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龍星色(元・罰印) from fanbox
龍星色(元・罰印)

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異世界融合物語(4):秘密の能力は他人に隠す

ゆっくり描写している分、進行が遅いなぁと感じつつ。

次に融合装置を使う(使われる)人物は、どんなのがいいかなと考えてます。

ネタ募集。


――――――――――


「タケル・シンギョウジ……。筆跡も秘密の質問も一致していますね。まさかと思いますが、本当にタケルさんなんですね?」


 ギルドの事務員である女性が、登録した俺の情報と、今回俺が答えた内容とを確認している。

 当然のことながら、女になった俺が「真行寺丈である」と言った所で、誰も信用はしない。そういう時に備えて、ギルドには筆跡と、本人しか答えの分からない質問を預けている。


「確かに信じられないよな。つい先日まで男だったのに、こんな体になっちゃってるんだから」


 男の時の服をそのまま着なおして、俺は冒険者ギルドに戻ってきていた。『神秘の双翼』が戦死したという事を、冒険者タグを渡しながら伝え、同時に俺が俺である旨の報告もしたのだが、当然のことながら信じてもらえず、奥の応接室で質問が行われているという事だ。

 対外的には『洞窟のダンジョンの奥に潜んでいた錬金術師がトラップを仕掛けており、それに引っかかった』という形で説明をしている。


「ですけど、タケルさんがその姿になっちゃったのも現実ですし、そこを疑う訳にはいきませんよね」

「疑われたら、自分を証明するものがギルドに預けた質問の答えくらいしかないんだよね……。ホント、困った事にさ」


 姿が変われば、自分の証明が出来ない。その当たり前の事実に、ギルドに帰ってくるまで気付いてなかったんだから、我ながら後先考えなかったというべきか。


「ともあれですね。あなたがタケルさんであることの証明は出来ましたから、冒険者タグはそのままお使いください。タグの情報に姿が変わった事は記しておきますから」

「ありがとう」


 ギルドの女性事務員が俺の冒険者タグを返却してくれて、ありがたく俺は「真行寺丈である」という保証を得られた。冒険者ギルドにも認められた為、変わらずクエストを受ける事ができる。

 肉体の運動能力に慣れるまでは、変わらず慰霊師として活動することにするが、その内に拠点を変えて、本格的に動こうかなとも考えている。


 今、俺が拠点にしているラングルの街は、あまり大きな所ではない。冒険者ギルドがあって、宿兼酒場の数もそんなに多くない。

 だからこそ、「俺が女になってしまったこと」はあっという間に広まってしまい、同じ冒険者たちから奇異と好奇の目で見られている。


「よぉタケル! 女になった気分ってのはどうよ!」

「イイ女になったじゃねぇか! 慰霊師なんて辞めて娼館で働いたら良いんじゃねぇか!?」

「自分のおっぱい揉んでみたかァ? 気にすんなよ、自分のだろぉ?」


 とまぁ、粗野な『スティール』ランクの冒険者連中はこう言ってくる。ランクが最低位の『ストーン』である俺よりワンランク上だから、俺を下に見て囃し立ててくるのだ。

 そんな連中の言葉を無視して、俺はギルドを後にする。下手に突いて事を起こすつもりもないし、何より俺は連中よりさらにランクが上の、『ブロンズ』ランクである4人の融合体と一つになったのだ。連中に関わってる時間さえ惜しい。

