【skeb】クマの少女 〜 拾った“首輪”で破滅する
Added 2024-12-20 15:00:00 +0000 UTC【 OP(オープニング)をとばしますか? 】
▶︎ はい(※ 簡単な説明はあります。)
いいえ
ーーーーー
「…バイバイ、クマセット♡♡♡」
自身のアイデンティティとも言えるクマセットに別れを告げる少女の名前は “ユナ” 。
ここ “ゲーム世界” に転生し、その特典として神様より授かったチート級のアイテムが “クマセット” であり、ユナを代表する格好である。
まんま “クマの見た目をした着ぐるみ” のそれは、ひとたび身につければ10万馬力の力を与え、あらゆる干渉を隔絶する。
同時、ないし2つと存在しない最強の装備は、まさに矛盾を体現した “唯一の” ユナ専用アイテムなのだ。
…では何故、そんなクマセットにさよならをしているのか……
モンスターを倒し、お金やアイテムを拾う。
依頼をこなして、報酬を受け取る。
問題を解決し……なんて生活を続けること早5年。
とある “ポルノ小説” を拾ったり(参照:『重なる二人 〜 異世界転生した貧乳美少女と絵本の中の変態少女』)、“薬漬けの壺” に浸かったり(参照:『負けたい少女 〜 夢見る姿は “雑魚化した私” 』)したのは……あれ? デジャブ??? …いや、前世の記憶(別のデータ)を覚えて(引き継いで)でもいるのだろう。
それによれば、彼女たちは手にした “特殊アイテム” によってそれぞれが特性を得て、“異なる成長” を遂げたようである。
かく言う私も、先日その特殊アイテムとやらを手に入れ、成長した結果が “この有り様” というわけで……。
…物語は、これら回想から始まる。
ーーーーー
「ざっこ〜♪ 口ほどにも無いわね!!」
この日ユナは、偶然にも出会い、いきなり襲い掛かってきた盗賊と戦っていた。
…とは言え、クマセットを身につけているユナにかかれば、数で圧倒的に勝る盗賊を相手にしても一方的であり、その様子は “戦いではなく蹂躙に近い” 。
見た目こそ可愛らしいが、まるで本物の熊が人を襲っているのと大差ない勢いである。
それほどまでにユナと盗賊との間には力量の違いが存在し、一瞬のうちにケリは付いた。
「これに懲りたら悪いことすんじゃ無いわよ? …って、逃げ足はやっ!?」
さすがは盗賊。
力は弱くとも素早さは高い。
「たしか依頼は出て無かったはず……仕方ない、今回は見逃してあげるとするか…」
ギルドからの依頼が無いと言うことは、現状そこまでの悪さをしている者たちではないらしい。
事が起きてからでは遅いとは尤もな意見だが、どこどこに魔物の群れが…とか、龍の巣から卵を…とか、およそゲームのクエストみたい……ん? 私なんか重要なこと言ってない??? もしかして世界の真理に…なわけないか!
