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陵魚 from fanbox
陵魚

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ルリとルナ:エピソードゼロ 後編――失った純潔、聖光珠の輝き

               ※  ザラザラとした気持ち。まるで、毛羽立った古い毛布に頬を擦り付けたような。  胸の奥で苛立ちが跳ねまわっている。極力、冷静でいようと思いながらも、浄見瑠奈の足は前のめりに早まっていく。  泥だらけで、地面に横たわって泣いていた、さっきの子の姿。何度も目の前にちらついて、そのたびに歯を食いしばる。  きっと憧れがそうさせた。テレビで見た、強くてかわいくて優しい、誰かを救うヒロインになりたくて。巡りあった宝珠に、それを願った。  ――あの子は私だ。  キラキラした気持ちで誰かを救おうとした、馬鹿で世間知らずでお人好しな、昔の私だ。善意の先にハッピーエンドがあると信じていられた頃の、私だ。その、成れの果てだ。 「……バカみたい!」  雑念を振り払うように、大鎌の先端を地面に叩きつける。冷静になろうと思っているそばから、苛立ちが湧いてきて心を乱す。 《おうおう。なんだ、ずいぶん荒れてんじゃねぇか。お仲間をコケにされて頭にきてるってところか?》  木々の間から、影霊が姿を見せる。全身が茶色と黄土色のささくれだった繊維質に覆われた、不気味な、けれど人の形をした姿。  そして、瑠奈を取り囲むように、周囲の地面から次々と細長い触手が突き出てきて、いっせいに鎌首をもたげる。それらすべてがキノコに似た何かだ。バカにしている。 「仲間なんかじゃないわ。仲間になろうとも思わない」  異形の敵を睨みつけ、静かに言う。もちろん、いつでも地を蹴れるようわずかに腰を落としながら。 《へぇ。同じ宝珠との契約者なんじゃねぇの?》 「趣味が違う。あんたみたいな外道を排除するのに、キラキラ着飾る必要なんかないでしょ? 害虫退治は、汚れてもいい服でやるものよ」 《言うじゃねぇか。待ち伏せした中にのこのこ飛び込んで来てよぉ》  地面からだけではない、周囲を囲む木々からも無数のキノコ触手が現れ、逃げ場のない全方位から、瑠奈に狙いをつけている。  そして、それらが一斉に。獲物へ向けて放たれて。 「klUs niTs 'aP ......voLt!」 (塵埃まで滅し尽くせ――細光よ!)  それは確かに刃だった。もっとも、そう見切れるほどの動体視力を持った者はこの世のどこにもいなかっただろう。  影霊の目にはただ、上下左右すべての触手が一瞬で、すべて散り散りの破片へと姿を変えた様が見えただけだ。その斬撃の渦の中央に立つ少女は、虹色の刃をただ一振りしただけにしか見えなかった。 《チッ、こいつ……!》  慌てて新たな触手を地面から生み出し、目の前の小娘へ放つ。一閃。大鎌を振るう瑠奈は、呼吸一つ乱さない。  触手を放てど放てど、まったく届かない。余裕ぶっていたはずが冷や汗を流すハメになったのは影霊の方だった。が―― 《んん……? ははぁ、そういうことか……》  影霊が生み出す速度を上回って、瑠奈の大鎌が触手を刈っていく。勝負にもならない、宝珠の使者の戦闘力の方がはるかに上だ。しかしその割に、相手は影霊本体へと直接攻撃しては来ない。そのチャンスがあっても。  ニヤリと異形が笑う。そして、生み出す触手の数を徐々に、意図的に減らしていく。  刃が舞う。残っていた最後の触手を斬り飛ばした瑠奈は、一瞬足を止め――そしてキノコ影霊の方へと、まっすぐに身を躍らせた。風を受けてなびく金色のツインテール、大きく振りかぶられた鎌。急激に迫ってくる相手を前に。  影霊の頭部が、真っ二つに裂けた。 「っ!?」  巨大なキノコそのものといった外見の影霊、その体が縦に割れる。裂け目から現われたのは人間の頭部だ――鼻にピアスを付けた若い男の顔が、粘液に塗れてがっくりと首を垂れていた。 《この人間ごと、バッサリいくつもりかい?》 「くっ……!」  余裕ぶった影霊の声。瑠奈の足がたたらを踏む。  そして斬り込む勢いの削がれた瞬間、四方から伸びてきた触手が、瑠奈の手足を絡め取っていた。急激に後ろ方向に引き戻され、強く右腕を締め上げられて、とっさに鎌を取り落としてしまう。  ほんの一瞬のうちに、抵抗の手段までが瑠奈の手からこぼれ落ちていた。 「あっ……ぐ、うぅぅ……っ」  表情を歪めに呻く、そんな宝珠の使者を、真っ二つに割かれたままの影霊の顔が見上げるように覗き込み、嘲笑っていた。 《へへっ、やっぱりなぁ。スカしたこと言ってたが、憑依体の影霊と戦うのは初めてだったんだろ? 人間に取り憑く前の、弱っちい思念体影霊だけ倒してイキってたってわけだ》 「……」 《おまけに宝珠のこともよく知らねぇままときた。せっかくだから教えてやるよ。その物騒な石はな、対影霊のためだけに存在するシロモノだ……少々の攻撃なら、人間に当てたって傷一つつかねぇのさ。