XXX4Fans
氏裸 from fanbox
氏裸

fanbox


【小説】魔法のTSアーティファクト

「ここにもないか……一体どこにあるんだ?」


閑静な住宅街を歩きながら俺はため息を吐いた。

俺はこの世界に点在する魔法のアーティファクトを回収することを生業としている。

一体どこの誰が何の目的で作ったものなのか、そもそもどのように作られているのか、全てが不明なのだがどれも野放しにしておけないようなものばかりだ。

そのため政府に設立された専門の機関によって問題が起こる前に回収作業が進められている。

俺もその機関の一員というわけだ。

この魔法のアーティファクトは特殊な電波を発しているようで、機関によって作られたセンサーによって場所を感知することができる。

今回このセンサーによって、この街に新たに五つのアーティファクトが感知された。

どんな効果を及ぼすのかも調べがついているため、できれば誰かに見つかる前に俺が見つけてしまいたいのだが……。


「まずいな……早く見つけないと誰かに使われちまう」


俺は内心焦りを感じていた。

魔法のアーティファクトは触っただけで効果を発してしまうため、偶然見つけた人間に被害が及ぶ可能性が高い。

とにかく早期発見が重要なのだが、センサーを使っても詳細な場所までは特定できないため捜索が困難なのだ。

まだ日も高くて外を出歩いている人間も多い。

このままでは先に誰かに発見されかねない。


「……ん? センサーの反応が強まったな。この辺りにあるのか?」


周りを見渡してみると、センサーの強まった方向には公園があった。

もしかしたらこの公園の中にあるかもしれない。

俺は祈るような気持ちで公園の中に足を踏み入れた。




────────




「ママ! みてー! おやまできたー!」

「わぁ! すごいね、けんちゃん!」


ママがぼくのほうをみてパチパチと手をたたいてる。

ママがうれしそうでなんだかほこらしい。

ぼくは今ママといっしょに公園であそんでる。

とくにぼくはすなばであそぶのが好きだ。

すなをつかってぼくの好きなようにやまをつくるのがとても楽しい。


「あれ? なにかあるよ」


ぼくはすなばの中になにかうまってることに気づいた。

なんだろう?

ぼくはそれを手にとった。

おようふくみたいだけど、よくわからない。

ぼくはそれをママにみせた。


「ママー、なにかへんなのあった!」

「ん? 何見つけたの? ……これ、抱っこ紐だね。赤ちゃんを抱っこするときに使うんだよ。他の子のママが忘れてっちゃったのかな?」


ぼくは手にとったそれをよくみた。

ママに言われてもよくわからない。

おとなの人があかちゃんのおせわをするのにつかうのかな?

するとそのとき、ぼくのむねがいきなりドクンッとなった。


「うっ、ううっ……!?」

「けんちゃん? どうかしたの?」


なんだか急に気ぶんがわるくなっちゃった。

ぼく、どうしちゃったの?

もしかしてびょうきになっちゃったの?


「け、けんちゃん!? 大丈夫!? しっかりして!」


ママがあわててぼくにかけよってくる。

でも、ぼくのむねはドクンドクンとどんどんつよくなっていく。

すると、ママの体がいきなり小さくなりはじめた。


「あれ? ママが小さくなっちゃったよ?」

「け、けんちゃん……?」


いつのまにかママと目のたかさがあっている。

どうしちゃったんだろうとおもっていると、ママだけじゃなくてまわりのものがみんな小さくなっていた。


「そっか、ママじゃなくてぼくが大っきくなってるんだ!」


体をみおろすと、手あしが長くのびていてまるでぼくのものじゃないみたいだった。

ぷにぷにでみじかかった指もすらっとほそながくなっているし、ママがみじかく切ってくれたばかりのかみもすごく長くのびて風にゆれてる。

さらに、むねがぼくのきているパーカーを少しずつおしあげるようにふくらんでいってパンパンになってしまった。

まるでママのおっぱいみたいだ。


「わわ、ど、どうなってるの!? ……あ、あれ? こえがへんだよ?」


ぼくはじぶんのこえがなんだかじぶんのものじゃないみたいにきこえた。

いつもの高いこえじゃなくて、ちょっと低くておちついてるおとなの女のひとみたいなこえになってる気がする。


「ん、ああ……おまたが、なんかへん……」


ぼくはズボンの中にあるおちんちんがきゅうにムズムズするのをかんじた。

ちょっとかたくなっていつもより大きくなったあと、こんどはどんどん小さくなっていく。

そのまま体の中にシュルシュルとおちんちんがすいこまれていって、さいごにはなくなっちゃった。


「お、おちんちん、なくなっちゃった……」


ぼくはなにもなくなったおまたをなでた。

いつもならおちんちんが手にあたるのに、ぜんぜんなにもなくてへんにかんじる。


「あれ? こんどはおようふくが……」


すると、ぼくのきているおようふくが少しずつかわりはじめた。

背なかにキャラクターが大きくかかれている青いパーカーが、ママがきるみたいなうすい色のセーターになっていく。

ベージュのズボンはふわっとしたやわらかさにかわりながらおおきく広がっていってスカートになった。

白いくつしたは黒くなりながら足をおおうようにのびていってこしまでおおうタイツにかわった。


「け、けんちゃん……」


ママがぼうぜんとした目でぼくのことをみてる。

ぼくはじぶんのむねポケットからかがみをとり出してのぞいてみた。


「なにこれー!? ぼく、おとなのおんなのひとになっちゃった!」


ぼくがしゃべると、かがみにうつったおんなのひともしゃべる。

おとなのひとなのに、しゃべり方はぜんぜんおとなのひとっぽくなくてへんなかんじだ。

すると、いきなり大きなこえがぼくの耳にはいってきた。


「おぎゃあっ! おぎゃあっ!」


こえの方をみると、さっき手にとっただっこひもがじめんにおちている。

その中にはあかちゃんがつつまれていた。

それをみたしゅんかん、ぼくの頭の中に何かが駆け巡った。


「た、大変! ごめんねあっくん! こんなとこに放り出しちゃって……!」


慌てて抱っこ紐を体に付けて赤ちゃんを抱きしめる。

なんとかあやそうとしても赤ちゃんはなかなか泣き止んでくれない。

私は必死になってあやし続けた。


「もう大丈夫だよー? ママがついてるからねー? ……あ、あれ? 私、何して……」


そこで私はふと冷静になった。

なんで、私はいきなり赤ちゃんの世話をしているの?