まぁ話を戻すと、この世界では “事象に対して、解決して欲しい” といった形で依頼が発生するのであって、あらかじめ手を打って対策するような事は起こらない。
詰まるところ盗賊を追ってもボランティア…になれば良い方で、ギルドから報酬が出ないのは明らかだが……そもそも “誰かの目に留まることもない” のだ。
「…うん、帰ろう」
そう思った矢先のことである。
目線の先、盗賊たちが逃げ去った方向に、キラリと反射し光を放つ “何か” が見えた。
「ん? アイツらの落とし物か…お金? 宝石? それとも……」
いずれにせよ、光ってる物は決まって良い物だと(…そんなことは決まってないが……)、ユナはそれに近づく。
「…盗賊が持ってた物だもん、さぞお宝に違いないわ♪」
まだ何か分かっていないのにウキウキのユナ(かわいい)。
「それに持ち主が居ないんじゃあ、これは私の物でいいよね? ……戦利品? いいや違うわね、これは私に喧嘩を売ってきた迷惑料よ。それに逃がしてもあげてるんだし、これで手打ち…」
まさに取らぬ狸の何とやら…すでに自分の物であるかのような計画を立てながら、ユナはそれを拾い上げる。
「…何よこれ、“首輪” ?」
どうやら反射して見えていたのは、留め具の部分だったらしい。
思っていた感じの物では無かったことにユナは少し残念がる。
しかし、盗賊が主にするのは物の略奪であって、人攫いでは無い。
「でも何で盗賊が “こんな物” を…」
そんな者たちがこれを持っているという事は、この首輪は何か盗む価値がある物の可能性を残しているのだ。
見た目では何の変哲もない、けれども怪しい首輪。
「… “鑑定” ……」
スキルを使って調べるも、結果は “不明” 。
「これは当たりだ!」
先ほどまでとは打って変わって、露骨にテンションを上げる。
不明とは、失敗ではない。
クマセットを身につけたユナですら判別できない事実が示すのは、“特殊アイテム” だという証拠。
「これが、いつぞやの神様が言っていたやつか……にしても、首輪の形をしたアイテムだなんて…」
首輪を手にした時から、知らずうちに湧き上がる “不思議な気持ち” 。
「(…私、“こんな趣味” あったっけ?)」
知らない自分に驚きながらも、たしかに存在する “首輪を付けてみたい” と思う自分を感じる。
「…嵌めてみる、か」
瞬間、胸がドクンと弾む。
心臓の鼓動と呼吸がスピードを増し、体は熱を帯びる。
頭がボーッとして、判断も鈍る。
「……風邪でも引いたのかなぁ…って、なわけないか。でも、“暑い” …」
そう言うと、ユナは服を…もといクマセットを脱ぎ出す。
「あぁっ♡ 涼しい〜♡♡♡」
裸になったのだから涼しいのは当然だが、羞恥心よりも “興奮” を覚えるのは別の話だろう。
そんなのただの露出狂であり、普通に痴女である。
それも “初めての露出で” なのだ。
元よりそのケがあるとした方が自然の流れ。
…とは言え、実のところ特殊アイテムに “影響を受けた” のは言うまでもない。
「はっ!? 私ったら何をっ///」
まだ “成長し終えた” とはいかないようで、何処かへ消えていた恥ずかしさが戻ってきた。
火照った体を外気が冷やし、同時に頭も冷えたらしい。
「服を着なきゃっ///」
クマセットを身につけ、そして首輪へ手を掛ける。
「…あれ? 外れないっ!?」
南京錠のような鍵があるわけでも無いのに、謎の力が働いて留め具が固定され動かない。
「(…まるで呪いのアイテム……かと言って、教会に行ってどうにかなるんでもないし…てか、どんな顔して首輪を外してくださいと言うのよ。どうしよう……)」
…けれどもユナが途方に暮れていると、自然に首輪がポトリと落ちた。
「え、外れた!? でも何で急に??? 条件は…あ、条件か!」
首輪を外す方法、“その条件が何か” と考えた時に、“それこそが条件であること” を理解する。
「…にしても、“条件” かぁ……」
それから色々と試して、ユナはこの首輪についての知見を深めた。
そのうちの一つが、この特殊アイテムの名前は “裸奴の首輪” だと言うこと。
そして “着用者の認識を一時的に変え、簡単な催淫状態に陥らせる” 効果を持つこと。