まぁもっとも、今さら知ったところで、もう活かすチャンスもねぇけどな。ギャハハハハハハハ!》  裂けていた体を元に戻して、再び巨大キノコの姿となった影霊が嗤う。捕われて絶体絶命の瑠奈は、それでも強気な瞳で相手を睨みつける。  視線が交差する。それがますます影霊を焚きつけていることには、気付かない瑠奈だ。 《まだそんな目が出来るのか。よほどの豪胆か……いや違ぇな、影霊に捕まった人間の末路がどんなもんか、知らねぇんだろ。いいぜ教えてやらぁ。泣いて許しを乞うことになるぜ?》 「……く、ぅっ。誰が……!」  身をよじり、どうにか拘束から抜けようとするが、こうなってはどうしようもない。空中でX字に身体を固定された瑠奈の目の前に、触手キノコがゆっくりと突き出されてくる。  先端は男性器を思わせる丸いカサだが、他の触手と違うのは幹の部分に無数の小さなヒダがあること。人間の爪くらいの大きさの、弾力のある柔らかな突起が細かに生えている。ちょうどキクラゲがびっしりと生えているような具合だ。  異様な触手が近づいてくるのに気を取られた一瞬の隙をついて、周囲から一斉に媚毒胞子が浴びせかけられる。噴霧というよりも直接噴きつけたに等しい勢いで瑠奈の鼻腔に飛び込んできたのを、吸い込んでしまう。思わず、激しく咳き込む。 「っ、げほっ、ぐ、うぅぅ……こ、のぉ……!」  咳がおさまった時には、もう瑠奈の顔は紅潮して、呼吸も乱れ始めている。体の中で急速に発し始める淫らな熱。戸惑う宝珠の使者の顔を、憎らしい笑い顔で覗き込む影霊、その目が細められる。 《くへへ。効くだろ? 俺様の胞子は。ほら、もう腰がクネクネ動いてんぜ?》  異形の手が、デニムのショートパンツごしに少女の股間を軽く撫でまわす。分厚い布ごしのもどかしい刺激を受けて、細い腰が思わずいやらしく動いてしまうのを、止められない。  既に、吸い込んだ強力媚毒の効果だけで瑠奈の初々しいワレメからは蜜が溢れ出し、下着に生温かい不快な湿り気を生じさせてしまっていた。デニム生地越しなら影霊にはバレていない、ということだけがわずかな気休めだ。  ……それも、時間の問題だけれど。 《さぁ、じっくり可愛がってやんよ。俺様の触手の味をたっぷり愉しみな》  両手両足がすべて封じられている以上、逃げようがない。せめて相手を睨みつけるうちにも、先ほどのヒダヒダつきの触手が先端を下げていき、ちらちら見えていた瑠奈のおへその辺りをくすぐるように軽くつついて――そして、ショートパンツの中へと無理やり押し入ってきた。   下半身を締め付けるように、ぴっちりと腰まわりを覆うデニム生地。人の手だったら狭くて入り込めないだろうが、骨も関節もない触手はお構いなしに潜り込んでくる。  少女らしい、下腹の柔らかな弾力、瑞々しい肌を黄色い媚毒胞子で汚しながら、下着の中へと強引に沈んでいく凌辱者の魔手。窮屈さをものともせずに、瑠奈の潤み始めた秘裂の間を割り広げながら縦断し、そのまま右足の太ももを擦ってショートパンツの外へ、先端が顔を出す。 《なんだお前、もう濡らしてんじゃねぇか。くへへへ、そんなに待ちきれなかったかぁ?》 「……く、うぅぅ。うる、さいっ……!」  気丈さを保とうと必死な瑠奈は、しかし頬を赤く染め、吐息も熱く乱れ始め、強制的に昂らされた快感反応を隠しきれていない。ワレメのヒダに触手の軸部分が、そして汚らわしい媚毒胞子が触れ、その効果が徐々に侵食してきている。今にも、腰を跳ね上げて淫らな声をあげてしまいそうになるのを、必死に耐えているのだ。  けれどもちろん、責めはまだこれからだ。側面に敏感粘膜を掻きむしる軟質の爪をびっしりと生やした触手が、前後に往復運動を開始する。 「んぅっ、ん……ぁ、うむぅ、んっ……んくぅぅぅンっ!」  目をぎゅっと閉じて、必死に口を噤みながら、それでも抑えきれない声が漏れ出てくる。  きつく締めつけるデニムショートパンツの圧迫が、動き回る触手の摩擦刺激をすべて瑠奈の膣口へと集めてしまう。いかにも守りの固そうなぴっちりデニムも、中に潜り込まれてしまえば無防備な花園だ。むしろ秘部との密着を否応なく高める、卑猥なコスチュームへと堕していく。  完全に広げられてしまった、ヒクヒクと震える貝口に、凹凸や引っかかりだらけの凶悪な触手表面が何度も、何度も擦りつけられる。薄桃色の柔らかい襞から、漏れ出たばかりの愛蜜がこそぎ取られていく。少しでも責めから逃れようと腰を引いても、跳ねさせても、デニム生地のぴっちりしたホットパンツに固定されているのだから無意味だ。逃れようのない触手股縄責めに一番大事な秘裂を好き放題に嬲られて、力なく全身をわななかせる瑠奈。 「ひっ、く、うぅぅ……んっ、んぅぅ……ん、あ、あぁあぁっ!? そこ、は……く、あぁぁっ、はぁンっ! ひぁ、あぁっ!」  抑えていた声が、急に1オクターブ跳ね上がる。淫核包皮が摩擦の勢いでめくり上げられ、か弱い宝石が剥き出しにされてしまった瞬間だった。  数十センチもの長さを乱暴に前後へ行き来する触手縄は、もちろん無防備に晒されてしまったクリトリスにも容赦しない。