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氏裸 from fanbox
氏裸

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【小説】入れ替わり広告

昨今のインターネットを見ていれば必ず出会ってしまうものがある。

そう、広告だ。

もちろん広告と言っても色々ある。

動画が始まる前に入り込んでくるものは15秒程度強制的に見せらることになるので、終わるのを待っている間イライラすること必至だ。

サイトを開いたときにポップアップで出てくるものは×印がすごく小さく、なかなか消すことができないためこれまたイライラする。

そんな感じで基本的に人をイライラさせる要因でしかない広告だが、とりわけ不快感が強いのが、移動するバナー広告だ。

画面をスクロールするたびにそれは現れ、画面上部からスーッと下に降りてくる様は、さながらシューティングゲームのエネミーのようだ。

タップしてしまうと当然広告のサイトに連れていかれてしまうため、なんとしても避けなければならないのだが、当たり判定がやたら大きいので不慮の事故で触れてしまうことも少なくない。

とにかく慎重に画面をスクロールするのを強いられることから、この広告はこの世で最も不快な広告だと思われる。

そして、まさに今俺はその不快感を味わっている真っ最中だった。


「絶対触ってねえだろ……」


勝手に移り変わるスマホの画面を見ながら俺はこめかみに血管を浮かび上がらせていた。

画面をスクロールするために触れた指と上から流れてきた広告のバナーが偶然一瞬触れただけでタップされた判定になったらしい。

募るイライラで顔が自然と引きつっていくのを感じる。

俺はただソシャゲの攻略wikiを見たいと思っているだけなのに、なんでこんな広告なんかに邪魔されなくちゃいかんのだ。


「……ん? なんだこれ……」


連れていかれたページを見て、俺は思わず呟いた。

普通この手の広告で開かれるページはよく知らん量産型ソシャゲのダウンロードページか、やたら過激なweb漫画の配信サイトが多いが、今俺のスマホの画面に映っているのはそのどちらとも違う奇妙なものだった。

真っ白い背景に、明朝体で文字が並んでいる。

書かれている内容は、これまた理解不能なものだった。


『貴方は今から一分後に入れ替わります。入れ替わりに際して記憶を持ち越すことはできません。しかし、貴方の魂に刻まれた経験は魂が身体に馴染むまでの間、違和感という形で残ります。完全に魂が身体に馴染んだ後は、その身体が産まれた頃から自分のものだったという考えに何の違和感も抱かなくなります。そうなった場合、貴方は元の身体のことを思い出すことはありません。また、一度入れ替わった人間は二度と入れ替わることはできません。』


「は? なんだよこれ、長いし意味わからん……」


俺は呆れを通り越して笑ってしまった。

イタズラで作られたサイトか何かだろうか。

あるいはマルウェアでも仕込んでいる悪質なサイトか。

いずれにしても怪しいことこの上ない。

さっさと閉じてしまおう。

そう思いタブを閉じようとしたところで、ある文字が目に入り俺の手は止まった。


『入れ替わる人間:


氏名:長原亮

性別:男性

年齢20歳

身長:176cm

体重67kg

職業:大学生



氏名:平野奈緒

性別:女性

年齢:17歳

身長:157cm

体重51kg

職業:高校生』


「……え? は……!? な、なんで、俺の名前が……」


そこに書かれていたのは二人の人間の情報。

そのうちの片方は、俺のものだった。

名前や年齢に身長体重、職業まで全て正確に俺の情報がそこには書かれている。


「いやいや、意味わからんて! なんだよこれ!?」


まさか変なウイルスに感染したのか?

それで俺の情報が抜き取られた?

でもここまでわかるものなのか?

俺はどうしたらいいんだ?

あまりのことに俺は冷静さを欠いていた。

落ち着いて考えることができない。

しかし、とにかくこのサイトはヤバい。

急いでタブを閉じなければ。

俺は画面をタップしてタブを閉じようとした。

しかし。


「お、おい! なんで反応しないんだよ!?」


画面に指を触れても、うんともすんとも反応がなかった。

画面をスクロールすることもアプリを落とすこともできない。

そのとき、俺は画面の隅の方に数字が書かれていることに気づいた。

一秒ごとに数字がカウントダウンのように減っている。

残り15。

この数字はなんだ?

これが0になったらどうなるんだ?

そういえば、上には一分後に俺が入れ替わると書かれていた。

まさか、俺がここに書かれている平野奈緒という女子高生になるとでも言うのか?