具体的には名前の通り “裸で、奴隷のような格好を常識” と思わせ、さらには “好き” へと変えていく。
しかしその効果がどれくらいか、使用するにつれ強くなるのか、依存度・侵食度が増すのか。
それらについては現時点で “完全に” 分かっているとは言えない。
なぜなら、ユナは “成長途中” だからである(…まぁ残念ながら、ユナの胸がこれ以上に膨らむことはないけれど……)。
加えて二つ目が、“条件について” だ。
嵌めた首輪を外すには条件があり、その条件は “嵌めた時に、嵌めた者が決める” 。
従って、あの時はユナが条件を決めるのだが…何も指定せずに嵌めた場合は、一定の効果を発揮した後で勝手に外れるという仕組みらしい。
そのため “極めて初歩的な露出を終えたタイミング” で、首輪が外れたのである。
そうは言っても特殊アイテムは、世界の理(ゲームのシステム)に干渉し、ユナの成長(ルート分岐)を決める重要なアイテム(ジョブチェンジ用のアイテム)だ。
つまり裸奴の首輪をつけた(特殊アイテムを使用した)瞬間に、ユナの “決まった未来” がある。
それは “目覚めた癖があった” とも言い換えることができ、“破滅・露出・マゾ” の三つは、冒頭の “ユナがクマセットを捨てる” 未来へ至らしめる性癖であった。
「……今日はどこでやろうか…」
首輪に関して完全に理解せずとも、今のユナには関係ない。
むしろその方が楽しいまであり、先の見えない方がワクワクする。
何たって目覚めたのは、他ならぬ “破滅願望” だ。
普通であれば “最悪” だと思えること。
露出で言えば “見つかること” も、悪くないと思えるのである。
…とは言え、まだ理性を失ったのでも無ければ、いきなり破滅するのも本望では無い。
ただ単に、“楽しまにゃ損” 程度にしか捉えていないのだ。
「…あっ! あそこなんて良い感じっ♪」
場所を大通り脇の“小道”に移す。
一本道を違えれば、人がたくさん居るその場所で、ユナは例の首輪を取り出した。
「………(目を閉じて、ガニ股の姿勢でクマセットの上に1分間立つ)」
頭の中で “解除条件” を思い浮かべながら首輪を嵌める。
首輪はその “願いを聞き入れ” …と言うのも少し可笑しな話だが、ユナにとって “裸奴の首輪=願望器” であると言うのは何ら大袈裟でも無く……ガチリと締まった。
「…はぁ/// ……はぁ/// ……」
徐々に発情し、体温が上がり、息も上がる。
「…しかしこの辺りは、本当に人が居ないな……」
大通り脇の小道とは裏道や路地裏に他ならず、危険も多いことから訳ありでもなければ基本的に誰も近づかない場所なのだ。
そのため、滅多なことでも起きない限り、大通りからこちらを覗く者も居ない。
…けれども、安全な位置に身を置くほどつまらないことない。
興奮とは、リスクが高いほど、ギリギリなほど高まるものだと言えよう。
だからこそ回避可能であっても、敢えて “それら” をやらないのである。
それ即ち、“不可視の魔法” や “人避けの魔法” の使用であり、自然の状態の中で露出をすることがユナの矜持であった。
「…まぁ、何よりもまずはクマセットを脱がなくちゃね……」
そう言ってクマセットを脱いだユナだが、こんなにまでなっても羞恥心が無くなることはないようで、地面には置かずに体の前で抱える。
この方が便利と言うか、都合が良い程度の話で、羞恥心が無くなってしまうと何を目的に露出をすればいいのか、楽しみすら一緒に消えることになり、虚無でしかないのだ。
ゆえに羞恥心は残されているだけで、これは首輪の副次効果だと言えよう。
しかしながら “頭隠して尻隠さず” …前は隠せても、後ろから見れば小さく可愛いお尻と綺麗な背中が丸見えである。
それでもクマセットを手にしている今なら、万が一誰か来てもまだどうにかなる。
「…私ったら何をしてるんだろう……」
以前のように体と頭が冷えて平静を取り戻し、露出がいかに愚かな行為だと気づいたのであろうか。
「何を躊躇うって言うの?」
どうやら違ったようである。
「露出をしに来たのだから、さっさと裸を晒さなきゃ」
むしろ自分に鞭打って、背中を押した。
バサっ!