さっきまで私は公園で遊んでるただの男の子だったはずなのに。

いや、そもそもさっきから頭の中がおかしい。

どうしてまだ学校にも通っていないレベルの幼児だった私がこんなにはっきりと物事を考えられるの?


「い、いったい、何が起きているの……?」

「おぎゃあっ! おぎゃああぁっ!」

「あ、ごめんねあっくん、よーしよーし」


このおかしな現状を分析しようにも、泣きじゃくる赤ちゃんについ気を取られてしまう。

何故だか私はこの赤ちゃんを放っておくことができなかった。

今初めて見た子であるにも関わらず、愛おしい気持ちが溢れて止まらない。

このままではなんだかまずい気がする。

すると、それまで呆然としていた私のママが急に目をパチクリとさせた。


「……あれ? 私、こんなところで何してたのかしら……? 子供もいないのに一人で公園に来るなんて、ちょっとぼーっとしてたみたいね……」


そう言うとママは出口に向かって歩き始める。


「ま、待ってママ! どこに行くの!?」


私が慌てて呼び止めてもママは振り返りもしない。

まるで私のことがわからないみたいに。


「ママ、行かないで! 私を置いてかないで!」

「おぎゃああぁっ! おぎゃあっ、おぎゃあぁっ!」

「あ、ご、ごめんあっくん、急に叫んだりして怖かったね、ごめんね」


あっくんの頬を撫でてなんとか宥める。

ようやく少し落ち着いてきたところで周りを見ると、もう公園には私たち以外誰もいなくなっていた。


「そ、そんな……」


私はいなくなってしまったあの人のことを考えようとしたけれど、そこで唐突に思考が止まってしまった。


「……あれ、さっきまで誰と一緒にいたんだっけ……?」


ずっと一緒にいたはずの人が誰なのか思い出せない。

ついさっきまでここにいたというのに、その顔もよくわからない。

私が私に変わる前はとても大切な存在だったはずなのに……。


「……待って、私ってそもそも誰だったんだっけ……?」


自分のことを思い出そうとすると、一児の母として公園に来た今の自分のことしか思い出せない。

今の私に変わる前は私はどんな人間だったの?

容姿どころか性別も年齢も何も思い出せない。

一人称はなんだったんだっけ?

俺?

あたし?

僕?

……駄目だ、何もわからない。


「うう、私は……私?」


考えれば考えるほどに今の自分が自分だと自然に感じられてしまう。

……そもそも私は本当に別の人物から変わったのだろうか?

突然そんな妄想が頭に浮かんだだけじゃないのだろうか?

大体人間がいきなり別の人物になってしまうだなんて冷静に考えたら有り得ない。

ふと顔を下すとあっくんの顔が目に入る。

お腹を痛めて産んだ愛おしい我が子だ。

……うん、そうだ。

私はあっくんのお母さんなんだ。

この子がいれば、今はそれでいい。


「そうだ、お夕飯のお買い物しなきゃ……」


私は買い物に向かう途中だったことを思い出し、あっくんを抱っこしたまま公園から出た。




────────




「一足遅かったか……」


俺は物陰から公園の中で起こったことを眺めていた。

あそこにいた子供が手にとったのは魔法のアーティファクトの一つ『魔法の抱っこ紐』だ。

あれを手に取った人間は問答無用で子持ちの人妻になってしまう。

元の姿に関係なく、ただ自分の子供を愛する母になってしまうのだ。

そして、次第に自分が元々母親だったと思うようになり、やがて変化が起きたこと自体を完全に忘れてしまう。

しかも変わるのはそれだけでなく、その周囲の人間関係も全て変わってしまう。

あの元子供の母親には元々子供がいなかったことになり、母親となったあの子供には自分の子供と旦那が自動的に充てがわれる。

あの子供が母親という存在に変わったことでこの世界全てが改編されてしまうのだ。

その影響力を考えるとなんとも恐ろしい話だ。

もっとも、変化が起きるのは一度だけで、使われた後魔法のアーティファクトは効果のないただの物に変わってしまうため、これ以上世界に影響を及ぼすことも悪用される心配もない。

だからこそ使われる前に回収をしたかったのだが、不幸にも今回は間に合わなかったようだ。

あの子供には悪いが一度発動した効果を取り消す術はない。

せめて母親として幸せな人生を歩むことを祈るばかりだ。


「これ以上ここにいても仕方ない。次の場所に向かおう。この区域にはまだあと四つも残っている」


俺は、自らの抱く子供に対して笑いかけながら歩く若い母親の方を一瞥した後、その場を後にした。




────────




「ちっくしょうっ! 今日はてんでツイてねえっ!」


イライラとした気持ちで俺はパチンコ屋を出た。

まだ昼間だからか駅前は人通りが多くさらにイライラさせてくる。

俺は近くに転がっていたアルミ缶を蹴り飛ばした。


「あ゛ー、ムシャクシャするぜ……」


俺は工場の三交代勤務をしているため普段からこうして平日の昼間にパチンコを打つことがよくある。

しかし、今日はいつにも増してボロボロの大負けだった。

おかげですでに今月の給料の半分はパーだ。


「……あん? なに見てんだよっ!」

「ひっ……」


俺はこっちの方をチラ見していた若者に怒鳴り散らした。

若者は怯えたように顔を逸らすとそのまま小走りで去っていった。

まったく、いい気味だぜ。

俺はああいう希望ある若者が大嫌いだ。

ふと、駅ビルのガラスに映った自分の顔が目に入った。

カーキ色のくたびれたジャンパーを羽織った、薄汚い無精髭が特徴的な小太りのおっさん。

惨めな俺の姿だった。


「ちくしょう……俺だって、俺だって……」


もっといい家に生まれれば、生まれる時代が良ければ、周りの環境が良ければ……。

つい、そんなことばかり考えてしまう。

しかし、そんなことは考えれたところで自分がより惨めに思えるだけだった。

俺はため息を吐きながら自販機の前まで歩いて行き、缶コーヒーを買うために小銭を入れた。


「……ん? なんだこれ?」


そのとき、自販機の横に女物の鞄が置かれていることに気づいた。

誰かの忘れ物か?


