毒を以て毒を制す。


 矯正とは、謂わば “調教による洗脳” に近く……最も簡単なのは “痛みを用いた支配” で、他には “愛や快楽による依存” であったり、“魔法を使った改変” であったりなど方法は様々だが、一概に “特殊な技術が必要” だと言える。

 これを一から育てるのは非常に大変なため、“贖罪” という名目でスカウトしているのだ。

 しかしながら当然、彼女らは犯罪者であるからして “無害化の対象” なのは変わらず、この施設ないし宛てがわれた矯正部屋から出ることは叶わないし、何か仕出かしたり失敗したりすれば、“自身が矯正される” のである。


 矯正師は、経験上 “無害化の恐ろしさ” を知っているからこそ、死に物狂いで犯罪者の矯正をする。

 それぞれの矯正師が得意とする方法で行われる、バリエーションに富んだその様子は “見ていて面白いもの” であり、“ドSな私の性癖” を満たしてくれるというわけなのだ。


 さて、ここまですれば私についても、それからこの施設についても、十二分に説明したと言えるであろう。

 それに、先ほどの収監とは別で今日は “矯正師の雇用試験” もあるから、そちらの対応もしなくてはならんのでな。

 何せ私を除けば、ここには矯正師を含め犯罪者しか居ないのだから、“矯正以外の役どころは、全て所長が引き受ける” 必要があるってわけさ。

 …と言うことで、私は失礼させてもらうよ。


ーーーーー


「…アンタがここのボスか?」

「ああ。リリーナ・フォン・バルクレイン、この施設の所長をしているわ。…だからこそ、口の利き方には気を付けるべきじゃないかな? あなたも組織に属していた人間なのだし、何より調教師として、“上下関係をはっきりさせる是非” は分かるでしょう?」

「…くっ、そう……ですね」

「ま、牙を抜かれているより、それくらいの威勢は合った方が良いし…元より “矯正さえしっかりとやって貰えるのであれば、こちらから何か口を出すこともない” から……堅苦しいのは今だけね、たぶん」

「たぶん?」

「…だって、まだ正式に雇用するとは決めてないもの……今のあなたは調教師であって、矯正師ではないわ。あなたの持つ “調教技術が本物か” を試験してからでないと、矯正師として認めるかどうか判断できな…」

「ならさっさと試験とやらを初めてさ、アタシを矯正師として雇ってくれよ!」

「………」

「く、ください」

「よろしい。そしたら少し待ってなさい。“あなたに矯正してもらう者” を連れてくるわ…」


 しばらくして、“全頭マスクを被った貧乳の女” を連れたリリーナが戻ってくる。

 胸がぺったんこなのに女であるとしたのは、ここには女性犯罪者しか…と言うよりも、パッと見ただけでアレが生えていないと分かる “全裸” だったからだろう。


「このガキみたいな胸の女を矯正すれば認めて貰えるのですか?」


 お得意の言葉責め、さっそく彼女らしさが顔を覗かせる。


「……、大まかにはそういうことになるが… “他の条件” や “禁止事項” もある」

「何だって構いません。主席調教師だったアタシに、服従しないヤツなど…」


 今更にはなるが、彼女は少し前に掃討された大型不法組織で主席調教師をしていた “巨乳の美女” である。

 完璧なプロポーションを持つゆえ、自身にはおよそ責められるような点はなく、それを武器として一方的に相手の容姿やプライドを貶すことを好き好み。

 また “調教道具を製作する達人” で、魔法が施され “不思議な能力を有する” それらを器用に使い、精神を壊すことを得意とする。

 そうして組織に敵対する多くの者たちを “雑魚精神雌豚” に堕としてきた実力の持ち主なのだ。


「…ええ、仕事を果たしてくれると “期待してる” わ……」

「??? ……言われなくとも、アタシの無害化がかかってるんです…けどこの場合、後悔はさせないってのが正解の返し?」

「そうね。考え得る中で最高の返事を貰えたことだし、話を進めましょうか…」


 リリーナが、“条件” と “禁止事項” について説明する。


「期限は1週間で、“これに自分の正体を言わせること” が出来れば合格。ただし、“全頭マスクを外してはならない” 。たとえ事故であっても、素顔を目撃した時点で試験は終了となり、失格だから注意するように」