ユナが手を放すと、クマセットは地面へと落下する。
大通りのような喧騒と人流による砂埃はないが、小道には長年溜まったヘドロのような汚れがある。
それをクマセットが吸い、茶色く、黒い色に染められる。
「…この瞬間が堪らないのよねぇ♡」
クマセットは身につければ綺麗に戻る。
それが露出することで再び汚れる。
また綺麗に戻る。
…しかし、たとえ綺麗になっても、汚れたという事実は消えず、何よりユナ自身も染められていく。
一度覚えてしまった感情が簡単に消えることはない。
大切なものを汚す喜び。
それが掛け替えのないクマセットとなれば尚更である。
“破滅” に直結する事として、マゾ心を擽るというものだ。
「…クマセットの上に乗って……」
ユナは、まるで洗濯物を洗うようにクマセットを足で踏む。
しかし実際にやっているのは “より汚す” といった行為。
「あぁ〜♡♡♡」
自身の行為に恍惚の表情を浮かべながら、ユナはその場で足踏みを繰り返す。
「…このくらいで、いいかな?」
白くまが、パンダを通り越して黒くまへ。
誰に確認するでもなく、自分で見切りをつけた。
なぜなら、いくら近づく者が少ないとは言ってもゼロではない。
いつまでもこうしていれば、いずれ誰か来るとも限らないのだ。
「早く終わらせなきゃ、見つかっちゃう♡♡♡ …もんね?」
心のどこかでは期待をしている様子のユナ。
「えーっと、目をつぶって…」
これで誰かが小道に入って来たとしてもすぐには気付けない。
「ガニ股の姿勢で…せっかくだし、手は頭の後ろに組んでっと……」
何がせっかくなのかはさて置き、クマセットを持つまでの時間と一手間が増えた。
「…このまま1分間……ふぅ♡ ふぅ♡ …大丈夫、1分間なんてあっという間よ。カップ麺が3つも作れるもの、そんなタイミングよく誰か来るなんて……」
ガサっ!
「!?(うそっ!? フラグ回収早すぎっ! 誰? 浮浪者???)」
頭の中で思考を巡らすユナ。
けれども、決して目を開けることはない。
それは “どうなってもいい” という諦めや、期待によるものではない。
「………(…ここで目を開けてしまえば初めから……)」
むしろここから打開する策を考えた上でのことだ。
もしも裸で、無様な格好のユナを見つけたとして、いきなり襲ったり攫ったりなど出来る者は少ないだろう。
何が起きてるんだと動揺し、様子を伺い、やっと行動する。
たったの1分。
それが過ぎれば首輪も外れ、クマセットを着ることができ、問題を解決するのは容易である。
今ここで、全裸に首輪の状態のままクマセットを持って逃げるより、幾分も可能性があるわけなのだ。
「………(…まだ外れないの?)」
わざわざ数えなくとも、条件を満たせば勝手に首輪は外れる。
つまりそれが、1分経ったという合図。
「………(…いつもなら一瞬なのに、長い……と言うか、音の主は? 面倒ごとを恐れて逃げ出した???)」
一度物音がして以来、驚きの声も近寄る足音も聞こえない。
「………(いや、この目で確かめるまで安心はできない。もしかしたら目の前に居るなんてことも…)」
魔法の類を使えるのはユナに限った話ではない。
誰だか知らないが、この者が気配を消す魔法を使えたっておかしくはないのだ。
…ゴトっ。
首の辺りが軽くなる。
「………(外れた!)」
首輪が外れた直後のユナは、自己防衛本能が働いているのか、はたまた反動なのか、露出を行う直前より正気を取り戻す。
「………(きっと平気よ、何もされてないし…)」
そう思いながら、ゆっくりと目を開く。
少し先に上下逆さまで転がっている箱を見て、ユナは納得する。
「…やっぱりね、風か何かだったのかしら?」
しかし次の瞬間……。
ガサゴソっ!