「……財布とか入ってたりしてな」


魔がさした俺は鞄を手に取り中を覗き見た。

その中には小さいポーチなどの小物とともに財布も入っていた。


「マジかよ……へへっ、ラッキーだぜ」


誰のものかは知らんがさっきの負けを多少なりとも取り返せるならかなりツイてる。

俺は財布を手に取り中身を確認しようとした。

が、しかし。


「……う、うぐっ!? な、なんだ……!?」


突然胸が苦しくなり、俺は思わずその場にしゃがみ込んだ。

心臓の鼓動が激しくて上手く息ができない。

いきなりの体の異常に俺はただ困惑していた。


「な、なにが起きて……ぐうっ……!」


すると、俺の体に少しずつ異変が起き始めた。

ゴツゴツとした俺の太い指が見る見るうちに細長くなっていく。

変化は指だけに収まらず、俺の硬そうな手はまるで別人のものように細くしなやかになってしまった。

そのまま変化は腕まで進んでいき、毛むくじゃらの太い腕が毛の薄い色白な細腕に変わる。

服の下ででっぷりとしていた腹はキュッと引き締まってズボンがダボダボになっている。

下半身の方もすね毛にまみれた汚い足がスベスベで綺麗な足に変わっていた。


「な、なんだこりゃ……うわっ、なんだ!? 髪が……」


ハゲ気味だった薄い頭髪も、気づくと肩に届くほどに伸びていた。

頭を揺らすとそれにつられて髪も揺れるのが違和感しかない。


「どつなってやがる……って、なんだこの声!? これじゃあ、女みてえな……」


自分の喉から出る声がしわがれたおっさんの声でなくなっていて驚愕する。

キンキンと響きそうな今の声はまるで女、それもかなり若い女の声だ。

変化はまだ終わらない。

体が徐々に小さくなっていき、服がどんどん緩くなっていく。

しかし、一方で胸の部分だけは今までなかった膨らみが形成されていた。

大きくはない成長途中のものだが、男にはないもので確かな存在感がある。

そして、パンツに包まれた股間の逸物にも変化はやってきた。

一瞬だけ血が集まって硬く勃起した後、静かにゆっくりと小さくなっていった。

やがて通常の大きさよりもさらに小さくなっていき、ついにはその存在感はまるでなくなってしまった。


「お、おい……これ、まさか俺女に……っ!? な、なんだ!? 服が……」


体の変化が終わったと思ったら今度は服が変わり始めた。

地味なカーキ色をしていたジャンパーが紺色になったかと思うと、厚手の生地のPコートになった。

中に着ていたヨレヨレの黒いTシャツは白い長袖のシャツに変わり、首元はグレーのマフラーに包まれた。

下半身を覆っていたジーパンはその裾が上がりながらどんどん広がっていき、やがて膝上のミニスカートに変わった。

ボロボロのスニーカーは黒いブーツへと変わり、そこでようやく変化は治った。


「……なんだよ、これ……」


俺は呆然となりながら呟いた。

あまりに突然のことに頭がついていかない。

いったいなにが起きたんだ?

俺は鞄の中にあった鏡を取り出すと覗き込んだ。

そこに映っていたのは雑誌のモデルにいそうな感じの若い女の顔だった。

目はぱっちりとした二重な上にかなり小顔で、元の俺の面影はまるでなかった。


「こ、これが、俺か……? そんな馬鹿な……」


高い女の声で俺は呟いた。

とても信じられないが、この声や鏡に映る姿が現実のものだとしたら、俺は本当に女になっているらしい。

俺は困惑しながらも鏡を覗き込んで百面相を続けていた。

すると。


「明日香? なにやってんの?」

「うわっ!?」


いきなり後ろから肩を叩かれて俺は飛び上がりそうになった。

振り向くと、今の俺と同じぐらいの年齢の若い女が不思議そうな顔でこちらを見ていた。

こいつは……。


「さ、智美ちゃん……?」


俺は無意識のうちに声を発していた。

そうだ、こいつの名前は智美ちゃんだ。


「そんな鏡なんか見ちゃって、どうしたの?」

「な、なんでもないよ」


俺は咄嗟に返事をした。

と、そこで俺は疑問を抱いた。

なんで俺はこいつの名前がわかったんだ?

というか、なんで俺はこんな普通にこいつとやり取りしてるんだ?


「ふーん……ま、いいや。それより早く行こ?」

「え? う、うん」


智美ちゃんが歩き出すのを見て、俺は咄嗟に鞄を手に取って後について行った。

いったいどこへ行くんだ?

そんなことを考えながら歩いていると、頭の中にこの先の目的地が浮かんできた。

駅前のビルの中にあるアパレルショップ。

そこがわたしたちの目的地だったはず。


「あ、あれ……? わたし……?」


わたしは自分の頭の中がおかしくなっていることに気づいた。

わたし、自分のこと前は俺って言ってたのに……。

知らないはずのことも何故かわかるようになってるし、もしかしてわたし頭の中までこの女の子になっちゃってるの?


「そ、そんな、どうしよう……」

「明日香? どうかしたの?」

「え!? な、なんでもないの。大丈夫だよ、智美ちゃん、あはは……」


わたしは笑って誤魔化した。

しかし、その一方で内心はかなり動揺していた。

普通に喋っているだけで女の子のように喋ってしまう。

前はもっと違う喋り方だったはずなのに……。

……あれ?

わたし、どんな喋り方だったんだっけ?