そんな馬鹿なことがあり得るわけがない。


「おい! いい加減にしろってマジで!」


残り5。

俺は完全にパニックになっていた。

残り4。

心臓がバクバクと高鳴る。

残り3。

スマホを持つ手が震えている。

残り2。

ごくりと唾を飲み込んだ。

残り1。

瞬きもせず、俺は画面を凝視した。

0。




────────




「…………? な、なにも……起こらない?」


恐る恐る目を開くと、スマホは手に握られたままで、特に変化は見られなかった。


「あー、ビックリした……。本当に入れ替わっちゃうのかと思ったよ……」


私はホッと胸を撫で下ろした。

いきなりカウントダウンが始まってどうなるのかと思ったけど、別になにか起こったりはしないみたいだ。

改めてスマホの画面を見ると、いつの間にかページが切り替わっていた。


『入れ替わりが完了しました。貴方はもう二度と元の身体に戻ることも、元の身体のことを思い出すこともありません。今後は平野奈緒としての人生をお楽しみください。』


思わず苦笑してしまう。

今後もなにも、私は元から平野奈緒なんだけど。

私は私なんだから元に戻るもなにもない。

そんなことを考えていると、また勝手に画面が切り替わり、私が元々見ていたニュースサイトに戻った。


「結局、なんだったんだろう……今の……」


なんだかよくわからないまま勝手に閉じられてしまい、私は思わず首を傾げてしまった。

あのサイトを作った人は、ああいう気味の悪いことを書いて読んだ人を怖がらせて楽しんでいるのかもしれない。

まったく、タチの悪いイタズラサイトだ。

私はスマホを置いて顔を上げた。

と、そのとき。


「あ、あれ?」


私はいつの間にか見慣れない部屋の中にいた。

ピンク色のカーテン。

クッションやぬいぐるみの置かれたベッド。

机の上に並ぶ女の子らしい雑貨の数々

これが、私の部屋?


「……いや、私の部屋だよ、これ。うん、間違いない。でも……」


見慣れた部屋であるはずのこの部屋が、何故だか見慣れないもののように感じた。

まるで初めて入ったかのような、そんな違和感。


「な、なに? なんなの? この感じ……」


私は立ち上がり、部屋の中を歩いた。

ただ自分の部屋の中にいるだけだというのに、胸がドキドキしてくる。

ふと、姿見が視界に入った。

そこに映るのはもちろん私。

そのはずなのだけれど。


「え? だ、誰?」


私は目の前に映る少女が誰なのか一瞬認識できなかった。

肩の上辺りまで伸びた髪。

水色のパーカーとスウェット。

そして、くりっとした大きな目の目立つあどけない顔。

この人は……。


「私……だよね……?」


数秒のラグの後、私は自分のことを認識した。

そうだ、これは私だ。

毎日鏡の中で見ている顔なので間違いない。

でも、鏡に映る顔はこんな感じじゃなかったような、そんな気もする。


「なんで、どうして……?」


自分に対して違和感が拭えない。

鏡の中に映る少女を見ているだけでドキドキする。

もしかして、私は元々私じゃなかった?


「そ、そんなわけ……」


疑念を払うように頭を振る。

けれど、さっきのサイトに書かれていたことが頭から離れなかった。

私は、入れ替わった。

あのサイトに書かれていた人と。

もしそうなら、今の私は元は全く別の人間で、この胸のドキドキはその人間が私に対して抱いてるものということになる。

あのサイトに書かれていた人はどんな人だったのだろう?


「ええっと、名前は確か……あれ、なんだったっけ……」


名前や身長などが書かれていたけれど、もう思い出せなかった。

辛うじて男性だったということは覚えているけれど、それ以外はなにも思い出せない。


「私、男の人だった……? いやいや、そんな、まさか……」


私はそう言いつつ、さりげなく自分の股間に手を伸ばした。

その手が股の間に触れた瞬間、私はあまりの違和感に硬直してしまった。

股に、なにもない。

あるはずのものがない。

いや、本当はなにもないのが正しい。

けれど、そこになにかがあったと思えてならなかった。

呼吸がどんどん乱れてくる。

額を流れる汗を拭いながら、私はパンツの中に手を突っ込んだ。


「うわ、あ……ない……」


のっぺりとした股の間を震える手で撫でる。

ここにはなにもついていた覚えがない。

だっていうのに、なにもついていないことに違和感しかない。


「なんで……なんでなの……?」


わけのわからない感情に突き動かされながら、私は割れ目に沿って股を指で撫でていた。

顔を上げると、鏡には顔を赤くして荒い呼吸をしながらパンツの中に手を突っ込んでいる少女の姿が映っている。

これは、私だ。

私なのに、この姿を見て興奮している私がいる。

私は、誰なの?