「…矯正の方法は自由だと聞いていたはずですが……どうして “コイツを守るような真似” するんです?」

「あなたの言っていることは正しいわ。本来であれば全て任せるし、犯罪者に守られるべき権利はないから、何をしても自由よ。…でも、これはあなたの実力を見極めるためのものであり、顔を見て “知ってる者” だったら試験にならない。そっちの世界に身を置いてた者として、犯罪者の顔見知りも少なくないでしょ?」

「…なるほど、理に適ってますね……」

「うん、分かって貰えたようで良かった。詰まるところ、あくまでも “これに言わせること” が条件で、“あなたが言い当てる” のは条件ではないと覚えておくと簡単よ。他に伝えておかないといけないことは…あ、見ての通り淫紋はすでに刻まれているわ。従ってこれが魔法を使えばゼリーを排泄するだけで、抵抗の心配はない……とは言え、うまく使えば辱めることもできると思うってのは、釈迦に説法かしらね?」


 敵に塩を送るとも違うが、親切かつ丁寧な説明に加えて、試験を課す側による必要以上のアドバイスまでし終えたリリーナは、彼女を “特別な矯正部屋” へと案内する。

 それは矯正師に与えられる専用の矯正部屋ではなく試験用の矯正部屋であり、場所は所長室の横にあった。


「 “これら” がどういう物かはよく知らないけど、きっと必要になると思って手配しておいたわ」


 中へ入ると、組織を掃討した際に押収した、彼女の調教道具がズラリと並べられている。

 何やら顔を破壊するための道具がたくさんあるようだが、リリーナが言うように詳しくは分からない。

 なぜなら道具たちには、見た目以上の隠された効果があるはずなのだ。


「…期限の1週間が経ったら扉を開けるから、あなたがあなたのままで居たいのなら、それまでに頑張って矯正を終わらせなさい……」


 調教師に “矯正対象の女” を手渡すと、リリーナはそう言い残して部屋を出て行くのであった。


ーーー


「…ちっ、ようやっと居なくなったか……にしても、あのリリーナとか言う所長はムカつくぜ。何が上下関係だぁ? あんなのを組織のそれと一緒にされたら堪ったもんじゃねぇよ。アタシたちのは信頼と信用で成り立ってたってのに、こっちはただのパワハラだろ? オマエもそう思うよなっ!」


 憂さ晴らしに、調教師は女を軽く蹴飛ばした。

 すると女はバランスを崩し、地面に手をつく。


「あ? なんだぁオマエは、犯罪者っていう割には酷く弱ぇな。そんなんでアタシの調教を耐えられんのか? 本当にゲロる前に、さっさと吐いちまった方が楽だぜ???」


 高圧的な態度をとるのは、それこそ立場を明確にするためであり、リリーナの言う上下関係と何が違うのかを問われれば答えるのは難しいが、意味のないパワハラか調教の一環かで見れば一目瞭然であろう。


「……ダンマリかよ、つまらねぇ…」


 痛みに声をあげたり、快楽によがったり、リリーナがその様子を “見ていて面白いもの” と評するように、責められる側の反応こそが調教師の楽しみであったりもする。

 しかしこの裏を返すならば、好きの反対が無関心と言われるのと一緒で、調教師に対して無反応というのは効果的に働くのだ。


「(…コイツ、意外と根性あるのか? もしかして体が弱いのはブラフ??? それとも普段は魔法で強化していて……今は淫紋のせいでそれが出来ないからだとすれば、手を抜いていい相手じゃないのか???)」


 先ほどまでとは明らかに変化しているのが分かるくらい頭をフル回転させて考えを巡らす調教師。


「(…コイツに有効なのはどれだ?)」


 愛用の調教道具に目をやり、調教プランを練り上げる。


「(まずはこうして…それからこれも……そうだ。あれを使ってもいいかも知れんな)」


 “鼻フック” や “開口器” などの単純な物から “耳栓” といった異質な物までを含めたいくつかの道具を選び、手に取った。


「(コイツを…いや、これから調教するのに “コイツやオマエ” ってのは不便だが、名前は分かんねぇし……と言うか、それがアタシの合格条件じゃんっ!! う〜ん、何かちょうどいい呼び方は無いものかしら…)」


