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【skeb】クマさん、“わざと”少女に負けて“低脳雌豚クマ”になる

※ 同じく主人公の名前が “ユナ” の作品もありますが、あちらはよく似たオリジナルで、こちらは『くまクマ熊ベアー』の二次作品です。

※ リクエストにて作品名が明記されていたため、読者の方にはあまり関係ないかも知れないですが、一応扱いが異なりますので、一筆。

※ 世界観やキャラ設定などは “大まかには” 準拠しているつもりですが、内容が内容ですし、そういう “ネタ” ですので、キャラ崩壊に対する意見等はご勘弁ください。

※ ちなみに、私はこの作品を書くにあたって原作(web版)を590話まで読みました。


ーーーーー 以下、本編です ーーーーー


少女の名前はユナ。

 ひょんなことからこの世界に飛ばされてきた “クマの少女” である。


 …と言うのも、気がついた時には “クマの着ぐるみ(クマセット)” だけを身につけ、ひとり森の中。

 後から分かったのは、これが所謂 “転生特典” のチート装備だったと言うことだけだ。


 そしてクマが森で出会うのは、昔から女の子と相場が決まっており、ユナもフィナと出会った。


「…懐かしいなぁ〜 あの時ユナお姉ちゃんが助けてくれたらわたし、ウルフに……」

「あ、うん、そうだね。間に合ってよかったよ」


 いつもであれば何よりもフィナを優先するユナが、この日は “上の空” で話を聞いている。


「(…昨日も国王様からの依頼でお仕事してたみたいだし、ユナお姉ちゃんだって疲れてるよね……)…あっ! そう言えば、お母さんから用事を頼まれてたんだった……」

「フィナが何かを忘れるなんて珍しいね、わたしで良ければ付き合うけど?」


 気を利かせるフィナに対して、普段に増して鈍感な “様子” のユナ。


「(…本当は頼まれた用事なんて無いし……)ありがとう、でも大丈夫だよ!」

「そう?」

「…うん。それじゃあ帰るね!」


 そうしてユナは、ひとりクマハウスに残される。


「……何やってんだろ、わたし」


 自身がおかしな事は、自分でも気づいていた。

 しかし気づいてたとしても、それを何事も無いように装えるほど、ユナは器用じゃない。

 もしもそうであれば先ほどのフィナとのやり取りだって、もっと上手くやり過ごせたに違いない。


「このままフィナに心配をかけ続けるのは…」


 誤魔化したり、隠したり出来ないなら、“問題を解決する他ない” 。


「何が問題かは分かってる。でも解決するには、この街(クリモニア)じゃ無理だよね…」


 ユナの抱える問題を簡単に言い表すならば、それは “欲求” である。

 誰しもが持つ “睡眠・食事” 、そして “性” の3大欲求。

 何もなければ昼まで寝て、各地で食材を漁って過ごすユナは、そのうちの2つをこれでもかと貪っていた。

 けれども、こと “性欲” に関しては、およそ皆無だ。


「わたしの性癖…」


 そしてこの原因は、ユナの癖が大きく影響していた。


「自分でも思うけど、ほんと馬鹿げてるよね…」


 この世界に来てからというもの “敗北” を知らず、生意気な相手は “屈服” させてきたユナが、今度は “自身がそうなることを望む” ようになっていたのである。


「近くで負けて、変な噂が広がるのはマズい…」


 この辺りで “クマの少女” と言えば、ユナ以外には存在しない。

 いや、この辺りでなくても…という話はさて置き、あまりにも有名で目立ちすぎるのだ。


「フィナに心配をかけないためなのに、わたしが危険なことをしてるって知られたら本末転倒だよね…」


 ユナは “クマの転移門” を使い、“タールグイ” の上に出る。

 クマの転移門とは、設置した門と門を繋ぎ、行き来できる門である。

 そしてタールグイとは、海を移動している島ほどの大きさをした生物である。