「あ、はぁっ……んっ、あっ……!」


私は割れ目の上にあるクリトリスを重点的に撫でる。

ピリピリとした快感が迸るこのオナニーを私は知っている。

知っているけれど、まるで初めてするかのような新鮮な快感に私は打ち震えていた。

気持ちいい。

女の子のオナニー、気持ちいい。

昂り続ける私の気持ちは、ついに限界を迎えようとしていた。


「んっ、あっ、あッ、ああぁッ!!!」


快感が、爆ぜた。

抑えていた声が溢れ出すほどの強い衝撃が体を駆け抜け、その瞬間腰がビクッビクッと大きく跳ねる。

足から力が抜けていき、私はその場に座り込んでしまった。

少しずつ呼吸を整えながら、未だじわじわと広がり続けている心地よさに私は身を任せた。


「んっ……はぁ、はぁ……きもち、いい……」


こんなに気持ちよかったのは生まれて初めてな気がする。

私は自分の体を抱きしめた。


「私は……平野奈緒……んっ……」


自分の名前を口に出す。

ただそれだけのことに、私の心は強いときめきを感じていた。

興奮冷めやらない中、私は再び股の間に指を伸ばした。




────────




「……奈緒ちゃんが奈緒ちゃんじゃないかもしれないってどういうこと?」

「えーっと、上手く説明できないんだけど……」


同じクラスの友達の奈緒ちゃんがいきなり振ってきた話題にわたしは軽く困惑していた。

こんな突拍子もないことを言う子じゃないと思っていたからどう反応していいかわからない。


「私、なんか誰かと入れ替わっちゃったっぽくて……」

「誰かとって……誰?」

「それが、わからないんだよね」

「えぇ……?」


もう何が言いたいのかもよくわからない。

奈緒ちゃんも苦笑いしてるし。


「もう、なんの冗談? 面白くないよ、それ」

「いや、冗談なんかじゃないってば! いいからちょっと聞いてよ」


そう言って奈緒ちゃんは昨日あったという出来事を語り始めた。

変な広告のサイトを開いたらそこには奈緒ちゃんの体が入れ替わると書かれていて、カウントダウンが0になった途端自分の体に違和感を覚えるようになってしまったらしい。


「……っていう感じでね。なんかもう全部が違和感だらけっていうか。唯ともずっと友達だったはずなのに、なんか今日初めて会ったようなそんな気もしてるの。ねえ、唯は今日の私になにか変な感じしない?」

「今こんな突拍子もない話してるのは変だね」

「そういうことじゃなくて! 私の仕草とか、行動とか、喋り方とか、変に思わなかった?」

「いや、別にいつも通りの奈緒ちゃんだと思うけど……」


今日一日普通に接していたけど、わたしは奈緒ちゃんに違和感を抱いたりしていない。

これでも一年以上友達をやっているのだから少しでも変なら気づくと思うけど、特に何も感じなかった。

これで中身が別人なのだとしたらその人は相当な役者だと思う。


「変な思い込みしてるだけなんじゃない? ほら、プラシーボ効果っていうのもあるし」

「うーん、そうなのかなあ……。でも確かにだんだん違和感もなくなってきたし、私の勘違いかも……」

「そうでしょ? そんな気味の悪いサイトのことなんて忘れた方がいいよ」


奈緒ちゃんはまだ少し納得できていないような顔をしていたけれど、それ以降その話をすることはなかった。

その後はいつものように他愛ない雑談をして、放課後は普通に別れた。

どこからどう見てもいつも通りの奈緒ちゃんだった。

他人と入れ替わっているなんてそんなわけがない。

奈緒ちゃんも、こんなにも普通に奈緒ちゃんなのにどうして自分が別人かもしれないなんて思ってしまったのだろうか。

そもそも元々自分が他人だったなんて思うなら、かもしれない、なんてあやふやになるわけがないだろうに。

わたしは奈緒ちゃんが言っていたことをただの気の迷いだと思うことにして、それ以上そのことについて考えるのをやめた。


そして、その夜。

わたしはベッドに横になりながらスマホを見ていた。

一日の終わりにSNSで今日の出来事を確認する。

それがわたしの日課だった。

なにげなくタイムラインを眺めていると有名なインフルエンサーが拡散している面白そうなまとめが目に入った。

わたしは貼られているリンクからまとめサイトへ飛んだ。


「ふふっ、なにこれ」


クスッと笑えるような面白いまとめで、わたしは楽しく読み進めていた。

こういうのを読んでいると夢中になりすぎて夜更かししてしまうこともたまにあるけど、それでも面白いのだからなかなかやめられない。

画面をスクロールしていたそのとき、わたしは誤って画面の下の方にある広告を触ってしまった。


「あ」


するとすぐに、それまで読んでいたまとめサイトから全く違うページへと画面が移り変わってしまった。


「ちょっと! もう!」


スマホの広告ってなんでこんなに誤タップしやすいんだろう。

触ってほしいのはわかるけど、でもこんなやり方をだとみんなそのサイトにあまり良い印象を抱けないと思う。


「……って、え? なに、このサイト……」


開かれたサイトは、かなり異質なものだった。

真っ白な背景に文字が書かれているだけという酷く単調なもので、なんだか不気味な雰囲気がする。

わたしはそこに書かれている文字を読んで、絶句してしまった。


『貴方は今から一分後に入れ替わります。入れ替わりに際して記憶を持ち越すことはできません。しかし、貴方の魂に刻まれた経験は魂が身体に馴染むまでの間、違和感という形で残ります。完全に魂が身体に馴染んだ後は、その身体が産まれた頃から自分のものだったという考えに何の違和感も抱かなくなります。そうなった場合、貴方は元の身体のことを思い出すことはありません。また、一度入れ替わった人間は二度と入れ替わることはできません。』


