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シカク from fanbox
シカク

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ある組織の復活劇 -2-

組織は案の定ヒーローに目をつけられる事となった。一般人の誘拐、洗脳、資金調達の為の強盗、破壊工作などなど。ヒーローを洗脳しようとしても高い戦闘力の前に誘拐もその頭に超音波を撃ち込めることすら出来ない。辛うじて逃げるのが精一杯だ。戦闘員たちにはエスケープワープと呼ばれる道具を持たしている。これを起動させればすぐに基地へとその身をワープ出来るというこれもドクターの最高傑作の道具だ。そのお陰で今の所、戦闘員達が捕まったりヤラれたりする事はないので被害はまだない。ただ、任務の成功率は格段に下がっている。ヒーローたちをどうにかしないと。 そこでコイツだ。さっきまで蕩けた表情で俺に腰を振っていた男は精悍な顔つきで敬礼する。 「任務内容は理解してるな?」 「はっ!必ず成功させてみせます」 俺の言葉に男はスポーツマンとは感じられない悪の組織に相応しい笑みを浮かべた。 ------------------ 3ヶ月前。朝のランニングをしていると一般人に装った組織の戦闘員に待ち伏せされ、俺はあの銃で組織の忠実な兵士となった。兵士となった俺は戦闘員として活動、という訳ではなく、そのままプロ野球選手として世間に溶け込む工作員としての役割を与えられた。本音としては基地に滞在して、総帥の傍で戦闘員としてお役に立ちたかったのだが。だけど俺のスポーツ選手仲間、有名人や権力者などの情報は組織の役に立ってるみたいなので、このまま総帥のために役割を果たさないといけない。収入に関してもそこそこいい成績は収めてるので年俸も億は超えている。少しでも組織の為へと思い俺はほとんど組織に渡している。総帥の下僕というだけでとても幸せなのだが自分が役に立てば立つほど俺は幸福感で満たされる。そんな時、俺に特別な任務が総帥から直接言い渡される。側近や隊長格でもないただの戦闘員の俺にだ。それに俺のケツまで使っていただけて最高に幸せな時間だった。今までやったどんなセックスよりも気持ち良かった。また嵌めてもらいたい…。そのために必ず成功させる。ただ焦っても駄目だ。これは重要な任務。慎重に行かないと。 「今日はよろしくお願いします。菊地選手に立ってもらえるなんてとても光栄です」 「いえ、こちらこそヒーローに投げてもらえるなんて滅多にない事なんで嬉しいです」 始球式にやってきたのは俊足のスピードでの攻撃が得意なヒーローのレオパードマンだ。そのスタイリッシュな活躍とかっこいいヒョウのマスクが人気のヒーロー。そして今回の任務の標的でもある。今日の始球式、俺はなんとか関わりを持つために頼み込んでヒーローが投げる球のバッターボックスに立たせてもらえることになった。当日まで誰が来るかは分からなかったが中々の上物ヒーローが来てくれて心の中でガッツポーズをした。こいつを堕とせればきっと組織はさらに大きくなれる。全ては総帥の為に、と改めて心の中で復唱して俺は笑顔でレオパードマンと握手した。マスク越しだったが声色を聞く感じ好印象を与えられたようで良かった。握手した後、すぐにレオパードマンとの対面は終わってしまった。 レオパードマンの背中を見送っているとマネージャーらしき人物から耳打ちをされいた。そしてこちらをチラッと見ていたことから、上手いことメテオスが戦闘員素体として俺の事を狙っているという情報がレオパードマンに伝わったのだろう予想する。噂程度にネットを使い流してもらったのだが、狙われている人物がすぐそばにいるとなるとヒーローとしては見逃せない情報のはずだ。上手いことこちらの計画通りに動いてもらうことを願うばかりだ。 始球式はヒーローが登場すると当然のごとく盛り上がった。そして見事な投球を見せてくれた。その後の試合では俺が所属する球団は勝利。俺も打点を稼げた結果となった。試合が終わると俺は用があると言って球場をすぐに出てタクシーに乗り込んだ。タクシーはどんどん人気のない所へと移動して行く。もちろん運転手は組織の仲間だ。タクシーはとある人気のない工場へと辿り着いた。ここは既に取り潰された小さな工場で人も寄り付かない場所だ。タクシーの扉が開くと俺は演技を始める。 「おいっ!どこに連れてきてるんだよ!俺はこんな所言ってないぞ」 運転手に向けて予定されていた言葉を吐くとこれまた予定通り運転手に化けていた仲間が俺に銃を突きつけて降りるように指示をする。 「おいっ、何のつもりだ?俺をどうするつもりだ」 このタイミングで工場から待機していた仲間が現れる。そして運転手も本来の戦闘員の姿へと変わる。 「おっ、お前ら、最近有名の」 俺が青ざめ、茶番を続けていると何とも逞しい声が聞こえた。 「そこまでだ!!」 そしてその声と同時に俺に銃を向けていた仲間が後ろに吹き飛ばされた。代わりに現れたのはレオパードマン。豹を模したマスクと黄色のスーツは目立つのですぐに分かる。俺を庇うように現れたその背中は何とも頼もしいものだ。俺が普通の一般市民なら助かったと安堵出来たことだろう。だが、今の俺はそうではない。