ブチッ…
ブチッ…
ハラリ……
「縄原さん、ありがとうございます。」
「うぅ…縄の跡がひどいよ……」
私たちの身体を縛っていた縄は縄原さんの手によって解かれました。優奏は縄の跡がついた手首を摩っています。
「クナイなんて初めて使いました。お二人は本当にくノ一なのですね。」
縄原さんは私のクナイを興味深く見ています。
記憶をなくしてしまった縄原さんに何から伝えて良いのか分かりませんでしたが、とりあえず私たちの正体と、捕まっていた理由を伝えました。
「えっと…あなたたちは私を狙っていた悪党に捕まってしまって、えっと…その…ギチギチに縛られていた…と。」
縄原さんはモジモジしながら私たちに尋ねました。
「はい。そんな感じです。」
本当は縄原さんをストーカーしていたところをあの男たちに捕まったのですけど、ややこしくなるので黙っておくのです。
「私のせいで…あなたたちみたいな可愛い女の子を怖い目に遭わせてしまったみたいね。本当になんと言って良いか…」
「ふぇ…可愛い…!?」
縄原さんの言葉に思わず動揺してしまいます。
「縄原が私たちに謝るなんて新鮮で可愛いなぁ」
優奏は縄原さんを煽るような態度をしていました。
「優奏!縄原さんは記憶を失くされているのですよ!」
非礼な妹を叱ります。いつもは縛られて酷いことされていても、それとこれとは話が違います。
「妹の優奏さんでしたよね。記憶がある頃の私はたくさん迷惑をかけていたのですね。本当にごめんなさい…」
縄原さんが頭を下げて優奏に謝りました。初めて見る姿です…。
「っ…なんだよ…もう…調子狂うなぁ…。いいよいいよ!私たちは縛られ慣れてるし、あんな縛りなんてどうってことないから!」
優奏は言葉では強いことを言っていても、心の中では先ほどの非礼を詫びているようでした。
「えっ…?縛られ慣れている……?あんな破廉恥な縛りを日常的にされているのですか…?」
縄原さんは顔を紅潮させながら尋ねてきました。
「っ…!」
優奏は「貴女に縛られているんだよ!」と言いたそうにしていましたが、口を噤みました。
「お恥ずかしいことに私たちは変な事件に巻き込まれやすい体質で…その度に縛られているのです。でも、時には縄原さん…貴女に助けられているのです。」
「私が…助けていた……?」
「はい。」
まぁ、助けられるよりも貴女に縛られたことの方が圧倒的に多いのですが…
「今回も縄原さんが私たちを助けてくれたのです。その時に悪者の攻撃を受けて記憶を失われてしまいました。助けてもらった代わりとはなんですが…記憶を取り戻すことに協力させてください!」
「ま、まぁ、今回は縄原がいなかったら酷い目に遭ってたとおもうし、協力してあげないこともないよ」
ふふ、優奏は照れ屋さんなのです。
「ありがとうございます…。貴女たちみたいな親切な方々に囲まれているなんて、縄原麻美という人物はとても幸せ者だったのですね。」
やっと表情から緊張と不安の色が消えて、縄原さんが笑顔を浮かべました。その表情に私たちは見惚れてしまっていました。
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「つまり…私は市長で、たくさんの悪事を暴いていく中で恨み買って今回のようなことになった…ということね?」
「そうなのです。貴女は市長として働くだけでなく、裏で悪者を成敗していたのです。」
本当は『全少女緊縛計画』を進めていたのですが、それは黙っておくことにします。記憶がない状態で真実を告げることは精神的に大きな負荷を与えてしまうと考えたからです。これには優奏も同意してくれました。
「なるほど…。」
記憶があった頃の“縄原麻美”について知っている限りの情報を伝えました。
「記憶が戻るまで以前の私のような仕事を務めることはできるのかしら?」
縄原さんは不安そうに呟きます。
「私たち姉妹もできる限りのことは協力します。だから安心してください!」
胸をポンっと叩きます。
「ありがとうございます。」
縄原さんは私たちに頭下げました。
「じゃあ早速聞いてもいいですか?」
縄原さんは申し訳なさそうに言いました。
「はい、なんでしょう?」
私が伺うと縄原さんはスマートフォンの画面を見せてきました。
「コレってどういう意味だかわかりますか?」
スマートフォンの画面には次のように書かれていました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