「さ、着いたよ」


智美ちゃんと共にお店の中に入る。

最近オープンしたばかりのレディースファッションのお店で前から一緒に来ようと智美ちゃんと話をしていた。


「明日香、前に新しいコート欲しいって言ってたよね」

「う、うん。そうだね」


そういえばそんな話をした気がする。

今着ているPコートは結構長いこと使っているのでそろそろ新しいコートが欲しいと思っていたのだ。


「あ、これちょっといいなあ……」


わたしは目に入った黒のロングコートを手に取った。

ちょっと大人っぽい雰囲気がして、なんだか憧れる。


「智美ちゃん、これどう思う?」

「ん? どれどれ?」


わたしは智美ちゃんに声をかけて聞いてみた。

智美ちゃんはこちらに近づいてくると、まじまじとわたしとコートを観察し始める。


「へえ、なるほど。明日香ってもっと可愛い服が好きなんだと思ってたけど、こういうのも悪くないね。試しに着てみな?」

「うん!」


わたしは試着室にコートを持ち込み、今着ているPコートとマフラーを脱いだ。

細い指を使って一つ一つボタンを外し、ハンガーに丁寧にかける。

そして、わたしはドキドキしながら黒いロングコートを羽織った。


「ど、どうかな?」


試着室のカーテンを開くと、その先にいた智美ちゃんがパァっと明るい顔になるのがわかった。


「いいじゃん! なんか一皮剥けたって感じするよ! いやー、明日香も大学生になってお姉さまって感じになってきたねー」

「えへへ、ありがとう」


少し照れながらわたしは返事をした。

智美ちゃんのお墨付きも貰えたしこのコートを買うことにしよう。

わたしは再びカーテンを閉めてコートを脱ごうとした。

そのとき、試着室の中にある鏡が目に入った。

黒のロングコートを羽織っている可愛らしい顔の女子大生のわたし。

その姿に一瞬だけ違和感が生じた。

……あれ?

わたしってこんな顔だったっけ?

そういえばここに来る前に何か考えてたような気が……。

けれど、どれだけ思い出そうとしても何を考えていたのかわからなかった。

……まあ、いっか。

わたしはPコートとマフラーを着直し黒いロングコートを手に持つと、鞄を肩にかけ直して試着室から出た。




────────




「ふぅ……なんとか話がまとまったわね」


取引先との営業帰り、私はほっと息をついていた。

契約に関する折衝が中々上手くいかず難航していたのだけれど、ようやく向こうの窓口の人と話をまとめることができた。

正直言うと今回の契約では開発に負担がかかってしまうような気もするのだけれど、まあなんとかなるだろう。

営業の私の仕事はあくまで仕事を取ってくることなのだ。

その責務を果たしたのだから後は開発の人たちに頑張ってもらわないと。


「さてと、早く会社に戻らないと……」


私は電車に乗り吊革につかまった。

そのままスマホをいじりながら電車に揺られていると、どこかからカラカラ……と言う音が聞こえてくることに気づいた。

音は少しずつ私の方に近づいてきてやがて私の足元まで来ると、私の靴に何かがぶつかった。


「? 何かしら……?」


私は足元に転がるそれを拾い上げる。


「これ……バット?」


それは野球で使われる金属バットだった。

誰かの落とし物だろうか?