柔らかな、しかし爪のような突起が立て続けに肉豆を弾きあげ、圧し潰し、さらに弾きあげ、圧迫して揉み潰す。絶えず噴き出している媚毒胞子も淫液と共に勃起クリにまとわりつき、感度を際限なく上げていく。 「あ、ぎぃっ、ひぁっ、ああぁぁぁあぁあっ! それ、それやめっ……! くひぃぃンっ! あ、あぁっ、はひぃっ!!」  もう嬌声は止められない。X字拘束されて抵抗できない中、自由に動かせる腰を激しく前後に振って鳴く捕われ少女。華奢な細い身体を目いっぱい突っ張って仰け反るたびに、引き攣った喘ぎが喉の奥から疾り出る。  タイトなショートパンツを貫通する触手がうねうねと動き、凶悪突起で敏感性器をブラッシングしていくたびに、強制的に悶えさせられる宝珠の戦士。既にそのデニム生地も股間から漏れ出た恥ずかしい愛蜜を吸って重く湿り、太ももに幾筋もの汁が流れ出て短い白いソックスをも濡らしてしまっている。 《へっ、威勢よく啖呵きったわりには呆気ねぇ、もうイっちまうんだろ? ほらイけよ》 「あっ、くあぁっ! だ、め……強、すぎてぇ……ぃひっ、あぎぃっ! んぃぃっ、あっ、あぁああぁぁぁぁぁぁっ!!」  全身を激しく反らせて、ツインテールの髪を大きく暴れさせて、着衣のまま絶頂まで追い込まれてしまう瑠奈。触手に宙づりにされた不安定な身体はバネ仕掛けの玩具のように上下に揺れ、そして不意に糸が切れたようにがくりと前に崩折れた。  大きく開いた口から、乱れた荒い息を吐きつつ震える。けれど。 《何休んでんだお前。そんなのんびりしてる暇はねぇぜ?》  触手が再び動き出す。絶頂直後、ひりつくくらい敏感なピンク色の肉割れを容赦ないブラッシングに晒され、またもエビぞりに全身を反らせて悶えさせられる。 「うあっ、あっ、あうぅぅぅンっ! かひっ、はひゃあぁっ! そんな、強引に……こするなぁ! んぎゅ、うぅぅ……んああぁンっ! くひゅぅぅぅぅうぅぅぅっ!」  ホットパンツの中でか弱い性器を揉みくちゃにされ、大きく首を横に振って喘ぎ声を搾り取られるパーカー少女。なす術もなく再度の絶頂を極めさせられ、けれど恥辱の触手股縄責めは止まる気配がない。  ガシュ! ガシュ! ガシュ! 残酷なほどの音を鳴らして、潤んだ膣口を責め立てるヒダヒダ触手。肉ビラを押し倒すように何度も擦りあげられ、限界までしこり勃ったクリトリスを薙ぎ倒すように弾かれ圧し潰される。  明るい青色だったデニムのショートパンツは少女の恥液で濃い藍色に濡れそぼり、それでも受け止めきれずに溢れ出た愛蜜がボタボタと地面に落ちていく。 「あぐぅぅぅぅぅっ、くふぁぁぁっ! ぃ、ひっ、んくぅぅンっ! だ、めぇ……もう、やめ……ひあぁぁぁぁぁっ!! こんな、激しくされ、たらぁ……はぁンっ! また、イ、くぅぅっ! イっひゃ、ひぃ、んうぅぅぅぅぅぅぅっ!!」  ビクンッ!  ひと際大きく腰を突き出して、絶頂痙攣に全身を支配され、乱れ悶える。一拍遅れて、ショートパンツの裾から潮が噴き出して、左右に開かれた両足を覆うように愛蜜をまき散らす、さながら恥液のスプリンクラーのような有り様を晒してしまう。  数秒、細い手足を限界まで張りつめさせて仰け反っていた体が、糸が切れたようにガクリと脱力する。うな垂れた顔、荒く息を吐く口から、涎が一すじ流れて落ちた。  連続アクメ後の虚脱で静かになった瑠奈の股間から、触手が引き抜かれる。その刺激だけでまたビクリと体を跳ねさせてしまう少女の顔を覗き込んだ影霊が、笑う。 《もうへたばっちまったか? ザマぁねぇな宝珠の使者さんよ》  呆れたようにそう言って、肩をすくめる影霊の、その視線がわずかに瑠奈から外れる。  瞬間。少女の瞳が急激に光を取り戻した。  相手の気が逸れている隙にわずかずつ位置をずらしていた両手の拘束を、力任せに一気に引き抜く。上半身が自由になるや思いきり前に飛び出して、靴を脱ぎ捨てることで両足の拘束からも逃れる。前転して勢いを殺しつつそのまま影霊の目と鼻の先で態勢を整え、腕を伸ばす。  これが、最後のチャンス――! 「聖光珠っ!!」  鋭い呼びかけに、地面に転がっていた大鎌、その柄の先端に据えられた聖光珠が虹色に輝く。誰一人触れてもいない武器が宙に浮きあがって、まっすぐに瑠奈の手の中へ―― 《だろうと思ったぜ》  主の元へ戻りかけた大鎌が、地面へと墜落する。土を割って新たに生えだした触手が、その長い柄を絡め取って大地に縫い付けたのだ。  同時に影霊のゴツい大きな手が瑠奈の首元を乱暴に掴み、そのまま地面へと押しつけた。 「あ、ぐぅぅっ!?」  異形の怪物らしい力で背中から地面に突き倒されて、息が詰まる。細首を締め上げる手をどけようともがく、けれどこうなっては、瑠奈の力では押し返すこともできない……。  そうこうしているうちに、伸びてきたキノコ触手に再び両手両足を絡め取られて、身動きを封じられてしまって。 《ギャハハハハハハ! だよなぁだよなぁ! 反撃する気満々だったもんなぁお前、俺様が気づいてないとでも思ってたんか? えぇ? バレバレなんだよクソが!》  嘲笑う影霊。その様子を見つめる瑠奈の顔色が、みるみる蒼白になっていく。 