 犯罪者であればこの施設での名前として “4桁の番号” が振られているはずなのだが、リリーナの伝え忘れか調教師はそれを知らないのだ。


「(……そういや何処となく、“アイツと背格好が似てんのよねぇ” …ああそうか、これは名案かもっ♥♥♥ ふふふ、ふははは。愉快、実に愉快だわぁ♥♥♥)」


 頭の中で、ひとり盛り上がりを見せている調教師の準備が整い、遂に女の矯正が開始する。


「アタシが優しく聞いても教えてくれないからさ、オマエのことは “リリーナ” って呼ぶ事にしたわ」

「!?」

「…生憎と色々溜まっててな。その名前だと加減が効かないかも分からんけれど……恨むならアタシじゃなくて、この施設の所長さんを恨むんだな」


 矯正される者に対して、その根源である “所長のリリーナを恨め” と言うのは、あながち間違いでも無い。


「…まぁ、苦しむのが嫌ならさっさと正体を明かすことよ。保証はしないけど、少しは責めの手が緩むかもね……」


 プロ意識すら持っている彼女が、調教を途中で投げ出すことはないのだろう。

 これは逃げ道を用意することで、相手に揺さぶりを掛けているのである。


「……くだらないわ…」


 女が初めて口にしたのは、そんな一言。


「…たしか、“口の利き方には気を付ける” ……だったか?」


 それはリリーナに言われたことのやり返し。

 この女とっては当て付けであろうが、“リリーナと呼び・扱い・貶める” ことが愉悦であり、調教師の考えた名案なのだ。


「…だが、アタシはアイツほど甘く無い。そんなことしか言えない口なら “要らない” わよね?」


かちゃ、かちゃかちゃ。


「ああぁっ…!?」

「あはは、似合ってるわ♪♪ それは “消言の開口器” 。口としての機能を奪うことは勿論のこと、次第に麻痺させ、最後には使い物にならなくなる(…でも、そうなると困るのはアタシだから早めに折れて欲しいものね……)」

「あがっ、おぇぁああ…」

「…何を言ってるかサッパリね。一日の終わりに外してあげるから、それまでに考えておきなさい……」


 そう言うと、調教師は次の道具へ手を延ばす。


「それだけじゃ寂しいでしょ? 次はこれ、破顔の…って皆まで言うのは芸がないわね……(なんて言ってみたけど、物を言えなくなるのはマズいが、こっちは別にどうなってもアタシに関係ないしな)」

「ふぐっ!?」


 女の顔に追加されたのは、“破顔の鼻フック” 。

 髪は女の命と言ったりもするが、いずれ生え変わるであろう髪の毛よりも、実際のところ顔の方が大切である。

 その顔を破壊すると命名された鼻フックは、文字通り女の顔を無様に変える。


「ふごっ、ふぐぐ…」

「鼻輪と悩んだけど、こっちにして正解だわ。…だって、リリーナの胸じゃ牛は無理だものね?」

「う"う"っ!! おごがっ!!!」


 女が何やら訴えようとするが、開口器によって阻まれる。


「何だぁ? 胸のことを言われて、気にでも障ったか???(……さっきまで一貫して無反応だったのに…これはチャンスね♪)」


 調教師は、女の見せた隙を突く。


「…ならもっと言ってあげるわぁ〜 アタシ、人の嫌がることをするのが好きなのっ♥♥♥ 胸壁のリリーナ改め、貧乳のリリーナ? それともその鼻、雌豚のリリーナ???」

「ふひっ、ごごごっ…」


 再びの抗議も、鼻フックをした状態では怖くも何ともない。

 むしろ変顔を晒して、必死に喚く姿は滑稽だと言えた。


「良いわねぇ♥♥♥ リリーナぁ♥♥♥ どんどん鳴きなさい♥♥♥ 惨めで、情けない声を聞かせてぇ♥♥♥」


 満足した様子で悦に浸る調教師に対して、女は諦めていないようである。

 …それは、淫紋が発光したことからも見て取れた。


ぎゅるぎゅるぎゅるっ!!


 突然、お腹の痛みが女を襲う。


「う"っ!? あ…あ"あ"っ……」

「(これがアイツの言ってたゼリー排泄か? …ってことは、このリリーナはまだ反抗的だと言うわけね……)」


びゅる、びゅりりっ、ぶちゅちゅ、ぶちびちっ!!!