辺りを見回したけれど、持ち主と思えるような人はいなかった。

きっと部活帰りの学生か誰かが置き忘れたまま電車を降りてしまったのだろう。

まったく困ったものだ。

このまま手に持っているのは邪魔だけれど、だからといってその辺に転がしておくわけにもいかない。

仕方ないので私が降りるときに駅員に渡そう。

そんなことを考えていたそのとき。


「ッ!? な、なに……!?」


急に心臓がドクンッと激しく脈打ち、私はよろめいてしまった。

目眩や吐き気にまで襲われ、どんどん体調が悪化していく。


「うっ……どうして、急に……って、え……?」


苦しさに耐えながら顔を上げると、私は違和感に襲われた。

吊革につかまる私の手が、何かおかしい。

普段から手入れをしていて清潔に保っているはずの手が、なんだか薄汚く黒ずんでいる。

それだけでなく、指先の爪はボロボロな上に指や手の甲には見苦しく毛が生えていて、手全体も骨張ったように太く逞しく見える。

よく見ると、その変調は手から腕に広がっていた。

スーツの袖をまくると、白かった腕が少しずつ日に焼けたように黒ずんでいく。

処理していたはずの毛も汚く生え散らかっていて見るに耐えない。


「な、な、なにこれ……!? なにが起きて……」


困惑する私をよそにどんどん変化は進んでいく。

タイトスカートから覗く足は細く華奢なものからどんどん太く筋肉質なものになっていく。

腕同様、処理済みの毛がどんどん生えてきてすっかりすね毛がボーボーになっている。

肩口に切りそろえていた髪はどんどん短くなっていき、慌てて頭を触るとジョリジョリした感触のする坊主頭になっていた。


「い、いや、なんでこんな……って、そんな、声も……」


私の喉からなる声は女性らしいソプラノボイスから、変声期を終えて低くなった少年のような枯れた声に変わっていた。

喉に手を触れると、そこにははっきりと出っ張る大きな喉仏の存在を確認できる。

すると、体全体が徐々に大きくなり始めた。

それまでよりも背が伸びさらに筋肉質なものに変わっていき、括れていた腰回りはがっしりとした腹筋を感じさせるものになっていく。

ブラに包まれていた胸の乳房は逆にどんどん萎んでいき、やがて平らで厚い胸板になってしまった。


「こ、こんなのって……ッ!? これっ、なにっ!?」


突如股間に強い刺激を覚えた。

股間の上の方のクリトリスのある場所が強く疼いたと思うと、その部分がどんどん大きくなっていく。

血が集まったように熱くなると、さらにその大きさは増していき、やがてスカートの上からでもわかるようにピンっとそそり勃っていた。


「こ、これって、男の……ひっ、今度は何っ!?」


私が股間から生えたものに戸惑っていると、着ていたスーツがカサカサと蠢き始めた。

女物のスーツだったそれは、硬い生地に変わると襟元まで覆う大きな学ランへと変化した。

タイトスカートも足元まで伸びていき、私の下半身全てを覆う長ズボンになっている。

そこでようやく変化が落ち着き、ゆっくりと顔を上げると、窓に映った私の姿が目に入った。


「こ、これが私……? 嘘よ、こんなの……」


そこにいたのはいつもの私ではなかった。

日焼けして黒ずんでいて、頭は坊主で、声は枯れていて、顔は野暮ったくて、地味な学ラン姿の男子高校生。

元の私の面影もない人物が困惑した顔でこちらを見返していた。


「あ、有り得ないわ、こんなの……そうよ夢よ、私は夢を見ていて……」

「おい! 亀田! お前なにしてんだ!」

「っ! はいっ! すみませんっ!」


突然名前を呼ばれたような気がして私は返事をしながら振り向いてしまった。

後ろには私の着ている学ランと同じ学ランを着た学生の集団がいた。

私は何故か行かなきゃいけないような気がして彼らに近づいた。


「なに離れたところにいんだよ? 彼女から連絡でも来たのか?」

「そ、そんなのいないっすよ!」

「ははっ、知ってるよバーカ」


私に声をかけてきた学生は私の背中をバンバン叩いた。

痛い、と思いながらも私は何故か抗議する気にもなれずただヘラヘラとしていた。

私、なんでこの子たちと普通に混じってるんだろう?

初対面のはずなのに、何故かどういう風に対応したらいいのかわかっているかのように私の口は勝手に開いた。


「それより先輩! あれの方は……?」

「おう、わかってるよ。ほら、これだろ?」


私に先輩と呼ばれた学生は鞄から何かを取り出した。

それはどうやらカバーに包まれたノートパソコンのようだった。


「感謝しろよ? パソコン持ってねえお前のためにわざわざ貸してやるんだからよ」

「はいっ! あざっす!」


私は頬がだらしなく緩んでいくのを感じながらそれを受けとった。

何故だか私は今とても嬉しく思っているようだ。

このノートパソコンに何があるの?


「そのノートパソコン立ち上げたらデスクトップに『保健体育』ってフォルダがあるから開いてみろ。そこにお前が散々見たがってた無修正のAVが入ってるからよ」


先輩の言葉を聞いて私は全て思い出した。

そうだ、私は先輩にスマホじゃ見れないようなどエロい女の無修正の動画見たいって話をしてたんだ。

全部俺が先輩に頼んだことじゃないか。


「マジ感謝っす!」

「別にいいよ。それより、それ高いんだから壊すなよ?」

「はいっ! あ、駅着いたんで降ります! おつかれっした!」


俺は先輩に元気よく返事をして電車から降りた。

と、そこでようやく俺は自分がおかしくなってることに気づいた。


「な、なんだよこれ……なんで俺、こんな男みたいに……」


俺は自分の口調や頭の中まで変わっていることに困惑した。

これじゃあまるで中身まで男子高校生になってしまったみたいだ。


「ち、違う違う! 俺はOLで、営業の仕事をしてて……」


俺は必死に元の自分を思い出した。

しかし、それもどんどん朧げになっていく。

取引先の人間や同僚の顔が少しずつわからなくなっていき、代わりに同級生や部活の先輩の顔が思い浮かぶようになってしまった。

まずい、このままじゃ……。

そんなことを考えていたら、いつの間にか俺は家に辿り着いていた。

どうやら考えごとをしながら無意識に歩いていたようだ。

何故だかはやる気持ちが募ってきて、俺は玄関の扉を開いた。


「ただいま!」


俺は家の中に入るとそのまま階段を駆け上がり自分の部屋に向かった。


「おかえり。たかし、あんたご飯は?」

「後でいい! 俺ちょっとすることあるから部屋入んなよ!」


俺は母親に向かって叫ぶと部屋に入って扉を閉めた。

俺は息がどんどん荒くなっていくのを感じた。


「はぁ、はぁ……」


俺は鞄から、先輩に借りたノートパソコンを取り出す。

そして机の上に置くとがっつくように電源を入れた。

起動に少し時間がかかり、俺は焦ったくなってつい貧乏ゆすりをしてしまう。


「っ! ついた!」


俺はデスクトップ画面が映ったのを確認するとその中にあった『保健体育』というフォルダを開いた。

中には動画ファイルが入っている。

これが……。

俺はごくりと唾を飲み込み、そこでふと我に帰った。


「っ! 待て待て待て! 俺はなにしてんだ!? 落ち着け、俺は本当は女なんだぞ! こんな、盛った猿みたいなことを……」


俺は女としての元の俺を思い出して今の自分の行動に嫌悪感を抱いた。

こんな、性欲に塗れた男みたいなこと、絶対にしてはならない。

しかし、その一方で俺の胸はずっと高鳴り続けている。

それに、俺の股間はビンビンに勃起していて、そこから精を吐き出すのを今か今かと待ち望んでいた。


「くそ……我慢できねえ……いや待て、そもそもなんで俺我慢しようとしてんだ?」


元が女だとしてもどうして我慢する必要があるんだ?