「どこか手頃な、わたしも(を)知らない大陸は…」


 タールグイがいつどこを移動しているか、それはユナにも分からない。

 それでも海を移動している分、陸を行くより遠くに行ける。

 故にユナの(を)知らない場所へ行くのも、この方法を用いれば比較的に楽なのだ。


「お、何か見える! 地図にマッピングされて無いし、新しい大陸だ!! これは幸先がいいねっ!!!」


 ユナの持つ “クマの地図” は、ユナが見た場所を地図として自動で記録する。

 そのため地図が存在しなかったり、更新されたりしていれば、そこは訪れたことのない場所である。


「さっそく上陸して…」


 ユナは “クマの水上歩行” と “クマの水中遊泳” のスキルを駆使して、タールグイから新大陸へと海を渡る。


「あまり目立ちたく無いし、これは “わたしの身勝手な遊び” だから……フィナもそうだけど、“くまゆる” と “くまきゅう” だって巻き込むわけには…」


 くまゆるとくまきゅうは、黒と白の色をしたクマの召喚獣である。

 ただでさえクマの着ぐるみは人目を引くというのに、そんな格好のユナがクマに乗って現れたら一大事だし、何より迷惑を掛けたくないという思いがあった。


「ひとまず、街を探さなきゃ…」


 ユナは自分の足で歩き出した。


……………

………


 いくつかの村を越え、しばらくすると少し大きめな街が見える。


「うん。あそこにしよう」


 目的の地を定め、ユナが近づく。


「そこの…クマ!? 止まれ……って、言葉は通じるよな???」


 すると門兵が、ユナを止める。


「お疲れさま、街に入れる?」


 別に争うつもりも無いし、面倒ごとを起こすつもりも無いので素直に従い、そして訪ねた。


「…取り敢えず、身分証を……判断はそれからだ」


 住民カードやギルドカードなど、それがこの世界での身分証だ。


「持ってない場合はどうすれば?(本当は持ってるけど、“遊びのため” には見せられない)」

「………」

「カードがない場所で暮らしてたのよ」

「今時そんなことは…」

「あり得ない?」

「いや、無いことも無いが…珍しいな」

「…で、ダメかな?」

「まず第一に、通行税を支払う。そして第二に、犯罪経歴がなければ問題ない」

「… “水晶板” ?」

「話が早くて助かる」


 水晶板は魔力を通すことで、その者の情報を知ることのできるアイテムである。

 この世界の水晶板は繋がっており、一度登録された情報はどの水晶板からでも可能だ。

 これにより犯罪経歴を調べるわけだけだが……。


「…反応しないね?」

「まぁそうだよな。カードも持っていない者には無意味か」


 いずれのカードも等しく、水晶板と同じ個人の魔力と結び付いて登録される。

 カードを持っていないという事は水晶板にも登録されておらず、であれば検索にヒットしないのである。


「…とは言え、これで登録がされた。すると疑うわけじゃないが、何も起こさないでくれよ?」

「善処するよ(…先に謝っておくけど、ごめん。たぶん無理……)もう行っていい?」

「ああ、通って良いぞ。ようこそ『ラフィン』へ」


 街の様子は落ち着いており、雰囲気としても悪くない。

 中央の広場には噴水があり、露店も多く出ている。

 少し高台になった丘の上には立派な屋敷が立ち、おそらく領主の家だろう。


「…活気はあるが、それでいて騒がしいわけでもない。いい街だ」


 そんなことを考えながら軽く散策をした後、宿を確保してから冒険者ギルドへと向かう。


「くま?」

「クマ?」

「熊?」

「ベアー?」


 冒険者ギルドに入ると、何度目かの洗礼を受けたが…。


「あの〜。冒険者登録をしたいんだけど、お願いできる?」


 もう慣れっ子のユナは、周りの反応を無視して受付のお姉さんに話しかける。


「…え〜っと、お嬢ちゃん? 冒険者への依頼じゃ無くて???」

「うん、冒険者登録!」


ーーー


 えっ、わたしはもう冒険者だろって?