「こ、これって、もしかして奈緒ちゃんが言ってた……?」


昼間に奈緒ちゃんが言っていたことを思い出す。

変な広告サイト開いてカウントダウンが0になったとき、急に自分の体に違和感を覚えるようになってしまったという話。

奈緒ちゃんの言っていた通り、画面の隅の方にはカウントダウンが進む数字が書かれている。

この無機質に文字が書かれているだけのサイトはとても不気味で、確かにこんなサイトを見てしまったら奈緒ちゃんみたいに不安になるのも頷ける。

でも、だからって入れ替わりなんて、そんな非現実的なことあるわけが……。

そう思っていたところで、ある文字が目に入りわたしは息が止まった。


『入れ替わる人間:


氏名:天王寺唯

性別:女性

年齢:17歳

身長:149cm

体重44kg

職業:高校生



氏名:梅田雅弘

性別:男性

年齢:28歳

身長:179cm

体重:71kg

職業:会社員』


「わ、わたしの、名前……う、嘘でしょ……?」


名前や年齢、身長体重など、そこにはわたしの情報が細かに書かれていた。

ちょっと広告を触っちゃっただけでこんなに情報が抜き取られちゃうなんてことがあるの?

いや、絶対におかしい。

何か不思議なことが起こったとしか思えない。


「不思議な、こと……」


そのとき、わたしは頭の中でここに書かれていることの信憑性が一気に増していくのを感じていた。

もしここに書かれていることが本当に起こるのなら、わたしはこの梅田さんという男の人になって、自分が天王寺唯だったということを忘れて生きていくことになる。

自分が元々違う人間なのではないかという違和感だけを抱えながら。


「それって、昼間の奈緒ちゃんそのものじゃ……」


まさか、奈緒ちゃんは本当に誰かと入れ替わっていたの?

わたしも、入れ替わっちゃうの?

そんなことを考えている間にカウントダウンは残り数秒まで減っていた。

あまりにも突然の事態に、わたしの頭の中は真っ白になってしまった。

わたしが、わたしじゃなくなっちゃう。

だだそれだけが脳裏に浮かぶ中、0へと変わる数字を呆然と眺めていた。




────────




「……? なんだ? 何も起こらないのか?」


俺は0になった数字を見て、呆れながら呟いた。

変なカウントダウンで不安を煽るだけ煽っておいて何もないのか。

やはりただのイタズラか何かだったのだろう。

しかし、俺の個人情報が書き連ねられていたのは気がかりだ。

何か起きてしまっても困るし、一応各種パスワードは設定し直しておこう。

クレジットカード会社にも一応連絡した方がいいかもしれない。

すると、また画面が勝手に切り替わった。


『入れ替わりが完了しました。貴方はもう二度と元の身体に戻ることも、元の身体のことを思い出すこともありません。今後は梅田雅弘としての人生をお楽しみください。』


まだ続けるのか、その入れ替わりとかいう謎の設定を。

そんなの言われなくても俺は梅田雅弘として生きていくに決まってるだろう。

俺は生まれたときから梅田雅弘なのだから。


「雅弘さん? どうかしたの?」


急に声をかけられて思わず顔を上げた。

そこには、二十代ぐらいの若い女が立っている。

白いネグリジェを着ており、長い髪は少し湿っていてどこか色っぽさを感じる。

この女は、誰だ?


「…………千歳?」


そうだ。

彼女は梅田千歳。

今年の春に結婚式を挙げたばかりの、俺の大切な妻だ。


「そんなにまじまじと見つめて、私の顔に何かついてるかしら?」

「い、いや、なんでもない……」


俺は首を振って誤魔化した。

どうしてだろう。

愛する自分の妻のことが、一瞬誰かわからなかった。

ずっとそばにいた筈なのに、今日初めて会ったような、そんな変な違和感がある。

なんなんだ、この感じは。


「変な雅弘さん。……よいしょ」


千歳がベッドに腰をかける。

そういえばいつの間にか俺もベッドに腰をかけていた。

俺、さっきまで寝てたような気が……。

というか、俺の寝室はこんな感じだっただろうか?

ベッドはキングサイズだったか?

間接照明なんて置いてあったか?

そもそも寝室なんてあったか?

周りを見れば見るほど違和感が強まってくる。


「な、なあ……千歳……俺……」

「なあに? 雅弘さん」


俺の横にピタリとついた千歳の甘い声を聞いた瞬間、ドクンッと心臓が跳ねた。

そして、同時に股間がムズムズとしてくる。

急にパンツの中がキツくなったような妙な感覚に俺は戸惑いを感じた。

なんだ?

急に、股間が盛り上がったような変な感じが……。


「ふふっ……随分元気みたいね、雅弘さん」

「……え?」


千歳の視線の先を見る。

そこには、はち切れそうなほど股間が盛り上がったズボン。

俺の股間が、大きくなっている?

股間に、何かがついているのか?

何かってなんだ?