今の俺は男なんだからエロい動画見てチンコシコることぐらいなにもおかしなことじゃないだろう。

俺は心の中にあった枷が外れるのを感じると同時に動画ファイルをクリックした。


「お、おおっ! きたあっ!……」


動画ファイルが開くと、こちらを見て妖しく微笑む全裸の女が映っていた。

先輩の言っていた通り、完全無修正のようで女の股間にモザイクなどの邪魔なものは全くなかった。

女はそのままカメラの前で股を開くと、自分のマンコを弄り始めた。


「すげえ、マンコってこうなってんのか……」


女がマンコに指を突っ込んでいるところを見ながら、俺は自分のチンコをシコった。

初めて見る無修正のマンコに感動と欲情が止まらなかった。


「はぁ、はあっ……すげぇ、エッロ……」


女のオナニーが終わると、今度は男との絡みが始まった。

女は男と正面から抱き合い濃厚なディープキスをしたり、男のチンコをしゃぶってフェラチオをしたりと、そのエロい光景はいつまでも続いた。

それらを見ていると俺はどんどん興奮していき、チンコをシコる手が早くなっていく。

そして、ついに画面の二人はチンコをマンコに入れ始めた。


「おおっ、挿入ってく! すげ、モザイクなしの入るところ初めて見た……やっべ、クッソエロいじゃねえか……」


そのまま二人はパチュパチュと音を鳴らして腰をぶつけ合う。

無修正の接合部がしっかりとカメラに収められていて、俺の興奮は収まらない。

二人の動きはどんどん激しさを増していき、ついに果てそうなところまできていた。

俺は画面の中のフィニッシュに自分の射精を合わせようと画面を注視し続けた。


「んっ、くぅっ……おっ、イクッ……ぐっ、ううぅッ!!!」


画面の男が女の中に射精した瞬間、俺はチンコにティッシュを当ててそこに精液を吐き出した。

ビュルッ、と濃い精液がティッシュに出たのを見て俺は満足する。


「ああ……気持ちよかった……へへっ……」


俺は充足感でいっぱいになり、椅子の背もたれに寄りかかった。

するとその瞬間、いきなり部屋の扉がノックされ、俺は飛び上がりそうになりながら慌ててズボンを履き直した。


「たかし、あんたご飯まだ食べないの?」

「ちょっ、ババア! 勝手に入んなって言っただろ!」

「誰がババアよ! ちゃんとノックしたでしょ!?」


俺は母親にキレながらバレないようにノートパソコンを机の下に隠した。

母親は訝しげな顔をしていたが、やがてなにかを察したかのような顔をした。


「……ふーん、まあいいわ。済んだら降りてくるのよ」

「わかってるからさっさと出てけよっ!」


俺は母親を部屋から押し出し、思いきりバンッと扉を閉めた。


「クッソ……最悪だ、あのクソババアっ! これだから女は嫌いなんだよ! 俺たちの気持ちをなにも理解しやがらねえ……」


俺はせっかくのオナニーの余韻をぶち壊しにされ、イライラした気分でいっぱいになった。

そのまま乱暴に椅子に腰をかけると再びノートパソコンを開いた。


「ん? なんだこれ……」


デスクトップにはよく見ると『美術』や『生物』といった怪しげなフォルダがいくつか存在していた。

俺はなんとなく『美術』のフォルダを開いてみた。


「うお、すげ……エロ漫画が大量に……」


フォルダの中にはエロ漫画の画像ファイルがズラっと並んでいた。

それらはサムネイルを見ているだけで射精したばかりのチンコがビンビンに勃起するほどエロいものだった。


「先輩、こんなのまで持ってたのかよ……やべっ、またシコりたくなってきた……あれ? そういえばなにか考えなきゃいけないことがあったような……まあ、もうどうでもいいか。それよりエロ漫画っと……おっほ、エロっ……」


俺はエロ漫画を開きオナニーを再開した。

我慢することなく鼻の下を伸ばし、俺はチンコをシコり続けた。




────────




「ふあぁ……んっ、今日もよく勉強したな」


背伸びをしながら僕は予備校を後にして歩き始めた。

受験勉強は辛く苦しいことも多いけれど、少しずつ着実な成果が出ているのはやはり嬉しく思う。

先月の模試では第一志望のA判定を貰えているしこのままいけばおそらく合格できるだろう。

入試まであと少し。

気を引き締めて勉強しよう。


「キャハハっ! それマジありえなくない!?」

「ちょーウケるんですけどー!」


すると、後ろの方から大声で騒ぐ女の子の声が聞こえてきた。

見ると、ゲームセンターから出てきた女子高生がはしゃいでいるようだった。

もう夜だというのにこんな時間まで遊んでいたのだろうか。

見たところ、あまり頭はよくなさそうだ。

おそらくああいう人間たちとは僕は一生関わることはないだろう。

元々女の子にあまり興味はないけれど、仮に仲良くなるにしてももっと真面目そうな女の子がいいと僕は思う。


「……ん?」


歩いている途中で、僕は何かを踏んづけたことに気づいた。

足を退けて踏んでしまったそれを拾い上げる。

小さくて気づかなかったけど、どうやらそれは指輪のようだった。

宝石や装飾がジャラジャラと付いていてやたらと派手だ。

とてもじゃないけどこんなのをつける気にはなれないし、僕には関わりのない世界のものだろう。

僕は指輪を放り捨てようとした。

しかし、そこで僕は突然強い目眩に襲われた。


「うっ……な、んだ……これ……」


ドクンッと心臓が大きく跳ね、僕は耐えきれずその場に膝をついた。

急な体調の悪化に混乱しながらなんとか立ち上がろうと近くの壁に手をかけたところで、僕はおかしなことに気づいた。


「な、なんだこれ、手が……!?」


僕の手の指先には真っ赤なネイルが施されていた。

指は細長く華奢になっていて、元の僕の手とは思えない。

それだけでなく体全体が華奢になっていく。

腕、足、腰、それらが全て男らしさを失っていき、丸みを帯びた女性らしいものに変わってしまった。

そして、何もなかった胸がどんどん膨らんでいき、まるで風船でも詰めているかのようにパンパンに膨らんでしまった。


「こ、こんな……馬鹿なことが……っ、声も……」


いつの間にか声まで変化していた。

普通の男子高校生の声だったはずなのに、妖しさを感じるような艶のある高い声になっている。

さらに、頭の髪の毛もどんどん伸びていき、背中に届くまで伸びきると色が黒からブロンドに変わってしまった。

そして、最後とばかり僕の男としての象徴であった股間の物が縮み始めた。

もどかしい感覚に股間を抑えると、やがてそこにあった物の感覚は完全に消え失せてしまった。


「あ、ああ……僕のが、なくなって……」


股間の物の喪失感に戸惑っていると、着ていた制服が変化始めた。

ネクタイやワイシャツやズボンが全て一体化して真っ赤なドレスになり、履いていたローファーはハイヒールに、上に着ていたブレザーはファーのついたコートへと変わった。

そこでようやく全ての変化が終わったようで、僕はよろめきながら立ち上がった。


「わ、訳がわからない……こんな、非現実的なこと、ある筈が……」


あまりの異常事態に僕の頭は混乱するばかりだった。

しかし、どれだけ信じられなくても今の僕の体が女性になっていることは間違いなかった。

それも、僕が軽蔑するような夜の街で生きている女性のものに。


「あ、いたいた! マリコちゃーん」


すると、僕の方に手を振りながら誰かが近づいてきた。

スーツ姿の少し太った中年男性だ。

この人は、いったい……?