「……あ、ぁ……。うそ……でしょ……?」  男の手が首から離されても、瑠奈の真っ青な顔色は変わらない。瞳が揺れ、唇が震え始める。先ほどまでは確かに封じていた感情が、タガが外れたように湧き出して止まらなくなる――怯え、そして怖れ。  恐怖の色を顔に出してしまうことで、これ以上の反撃手段がないことを敵に教えてしまっているのだが……今の瑠奈にそんなことまで気にしている余裕はなかった。いくら強気に振る舞っていても、言葉を話すような、憑依体の影霊と戦うのは初めてなのだ。反撃が通じなかったのも――。 《やけに抵抗が薄いわりに、全然あきらめた目の色してねぇ。そりゃ何か企んでるなくらいアホでも分かるわ、ナメてんじゃねぇぞガキ。そしたら、こっちもたっぷりお返しをしてやらねぇとな?》  さらに伸びてきた触手が、瑠奈の下半身、ショートパンツにも絡みつき、潜り込み、そして足の方へと引っ張り始める。器用な動きでホックとチャックを外していけば、顔を出すのは湿りきった灰色の下着。半ば開きかけたワレメも透けて見えるほど濡れているショーツは、スポーツ向けの飾り気のないものだ。そのショーツも、触手によってじりじりとずり下げられていって……。 「だ、め……まって、待って……」  徐々に顕わにされていく下半身と、ギラギラした目で笑っている影霊の顔とを交互に見ながら、うわ言のように瑠奈は呻く。  その瞳には、もううっすらと涙が浮かんでいる。焦って、でも何もできなくて、鼓動と呼吸がどんどん早まっていって。 「いや……嫌……! それ、だけは……それだけはやめて。他のことなら何でも、するから……!」 《あぁ? さっきまでの威勢の良さはどうしたんだ、宝珠の使者さんよ。ん? ……ははぁ、そういうことか。てめぇも処女かよ》  ニタリ、と影霊が笑う。瑠奈はなおも震える唇で、みじめな懇願を続ける。 「私の、はじめて……だけは、とらないで……もう、これ以上、なくしたくない……大事なもの、失くしたくないの……!」  ついに、涙があふれて頬を流れ落ちた。二粒、三粒、瞳から次々に雫がこぼれて、止まらない。  つい先ほどまで凛々しく戦っていた宝珠の戦士とは思えない泣き顔で、必死に敵の慈悲を乞う様を見せてしまう。  ついにショートパンツも下着も完全に脱がされ、誰も触れたことのない少女聖域が無防備に影霊へと突き出された。触手に絡めとられた両足を大きく左右へと広げられ、秘すべき場所を敵の眼前に晒す。もう反撃の余地はなく、逃れる術もない。  キノコ姿の怪人が、明確な悪意を込めた視線を、まっすぐに瑠奈へと落とす。 《頭ん中お花畑かぁ? 純潔守ったまま、俺ら影霊を狩り続けていられると思ってたのかよ。ナメ腐りやがって。だがいいぜ、ならたっぷり教えてやるよ。影霊を相手にするってのが、どういう事なのかをなぁ》  瑠奈の秘部へと近づいていた太い触手が、不意に後退する。代わりに近づいてきたのは、影霊本人だ。その股間にそそり立つ、媚毒胞子にまみれた、薄茶色の男性器だった。繊維質のカサカサした表面に覆われた、異形のペニス。 《気が変わったぜ。お前には俺様が直接ブチ込んでやる。安心しな、特濃の媚毒で、痛みなんざ感じてる暇もねぇぜ。気が狂うまでヨガり泣くだけさ、ギャハハハハハ!》  ヒクヒクと小さく震える貝口を、影霊の指がゆっくり割り広げる。下半身全体が少女自身の噴き出した汁で水びたし状態だ、晒された恥穴も濡れきっている。そこへ、異形男根の先端がゆっくりと触れる。 「いや、嫌ぁ、やめてっ、やめてよ……お願いだから……!」  顔をくしゃくしゃにして泣きながら、必死に懇願する聖光珠の使者。いや、もはや年相応の非力な少女に過ぎない、戦いの意志をすべて剥ぎとられた、哀れな敗残の姿。 「それしか、ないの……! いつか、好きな人、できた時に……私の”はじめて”、あげたいの……! 私があげられるもの、それしかないの……っ! だから、だから許してよ……こんなの嫌だよぉ……!」  必死に。ただ必死にそう訴えて。  けれど影霊が、聞き入れるはずもなくて。 《残念だったなぁ? 俺らにケンカ売ったばっかりに、そんな大事なもんを全部失くしちまうんだぜ、お前。せいぜい後悔しな。そら、いくぜ? そらそら、そら!》  沈んでいく。異形の竿が、少女の肉穴へとゆっくり、分け入っていく。腰を逃がしても、身をよじっても変わらない。  真っ青な顔で、激しく首を横に振って、泣いて、わめいて、でも変わらない。  そして。プツリ、と。  大事なものが失われた、その感触が下半身で、あって。 「あ、あ……あぁぁぁぁ、あぁぁ……ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」  少女の嗚咽が、公園中に響いた。  影霊の勝ち誇った笑い声も、響いた。そのまま、凌辱者は遠慮のない腰の抽挿を開始する。  じゅぷ、じゅぷと水音を立てて、少女の膣穴がかき回されていった。一突きごとに、赤い血の混じった淫蜜が押し出されて噴き出して、瑠奈の太ももを汚していく。 