 確かにわたしは冒険者だ、それもCランクの…。

 自身で言うのもなんだけど、実際のところBランクやAランクにも匹敵し、凌駕すると思う。


 ただしそれは、ひとえに “クマセットのお陰” だ。


 カードが身分証であり、偽造できないのは、先ほどの説明の通りで “登録された魔力” を元にしているからである。

 …であれば、2度目の冒険者登録も……街に入る際の水晶板も………。


 もう一度言うが、わたしの力は “クマセットに由来する” 。


 クマセット無しでは、基本的な魔法すら使えないのだ。

 しかし、“魔力を持っている事” と “魔法が使える事” は同義ではない。

 皆がカードや水晶板に登録できるわけだから、魔力に関しては誰もが持っていると言えよう。


 そこでだ。

 クマセットが杖や宝石、ペンダントのように魔力を高めたり、魔法を使うための補助具だったりするだが…。

 その結論としては、“ノー” である。

 “わたしの魔力” と “クマの魔力” は完全に分離しており、わたしの中には “2つの魔力が存在している” のだ。


 ゆえにわたしは、二重にカードを作れるのである。


ーーー


「………(…随分と時間を取られた。まぁ9割以上がこの格好のせいで、残りは年齢かな……)」


 こうして正体不明の “新人” 冒険者の身分を手にしたユナは、この街について調べながらクエストをこなす日々を送るのだった。


……………

………


 そんなある日のことである。

 日課としてる冒険者ギルドでクエストを探している最中。

 待ちに待ったイベントが発生した。


「あなたが最近この街に来たという噂の冒険者?」


 ユナの目の前には、煌びやかな装備で身を固め、ふんぞり返って…そり返り過ぎていて逆に見上げているような……いかにも偉そうな美しい少女が立っていた。


「…噂が何かは知らないけど、どうしたの? ここは子どもが遊びに来る場所じゃないよ?」


 どの口がそれを言うのか。


「あなただって子どもみたいじゃない!」


 ごもっともである。


「わたしは冒険者だから…」


 その言葉を遮るように、少女が口を開く。


「この街で私のことを知らないの?」


 わたし達…いや、少女を中心として周辺の冒険者らは捌けており、こんなにも目立つ状況だと言うのに関わりたくないのか目を背ける受付のお姉さん方……。


「ここに来てから日が浅いからね、知らないかな」

「…そう、無知とは罪ね……」


 たとえ知らずとも、国王に無礼を働けば裁かれる。

 それと同じで “この少女が誰か” を知れば、ユナの態度は罰せられても文句は言えない。


 それも “本当は知っているのに” 、“知らぬと嘘までついて” となれば逃れられない。


「………(…彼女は、この街のことを少しでも探れば “一番に名前が上がる人物” ……)」

「私の名前は “エナ・ラフィン” 。もう分かったと思うけど、父はこの街の領主よっ!」


 そう、彼女は街の名の由来にもなっている “ラフィン家の娘” なのだ。


「………(おぉ! 家や親の力を振りかざすお嬢様……これこそ求めていたテンプレお嬢様だよ♪)」

「…あら、驚いて声も出ない様子ね?」

「驚き? 驚喜はしてるけど、驚怖はしてないよ……それで、領主の娘が何の用? 興味本位で話し掛けたの? それとも依頼?」


 素性を明かされてなお、挑発するようにユナは言葉を発する。


「これだから出自の不明な田舎者は…まるで言葉遣いが “なってない” わ……それに、私も冒険者よ? この格好を見て分からないとは、とんだ素人ねっ!」


 それも事前に調べてあるので、もちろん知っている。

 エナは確かにDランクの冒険者である。

 辺境では24時間護衛を雇うもの大変で、むしろ余程のことがない限り大事は起きないので、身分の高い者でも最低限は自分の身を自分で守れるよう鍛えている場合も多い。


 それにエナは女だ。

 一人娘ゆえに街を継ぐことになるだろうが、その際に多少の反発は避けられないだろう。

 そのため、強く在らねばならない。

 およそDランクともなれば辺鄙な街では最強で、街の人をまとめるには十分である。


 しかしこれは、言い換えれるならば “誰も逆らうことは出来ない” 恐怖政治だ。

 エナがこんな風に横暴な性格へと成長するのは、仕方のないことかも知れない。


「…まったく、“なってない” のは親の教育だね!」


 事実であろうと、こればかりは許されない。


「ふざけた格好の、低ランク冒険者が…」


 クマの格好をバカにし、ユナのことをなめるエナ。