そんなの決まっている。

俺は男なのだから、股間にはペニスがついているに決まっている。

欲望を募らせ、女の秘所を貫くためのモノが。


「お、俺の、股間に……?」


当たり前のことを認識しているだけなのに、強い違和感と忌避感が胸の内に湧いてくる。

駄目だ、こんな欲に飲まれてはいけない。

心のどこかで自分にブレーキがかけられているのを感じる。

しかし、そんな心に反して体は千歳を見ているだけでペニスを猛々しく脈動させている。

俺は、どうなってしまったんだ?

何故こんな色んな感情が入り乱れている?

頭の中に浮かぶのは先ほど見た謎のサイト。

俺は、誰かと入れ替わってしまったのか?

あのサイトには確か女の名前が書かれていた。

もしかして女としての俺の心が、男の体に抵抗しているとでも言うのか?


「ねえ、雅弘さん。今日は、いっぱい愛してほしいの……ちゅっ……」

「……んっ!?」


すると、いきなり唇に柔らかい感触が伝わってきた。

温かく湿り気のあるそれは優しく俺の唇を撫でてくる。

俺、女にキスをされている……のか?

俺の中に微かに生じた戸惑いは、湧き立つ情欲にあっという間に流された。


「千歳っ……!」

「きゃっ……」


千歳の口の中に強引に舌を捻じ込みながら体をベッドに押し倒した。

舌を絡ませ、求め合う。

チロチロと動かされる千歳の舌の先端に俺の舌が触れる度に脳みそが痺れるような心地いい快感が広がる。

俺はそのまま流れるように千歳の股間に指を這わせた。

既に湿っていたそこを指で撫で回す。

入口の中にゆっくりと指を挿し込むと、クチュクチュと淫靡な音が鳴り、俺の股間が更に張りを増した。


「んっ、ああっ……雅弘さん、私、早く欲しい……」

「はぁ、はぁっ……」


呼吸が乱れる。

喉が渇いて、唾もうまく飲み込めない。

このもどかしい思いをなんとかしたいという気持ちから、俺は無意識のうちに下半身の布を全て脱ぎ去っていた。

だが、それを目にした瞬間、俺は冷や水をかけられたように頭が真っ白になった。

ギンギンに硬くなって反り勃った大きなペニス。

それが俺の股間から生えている。

当たり前のことの筈なのに、俺はとてつもないショックを受けていた。

俺は、俺は……。


「雅弘さん……来て……」


冷静になりかけた俺の頭は、下半身をむき出しにして誘うようにこちらを見る千歳を見た瞬間一気に熱を取り戻した。


「千歳ぇっ!」


俺はがっつくように千歳の股間に自分のペニスを突き挿した。

湿り気を帯びた柔らかいヒダが、俺の亀頭にまとわりついてくる。

敏感なカリ首を優しく刺激され、俺は筆舌に尽くしがたい快感に喘いだ。

これが、挿入の感覚。

これが、男のセックス。

やばい。

やばいぐらい気持ちいい。

知っていた筈なのにまるで心が童貞に戻ってしまったかのように俺は感激していた。


「ぐっ、ああっ、はあっ、んっ……!」


俺は息を乱して腰を動かした。

ペニスに擦り付けられる膣の内側を感じながら、勢いに任せて奥を突く。

その度に、俺に突かれる千歳の体はビクッと震える。


「んっ、ああっ! まさひろさんっ、はげしっ……んあっ!」


快感に喘ぐ千歳の嬌声が俺の興奮を助長する。

肉体的にも、精神的にも、俺の男としての欲求は満たされていた。

だが、まだ足りない。

もっと、もっと、もっと。

欲の赴くまま、俺は目の前の女を犯す。

快感の渦は股間を中心にじわじわと強まっていき、それに比例するように俺は強い焦燥感に突き動かされていく。

射精したい。

この女の膣の奥に、俺の精子を吐き出したい。

俺は無我夢中で腰を振り続けた。

力強く、男らしさに満ちた乱暴なセックス。

その果てに俺はついに限界に達しようとしていた。


「うっ、ぐっ、千歳っ、ッ! ううぐぅぅッ!!!」


千歳の体を抱きしめながら腰を思い切り打ちつける。

瞬間、ペニスがビクビクッと震え、その先から精子を吐き出した。

ああ、これが射精。

こんなに気持ちいいのは生まれて初めてだ。

ドクンッ、ドクンッと脈動しながら膣の奥に精液が注がれる。

それを受けて、千歳も大きく体を震わせていた。


「んっ、ああッ、まさひろ、さん……中に、出て……」


ペニスを引き抜くと、じゅぷっと音が鳴り、愛液に塗れた千歳の股間からは白い液体が滴っていた。

すると、俺の頭は一気に冷めていき、先ほどまでの興奮が嘘のように冷静なっていた。

俺は、なんてことをしてしまったんだ。

欲に駆られて女の人に射精してしまうなんて……。

己の浅ましい振る舞いに後悔の念が強まってくる。


「んっ、ふぅ……雅弘さん、愛してるわ……」


満ち足りた表情を浮かべる千歳。

……俺は、なんで今一瞬後悔していたんだ?