このヒーローは総帥に仇なす敵だ。でもすぐに理解させてやるからな。総帥と敵対する事が間違っているということを。 「菊地選手!すぐに離れてください!ここは俺にまかせて、仲間もすぐに助けに来ますから!」 そんなヒーローらしい言葉を吐き捨てるレオパードマンの後頭部に銃を突き付ける。 「まさか、すでに...」 「えぇ、ここにヒーローの味方なんて1人もいませんよ」 「そんなものマスクごし...」 吐こうと思われるセリフはまさに台本通り容易に想像出来たので俺は躊躇いなく撃ち込んだ。 「ではあっあァァっ!」 ヒーローが被るマスクを想定せずに何も準備をしないはずがない。この洗脳ピストルは他のよりも高出力の超音波が出る特別製だ。一般人に撃つと忠実な兵士は出来るが精神に少し支障きたす代物で中々活躍の場が無かったが、ヒーローとなれば別だ。ドクター曰く、逆にこの特別製を使わないと無駄に強靭な精神で総帥の素晴らしさが理解出来ないなんて事も有り得ると仰っていた。そんな事はないと思っていたが、実際その様子を見てみると頭を抱えて膝を着きはするがまだ抵抗はしているようだ。 「あっ、あ"ぁっ、お、れ、は...」 さっさと総帥に服従すれば幸せになれると言うのに。そして自分が如何に愚かな事をしているかも。時間がかかりヒーローの仲間が来れば面倒だと思い、俺は再び撃った。すると今度は苦しむこと無く力が抜けて頭も手もガクンと垂れる。一瞬やってしまったかと思ったが、すぐにその顔は上がり俺を見てニヤリと笑い、立ち上がった。 「ありがとうございます、菊地選手。あなたのお陰で俺も組織に服従する兵士になれました。これからは同じ仲間としてよろしくお願いします」 そして先程の始球式で会った時よりもガッシリと握手を交わした。 レオパードマンがマスクを脱ぐと、そこからはまだ若い青年の顔が現れる。短髪の精悍な顔付きでまさにヒーローにはぴったりと言った爽やかな風貌だ。 「さて、僕は基地には連れて行ってくれるのですか?ヒーローとして迷惑をかけたのは自覚してますが、総帥へのこの忠誠心が爆発しそうで。早くお会いして命令を頂きたいんですよ」 うっとりとした表情で語るヒーローにこれが特別製の効果なのだと悟った。特殊な忠誠心が総帥へと向けられている様子からあのヒーローが本当に俺たちの仲間になったのだと実感した。 「いや、すでに命令は頂いている。レオパードマン、悪いがまだ正義のヒーローとしていてもらう」 俺の言葉に不服そうな表情を浮かべるが気にせず続ける。だが、俺の次のセリフにその表情はガラッと変わる。 「総帥はもう一人、ヒーローが欲しいそうだ」 そう言って俺が持っていた銃を渡した。 「あぁ、そういうことですか。さすが総帥、俺にピッタリの任務ですね」 「スパイとしても考えていたそうだがヒーロー達の中にずっといるといつボロが出るか分からないからな。だがヒーロー達の定期的な情報はあった方がいい。だから頭の回転が早い職員に心当たりがあればソイツをスパイに仕立ててくれ」 「りょーかい。任せてください。俺の初任務、必ず成功させますよ」 レオパードマンは爽やかな笑顔で拳を胸に当てた。そして他にも任務に必要な道具を渡していると、レオパードマンの顔つきが急に険しくなる。 「すいません。俺が呼んだ応援、もう来たみたいですね」 「仕方ない。あとは頼むぞ」 レオパードマンは再びマスクを被り、俺の合図で全員数分前の立ち位置に戻った。戦闘員と対立するレオパードマン。レオパードマンの背後にかばわれる俺。そして2人のヒーローがそこに加わった。 「大丈夫か!」 「悪い、雑魚が他にもいて遅くなった」 現れたのはイーグルマンとオーカマンだ。 イーグルマンは長く活躍するヒーローでその人気も実力も高い。オーカマンはレオパードマンと同時期にデビューしたヒーローだ。人気はあまり他のヒーローに比べればないがその戦闘力は高く、どちらかというと男子に人気のヒーローだ。 「さあ、おとなしく捕まってもらおうか。レオパードマンはそのまま菊池選手の保護を」 「はい!」 イーグルマンが勇ましく戦闘員たちに言葉を放つが、そこから戦闘という事はなく、作戦通り仲間たちはエスケープワープでその場をすぐ離脱した。 「またか…あれのせいでメテオスの情報が皆無だ。戦闘員から聞き出そうにもあれで逃げられてしまう」 「くそっ、あの組織、前まで雑魚みたいな奴らだったのに。一体どうなってんだ」 組織の悪口が出るオーカマンに対してレオパードマンはマスク越しからでも分かる殺気を飛ばし始めたので俺は焦って話に割って入った。 「すいません。助かりました、本当にありがとうございます。あなたたちがいなければ連れて行かれる所でした」 野球選手のスイッチを入れて、そして被害者として助かったことに安心した表情を見せて俺はヒーローたちに頭を下げた。まあ実際に、俺の役割を全うできた安心感はある。そして総帥の役に立てた喜びも。股間を勃たせないように必死に我慢しているぐらいだ。あとはレオパードマンが上手くやってくれればこの任務は成功と言える。俺は自作自演がばれないように気を抜かず、ヒーローたちが呼んだ警察に手厚い保護を受けるのだった。


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