「格好が問題なの? わたしが “勝ったら” 問題ない?」

「…まさか、それは “決闘の申し込み” じゃ無いわよね?」


 これまでもユナは、掛かってくる生意気な冒険者を実力で黙らせてきた。

 それに驕り高ぶっている子どもを分らせるには、言葉よりも体験の方が効果的だと “王都の学生護衛任務” で経験済みだ。


「それ以外の意味に聞こえるの?」

「本当に無知は…相手の実力も測れないなんて……いいわ、相手をしてあげる」


 どこまでも上から目線のエナ。


「………(そっくりそのまま返してあげたいけど… “今回は” ……)」


 エナが目線を送ると、我関せずであった受付のお姉さんがそそくさと寄ってきて、奥の訓練場へと案内する。


「ルールはどうする? 素手? 武器あり? 魔法は?」

「何でも良いよ」


 エナが尋ね、ユナが答える。


「…そう。あとで文句は言わないでよね?」

「もちろん」

「言っとくけど、手加減はしないから…」

「望むところ。だけどわたしが勝ったら……」

「何でも言うこと聞いてあげる」

「二言は?」

「あるわけ無いでしょ? この私が負けるなんてあり得ないし、この街なら自由が効くから何を望んでも平気よ。その代わりあなたが負ければ…」

「同じで良いよ。奴隷にでも何でもなってあげる」

「…あはは、言ったわね?」

「うん」

「後悔させてあげる」


 ここまで案内してくれた受付のお姉さんを見届け人として、決闘が始まる。


「来なよ、いつでもいいから…」

「そこまで言うなら、望み通り…終わらせてあげるわっ!」


 エナが踏み込み、一瞬にして距離を詰め、そして一撃。


ドゴーーーン!!!


 エナの攻撃を正面から受けたユナが吹っ飛び、勢いよく壁にぶつかる。


『『『 なんだなんだ 』』』


 音に引き寄せされ、人が集まってくる。


「………(来た来たっ♡ 観客が少なくて寂しかったんだよねぇ♡♡ これくらい集まれば、十分っ♡♡♡)」


 今こそ “目的” を果たす時……思い返せばユナの目的とは “負けて、屈服すること” だった。


「ご、ごごごごめんなさい」

「…は?」

「負けです、わたしの負けです」

「………」

「痛い、怖い、もう止めて」


 ユナは大衆の前で負けを認める。


『なんだあいつ、大口を叩いてたくせに…』

『まぁ、あのエナ様が相手だし…』

『新米冒険者が噛み付くから…』

『あいつの人生、終わったな』

『人生? クマ生じゃない?』

『じゃあクマ狩りか!』

『『『 www 』』』


 ユナの惨めな姿を見て、思い思いのことを口にする者たち。


「………(…これが嘲笑されるってことね……んんっ♡ 初めての感覚っ♡♡ 興奮するっ♡♡♡)」

「初めから分かっていたけど拍子抜けね。そんなんで強がっていたなんて、かわいそうにも思えてしまうわ」


 ユナは同情を求めているわけじゃない。


「… “約束通り” ……」


 そこで自ら、“負けた時の条件” に関する話を持ち出す。


「ええ、“あなたの権利” を頂くわ」

「…権利?」

「そう、権利よ。たとえば “服を着る権利” だとか、“名前を決める権利” だとか」

「……名前を…決める?」

「ちょうど良いし、まずはそれから…」


 ユナからギルドカードを取り上げると、エナが受付のお姉さんに耳打ちをする。

 これまでも幾度となく繰り返されてきたのであろう。

 お姉さんはエナからギルドカードを受け取ると、慣れた様子で作業を済ませ、エナにそれを戻した。


「ほら、どうぞ」


 ユナにギルドカードが返される。


「… “雑魚ユナ” っ!?」


 名前の欄が変更されている。


「あなたの名前は今日から雑魚ユナ。それと職業も変えておいてあげたわ♪」

「…て、“低脳雌豚クマ”(っ♡♡♡)」

「カードは一人一枚。詐称も出来ないから、これからは雑魚ユナとして過ごすのよ♪」

「…そ、そんなぁ(なんて惨めなのっ♡♡♡ これが敗者に与えられる褒美…ではなく屈辱っ♡♡♡)」


 雑魚ユナの “口で言っている事” と “頭で考えている事” とが、まるで一致していない。


「だけど私は人の上に立つ者だし、心優しいから雑魚ユナにはチャンスをあげるわ♪」

「…チャンス?」

「決闘で失った権利は、決闘で返してあげる♪」


 チャンスとは言うが、今の状況を見れば無理難題であると分かる。

 これは “自分よりも美しい女性やかわいい女性を踏みにじることが好き” なエナにとって、“新しく手に入れたおもちゃを使った遊び” …言ってしまえば “趣味” なのだ。