愛する妻とセックスをすることは何もおかしなことじゃない。

夫婦の営みとして、至って普通のことだ。

千歳も俺も、どちらもしたいと思ってしていたことに、俺は何を抵抗していたんだ?

気づけば、自分の体への違和感は先ほどより薄まっていた。


「ああ……俺も愛してるよ、千歳……」


千歳の乱れた髪をすくい上げながら、俺は優しく千歳にキスをした。




────────




「なあ千歳、入れ替わりってあると思うか?」


朝。

二人で朝食を取っていると、唐突に雅弘さんが切り出してきた。


「入れ替わり……ってなあに?」

「ほら、あの二人の人間の心と体が入れ替わる、みたいなやつだよ」

「ああ、この前テレビでそんな感じの映画がやってたような……」


あんまり詳しくはないけれど、確か少年少女の体が入れ替わってしまうお話だった気がする。

すごく人気で、一時期は大ブームになったとか。


「それがどうかしたの?」

「その、入れ替わりって本当にあると思うか?」

「え?」


本当に、というとこの現実世界で体が入れ替わることがあるか、という話だろうか。

それはいくらなんでもあり得ないと思う。


「物語では面白いと思うけれど、流石に現実的じゃないと思うわ」

「まあ、そうだよな……」


雅弘さんは少し頭を抱えながら俯いた。

どうしたのだろう。

私も雅弘さんが何を言いたいのかよくわからず首を傾げるしかなかった。


「……もし、俺が他人と入れ替わってるとしたら、どうする?」

「雅弘さんが、他人と?」


それはつまり、今の雅弘さんが本物の雅弘さんじゃないということだろうか。

私は思わず苦笑してしまった。


「もう、そんなわけないじゃない。もし雅弘さんが他人になっちゃったのならすぐに気がつくわ。雅弘さんのことは、私が一番よく知ってるんだから」


もし愛する夫が別人と入れ替わってしまったら誰よりも早く気がつける自信がある。

今の雅弘さんは本物の雅弘さんだ。

私が保証する。


「千歳……。いや、変なこと言って悪かったな。……っと、もうこんな時間か。そろそろ行かないと」


雅弘さんは食べていたパンを牛乳で流し込むと鞄を持って立ち上がった。


「それじゃあ行ってくるよ、千歳」

「いってらっしゃい、雅弘さん」


雅弘さんは私に軽いキスをすると、会社へと出かけて行った。

残された私は、いつものように朝食のお皿を片付けて洗い物に取りかかった。

洗剤のついたスポンジを取りながら先ほど雅弘さんが言っていたことを思い浮かべる。


「入れ替わり、かあ……」


映画やアニメなんかはあまり見ないからそういうお話にも疎いのだけれど、もし人が本当に入れ替わってしまったらどうなってしまうのだろう。

男性と女性が入れ替わってしまったら色々と大変そうだ。

色々と体の勝手が違うだろうし慣れるまで時間がかかりそう。

もし、私と雅弘さんが入れ替わってしまったら……。

昨日の夜のようになったら、私の体をした雅弘さんを、雅弘さんの体をした私が抱くことになるのだろうか。


「もう、やだ……私ったら何考えて……」


こんなあり得もしない妄想をしてしまうなんてはしたない。

私は頭を振って気を紛らわせた。

でも、人が入れ替わってしまうお話には少し興味が湧いてしまった。

せっかくだからこの前テレビでやっていた映画を観てみようかしら。

私は洗い物を終えてテレビをつけた。

もしかしたら雅弘さんの登録している動画配信サービスのサブスクで観れるかもしれない。

試しに検索してみると、どうやら件の映画も観ることができるらしい。

午前中にすることはもう終わっているし、このまま観てしまおう。

私は再生ボタンを押した。

すると、映画本編が始まる前に広告が挟まった。

この手の動画配信サービスではよくあることだ。

雅弘さんが映画を観るときもいつも出てくる。

けれど、今日はいつもと何かが違った。


「あ、あら? 何かしら、これ……」


テレビ画面には、真っ白い背景に明朝体の文字だけが書かれている。

別の映画やドラマの広告ではなさそう。

私は不思議に思いながらも、その文字を読んでみた。


『貴方は今から一分後に入れ替わります。入れ替わりに際して記憶を持ち越すことはできません。しかし、貴方の魂に刻まれた経験は魂が身体に馴染むまでの間、違和感という形で残ります。完全に魂が身体に馴染んだ後は、その身体が産まれた頃から自分のものだったという考えに何の違和感も抱かなくなります。そうなった場合、貴方は元の身体のことを思い出すことはありません。また、一度入れ替わった人間は二度と入れ替わることはできません。』


「え? え? 何? どういうこと……?」


いきなり出てきたよくわからない文章に、私は混乱してしまった。

入れ替わると書いてあるけれど、もしかしてこれも映画の内容なのだろうか。

でも、さっきからこの画面のまま変わらないし、本編が始まる気配もない。

ただ画面の隅では不気味にカウントダウンが進んでいる。

もしかして、これが0になるまで始まらないのかしら?