「ウソ、うそ、うそだよぉ……やめ、てぇ、抜いてっ、抜いてよぉ! 嫌っ、嫌ぁ、やめて、それやめて……! こんなのひどい、ひどい、よぉ……っ!」  いくら流れても止まることのない涙が、瑠奈の頬を濡らす。けれど悠長に嘆く時間すら、そこにはない。たった今開かれたばかりの純潔性器に、影霊の凶悪媚毒が続々と送り込まれてくるからだ。そうでなくとも、既に何度となく絶頂を味わわされ敏感さを増している体に、それはあまりにも酷な追い打ちで。  さらに、瑠奈の周囲を取り囲むように並ぶキノコ触手の先端からも、黄色い粉状の媚毒胞子が次々噴き出す。避けようもなく吸い込んでしまったそれらで、ますます体が熱くなっていく。 「嫌っ、やぁぁっ、ふあぁ、ンっ! んあっ、あぁぁ……うあぁぁっ、あぐぅぅぅっ……入って、きてるぅ……奥まで、きちゃってるぅ……っ! んあっ、はぁンっ! かはっ、はうぅっ、んんぅぅぅっ! 突かないで、やだ、やなの……んふぁぁぁぁっ」  本当に、痛みなんて感じている暇がなかった。異物を迎え入れたばかりの膣穴が勝手に熱くなって、内側から遠慮もなく擦り上げられる刺激にうねって、勝手に締めつけて、それらが全部快感に、気持ち良さになって少女の意識を塗り潰していった。  甘い声を漏らして、嬌声をあげて、しまう――望まない屈辱の初体験なのに。 「ひあぁぁぁぁぁっ、んっ、あぁぁ、はひぃぃぃンっ! 嫌っ、嫌ぁぁぁっ、こんなの、で……こんなのでイきたくないのぉ! あんっ、は、あぁぁ……やめてぇっ、なか、そんなにかき回さないでっ! もう、やだ、ぁぁ……!」  痛んでくれた方がよかった。苦痛や激痛の方がよほどマシだった。それならせめて、大事なものを奪った敵に怒りや恨みや憎しみの言葉をぶつけることができた、のに。  甘えるような、とろけるような喘ぎ声を漏らしてしまう。感じて感じて、だらしなく開いた口元や、とろんと澱んだ目を見られてしまう。  嫌だ。嫌だ。嫌なのに。  こんなヤツに、イかされちゃう……! 「あぁンっ、うあ、んあぁぁぁっ、んんっ、んうぅぅぅっ! ふあっ、あぁぁ……だめっ、これだめ……っ! そんな、速く突かないでぇっ……ダメっ、だめぇきちゃうぅぅぅっ、くぁっ、あっ、あうぅっ……んぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」  背骨が折れるかと思うほどエビぞりに仰け反って、全身を絞りあげたかのように苦しげな悶声を張り上げて。  処女喪失から間をおかずの極大絶頂に、その快感と絶望にただ打ち震える敗北少女。涙が流れて、また流れて、何度となく瑠奈の頬を濡らした。その涙すら、汚れた胞子を押し流して黄色く染まっていくのだ。 「うぁ、あぁぁ……んっ、ぅぅ……ひ、ぎいぃぃぃ!? うそ、まだ、動いて……!?」 《当たり前ぇだろ、自分だけさっさとイきまくりやがって、まだまだこれからなんだよ、おら、おらァ!》  絶頂痙攣がまだ続いている蜜穴に、ズン、ズンと勢い任せな魔竿の突き込みが続く。息を吐く間もなく再び、快感の極みへと追い立てられていく。  周囲を取り囲んでいたキノコ触手たちも、次々と瑠奈の身体に取りつき、パーカーの裾をまくりあげ、スポーツブラもめくりあげて慎ましい胸を暴露していく。ここまでの責めに反応してツンと突き立った乳突起に殺到した触手たちが、黄色い媚毒胞子をなすりつけながら乳首を捏ねまわし、突きまわし、圧し潰す。  手も足も出ず、なすがまま、性感帯を好き放題に嬲られ、玩弄される――。泣いて、喘ぎ狂って、それでも終わらない。むしろ少女の悶声が響くほど、ますます影霊の加虐を煽り立てていく。 「く、あぁぁっ! かひっ、ぃひぃぃぃぃっ! とまっ、てぇ! こんな、急にたくさん苛められたら、壊れ、ひゃっ……! ひきぃぃぃぃぁああぁあぁあっ!! はぎぃ、ぃンっ! だめ、だめだめだめぇまたイくぅぅぅっ!」  腰を浮かせ、ガクガクとわなないて、みじめにイき果てる処女喪失少女。初めて男のモノを受け入れたばかりの初々しい膣穴が、穢れた媚毒胞子に侵され狂わされていく。憎い敵の、おぞましい肉棒なのに、瑠奈の恥知らずな蜜洞はそれを咥えこみ、きつく喰い締め、涎を垂らしてしゃぶり続けているのだ――瑠奈自身に破滅的な快楽を送り込みながら。  止まらない絶頂に喘ぎ狂う瑠奈を見下ろしながら、影霊が笑みを深める。 《さぁ、こっからが楽しいところだ。俺様のとっておきをくれてやる。たっぷり味わえや》 「うぁ、あ……何……? ぁ、いっ、ひぃっ!? くあぁっ、あっ、あぁぁあぁぁあぁぁっ!?」  目を見開いて、異様な感覚に絶叫する。  少女の膣穴の中で、影霊の陰茎、そのカリ首から先が傘のように大きく開いたのだ。ちょうどシイタケのように開いた先端部分が、蜜だらけの粘膜を強引に押し広げてしまう。急に子宮口付近の膣奥を拡張される異常性感に、舌を突き出して震える敗北少女。  そして、影霊の腰が動き出す。人間では決してあり得ない形の責め竿が、無理やり広げられた敏感粘膜をいっせいに擦り上げる――! 