箱が動いた。
「!?」
急いでクマセットを持ち上げると、泥汚れも気にせずに着用する。
その途端に元の、白く綺麗なクマセットへと戻る。
「何者っ! 隠れてないで出て来なさいっ!!」
某ダンボールに隠れるゲームキャラのように、箱からユナを覗き見て居ないとも言えない。
「そっちがその気なら、こっちから…」
クマセットを身につけたユナは強気に出れる。
近寄り、箱を持ち上げる。
にゃお〜ん♪
中から飛び出して来たのは、ネコだった。
「あ、ちょっと…」
ネコはそのままどこかへ駆けていき、ユナだけがこの場に残される。
「…残念、覗き魔の変態じゃなかったかぁ……」
最後に、本音が漏れるユナであった。
ーーーーー
そうして何度も何度も首輪を嵌め、裸奴の首輪についての理解を深めているうちに、目覚めた癖も比例するように大きく膨らみ、ユナの日常は露出行為に侵食されていく。
地位や名声、金といった頂点を極めし者の悦であったり、食事や睡眠などの人間の欲であったり、最も思慮されるべき自分という身であったりよりも、“露出” が優先されるのだ。
回数を重ねるにつれ、より強い快感を求め、“条件の難易度” は上がる。
この日もユナは、大通り脇の小道へと足を運んでいた。
「解除条件は…」
慣れた様子で頭に思い浮かべ、首輪を嵌める。
そして次に取る行動はもちろん。
「よいしょっと」
クマセットを脱ぐことである。
成長したユナはもう迷わない。
それを惜しむことなく地面に置いた。
「ふぅ♡ ふぅ♡」
体は火照り、日も沈みかけた夕方だと言うのに寒さは感じない。
「大好きなこのポーズっ♡♡♡」
お決まりにもなったガニ股の姿勢をとる。
「ん〜〜〜っ♡♡♡ すぅすぅして気持ちいいっ♡♡♡」
通り道を見つけた空気がユナの股を通過し、濡れたおマンコを優しく撫でる。
ぶるぶるっ、じょぼぼぼ。
「お"お"っ"」
お股ゆるゆるのユナは、おしっこを漏らす。
もちろんおしっこの向かう先には、地面に落としたクマセットがあり、黄色く染まる。
「はぁ〜 すっきりしたぁ〜〜〜♡♡♡ …じゃあようやく、本番ね!」
ガニ股でおしっこをクマセットにかけることは、条件でも何でもない。
これはただ単にユナがしただけで、言ってしまえば “する必要のないこと” である。
…だからこれで首輪が外れることはなく、本番……つまり解除条件を満たす行為は別にあり、これから行われるのであった。
「…この格好、歩きづらいのよね……」
それは当然で、ガニ股とは歩くための姿勢ではない。
それでも一歩、また一歩とクマセットから距離を取るユナ。
「ふっ、ふっ」
ユナの生命線、この世界で生きて来られたのは他でもないクマセットのおかげ。
クマセットを脱いだユナはごく普通の一般的な女の子。
それに加えて今は裸だ。
こんな状況では言い訳も出来なければ……いや、言い訳をする以前に捕まり、どこかに売り飛ばされる可能性だって捨てきれないし…それを拒むことすら不可能。
そうであるからして、唯一の生き残る術はクマセットを身につけることだが、一度決めた条件は変えられず、着るには少しでも “早く” 条件を達成する必要がある。
「…この姿勢で歩くのは、想像以上に疲れるわね……う〜ん、今で5mと言ったところかしら? …あと20倍。途方もないけど、頑張らなくちゃ♡♡♡」
“クマセットから100m以上離れる”
それが今回の条件。
そうすれば首輪は外れ、クマセットを着ることが出来る。
ただしそれだけではない。
「…普通に歩くでも良かったかなぁ」
一刻の猶予もなく、1秒でも早く首輪を外さなければ、危険が生じる。
…だと言うのに、“全行程をガニ股の姿勢で行わなければならない” のだ。
それが、著しく時間を要する条件であることは言うまでもないだろう。
たとえ小さくとも、1歩で60cmは進める。
それに走れば、1秒で5mは進めるかも知れない。
でもガニ股では、おそらく30cmにも満たないし、まして駆けることなど不可能。
「おっと危ない」
気を抜けばバランスを崩しかねない姿勢。
急かす気持ちがユナを焦らせる。
別に見つかっても…と言うのは興が削がれるだけで、本気で取り組むことに意味がある。