黒忍
『小娘たちを捕らえることは出来ましたか?私たちも応援に駆けつけた方がよろしいですか?』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「こ、これは…」
縄原さんの部下の黒忍からのメッセージでした。普段通りならなんてことないことですが、記憶を失っている今は別です。今の縄原さんに私たちを縛って調教することが楽しみだった事実を伝えるのは精神的な面で危険です。
「縄原にはね、たくさんの部下がいるんだよ」
「部下…それはお役所とかの方ですか?」
「ううん。ちがうよ。縄原直属の部下で私たちは“黒忍”って呼んでる」
「黒忍…?」
「ゆ…優奏…?」
まさか…真実を伝えるつもりですか…。
「そう、黒忍。縄原に手を出そうとする悪い奴を捕まえてくれる人たちのこと。」
「その黒忍さんたちが私に連絡?小娘たちを捕まえる…え、それって…私が女の子を捕まえようとしている……」
「ちょっと違うかな。縄原は無闇に女の子を縛ったりなんかしないよ。特別な理由があるんだ。」
「理由?」
「オシオキって言えば伝わる?」
「悪いことした子供に対する“躾け”みたいなことですか。」
「そういうこと。そしてその躾けのお手伝いをしているのが黒忍たちってわけ」
「なるほど……」
「そして、いまその黒忍たちが標的にしてる小娘たちってのが、私とお姉ちゃんってこと。」
「えぇ!そうなんですか…」
「あはは…その通りなのです。」
「おふたりは私を助けてくれたじゃないですか。何も悪いことなんて…」
「寝坊しちゃったんだ」
「え?」
「私とお姉ちゃんは寝坊して学校に遅刻しそうになってたところを悪者に捕まっちゃったんだ。」
「ね、ねぼう…ですか。でもそれくらいのことであなたたちを捕らえるなんて…」
「縄原はこの前もそんなこと言って見逃してくれて、学校への便宜も払ってくれたんだ。でも流石に今度は縄原の手を煩わせるわけにはいかない。戒めを受ける必要がある、そう判断したのが黒忍たちなんだ。」
息を吐くように嘘を吐く優奏。我が妹ながら恐ろしいのです。でも、なんとか誤魔化せそうです。
「そこで縄原に一つお願いがあるんだ。」
「お願い?」
「黒忍たちに記憶喪失がバレると非常に面倒くさくなると思う。だから、私が言うように振る舞って欲しいんだ。」
「えぇ、頑張ってみます…」
「ありがと。それじゃ、打ち合わせるよ!」
私たちは優奏の作戦を聞き、黒忍が来るのを待った。
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『縄原様、ご無事でしょうか!』
数分して黒忍たちが到着しました。黒忍たちの手にはたくさんの麻縄やボールギャグが持たれていました。
「っ!?縄原の部下…」
「あんなにたくさん…」
私と優奏は背中合わせに立ち、辺りを見渡します。縄原を囲むように黒忍が構え、脱出は困難のようでした。
「お、おとなしく、し…縛られなさい!」
縄原は麻縄をピンッと引っ張りながら私たちに言いました。
「いやだよ〜!お姉ちゃん、いくよ!」
「はい!」
私たちは黒忍たちに向かって行きました。
ズテッ
そこで“わざと”転びました。
『いまだ!縛り上げろ!』
転んだ私たちに馬乗りになるように黒忍が襲いかかります。
すぐに両腕は後ろに捻り上げられ縄がかけられていきます。
ギチギチ…
ギチギチ…
ギュッ…
後手に縛られ、胸の上下にも縄がかけられていきます。そして閂を施されてしまいました。
さらに黒忍は私たちの腰にも縄を巻き始めました。
「いや…逃げないから股縄は……」
ギュゥ…
「んぁ!?」
股縄が食い込みはしたない声を漏らしてしまいます。
「縄原様、小娘たちを拘束しました。」
「よ、よくやったわ。ありがとう。」
縄原さんは黒忍から縄尻を受け取った。
「これから、この子たちを…ちょ…調教するわ。あなた達にはしばらく休暇を与えるわ。ゆっくり休んでおきなさい。」
「御意。では失礼します。」
そう言い残し、黒忍たちは去っていきました。
その場に残されたのはギチギチに縛られた私たちと縄原さんでした。
「えぇっと…これで大丈夫ですか?」
「はい!縄原さんの記憶が戻るまで私たちが全力でサポートします!」
私は縄原さんの方を振り返りながら告げました。
縄原さんの記憶が戻るまでの長い日々の始まりました。