「ひゃあっ、あ、あひぃぃっ、だめ、それだめっ、そんなので掻き回されたらすぐイっひゃうっ、イっひゃうからぁ! くああぁぁっ、んあっ、はぁン! かひっ、かひぃぃぃっ、ぃぃぃンっ! 待って、おねがい、待ってぇ、おなかの奥ずっとイってる、イってるのぉ! はひゃああぁぁぁぁっ!!」  泣いて、わめいて、悶えて。どれだけ懇願しても魔悦の抽挿は止まらない。いや、どんどん動きを速めていく。  広がったカリ首の傘はシリコンのように柔らかく、引き抜かれる際には膣壁に貼り付いて舐めるように刺激を与えていった。その内側は複雑なヒダになっていて、擦り上げる過程で凶暴な快感を残していく。一方、陰茎が突き込まれる際には傘はすぼまって、代わりにストレートに突き上げる衝撃を膣奥へ与える。開閉自在の異形男根が、複雑で強烈な刺激を、まだ目覚めたばかりの未成熟性器に容赦なく叩き込んでいくのだ。 「んぎぃぃぃぃぃぃっ、ひぃぃンっ! くぁ、あぁぁ……こんな、激しいの、無理ぃ……! 頭ぐちゃぐちゃになるぅ……うあぁ、あぁああぁぁああっ! 止まって、休ませてっ、ほんとにムリだからぁ!」 《くへへへへ、ずいぶんと俺様のモノがお気に入りみたいだなぁ? けどそんなに楽しんでて良いのか? えぇ?》  不意に腰を止めた影霊が、瑠奈の方へ顔を寄せてくる。繊維質の異様な菌類、その表面に刻み込まれたバケモノじみた顔が、目の前に迫って笑う。  涙をため、涎を垂らした、蕩けきった顔で、そんな相手を見上げるしかない。 《もぅお前、普通のモノじゃ満足できねぇぜ。どんだけ好きな男に抱かれても、もの足りなく感じちまう。いくらテクニシャンな野郎だって、俺様みたいな便利なモノは持っちゃあいねぇからなぁ》 「……ぅ、あ……」 《ついに愛しい彼氏と結ばれても、抱かれても、もうお前の身体は満たされねぇ。そして不満を感じるそのたびに……この俺様の顔を思い出すのさぁ! ギャハハハハハハハ!》 「……あ、あぁぁぁ……!」  たび重なる絶頂で紅潮していた瑠奈の顔色が、また一気に真っ青になった。  全部奪う気なのだ。少女の初体験だけではなく、これから先すべての恋を。すべての、幸せを。   「いや、嫌嫌嫌嫌嫌ああぁぁぁぁぁぁぁぁっ! やだっ、もうやだぁ! こんなのないよ、こんな、こんなの……うああぁぁぁっ、ああぁぁぁぁぁぁぁ!!」 《さぁイけ、イき狂え! 二度と忘れられねぇほど感じさせてやるよ!》  ドチュっ、ドチュっ! 異形の男根が容赦なく瑠奈の膣壁を擦り上げ、最奥を突き上げる。抜いても挿しても、すべてが少女を篭絡する魔の悦楽。逃れようもなくその全てを、華奢な身体で受け止めるたびに悪夢の記憶が刻まれていく。  恐怖と嫌悪で全身が強張っているのに、そんなことも構わずに下腹部から暴力的な快感が昇りつめてきて脳を灼く。頸骨が折れそうなほど首を横に振り、涙をまき散らして、それでもせり上がってくる絶頂感に身が震える。  そして。 「はっ、あっ、あンっ! 嫌っ、嫌なのっ、イきたくない、イきたくないのにぃ……んあぁぁっ、はぁンっ、だめ、だめぇっ、動かさないでぇ! ひぐっ、んうぅぅ……もう、だめぇっ、イっひゃうっ、また、イっひゃうよぉ!」 《イけ、イけ、おらイけぇ!》  腰の動きが早くなる。膣奥を猛烈にえぐり回され、瑠奈の腰も止めようがなく痙攣を激しくしていって。 「んああぁぁぁぁっ! おなかの、奥ぅっ、溢れひゃうぅぅ! イ、くぅ、イっひゃ……んいぃぃぃぃぃぃっ! イっくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」  悲痛な絶頂嬌声が、公園中に響いた。  細い身体が壊れそうなほどの激しい震えと共に、望まぬ媚毒アクメに堕ちる瑠奈。勢いよく噴き出した潮が影霊との結合部をしとどに濡らし尽くす。  快楽の極み、その頂点で激しく身悶える敗北少女に、 《くへへへへへっ、俺様もそろそろ出るぜぇ、受け取りなぁ!》  ひと際強く突き入れられたキノコ型男根、その先端から、熱い白濁が一気に噴き出して、少女の膣奥を灼いた。絶頂の最中に加わった、破滅的な刺激。 「ひああぁぁぁぁっ!? う、そ、中で……中で出てぇ! あぁっ、あああぁぁぁぁっ! 熱い、熱いぃぃぃ! やめっ、やめてっ、やだよぉっ! くあぁっ、あぁンっ、いひぃぃっ! 熱いので、またイっひゃうのぉぉぉぉぉっ!!」  ガクンっ、と大きく跳ねた身体が、そのまま地面に沈んだ。  少女の身体から噴き出し、漏れ出した様々な液体で地面は水たまりのようになっており、そこに横たわった瑠奈の衣服も身体も、泥だらけに汚していた。激しすぎる絶頂に、ビクビクと震えながら激しい呼吸を繰り返す少女の瞳には何の光もなく、ただ絶望と快楽に濁って見開かれている。 《……へっ》  影霊がゆっくりと陰茎を抜く。先端の広がった異形男根が離れると、黄土色めいた異様な、粘性のある液体が少女の秘裂からゴポリと音をたてて溢れ、流れ出た。同じ穢れた液体が、男のモノを始めて受け入れたばかりの初々しい少女膣を満たしているのだ……。 《この程度でへたばりやがって。お前はこんなもんじゃ済まさねぇぞ、これから俺様のねぐらに連れ帰って……んん?》  