「うおっ、汚ったな…」


 人として、大人としての尊厳が貶される。


「ううぅ……うぐっ…」

「それに臭っさいわねぇ♪」

「………」


 屈辱的で、精神を削られる行為に、女は言葉が出ないようだった。

 …いや、たとえそうでなくとも……もしくは開口器がなくとも、事実を前にして言い返すとはできない。

 それを見た調教師の責め手は、緩むどころか一層激しさを増す。


「あら、“いい鼻” を持っているわね?」

「!?」

「嗅ぎやすそうで、役に立ちそうな鼻」


 女の頭を掴むと、床に飛び散ったゼリーへと押し付ける。


「ほら、立派ねぇ♥♥♥ リリーナの糞よ♥♥♥」

「ごほっ、ふぐ、お"ぉえ…」

「ニオイは? 味はどう???」


 聞くまでもなく最悪だが、鼻フックで広げられ、開口器で閉じられない状態ではゼリーの侵入を拒むことは出来ない。


「ごぼ、ぼぼぼぼっ…ごっ……」

「…あら?」


 鼻と口の呼吸器が塞がれれば起こるのは、それ即ち “窒息” である。

 魔力ゼリーという厳密には異なる物であっても、自分のお尻から出された排泄物なのに違いはなく、それで窒息とは前代未聞の珍事。

 末代までの恥であり、先祖にも、子孫にも顔見せ出来ないほどだ。


「くぷっ、ぷははははっ。リリーナが自分の糞で窒息? …まぁでも、これが本物だったらどんなに気持ち良かったか……」


 調教師が勝手にリリーナという事にしているのであって…この女は……。


ーーー


「……ん、んんっ!?」


 窒息をして、酸欠により気絶をしていただけで、女は生きていた。

 そうでなければ試験は中止され、調教師は今ごろ矯正されている最中だっただろう。


「…目が覚めたようね? って、“聞こえない” か……」


 女が気絶をしてから3日が経過しており、その間も調教師による矯正は行われていたのである。


⦅ ……貧乳…ザコ……うんちに溺れるとか、ダッサ… ⦆

⦅ ……調教師様はあんなに大きな胸をお持ちなのに… ⦆

⦅ ……同じ女なはずのリリーナは… ⦆

⦅ ……調教師様は… ⦆

⦅ ……リリーナは… ⦆


………

……


⦅ ……リリーナは本当に女なの?… ⦆

⦅ ……女性とは調教師様のような方を言うのよ?… ⦆

⦅ ……人であるかも怪しい… ⦆


………

……


 延々と聞こえる “女への侮蔑” と “調教師への賛美” 。

 それは気絶している間に付けられた新たな調教道具、“嘲笑と称賛の耳栓” によるものだ。

 それゆえ先ほどの、調教師の言葉は女に “聞こえない” のである。


 睡眠学習や刷り込みといった類の効果を持つ耳栓は、気絶している間も難なく女を矯正できる優れもので、一切の時間を無駄にすることがなく……鼻フックは時間と共に吊り上げる力を強め…開口器は言葉を奪う。


 “消言の開口器”・“破顔の鼻フック”・“嘲笑と称賛の耳栓” 。


 これら調教道具の効果はいずれも強力であり、道具を製作した調教師自身も “長くて数日しか持たない” としていた。

 しかし調教師は、単に自分が矯正されないように……あるいはリリーナへの私怨か… “最終日まで使い続けた” のである。


ーーー


「…オマエの名は?」


 調教道具を外し、身分を問う。


「りりーな、りりーなですぅ…わたしはぁ、めしゅぶたのりりーなで、ぶぅ……」


 消言の開口器で口が麻痺してうまく喋ることが出来ないのに加え、嘲笑と称賛の耳栓による意識の改変が起こり、破顔の鼻フックはすでに外されているのにミリも戻ろうとしない変形した鼻からは豚鳴きが漏れる。