 俺は拠点にしている『銀の角の牡牛亭』に戻り、女将さんに同様に説明して理解してもらって、借りている部屋に戻り、ようやく一息つくことができた。


「はぁー……、融合するの、メリットばかりじゃなかったなぁ……」


 ベッドに身を横たえながら独り言ちる。確かに4人分の能力は手に入ったが、その代わりに「自分の証明」が難しくなったのはある。

 それでもこの気持ちよく、力強い身体を手放す事なんてできそうにないし、そもそも分離の仕方さえわからないのだ、できる筈がない。


 息を吸ってベッドから立ち上がると、身だしなみを確認する用の姿見鏡に、自分の姿を映す。


 身長は170に行かないくらいだが、それでも女性としては身長が高い部類に入るだろう。

 髪の毛は男の時より長くなっており、4人が融合した結果の薄紅色が室内の明かりに光る。

 前衛の剣士であるレーナ・ルビナ姉妹、そして格闘家のアネッサが融合した影響で、肉体はスラリとしつつ筋肉もしっかりとある。

 なにより女性としての豊満な肉体が損なわれる事なく、俺の物になったのは本当に幸運だ。


「エルフと融合したから、耳も変わるかと思ったけど、そうでもないな……」


 エルフは通称、耳長族とも呼ばれている。人間と外見的には大差ないが、長く伸びた耳が、外見における最大の特徴だ。

 だがどうやら俺と融合し、その影響か耳は普通の人間と同程度の大きさになっている。この調子なら俺は前と同じく、人間と思われるだろう。

 瞳は青くなっており、ぱっちりとした二重まぶたになっている。改めて顔立ちを見ても、凛々しさと可愛さを両立したような顔立ちで、男女ともに受けはいいかもしれない。


「そしてなにより……、『万物収納(オールイン)』!」


 何もない所に手をかざしてスキルの名前を言うと、突如光が現れすぐに収まると、そこには融合装置が存在していた。

 そう、これはユニークスキル。一万人に一人、持っているかいないかと言われる特別なスキルだ。

 冒険者になった時にジョブスキルとして、『収納箱(アイテムボックス)』と呼ばれる、細々とした道具を収納できる特殊なストレージを持てるのだが、『万物収納』はそれより上のものだ。

 具体的に言えば、収納できるものが『収納箱』より大きく、制限がない。


 普通のジョブスキルで使える『収納箱』は、基本的には背負い袋くらいのサイズが限界だし、生肉は入れられても生き物が入ることはない。それに時間が普通に経つから、食品は時間経過で腐ってしまう。

 だが、『万物収納』と呼ばれるユニークスキルはその制限が一切ない。サイズを問わず、生き物の生死を問わず、時間が経たない。まさに特殊スキルだ。

 これはメリッサが使っていたもので、これでパーティの荷物管理を一手に引き受けていたようだ。

 全員と融合した事で、これも使えるようになっていたのだ。


「いやぁ、本当に助かったよ。これがあれば色んな事ができるようになるからな」


 融合装置をあのまま放置しなかったのは、見つかってしまえば他の錬金術師によって研究される恐れがある。そうなればどこで「俺が『神秘の双翼』と融合したこと」がバレるかもしれない。それだけは避けたかった。

 俺は融合装置と、それに関するメモ書きを『万物収納』で隠し持ち、いざという時に使えるよう証拠隠滅したのだ。


「……とはいえ、次に使う理由なんて見当たらないけどなぁ」


 融合装置を『万物収納』でしまいながら、俺はベッドの上に腰を下ろす。これを使えば最低でも人が一人消えて、新しい『知らない人物』が一人生まれる。

 その説明も大変だし悩ましい。常に冒険者ギルドが信じてくれるわけではないのだから、考えてみれば使い道をどうすればいいか、というのは、すぐに出てこなかった。


「まぁ、いいや。それより今は着替えと……、新しい装備だな」


 俺はベッドから立ち上がり、今までの慰霊師として蓄えていた資金を持って、『銀の角の牡牛亭』から一度出る事にする。

 手持ちの、護身兼用のナイフだけでは心もとないため、本当にいろいろ買い替えねばならないのだ。


 * * *


 さて、ちょっとした事だが、慰霊師とは冒険者以外の需要もあって、意外と儲かる仕事であった。

 なにせ死んだ人間がアンデッドとして蘇生しないようにする、という意味では、当然ながら冒険者だけではなく一般人からの需要もある。

 死者がアンデッドになる理由は、今だ解明されていないらしい。魂がもう動かない肉体に入る、とか、魂だけで未練を果たそうとする、とかの情報は分かっているのだが、『何故そうなるのか』はまだなのだとか。

 だからこそ、慰霊師が死者の霊を浄化して、アンデッドとならないようにするというのは、決してバカにできたものではないのだ。


 そんな事もあり、意外と手持ちに余裕があったため、今後「どういうスタイルの冒険者になるか」を考えながら装備を整える必要がある訳だが。

 やっぱりレーナ・ルビナ姉妹の剣技やアネッサの格闘能力、メリッサの魔法、そのどれもが今後一級品になるべき能力を備えていたことは確かだ。そのどれもを、使い潰していい訳ではない。