そんなことを考えながらその先に書かれている文字を読み、私の背筋に寒気が走った。


氏名:梅田千歳

性別:女性

年齢:27歳

身長:159cm

体重52kg

職業:主婦



氏名:平林康夫

性別:男性

年齢:42歳

身長:168cm

体重:82kg

職業:無職』


「私の、名前……? どうして……?」


突然名指しされたことに私は戸惑いを隠せなかった。

これは、映画の演出じゃない?

だとしたら、いったい何が起きているの?

混乱した今の頭では何もわからない。


「まさか、本当に入れ替わるんじゃ……」


ついそんなあり得もしない妄想をしてしまう。

けれど、それは先ほどしたどこか夢見心地なものとは正反対の、恐怖でしかないものだった。

ここに書かれていることが本当に起きるなら、私が入れ替わるのは愛する夫である雅弘さんではなく、歳の離れた無職の男性だ。

ぞわぞわっ……、と全身鳥肌が立つのを感じる。

想像しただけで強い生理的嫌悪感に襲われた。

こんなの、悪趣味なイタズラに決まっている。

そう思っていても、何故だか恐怖心は全く拭えなかった。

刻一刻とカウントダウンが進んでいく。


「こ、こんなの、冗談よね?」


残り5秒。


「私が、おじさんと入れ替わるなんて、そんな……」


4秒。


「……いや、いやあ……」


3秒。


「おじさんになんて、なりたくないっ!」


2秒。


「助けてっ! 雅弘さんっ!」


1秒。


「いやあああぁぁっ!!」


0。




────────




「……なんだよ、なにも起きねえじゃねえか。期待させやがって」


オレは0になった数字を見ながら呟いた。

なんだかマジに入れ替わりとやらが起きそうな雰囲気を感じていたが、当然そんなことは起こるわけもないってか。


「ちっ、アホらし」


考えてみれば馬鹿馬鹿しい話だ。

人間が入れ替わるとか、あり得ねえだろ普通。

……もっとも、ついさっきまでは結構本気にしてたんだが。

なにしろ、オレが入れ替わると書かれていた相手はまだ若い人妻だ。

オレがその体であんなことやこんなことができていたかもしれないと思うと、つい期待もしちまうってもんだ。

すると、スマホの画面が急に切り替わった。


『入れ替わりが完了しました。貴方はもう二度と元の身体に戻ることも、元の身体のことを思い出すこともありません。今後は平林康夫としての人生をお楽しみください。』


なんだこりゃ?

入れ替わり完了って、どこが完了したんだよ。若い人妻にしてくれるんじゃなかったのかよ。

オレは未だに冴えないおっさんのままだぞ。

今までとなにも変わんねえじゃねえか。

わけのわからん文言を見せられ内心愚痴っていると、またスマホの画面が切り替わり元居たサイトに戻った。

そういや広告を踏んであの変なサイトに連れてかれたんだったか。

全く、傍迷惑な話だ。

余計な時間使わせやがって。

オレは気を取り直してスマホを見た。


「っ!? な、なんだこりゃあ!? なんでオレこんなサイト見てんだ!?」


開かれていたのは、艶かしい女たちの裸画像集。

明らかなエロサイトだった。


「こ、こんな、はしたねえ……って、あ?」


オレはなにをこんな取り乱してんだ?

このサイトはいつもオレが抜くときに使ってるオカズサイトじゃねえか。

そもそも、ムラムラしてきたから一発抜くために自分でこのサイトを開いたんじゃねえか。

それを、なにを今更オレはこんなウブな反応しちまったんだ?


「な、なんだ? オレ、どうしちまったんだ……?」


まるでエロサイトなんか初めて見るみたいに気恥ずかしくなってくる。

抜くためにエロ画像見るなんざいつもやってる当たり前のことなのに、どうしてだ?

オレは無理やりエロ画像をガン見した。

股を開いてマンコを指で開きながら妖しく笑う女の画像。

見ているだけでムラムラしてくる。

そうだそうだ、こうして興奮を高めてそれから……。

そのとき、不意に違和感が生じた。

股間が、苦しい。

なにかに圧迫されてるみたいだ。


「ん? なんだ? なんの感覚だ、こりゃあ……?」


視線を落とすと、テントのように張り詰めたパンツが目に入る。

ギチギチに張り詰めており、苦しさの原因がここにあるのは間違いない。

だが、これはなんだ?

股間に、明らかに元々なかった異物が存在している。

これは、もしかしてなにか生えてるのか?

オレの股間に?

なにが?