これが露出でなければ、もの凄く格好の良いことだが……よちよち歩きのユナは、ペンギンのように可愛くもなければ、カッコいいより無様で見っともないと言えた。
「ふっ、ふぅ。ふっ、ふぅ…首輪が外れないからまだみたいだけど……」
ユナはクマセットに背を向けて歩いている。
感覚では結構歩いたようだが、実際にどのくらい進んだか、どのくらい離れたかは目視で確認できない。
いいや、“しない” とするのが正しい。
以前のように目を閉じてはいないし、目隠しをしているのでもない。
ちょっと後ろを振り向けば、正確な距離は測れずともある程度の距離を掴むことは可能だ。
…だが、それをしては “つまらない” 。
その一点で、ユナはしないのである。
「右足っ♡ 左足っ♡ 右足っ♡ 左足っ♡ …」
カニ歩きではなく、平面で紙相撲のように左右交互でトコトコと。
「右っ♡ 左っ♡ 右っ♡ ……」
転げないよう確かめ、踏みしめるよう丁寧に。
「急がなきゃ、クマセットが拾われて、盗まれちゃうかもっ♡♡♡」
もしもそうなった時には、すでにユナの痴態は目撃されているわけだが、事態はその何倍も深刻であろう。
持ち去られでもすれば、形こそ違うが結果として100m離れ、首輪は外れる。
社会的に〇ぬのはユナも望むところだとして、同時にクマセットまでもを失うのは再起の芽の摘まれるのと同義だ。
なぜなら無力なユナには、クマセットを取り戻す方法は無いからである。
着れずとも駆けつけて持って逃げること。
それすらを捨てた、まさに背水の形でユナは、クマセットを背にして進む。
「ひふぅ♡ はぁ♡ はぁ♡ ほっ♡(もうすぐかな? まだまだかな? あとちょっと?)」
そうして歩みを止めず、少しずつだが着実に。
…ゴトっ。
「外れたっ!」
首輪が取れれば一時的にだが、ユナの意識はハッキリとする。
振り返り、一目散にクマセットの元へと駆け寄る。
「良かったぁ〜」
驚くかも知れないが、この言葉に嘘はない。
大切なモノを失う緊張から解き放たれた者の普通の反応である。
少しも残念な思いが無いというわけじゃないが、これもまた本心なのだ。
急ぎクマセットを身につける。
おしっこの黄ばみは取れ、ユナ自身もスッキリと晴れた表情を見せた。
「あ〜楽しかったぁ〜 お腹も減ったし、何か食べて帰ろーっと」
ーーー
露出とは案外、体力とカロリーを使うものらしい。
「カルビ、豚トロ。あ、ホルモンもお願い」
バクバク、バクバク。
見た目にそぐわぬ大食漢。
その栄養がどこに消えるのか。
なぜ胸にいかないのか。
それはこの世界の三大ミステリー。
「食べたぁ〜 …さて、どうするか」
ここに来る前に言っていた通りであるならば、何か食べて “帰る” のではなかろうか。
それなのに、どうするとは一体。
お腹が満たされて “満足” とすれば……。
しかし、逆に気が変わったとすれば何をするか。
そう、“腹ごなし” だ。
露出をしてお腹を減らし、食べて回復する。
そしたら食後の運動にまた露出。
まさに永久機関の完成だと言えよう。
…とは言え、食後に移動するのも億劫であるし、何よりすぐに露出をしたい。
そのためお気に入りの小道には行かず、食事処が多く点在している繁華街のここ、夜のダウンタウンで始まるのであった。
「この時間は、多くの人が呑んでる。従って外に居る人は少ないし、もし居ても酔ってる人ばかりで、露出には適してるわね」
何が適していると言うのだろうか。
全く居ない、もしくは可能性が低いならまだしも、居ることが分かった上で酔っているからOKなのは意味が不明だ。
これはユナも酔っているのだと考えるのが当たり前の流れだが、それは違う。
ユナはシラフであり、本気で適していると思っている。
「裸の女の子が居たって、夢・幻くらいにしか…」
これがユナの思想なのだ。
たしかに、いきなり全裸の女の子が現れたって信じがたいことなのは否定しない。
けれども、この出来事で酔いが醒めないとも限らないし、ユナと同じシラフだって居ても不思議でない。
「まぁバレても、クマセットがあれば隠蔽工作もお手のもの。夕食の後だけど、朝飯前ってね!」