 そして雑魚ユナは、エナのこの趣味を知っている。

 受付のお姉さんが手慣れていたように、この街では有名だからだ。

 雑魚ユナにだって、負ける相手を選ぶ権利くらいはある。

 むしろ選べるだけの実力があり、負けるつもりが無ければ、負けない。


 エナの(無)慈悲に報いるように、雑魚ユナは感謝を述べる。


「チャンスを与えてくださって、ありがとうございますっ!」

「…あら、急に態度を改めて……良い心がけだけど、私と両親への非礼は忘れないわ。皆が見る前で、土下座して詫びなさい! もちろん、は・だ・か でね♪」


 エナの見下すような笑顔での要求。


「………(……人前じゃなくてもクマセットを脱ぐのは抵抗があるのに、大勢が見てる前で、わたし…)」


 観衆の期待と軽蔑する視線の中。


「…わかりました」


 クマセットを脱ぎ、素肌を晒す。


「エナ様と、ラフィン家に謝罪致しますっ! 大変申し訳ありませんでしたっ!!」


 正座をし、それから両手を前について、最後に額が地面に接触するように全身を倒す。

 雑魚ユナは生まれて初めて、全裸で土下座をした。


「あははは、お似合いの姿ねっ♪」

「はい、わたしは調子に乗って冒険者の名を貶めただけの雑魚です」

「そうよ、雑魚ユナ。その “ふざけたクマの低脳衣装” 、同じ冒険者として恥ずかしいわww まぁ今思えば、あなたという雑魚にはぴったりかも知れないけれど?」

「お、おっしゃる通りです(…と、年下の子に頭を踏まれながら侮辱されてるっ♡♡♡)」

「あらやだ、あんたの頭なんか踏んだら靴が汚れちゃったわ」


 そう言うと、今度は隣に落ちているクマセットを踏みつける。


「なかなか綺麗にならないわ、やはり汚い布で拭いてもダメねww」


 大切なクマセットを足蹴にされ、勝手に散々な扱いをされた挙句、使い物にならないと烙印を押される。


「………(…あぁ♡ わたしのクマセットがっ♡♡ ……エナにして正解だったぁ♡♡♡)」


 そうだと言うのに、雑魚ユナの心に悔しさは無く、幸せで満ち溢れているのだった。


ーーーーー


 その日のうちに雑魚ユナの敗北は広まり、街を歩けばすぐに衆目を集める。

 しかしそれはクマセットを着ていた時もであったが、今ばかりはその不思議なものを見る奇異の目とは違い、“嘲笑の対象として” である。


「………(わたしをバカにし、あざ笑う声が聞こえるっ♡♡♡ きっとみんなからは、“無謀にもエナへ喧嘩を売った愚か者” に見えてるんだろうなぁ♡♡♡ 考えただけでゾクゾクしちゃうっ♡♡♡)」