不意に、影霊が顔をあげる。表情を歪め、ゆっくりと立ち上がる。  キノコ怪人の視線の先に、まばゆい、白い光が立っていた。 《こいつぁ驚いた。てめぇ、まだ凝りてなかったんか? まだまだ犯され足りねぇってかぁ?》  挑発的に言う影霊に、白い光――陽光少女ルリは、ステッキの先端を向けた。  ひどい有り様だった。ドレスの左半分は泥だらけで、下半身の汚れも消えていない。膝はがくがくと震えて、まだ痛みもあるのか内股気味にかろうじて立っている。  右手でステッキを構えながら、左手は飛び出しそうな心臓を押さえつけるみたいに、胸をギュッと掴んでいる。  それなのに、瞳だけはまっすぐに、影霊を見つめていた。 「その子から、離れて」  どうしようもなく揺れてしまう声。けれど、一歩も退かない意志を込めた声。 《……チッ》  地面から複数のキノコ触手が飛び出して、ルリに殺到する。 「slokk hoRc bLikk.........glo^za tviKe!」 (影を薙ぎ払え――光幕よ!)  扇状に、周囲へと放たれる光の散弾。接近してくる触手はその一撃で、たちまちのうちに吹き飛ばされて消える。  けれどそのわずかの間に、影霊はまた木々の奥へと姿を消してしまう。 「あ、」  追おうとしたルリが、よろけて地面に膝をつく。つらそうな息、泣きそうな瞳。けれど、再び立ち上がって、駆けていく――森の中へ。  後には、瑠奈だけが残った。泥だらけの土の上に、全身を投げ出して。  ――あの子、きっとまた負けるな。  奇妙に冷ややかに、それだけを思った。取り残されて、倦怠感と快楽の余韻に息を吐きながら、パーカーの袖で涙を拭って。  冷たい地面に体温が奪われていく。大事なもの全部汚され奪われた心に、空虚な穴がぽっかり空いて、気持ちをどんどん冷たく沈ませていく。  バカみたい。甘く見てたのは私の方だ。一度苦い経験をしただけで……失敗を乗り越えた自分はもう二度と負けないとかって、思ってた。変に意地になって、宝珠の力を手にして……それでまた、大事なものを失くした。今度こそ取り返せない。 「……う、ぅ、あぁ……」  拭っても拭っても涙が止まらない。  ありったけの後悔がのしかかって来る。もう指一本だって動かしたくない。このまま消えてしまいたいくらいだ。  ――あの子、きっとまた負ける。あの影霊は悪賢いから。  こんな馬鹿な私を、あの子は助けにきた。自分だってボロボロなのに。同じものを失くしたはずなのに。  なんで、あんな瞳のままでいられるんだろう。泥まみれなのに輝きを失わなかった白いドレス。最悪の形で純潔を奪われたあの子の瞳には、でも、憎しみも恨みも逆上も、感じられなくて。ただ、なんとかしなきゃっていう気持ちだけが、輝いてて。まぶしいくらい、まっすぐで。  ――あの子、きっとまた、負けちゃう。 「……ねぇ、聖光珠」  分かってる。ここで倒れたまま終わったら、私はきっと一生、膝を抱えて、泣き続けて、それだけ。二度と前を向かずに、心を殺して生きるだけの抜け殻になる。もう、大事なものを持ってた頃のようにはいられないから。  でも、今のままで――今の私のままでは、立ち上がれない。もう汚れすぎちゃったから。 「ねぇ、聖光珠。もう一度、キラキラした夢が見たいって言ったら、おかしいかな? ううん……せめて、キラキラした夢のそばに、いたいって思ったら。子供っぽくて、安直で、頼りなくて……でも、まっすぐな、夢」  白いドレス。子供っぽい魔法少女の格好。まっすぐな瞳。何度汚されても、それでもキラキラと輝く、夢。 「私、あの子みたいに、なりたい――!」  ふいに目の前が明るくなったのを感じて、目を開ける。聖光珠が、不思議な虹色の輝きを宿して、胸の上に浮いていた。  その輝きに向かって、手を伸ばした。 「……応えて、聖光珠」                ※ 「う、あぁっ!」  木々の間で、呆気なくその場に尻もちをついてしまうルリ。その周囲に潜み、少女を絡め取ろうと狙っている触手が一体何本、いや、何十本あるのか分からない。  一度後退して森の中で待ち伏せる、この影霊の得意戦法だ。手数が多い敵、遮蔽物の多い場所、いずれもルリの――陽光珠の能力にとっては不利な要素。一方的に追い詰められるばかりで。 《まったく、横槍ばっかり入れて来やがって。予定変更だぜ、俺様のねぐらでじっくり嬲られるのはお前だ白いの。大した力もねぇのに茶々入れしてきたこと、後悔させてやるよ!》  木の幹の裏から、地面から、頭上の葉陰から。飛び出して来た触手たちが一斉にルリへと襲い掛かって。 「させないっ!!」  それらすべてが、微塵と散った。 《な、てめぇ……!?》  再び舞い降りた刃の一閃。巨大な鎌の刃が唸る風切り音とともに疾っただけで、四方から迫っていたキノコ触手は風圧に押しのけられるように飛び砕けた。 「え……?」  ルリが目を丸くする、その視線の先にあったのは、深紫色のマジックドレス。  金色にきらめいて揺れるツインテールの髪。翻るリボン。  決して明るくはない色調の、けれど輝く星のような、確かな光を宿したスカート。