いつだって余裕な素ぶりを見せるのは、クマセットの力を使えば “記憶を消したり・弄ったり” なんて簡単だからでもある。
生まれ落ちてからの約5年間、“色々なこと” をしたけどクマセットが失われることは無かった。
なのでユナには、“まさかクマセットが…なんてことあり得ない” と、根拠のない自信と慢心が生まれていたのだ。
「人の数はちらほらって感じ…とは言え、まだ私を見ている人は居ない……」
クマセットを身につけていれば目立ちもしそうだが、みな目的があって来ているため、あまり注目を浴びてはいない様子。
「ただそれもこの時点まで…この場の主役は私……」
首輪を取り出し、嵌める。
「………(…前回よりも “長く” 、より “困難” で、より “無様” に、“破滅を願って” ……)」
裸奴の首輪は、ユナの首にガチリと固定された。
ゾクゾクっ。
体が震え、始まりを伝える。
「あぁんっ♡♡♡」
クマセットに手を掛け、慣れた手つきで脱ぎ捨てる。
「そしたら…」
クマセットの上に、ガニ股で立つ。
「すぅーっ」
大きく息を吸う。
「皆さんこんばんわ!」
身を潜めるどころか、大々的に宣言する。
「クマの少女ユナですっ!!」
その、ユナをクマたらしめるクマセットは足元にあるのみで、今のユナはただ裸なだけの女の子である。
「貧乳でっ/// パイパンのっ/// 痴女で〜すっ///」
全力で自己紹介をする。
「ガニ股で腰振ってぇ〜 ダブルピースっ♡♡♡」
クマセットの上で無様に踊る。
「これから露出しちゃいま〜すっ♡♡♡」
すでに肌を晒して世間的には露出していると言えるが、ユナにしてみれば裸になる程度では足りないのだろう。
「いぇ〜い♡♡♡ ぴ〜す♡♡♡ ぴ〜っす♡♡♡」
ガニ股ダブルピース行脚の開始である。
「ユナが通りまーすっ♡♡♡」
四股を踏む感じで右足、左足とガニ股を動かす。
「あははぁ〜♡♡♡ 夜風が気持ちいぃ〜♡♡♡」
裸で、夜の街を闊歩する。
「濡れりゅぅぅぅぅうう♡♡♡」
通った後に、跡が残る。
それはキレイな一直線ではなく、左右に揺れてジグザグの水跡。
「ユナちゃんが通りま〜すっ♡♡♡」
ここまで派手にやっているのだから、流石に注目を浴び始める。
それでも増える視線は徐々にであり、それも遠巻きにだけである。
「………(…もっと近くで見てもいいのに……)」
皆、食事に来たのだ。
これを肴にお酒の呑むでも無ければ、関わらないに越したことはない。
変に巻き込まれて、重要参考人になんてなれば時間を取られ兼ねず、ゆっくりと食事出来なくなってしまう。
…だからこそ人が多くとも、目的のあるこの地での露出行為が “適している” と言うのは、あながち間違えでも無かったのかも知れない。
「…まぁいいわ。私は私のやるべきことをやるだけ……」
そう言って、行脚を続ける。
「そうだ、“これ” を忘れてた!」
手を首の後ろに回す。
首輪から垂れている “何か” を手に持ち、頭の後ろを通して顔の前へ。
「ふぐっ♡♡♡ ぶひっ♡♡♡」
取り付けられたのは、他でもない “鼻フック” 。
裸奴の首輪と鼻とを結び、止められている。
「ぶひぃぃぃ♡♡♡」
ノロノロのユナとお似合いのブタ面。
一瞬にして可愛い顔が台無しになる。
「ふごぉぉぉぉおおおお♡♡♡」
興奮のあまり、酷く汚い声を上げたユナ。
さすがに何事かと振り向く人も居るが、痴女だと分かると侮蔑した視線を送るに留まり、長く目を合わせようとする者はいない。
「〜〜〜〜っ♡♡♡」
それでもユナは、その侮蔑すら興奮材料に変え、楽しむことが出来た。
「ふごっ♡♡♡ ふぐっ♡♡♡ ぶひっ♡♡♡ ごごっ♡♡♡」
一歩進むたびに豚声が漏れる。
「ぶひひん♡♡♡ ふごごごっ♡♡♡」
昼間よりも “長い” 、300m。
「元クマの少女、現ブタの少女ユナぶぅ♡♡♡」
30分以上かけ、ようやくその距離に辿り着く。
「ひぎゅぅ♡♡♡」
首輪が軽く締まり、条件を達成したことを知らせる。
「…あら、思ったより近かったな……」
夕方とは打って変わって物足りなさそうなユナ。
それは隠れながらのドキドキと見られる前提の興奮との違いであり、それは早くしなければならなかった夕方とゆっくり楽しめる夜との違いである。