 雑魚ユナがゾクゾクと体を震わせる理由は、興奮によるものだけでは無かった。

 雑魚ユナは今、クマセット…もとい服を着ていないのだ。


「………(…この街なら自由が効くって、本当に何でもアリなのね……)」


 エナが決闘の際に言っていたが、その言葉通り “裸なのに捕まらない” のは、これがエナないしラフィン家の力なのだろう。


「………(…うぅ、早々に “服を着る権利” を奪ってくるとは……っ♡♡♡)」


 こうも街中に広まっているのは、あの決闘後すぐにギルドを出なかったからである。


「…か、勝てば権利を返して貰えるんですよね?」

「ええ、その通りよ♪」

「な、ならもう一度…」

「はぁ? 今ぁ? 正気なの? 勝負にすらならなかったのを忘れたの?」

「………」

「…呆れる、低脳にも程があるわよ」

「………(低脳っ♡♡♡)」


 そうして再戦し、見事なまでにあっさりと負けてみせた。


「勝ったら権利を返すと言ったけど、負けてペナルティがないとは言ってないわ♪」


 完全に後出しだが、雑魚ユナは喜んで従う。


「追加で権利を貰うわね♪」

「…はぃ(差し上げますっ♡♡♡)」

「そうねぇww 分かりやすく “服を着る権利” を頂くわ♪ これで雑魚ユナはエナのだって伝わるし…」


 つまりラフィンの街で裸なのは、エナの所有物だという証らしい。

 こうして雑魚ユナの敗北の件が広まるまでの時間と、この街での暗黙の了解とが重なり、雑魚ユナは裸で許されているのだった。


ーーーーー


「今日もお願いしますっ!」


 雑魚ユナは権利を取り返すという名目で、毎日のように決闘を申し込んだ。


「…ま、負けましたぁ(っ♡♡♡)」


 そして毎回、決まって一撃で敗れる。


「学習しない雌クマでごめんなさぃ(っ♡♡♡)」


 敗北の度に全裸で土下座し、許しを乞うと共に権利を奪われる。


「私は優しいから(…本当は何度も楽しむためだけど……)、それはインクよ♪ 自然に落ちるまで、水浴びも禁止ねっ♪」


 この日は “体への装飾の権利” を失った。

 そんな権利があるのかと問われれば、そもそも服を着るのに権利なんて不要なのだから、これは不毛な話だ。

 ただ “こう言えば” 何をしても構わないという、いわば口実を作っているに過ぎないのだ。


……………

………


「………(……体への装飾って…つまりは “卑猥な落書き” じゃないっ♡♡♡)」


 エナによって全身を “文字” や “図” で埋め尽くされた雑魚ユナは、家に帰るために街を歩く。


『…低脳雌豚クマ……』

『…エナ様のペット……』

『…変態……』

『…公衆便女……』

『…×クマ ⚪︎ブタ……』

『…貧乳……』

『…雑魚ユナ……』

『…また負けました……』

『…♀……』

『…痴女……』


 すれ違う度、目をした人たちが落書きの内容を口々に漏らしている。


「………(…恥ずかしぃ/// ……けど、濡れりゅぅ♡♡♡)」


 雑魚ユナが歩いた後に跡が残り、家までの道しるべが出来ていた。


ーーーーー


「今日も! …負けました!! ……ごめんなさい!!!」


 これぞ美しき三段活用(※ 違う)。


「そしたら “直立で立つ権利” を頂くわ♪」

「…伏せれば良いのでしょうか?」

「負け犬らしく四つん這いも素晴らしいけど、足を曲げて腰を落とした “ガニ股の姿勢” で過ごしなさい♪」

「へこっ、へこへこっ」


 慣れない姿勢でバランスが取れず、前後に振って何とか重心を整える雑魚ユナ。


「ぷははっww みっともない姿ね♪ でも雑魚ユナには、足腰が鍛えられて一石二鳥じゃない? 感謝してよねwww」

「あ、ありがとうございます(っ♡♡♡)」


 踵を上げた爪先立ちで、右、左と街を歩く。


『…あの子、今日も負けたのね……』

『…落書きもまだ残ったままなのに……』

『…臭うからこの道を通らないで欲しいわ……』


 今日で約3日目、水浴びを禁止されている雑魚ユナの体からは悪臭が放たれている。


「………(自然に落ちなきゃだからタオルで拭くことも出来ないのよね……痒いし、臭いし、わたしだってどうにかしたいけど、これがエナ様の命令だし…んんんっ♡♡♡)」


 ガニ股を強制されているため走って通り抜けることも出来ず、ゆっくりと臭いを撒き散らしながら進むしかない。


『…それにしても変な歩き方……』

『…2歳のうちの子でも、もっと上手に歩けるのに……』

『…ああなったらもう終わりね……』


 何故そんなにもヨチヨチとしているのか。

 その原因はガニ股だけでは無かった。

 この世界に来る前の雑魚ユナは家に引きこもっており、この世界に来てからも自分の身は鍛えておらず、クマセットを着ていなければ普通の女の子以下の体力や筋力しかないからである。