「お、今日も綺麗だねえ。さ、それじゃあすぐに行こうか」

「え、行くって……?」

「ん? ホテルに決まってるだろう? ははっ、がっつき過ぎかな? でも安心してよ。ちゃんとお金は用意してるから」


そう言うと中年男性は僕の手を引いてホテルへと入っていく。

これって、もしかして……所謂、援助交際ってやつじゃ……。

そんなことを考えているうちに部屋へと連れ込まれてしまった。


「さて、それじゃあまずはどうしようか」


中年男性がギラついた目で僕のことを見てくる。

き、気持ち悪い……!

僕は激しい嫌悪感を抱きながら口を開いた。


「早く始めましょう? あたし、今日はすぐ済ませたい気分なのよね。アナタだってもうやる気なんでしょ?」


しかし、口から出てきたのは拒否の言葉ではなく、男を誘う妖艶な女の言葉だった。

なんで、あたしこんなこと言って……。


「ははっ、そうか。じゃあさっそくお願いしようかな」


そう言うとおじさんは着ていたスーツを脱ぎ始めた。

あたしもそれに合わせて服を脱いでいく。

なんでだろう。

こんなことしたくないのに、こうしなければいけない気がする。

だって、このおじさんに抱かれないとお金もらえないし……。

あれ、あたし、なに考えて……?


「まずはここを舐めてよ」

「ええ、わかってるわ」


あたしはベッドに腰をかけるおじさんの股に顔を近づけると、その硬く反り勃つチンポを口に含んだ。


「んっ、じゅぽっ……じゅるっ……ちゅっ、れろ……」


口の中で亀頭やカリ首をチロチロと舌で舐める。

そして、口をストロークさせて喉奥まで大きく咥えた。

こうして念入りにフェラをすると顎が疲れるけれど、ビクビク震える男の動きが感じられて面白い。


「ああ、いいよぉ……マリコちゃん……ふぅ……」


おじさんは気持ちよさそうに喘いでいる。

こうしてあげるだけでこのおじさんは気前良く金を出してくれる。

まったく、簡単なものだ。


「んっ、ぐぽっ……んちゅっ……ぷはぁ……どう? おじさん」

「最高だよ、マリコちゃんのお口は。さて、次はその綺麗な体を堪能させてもらおうかな」


おじさんが舌舐めずりをしながらあたしの体を凝視してくる。

あたしは軽く頷いてベッドの上に上がった。

すると、おじさんは後ろからあたしの体に手を這わせてきた。

胸と股間にそれぞれ手を当て、胸は揉むように、股間は指を割れ目に添えてそれぞれ動かしてくる。


「んっ、ふぅ……」

「相変わらずいい体だねえ、マリコちゃん。おっぱいはこんなに大きいし、おまんこはこんなに指に吸いついて、本当に淫乱だ」


おじさんの言葉にあたしは反論しようとしたけれど、やめた。

別に好きに言わせておけばいいし、あたしがエッチの好きな淫乱女であるのは間違いない。


「ほうら、もうこんなに濡れてきた。それじゃあそろそろ、下のお口の方も楽しませてもらおうかなぁ……」


おじさんはあたしの方に向き直ると勃起したチンポにゴムをつけてあたしの股間に当てがってきた。

そして、ゆっくりと挿し込んで腰を深くうずめてくる。


「はぁ、ああ……マリコちゃんの膣内……やっぱりいいねぇ……」

「んっ……ふぅ……おじさんのチンポ、大きい……」


あたしは体を震わせて歓喜した。

こんな気持ち悪いおじさんでも、チンポだけは悪くない。

この硬さと太さでおまんこの内側をゴリゴリ擦られるとあまりの気持ちよさに喘ぐ声が抑えられなくなる。


「そら、動くよ、マリコちゃん……」

「んっ、あっ……いいよっ、おじさん……んんっ……」


あたしはおまんこの奥からじわじわ湧き出す快感に酔いしれた。

ああ、セックスって最高。

こうやって気持ちよくなってお金ももらえるなんて、この世界はなんて簡単にできてるんだろう。

勉強や努力なんて必要ない。

ただ欲の赴くままに好き勝手生きればいいのだから。


「ぐっ……そろそろイキそうだ……」

「んっ、そう、んあっ……あたしも、イッちゃいそう……!」


おじさんが腰の動きをさらに激しくする。

あたしはおじさんの体に抱きつき、腰の動きを合わせた。

ああ、きもちいいっ!

あたし、もうイクッ!