「…あ、でもまだ残ってるんだった……」
条件を達成した知らせが、首輪が “外れる” では無く “締まる” のは複数の達成条件がある事を示している。
首輪が外れるのは、それら全ての条件が達成された時であり、ユナの言葉通り “まだ残ってる” という事なのだ。
「…クマセットはどうなってるかな?」
振り返り、クマセットの方に向き直る。
「…300mって結構な距離ね」
クマセットは遠くに小さく見えるだけで、誰かが持ち去ろうとしても届きそうにない距離にある。
「…え、まさか!?」
そのまさか、クマセットに近づく人影があるではないか。
「…う、でも……」
前述のように、このまま駆け寄っても間に合わない。
それに “まだ途中” なのだ。
クマセットを着ることは叶わず、最初からやり直し。
再び “自己紹介” と “300mのガニ股進行” をしなければならない。
「…ん? 何か様子が???」
クマセットに近づく人の影。
距離に加えて、暗くてはっきりとは分からないが、シルエットからすれば女性のそれは、ヨロヨロとおぼつかない足取りである。
「…拾いに来たって感じではない、よね?」
予想は的中し、女性は単なる酔っ払いで、泥棒というわけでは無かった。
ただしその後の行動は、予想外も付かないものであった。
「…あ、クマセットが……」
オエェェェエエエエ、ゲロゲロゲロ……。
「……うっ…」
“もらい” そうなほど豪快に、ここまで聞こえる嗚咽音。
何を勘違いしたか、女性はクマセットに吐いていた。
「あはは、あれじゃゴミじゃない」
ユナはクマセットを貶める。
「私だってゲロを掛けたことは無いのに…」
踏んで泥まみれにしたり、おしっこをかけたりしたことのあるユナだが、吐瀉物で汚したことは無かった。
それどころか自分の意思とは無関係に、それも見ず知らずの他人にというのも初めてである。
「手の届かない状況で、勝手に汚されるってのも悪く無いかもぉ♡♡♡」
新たな扉を開くユナ。
オロオロオロ…。
どんだけ呑んだのか、女性は2度、3度と吐いた。
「いいわぁ♡♡♡ もっと汚してぇ〜♡♡♡」
しかしユナは、止めに入るどころか懇願する次第である。
「ゲロクマセット♡♡♡ 雑巾よりも酷い、ゴミクマセット♡♡♡ ゴミは廃棄しなくちゃね♡♡♡」
大切なはずのクマセットを廃棄物とみなし、消失を願い、祈る。
「そのまま片付けちゃってもっ♡♡♡」
ゲロまみれのクマセットを女性が捨てることを望む。
「………(お願いしますっ♡♡♡)」
クマセットに向けて “裸で土下座” をする。
「ユナはクマじゃなくてブタだからぁ♡♡♡ それは必要ありましぇん♡♡♡ ユナのクマセットではないしぃ♡♡♡ 道端に落ちてるエチケット袋でしゅ♡♡♡」
ユナが、クマセットの “廃棄宣言” を済ますと……。
ゴトっ。
その途端、裸奴の首輪が外れる。
「!? クマセットっ!!!」
急いで頭を上げるが、そこに女性の姿は無く、クマセットも消えていた。
「あはは、あひゃひゃひゃ♡♡♡」
願い、祈った望みが叶った、人生最高の瞬間であった。
〜 完 〜
ーーー ハッピーエンド好きに向けた追加の小話。
クマセットは神様から与えられた最強アイテムであり、燃やしても何しても、物理的に消えて無くなることはない。
それどころか、1年もすれば手元に戻ってくるという特別仕様付きである。
ただ、“クマセットを失う=実質的なユナの死” だと思っていたから、今まで試したことが無かったため知らなかったのだ。
あの夜にクマセットを失ったユナは、それでも止めることは出来ずに裸奴の首輪を使って露出する日々を続けていた。
これ以上に失うものは無いと、今までよりも過激で、人目も気にせず露出をしたことで、ユナは変態痴女で有名になった。
そんなある日、手元へボロボロになったクマセットが戻って来たことで “真相” を知ることになる。
言ってしまえば、“時間が解決してくれる” 。
手元に戻って来たクマセットを使って、ユナは人々から記憶を消した。
そんなリセットされたこの世界で、ユナは懲りずに露出をする。
そうして人知れず、露出と破滅を繰り返すのであった。
〜 完 〜