「かくかくっ、がくがくがくっ(…これ、思ったよりキツい……)」


 腰を落とすだけならまだしも、その状態で歩くのはしんどい。


「………(…周りからの視線も痛いしっ♡♡♡ 早く帰りたいけど……)」


 頭でいくら考えても、体が動かないのでは仕方ない。


「………(……回復するまで少し休むか…)」


 そう思って座り込んだが最後、雑魚ユナの意識はついに消えた。


……………

………


『おい、雑魚ユナが倒れてるぞ!』

『お母さんから近づくなって…』

『寝てるし、平気だろ!』


 ふと気を抜いた瞬間、体力の限界を迎えていた雑魚ユナの意識は落ちたのだ。


『イタズラしてやろうぜ!』

『エナ様の…でしょ?』

『バレないって!』


 子どもたちがどこからかペンを取り出す。


『バカ・アホ・ドジ・マヌケww』

『なんか在り来たりでつまんないね…』

『なら、お前が書けよ!』

『う〜ん。あっ! クマっ!!』

『クマ?』

『クマの服を着てたの見たことある』

『俺もある!』


 そう言うと、雑魚ユナの体にクマの顔を描いていく。


『できたっ!』

『すっげぇダサい』

『そう? 意外と可愛くない???』

『オレには分からん。てか起きないうちに逃げるぞ!』

『う、うん』


 描かれているのがお腹でなければ…あるいは、こんな状況でもなければ微笑ましいかも知れない。


「ん、んん…わたし、寝てた?」


 寝ている間の出来事などつゆも知らず、雑魚ユナは帰りを急いで歩き出す。


『…ぷふふっ……』

『…何あれww……』


 軽蔑の目を向けられるのでなく、笑いが起きている。


「………(…どうしたんだろう? まぁこの姿を見て笑うのも分からないでもないけど、冷笑というより失笑に感じられるのは……おかしくない???)」


 雑魚ユナは、まさか自分が “腹踊り” をしているなどとは思っていない。

 腰が振れる度、お腹のクマの絵が動く。


 この事実に雑魚ユナが気づいたのは、家に帰って鏡を見てからであった。


ーーーーー


 そして次の日。


「あひゃひゃひゃ、私を笑い倒すつもり?」


 当然エナにも見られ、笑いものにされる。


「まさか雑魚ユナ、自分で描いたの?」

「いえ、気づいたら…」

「イタズラされたと」

「…はい」

「滑稽ねww」

「………(くぅぅううう♡♡♡)」


 それから決闘し、秒で負けた。


「じゃあ今日は “挨拶の権利” ね♪ これからは私の指定した方法で挨拶をするの、良いわね?」

「わ、わかりました」


ごにょごにょごにょ。


「ほら、練習よ。やってみなさい♪」

「こんにちわ、雑魚ユナです! 裸踊り、ご覧くださいっ!!」


 両手を上にあげ、手の甲は内側に向けて円を描く。


「よっ、よっ」


 陽気で情けない掛け声に合わせて、くるっ、くるっと手を返す。


「ほっ、ほっ、ほっ」


 足もぴょんぴょんとステップを踏み、無様に舞った。


「上出来じゃないww」

「あ、ありがとうございますっ!」


ーーー


 その後も雑魚ユナは負け続け……。


「豚ユナが通りま〜すっ♡♡♡」


 鼻フックをつけられ、豚鼻になったまま過ごしたり…。


「一発芸しま〜すっ♡♡♡」


 エナの開いたパーティーで裸踊りを披露したり…。


「わたしの一張羅におしっこかけま〜すっ♡♡♡」


 大切なクマセットを汚したりした。


……………

………


 そして遂に…。


「雑魚ユナにも飽きたわ」

「えっ、エナ様っ!?」

「ちょうど新しいおもちゃも見つかったところだし、もう要らないわ」

「ど、どうか捨てないでください」


 権利を取り戻すために決闘をしていた()はずなのに、最近は “そんな建前” など忘れて、単なるおもちゃになっていた雑魚ユナ。


「何でもします。役に立ちます。お金ならあります」

「別にお金は必要じゃないけど、あって困るものでもないし……良いわ♪ ならこうしましょ?」


 エナからいくつか “提案という名の要求” が出される。


「私の代わりに依頼をこなして、功績は全て私に捧げること。クマセットの所有権を私に移すこと。クマセットは貸し出してあげるけど、その際は依頼報酬の9割を私に納めること。したがって冒険者ランクが上がることは無い

し、ずっと貧乏だけど…良いよね?」

「…そしたら、わたしで遊んでくれますか?」

「雑魚ユナは何を言ってるの? これが何よりの遊びでしょ??? ほんと低脳なのねww」

「バカでごめんなさぃ♡♡♡ それで構いませんっ♡♡♡ クマセットも差し上げましゅぅ♡♡♡」


 雑魚ユナは迷うことなく即断し、承諾した。

 クマセットを失ったこの時をもって、エナに勝つ機会をも失ったという考えには至らずに……。


ーーー


 エナの物になったクマセットは、冒険者ギルドで保管されることになった。


「ほっ、ほっ。ごきげんよう、雑魚ユナですっ! クマセットを借りに来ましたっ!! ふんっ、ふんっ」


 ここで一句。


 “挨拶は 裸踊りで 元気よく”