「んっ、ああっ、んああぁあぁッ!!!」


ビクビクッと体を震わせてあたしはイッた。

両手両足をおじさんの体に絡ませ、ギュッと抱きしめる。

加齢臭の漂うおじさんの体臭が鼻をつくけれど、それがかえってあたしの官能を刺激してクラクラしてくる。


「うっ、ふぅっ……最高だったよ、マリコちゃん」

「んっ……あたしも、気持ちよかったわ……あは……」


あたしはおじさんに笑いかけた。

これで今日のお金もゲットだ。

本当にチョロい。


「……ねえ、マリコちゃん。そろそろ生でやらさてくれないかい? もちろんお金は上乗せするよ」

「ええ? そうねえ……」


おじさんの申し出にあたしは考える。

今日は安全な日だし、ピルを飲めば別に問題ないだろう。

このおじさんは金払いもいいし、ここらでさらに搾り取るのも悪くないだろう。


「わかったわ。その代わり、あたしのこともちゃんと愉しませてね」


あたしはおじさんのチンポについたゴムを外し、その上に跨った。

あたしのおまんこの中に生のチンポが挿入っていく。

ああ、気持ちいい。

こうやってセックスだけして生きていけるならこれ以上望むことなんてなにもない。

あれ、そういえばあたしここに来る前になにか考えていたような気が……。


「マリコちゃん、そのまま動いてもらえるかな?」

「っ! ええ、もちろんいいわよ……んっ……!」


あたしはおじさんに跨ったまま腰を浮かしたり沈めたりして激しいセックスに興じた。

なにか考えてた気がするけど、まあそんなことはどうでもいい。

あたしにはセックスさえあればそれでいいのだ。

夢中になって動くあたしの指で宝石のついた指輪がキラリと輝いていた。




────────




「やれやれ……今日一日あちこち駆け回って魔法のアーティファクトの回収は0個。流石に始末書もんだぞ、これじゃあ……」


俺は夜の繁華街を歩きながら深いため息を吐いた。

『魔法の抱っこ紐』『魔法の鞄』『魔法のバット』『魔法の指輪』の四つは存在を確認したときにはもう効果を発動してしまっていた。

そのせいで幼い少年が子持ちの人妻に、冴えないおっさんが女子大生に、OLが野球少年に、塾帰りの受験生が援交女子にそれぞれ変わってしまった。

魔法のアーティファクトで変わってしまった彼らはもう二度と元の姿に戻ることはない。

俺ら機関の人間はその責任を問われることになるだろう。


「はぁ……こりゃ減給もありえるな……ん? センサーに反応? この辺にあるな……」


俺は周囲を見回した。

すると、街路樹の影に怪しいものを発見した。

俺はゆっくりと近づきそれを観察した。


「これか……『魔法のぬいぐるみ』は……」


そこにあったのは熊のぬいぐるみだった。

間違いない。

これがこの区域最後の魔法のアーティファクトだ。

最後の最後で間に合ったことに安堵しながら、俺はポケットに入っていた手袋を取り出した。

このぬいぐるみに直に手を触れれば効果が発動して俺まで影響を受けてしまう。

最新の注意を払って取り扱わなければならない。

と、そのとき、俺は突然背中に強い衝撃を受けた。

勢い余って俺は前に倒れ込んでしまう。


「うおっ!?」

「おおっとー……ヒック、わりぃわりぃ、ぶつかっちまってー、あっはっはー、ヒック……」


振り向いて顔を上げると、酔っ払いのおっさんがこちらを見下ろしていた。

上機嫌な顔で千鳥足を踏みながらそのまま去っていく。


「まったく、なんだあのおっさんは。はた迷惑な……」


俺はやれやれと肩をすくめながら気を取り直して手袋をつけようとして、そこで気づいてしまった。

地面についた俺の手は、確かにぬいぐるみに触れていた。


「うわっ! や、やばっ……」


慌てて手を離したが、時すでに遅し。

俺の心臓が突然激しく脈動し始めた。

これは、変化の前兆……!?

ってことは……。

次の瞬間、俺の体がシュルシュルと縮み始めた。

成人男性の力強さを感じる大きな手はぷにぷにとした未発達の小さな手に変わっていく。

着ている服はどんどんブカブカになっていき、明らかに体が子供へと変わっていっている。


「まずいまずい……! このままじゃシャレにならん……!」


焦りだけが俺の中に募っていく。

しかし、一度発動した魔法のアーティファクトの効果を止める術はない。

無情にもどんどん変化は進んでいった。

ゴツゴツした骨格はどんどん変形していき成人男性とは思えないほどに小さく華奢な姿へと変わっていく。

荒れた肌はモチモチとした柔らかい肌になり、体中の毛が薄くなってすべすべになってしまう。

一方で短かった髪は伸びていき、横でリボンに纏められてサイドテールになってしまった。

そして、俺の股間にあるチンコは一瞬勃起した後徐々に縮んでいってぴっちりと閉じた割れ目に変わってしまった。

体の変化が終わると服も変化を始め、ブカブカの黒いスーツは、ぴったりサイズのパステルカラーの女児服に変化した。

完全に変化が終わったのを確認し、俺はゆっくりと立ち上がった。


「くそっ……俺が、こんな女児になっちまうとは……」


口から出る舌足らずな幼い声が、俺の存在が変わってしまったことを証明していた。

外見の変化は終わったが、ここからさらに俺には内面の変化が待ち受けている。

あと少しで自分が自分ではなくなってしまう。

俺にはそれが恐ろしくて仕方がない。


「くそっ、くそっ……なんで俺がこんな目に……や、やばい……目から涙が……と、とまらない……ふ、ふぇ……」


胸の内でどんどん感情が昂っていき、涙が抑えられなくなってしまった。

怒り、悲しみ、不安、恐怖、いろんな感情がごちゃ混ぜになって、だんだんなにもわからなくなってくる。


「ふ、ふえぇぇんっ! なんでぇっ! なんでよぉっ! うわああぁんっ!」


俺はぬいぐるみを抱きしめて泣き喚いた。

もうなんで泣いているのかもわからない。

ただただ涙が止まらなかった。


「うわあぁん! うわああぁんっ!」

「おい、あの子大丈夫か……?」

「あんなところに一人で……迷子かしら?」


まわりにいる大人たちがわたしの方を見ている。

それがなんだか怖くて、さらに泣つづけてしまう。

すると。


「由紀っ!」


だれかがわたしの方にかけよってきた。

その顔は、わたしのよく知る顔だった。


「ママっ!」


わたしはママの方に走って抱きついた。

ママはわたしのことをギュッと抱きしめてくれた。


「由紀っ、もう、心配したのよ!?」

「うわあぁん、ママぁっ! 怖かったよおっ!」

「よしよし……もう大丈夫だからね」


ママは怒ったような顔をしたあと、わたしのあたまをやさしくなでてくれた。

すると、それまで胸の中にあった不安な気持ちがどんどんなくなってわたしはとても幸せな気持ちになった。


「これからは一人で勝手にどこかに行かないでね? ママとの約束よ」

「うん、うんっ……わかった、もうどこにも行かない……」


わたしは目をとじながら何度もうなずいた。

そういえば、わたし、なんでこんなところに一人でいたんだっけ?

なんか、しなくちゃいけないことがあったような……。

でも、もういい。

怖い目にあいたくないから、わたしはもつ絶対にママからはなれないもん。


「さ、おうちに帰りましょ?」

「うん、ママっ!」


わたしはママと手をつないで、あいている手でぬいぐるみをギュッと抱きしめながら歩きはじめた。


Related Creators