強い意志をもって大地を踏みしめる、すらりとしたブーツ。  相手をまっすぐに見つめる、強気な瞳。  もう一人の魔法少女が、立っていた。 《どういう風の吹き回しだか知らねぇが……どうせお前ら、どっちも大して余力は残っちゃいねぇんだろ、一気に終わらせてやるぜ!》  わめき散らした影霊が腕を振ると共に、周囲に潜んでいた触手が一斉に二人へ向けて鎌首をもたげる。  戸惑ったルリが、視線を、ステッキの先を右へ左へと揺らす。けれど、腰を沈めたルナは、ただ一点に視線を置いて惑わない。 「前だけ見て。他は気にしなくていい」 「え? で、でも」 「私を狙って。できるわね?」  チラリと、白いドレスの少女を見る。一瞬躊躇した相手は、けれど、すぐに小さく頷いた。  なら、それが合図だ。 「行くよ……っ!」  地を蹴る。最速最短で、敵の影霊目がけて飛ぶ。衝撃で周囲の木々が一斉に枝葉を落とすほどの踏み込み。 《う、うわっ、こいつっ!》  ルナの侵攻を止めようと、地面から次々に触手が生み出され視界を埋める――まさにその瞬間に。 「slokk hoRc bLikk.........glo^za menus!」 (影を薙ぎ払え――光槌よ!)  巨光。そうとしか言いようのない、白光の奔流が走った。それはルナの背を呑み込んで、追い越して、すべての触手を粉砕し。  そして光が消えた時。 《……ぐ、おぉぉぉぉ……っ!?》  既に刃を振り終えたルナが、砂埃を舞い上げながら着地したところだった。  棒立ちになった影霊の頭から腰にかけて、袈裟懸けに走った裂け目が、青色の不思議な光を発して徐々に広がっていく。 「宝珠の光は、影霊以外を傷つけない。教えてくれたのはあなたよ」  淡々とルナが言う。  影霊は、笑っていた。 《く、へへへへ……まぁ、なんつーか。一日で初モノを二つは、話がうますぎた、なぁ……》  光が広がり、影霊の全身を埋め尽くす。  そして後には、ただの若い、ガラの悪い男の姿が残った。そのままばったりと、地面に倒れ込むのを、ルナは振り返って見た。  駆け寄る。仰向けにして喉の辺りに触れる。もう一人の少女も駆け寄って来て、心配そうに覗き込んでいた。 「大丈夫。生きてるよ。体にも異常はないみたい」  そう言って顔をあげると――白い魔法少女の顔に、安心したような、柔らかな笑顔が浮かんだ。 「よかった……!」  まるで、道端に咲く花を見つけたような、笑み。虚を突かれて、おもわずルナの方が目を丸くしてしまったほどだ。  立ち上がる。そうして、初めて二人の視線が、交わされた。 「さっきは、助けてくれてありがとう」  さすがに少し照れ臭くて、歯切れが悪い言い方になってしまうルナだ。一方の相手は、聞いていたのかいないのか、ルナの全身を上から下まで、じっくり眺めまわし始めた。  ……改めてそんなにじっくり見られると、恥ずかしいのだけど。 「ねぇ、この格好……」 「う、うぅ……何? 変、かな?」 「ねぇ、ねぇ、もしかしてあなたも、好きなの? 魔法少女!」  遠慮がちに、けれど期待に満ちた瞳で、そんなことを聞いてくる。なんだか、どこまでも拍子抜けする子だ。 「うん? 残念だけど、私は全然、そういうの見ないよ」 「そう、なの? でも、じゃあ、この格好って……」  首をかしげる相手に、ルナはちょっとだけ笑みを返した。 「このドレスは、あなたに合わせたの。もし、迷惑じゃなければだけど……これから影霊をやっつけるのに、協力し合わない?」  なんだかずっと、面映ゆい。頬が赤くなりっぱなしのルナだ。一方、その言葉を聞いた相手は、たちまち表情を輝かせた。これ以上ないくらいに。 「本当? わ、わぁ……! すごい、すごく嬉しい! あの、わたし、すごく頼りないかもだけど、でも頑張るから! これからよろしくね!」  ルナの手を勝手に握って、ぶんぶん振り回し始める。  正直なところ、心の半分くらいは困惑していた。二人とも、ついさっきまで残酷な仕打ちを受けて泣いていたのに。身を汚されて、大事なものを奪われた、最悪の出来事の直後なのに。  ――なんでこの子は、笑っていられるんだろう?  ――そして私も。なんで今、笑えているんだろう?  分からなかった。 「私はルナ。浄見瑠奈」 「わたしは、ルリ。光瀬瑠璃だよ。今日は、本当にありがとう、ルナちゃん」  ルリの笑顔につられるように、結局ルナも笑っていた。  よく分からないけれど。不思議と、胸にぽっかり空いたはずの穴が、少しだけ埋まったような気もしていた。もしそうなら、とても大事なことだ。これから先、ルナがルナらしくいるために、すごく大事なことだ。  今夜ベッドの中で、私はきっと泣く。  自分がなくしたものの大きさを思い出して、きっとすごく泣いてしまう。  でも、少なくとも今、この瞬間に笑顔を浮かべられたことは、忘れないでいようと思った。

ルリとルナ:エピソードゼロ 後編――失った純潔、聖光珠の輝き

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