 朝の恒例行事にもなっている雑魚ユナを表した良い句である。

 これを見るために通う者も居るくらい人気の見せ物だ。


「おはようございます、雑魚ユナさん」


 最近では、ギルド職員にも受け入れられて来ている。


「………(…正直、恥ずかしすぎるよっ♡♡♡)」


 むしろしっかりと触れてくれた方がマシだと思えるような羞恥プレイに、雑魚ユナは興奮を覚える。


「………(…おっといけない。依頼に行かなくては……)」


 冒険者ギルドに来たのは、痴態を見せるためでは無い。

 エナに貢ぐための功績とお金を稼ぎに来たのである。


「えーっと、クマセット、クマセット(…うわぁ♡♡♡ 今日も今日とて、すごい溜まってるなぁ♡♡♡)」


 そう言って雑魚ユナは、“ゴミ箱” を漁る。


「…あったぁ♡♡♡ うん、汚いっ♡♡♡」


 冒険者ギルドで “保管” されているクマセットの保管場所は、隅に置かれている “雑魚ユナと書かれたロッカー” ……またの名をゴミ箱とも呼ばれる代物だ。


「これを着ないと依頼をこなせないから…」


 しょうがないと、自らに言い聞かせながら汚れたクマセットを身につける。


「くっさぁ♡♡♡」


 自分でも分かるほど酷い臭い。

 それを堪能するように “わざと” フードを深く被る。


「…これ、やっばぁ♡♡♡」


 まるで電子ドラッグのように脳が焼かれ、目の前がパチパチとする。

 そんな状態でも、クマセットを着ていれば大抵の依頼は軽く達成できる。


……………

………


「かくかくっ。雑魚ユナ、報告に参りましたっ!! へこへこっ」


 一日の終わり、依頼をこなして冒険者ギルドに戻ってくると、雑魚ユナはクマセットを返却をする。

 もちろん、脱いだクマセットはロッカー(ゴミ箱)に仕舞う(捨てる)。


 それから雑魚ユナであることを証明し、依頼の手続きをするために “ギルドカードをクリップで乳首に止めて” 受付のお姉さんの元へと向かうのだった。


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 そんな生活を送ること早半年。

 慣れと言うのは恐ろしく、簡単に非日常を日常へと変えてしまう。


 そこで雑魚ユナは、初心を忘れず “屈服による快楽” を感じ続けるため、エナの目を盗んでは転移門でクリモニアに行き、裏で “Cランクの依頼” を受けていた。

 当然、その際には元々の “ユナのギルドカード” を用いる。


 それは “雑魚ユナがバレるから” という理由ではなく、そうでなければ “Cランクの依頼を受けられないから” であるが、こうして昔の強いユナを思い出すことで、再びエナに負けた時に快感を得られるというわけなのだ。


「う〜ん、フィナにも会えたし、失いかけてた自尊心も復活したー!!!」


 そうして英気を養った雑魚ユナは、ラフィンの街へと転移する。


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………


 事件が起きたのは、そんな日の翌日であった。


「ねぇ雑魚ユナ? これは何かな???」

「そ、それは…」


 決闘の衝撃で、“ユナの” ギルドカードが落ちたのである。


「私に嘘をついていたの? いや、私だけじゃ無い。ギルドカードの偽証は立派な犯罪よ?」

「………(…しまった。クリモニアで使った後、クマセットの中に……)」

「これは “お仕置き” が必要ね♪」

「…お仕置き? ……処罰じゃなくて?」

「ええ、私の可愛いおもちゃですから…私が責任を持ってお仕置きをして……私の元で解決してあげるわ♪」


 それはつまり、この件は公にされず、秘密裏に裁かれるということであり、エナによって無かったことにされるのだ。


「…私ね、思うの。ギルドカードが “2枚あるから” 問題なんじゃないかって……だからさ、消しちゃうね♪」


 この世界に “ユナ” という冒険者は居なくなり、この場には “低脳雌豚クマの雑魚ユナ” だけが残った。


〜 完 〜



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