 そんな事を考えながら歩いていると、軒を並べている露天商たちの中で、ふと懐かしいものを見つけた。


 ラングルの街からは異国の、遠い東にあるという『竜王国』と呼ばれる列島国からの輸入品を取り扱っている店だ。

 どんな偶然なのか、『竜王国』の様式は日本のそれと酷似していた。服は反物から作るし、美術品としても扱われている『刀』は、まんま日本刀のそれだ。

 刀が樽に入れられ、乱雑に何本も売られている。その樽には『一振り5ゴルド』と書かれている。


「おっ、お嬢ちゃん、刀が気になるのかい? 竜王国の刀は切れ味抜群だよ?」


 商人である、小さな丸眼鏡をかけた赤毛の女性が、同じく竜王国製の物だろう煙管を吹かしながら、俺に声をかけてきた。


「……いいね、ちょっと見せてくれるかな?」

「いいよいいよ、見とっておくれ。この国じゃ珍しいから、武器じゃなくて飾りとして買ってくれても大歓迎だよ」


 赤毛の商人としては、使い方は問わないようだ。品物が売れてくれれば満足なのだろう。

 乱雑に樽に入れられた十数本もの刀を見ながら、悩む。


「お姉さん、この刀、ちょっと抜いて見てもいい?」

「振り回したりしない限りは構わないよー」


 了承も得たし、俺はレーナがやっていたように、指先に魔力を集中させて刀を選別する。

 レーナは魔法剣士だが、魔術師としてもやっていけるくらいに魔法の扱いに精緻さを求めていた。それはこうして『鑑定』スキルとの併用を行う位に。

 『鑑定』は商人が持つジョブスキルで、その名の通り物の価値を見極めるスキルだ。それと魔力を合わせる事によって、『どれだけその物品に職人が魂を込めて作ったか』を見る事ができる。

 俺はその中で、最も魂を込められた刀を手に取り、軽く抜いてみた。


「へぇ……、これはまた……」


 俺は決して刀に詳しいわけではない。ただそれでも、反りも波紋も、切っ先の美しささえ、目を見張るようなものだった。

 じっと刀を見ている俺に、赤毛の商人が声をかけてきたので、俺は刀を鞘に仕舞いながら答える。


「……お嬢ちゃん、目利きかい?」

「いや、そんなんじゃないけど……。ただ、これは凄いな、って思って……」

「うんにゃ、凄いとわかるだけ目利きだよ。なんたってその刀は、廃業するって鍛冶師が最後に打った刀らしくてね。今までの全部を込めて打ったんだと」

「それが樽の中って……、いいの?」

「いいんだよぉ。掘り出し物ってのは、そういう物さね。ところでお嬢ちゃん?」


 にんまり笑う赤毛の商人は、馬車の中からもう一本、刀を取り出してきた。俺が手に取った刀……、打刀のサイズより小さな、脇差と思しきものだ。


「竜王国では『大小二本』と言って、刀は長短ペアで揃えるらしいんだ。これがその短い奴で、同じ鍛冶師がその刀とペアで作ったモノなんだよねぇ」


 あ、これ押し売ろうとしてるな?


「刀を使うにしても飾るにしても、もう一本、それも作り手の考えるペアであった方が、いいんじゃないかね?」


 そして俺の想像通りに、赤毛の商人は俺に脇差の方をちらつかせ始めた。

 俺は少しばかり考えて、赤毛の商人に訊いてみる。


「……ペアでいくらにしてくれます?」

「はっ! 初手値切りに来たかい! それはまた豪胆だねぇ。いいよ、こっちの短い奴も5ゴルドで考えてたけど、2本まとめて8ゴルドにしようじゃないか」

「わかりました、買います!」

「即決もまたいいね! 毎度あり!」


 嬉しそうに赤毛の商人は笑い、大小二本をすぐに刀を抜けないよう、簡単に包んでくれる。

 その間に俺はまた別のものを見て、いくつかの服と一緒に買う事にした。


「いやぁ、ラングルの街でこんなに買ってくれるお嬢ちゃんと出会えるとは思ってもみなかった! ありがとうねぇ」


 そうして俺は商品を受け取り、刀と服の代金を赤毛の商人に渡す。きちんとゴルド金貨を数えると、商人は明るい顔で言ってきた。


「バッチリピッタリ、刀と服の分受け取ったよ! いやぁ本当にありがたいねぇ」

「そう言ってもらって助かるよ。懐かしいものも見れたから、こっちとしてもつい買いすぎちゃった気がするけど……」

「気にしない気にしない! 商品と逢うってのは、その時だけの出会いなのさ。その刀もお嬢ちゃんに買われて嬉しいと思うよ」

「そうかな。とりあえず……、ちゃんと刀匠に恥じないように使わないとね」

「使うんだったら無茶しなさんなよ。ソードと違って細くて薄いからね、下手な使い方したらすぐ曲がっちゃうよ」

「理解はしてるつもりだよ。ありがとうね」

「おう! こっちこそ毎度あり!」


 そう言って、赤毛の商人とは笑いあって別れる事になった。

 俺は『収納箱』に服をしまいながら、次はどこに向かうかを考えていた瞬間、風にあおられて思い出した。


 ……そういえば下着、買わないとな。


 服以上に買ってしまわないように留意しながら、俺はランジェリーショップへと向かうのだった。


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