「違う、そうじゃないだろ? それはアタシが付けた名で、オマエの “本来の名前が何か” を聞いてんだ」


 もう一度、調教師が問う。


「だ、だかりゃ、わたしは…りりーにゃ・ふぉん・びゃるくれいん、ぶひっ!」

「……くそっ、このアタシがしくったとでも…調子に乗って責めすぎたとでも言うのか?」


 精神を壊すとは、時に人格をも一緒に壊してしまうほど繊細で危険な行為であり、無害化を避けるためとは言え……いや、調教師の言う通り…調子に乗って “楽しみすぎた” のだ。

 それはつまり、端的に言って “道具の使いすぎが招いた結果” である。


「…アタシもここらで年貢の納め時ってことか。最後にリリーナ似のコイツで遊べただけでも、アタシには十分すぎる土産ね……」


「(…リリーナ・フォン・バルクレイン……)」


「(そういやアタシ、フルネームで呼んだことあったか?)」


「(まぁアイツは覇王で、有名人なわけだし、それでコイツも知ってるんだろうな)」


 マスクを外すことは禁じられており、確かめる術はない。

 不合格であれば、いっそのこと “素顔を見てしまっても” と思うが…。


「(だってアタシはリリーナと話したし、扉を出て隣の部屋に行くのも見たんだ)」


 調教師は、この女とリリーナの2人が同時に存在しているのを確認しているのだ。


「(やるだけ、考えるだけ無駄だわ)」


「(もうすぐ期限、アタシは潔く待つだけ…)」


 わざわざマスクを取るなんて野暮なことは悪足掻きみたいで見っともないと、調教師はしなかった。


……ガチャ。


 扉が開き、“リリーナが現れる” 。


「………」

「あら、浮かない顔ね?」

「(…やっぱりな。分かっていたけど、この女がリリーナだなんてあり得な……)」

「…返事は無し……と、けれど構わないわ。矯正師に求められるのは “結果” のみ。今その成果を確かめるから、あなたは私の部屋で…」

「不要だ、答えはもう…」

「それはどうかしらね」

「あ? 矯正したアタシが言ってんだぞ??? 悔しいが、失敗したんだよ…」

「……仮にそうだとしても、これは決められた手順なの…だからそっちの部屋で大人しく待ってなさい」


 入れ替わるようにして、2人は互いの場所を変える。

 少しして、矯正部屋からリリーナだけが姿を見せ、それから結果を告げた。


「おめでとう」

「どういうことだ!?」

「あなたを矯正師として雇うわ。今日からよろしくね」

「そんなことは聞いてない、どうして合格なのかって…」

「どうしてって、自白したからよ? そういう約束だったでしょ?」

「そうだが……そんなはずは…もう一度アイツに会わせ」

「残念ながらそれは無理な相談ね…と言うか、何が不満なの? あなた矯正されたいの???」

「(……不満はないけれど納得がいかない。でも矯正は…)」


 様々な葛藤はあれど、これを調教師は飲み込むしかない。


「いや、満足だ」

「そう? 良かったわ、私も満足よ」

「???」

「あなたみたいに優秀な矯正師を見つけられたんだもの、当然でしょ?」

「…そういうものなのか?」


 違和感と、純粋な疑問にリリーナが答える。


「ええ、見るの “も” 楽しいでしゅから……」


〜 完 〜


ーーーーーーーーーーーーーーー


…いかがでしたでしょうか?


『ドSな私とドMな私、“本物の私”はどっちの私?』


…果たして、タイトルが “本当” ではなく “本物” であることの真意を見抜けた人は、存在するのでしょうか?


以下は補足と言いますか、気になっているであろう【主人公の設定】です。

本文から読み解くこと(想像すること)もできるかと思いますが、一応。


・リリーナにはドSな一面があるが、より深刻なドMの一面もある。

・その性癖を満たすため、矯正師試験の “犯罪者役” をしている。

・試験期間中、外にいるリリーナは魔法で作られた “分身” である。

・転生時に体が拉げても平気だったように、不老不死とは “老いず・死なない” だけでなく、再生的な能力も備わっており、試験中にされた矯正の後遺症は “いずれ” 戻る。


そして最後に、“征服者の焼きごて” なる道具…


◼︎征服者の焼きごて − 所有物である証。この調教師が好んで付ける、自らの作品に対する愛情・自信・思い入れを現した印であり、サインのような物。


なんかも考えていたのですが、色々あって今回はお蔵入りに……せめて設定だけでもと思いここで供養。



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