「なにがって、チンコに決まってんだろ……」


オレは思わず自問自答してしまった。

股間にチンコがついてるなんざ当たり前だろ。

オレは男だぞ。

興奮すりゃあ勃起するし、シコりゃあザーメンが出るに決まってるじゃねえか。


「……っ!?」


そう思った瞬間、オレの中に言い表しようのない嫌悪感、そして背徳感が湧いてきた。

オレのチンコはそれに反応するようにビクビクと脈動している。

なんだ?

どうなってる?

自分のチンコを使うことを意識しただけで、頭ん中がおかしくなりそうだ。


「くっ、オレは……」


わけもわからず狼狽えてしまう。

自分の身になにかが起きているのはわかるが、その正体が掴めない。

オレはは一旦落ち着くために深呼吸をして顔を上げた。


「……あ? なんだ、この汚ねえ部屋は?」


そこでオレは再び違和感に襲われた。

脱ぎ散らかされたTシャツ。

片づけずに放置されているカップ麺のゴミ。

敷かれたままのせんべい布団。

ゴミ箱から溢れて転がっているティッシュ。

これが、オレの部屋か?

本当に?


「オレは……本当にオレなのか?」


自分で自分がわからなくなる。

なんなんだこの感覚は。

オレがオレじゃないなんてことあるのか?

そんなの、入れ替わりでも起きない限りはあり得ねえだろ。


「まさか……」


入れ替わり。

さっきのサイト。

あれに書かれていたことが本当なら、オレは既にオレじゃないということになる。


「オレ、若い人妻だったのか……?」


そう思った瞬間、チンコがビンビンに勃起してきた。

人妻だったはずのオレが、こんな汚ねえ部屋に住む無職のおっさんになっている。

そう考えただけでやばいぐらい興奮してきた。

オレは我慢できなくなり、パンツを脱ぎ捨てた。

ボロン、と天向けてイキリ勃ったチンコが姿を表す。

その赤黒く血管の浮き出たグロテスクなイチモツを見て、軽く引いてしまう。

だが、オレの股間から生えているそれに対して、オレは異常なほどの興奮を抱いていた。

これをシコればめちゃくちゃ気持ちいいということを、オレは知っている。


「はぁっ、くっ、ふぅ……」


震える手をチンコに伸ばす。

心のどこかに、オレを止めるなにかを感じた。

それをしては駄目。

そんなはしたないことをしては駄目。

女々しい声で誰かがオレを止めているような、そんな気がする。


「うるせえ、黙れ……」


オレが元々誰かなんて関係ねえ。

今のオレはただチンコをシコりたいだけのおっさん、平林康夫だ……!

オレは右手でぎゅっと、チンコを握りしめた。


「うおぉっ、これ、超敏感だ……!」


ピクピク震えるチンコに触れると、思わず腰が抜けてしまいそうになった。

オレのチンコ、こんな敏感なのか。

触っているだけで更にチンコが硬く反り勃っていく。

オレはそのまま手を上下に動かす。

カリ首や裏筋を手で擦る度、あり得ないぐらいの快感がチンコから駆け抜けてくる。

やべえ、チンコシコるのめちゃくちゃ気持ちいい。

オレは貪るようにチンコをシコり続けた。


「はっ、はっ……んっ、ぐうっ……最高じゃねえか……」


オレは興奮を高めるためにスマホのエロ画像に視線を移した。

股を開いてこちらを誘う女。

チンコを舐めながら微笑む女。

口いっぱいにチンコを頬張る女。

バックからチンコを突っ込まれて喘ぐ女。

男とベロチューしながらマンコを突かれる女。

女、女、女。

オレは様々な裸の女を見て、更にチンコを震え勃たせる。

ああ、こいつら全員犯して種づけしてやりてえ。

オレの中のオスとしての暴力性が発露すると、それに反応するように背徳感で気持ちが昂る。

もうやべえ、限界だ。

出るっ……!

オレは急いでティッシュを手に取りチンコに当てがった。


「うっ、ぐぅッ、うあ゛あ゛あぁあぁぁッ!!!」


ビュルッ、ビュルルッ、とチンコの先端から濃いザーメンが飛び出す。

同時に凄まじいほどの快感が脳に伝わり、弾けるみたいに頭の中が真っ白になっていく。

オレはビクンビクンッと震えるチンコを握りしめながら過呼吸になっていた。


「はあっ、はあっ……うっ、はぁ……っ……」


少しずつ呼吸を整えながらオレは射精の余韻を味わっていた。

射精の快感をオレは知ってはいたが、体感するのは初めてのように感じる。

まるで人生二度目の精通を味わったような気分だ。


「……へっへっへ……入れ替わり、か。感謝するぜ、どこかの誰かさんよ」


この妙な違和感のおかげで今までにないほど気持ちよく抜くことができた。

本当にオレが入れ替わってるのかは知らんが、こんなに気持ちいい思いさせてくれんなら少しぐらいは礼をいってやらねえとな。

オレは顔を上げ周りを見回した。

この部屋にも、オレの体にも、まだ違和感がある。

オレが人妻だった頃の名残なのかもしれない。

だか、それも今となってはオレの興奮を高めるための材料に過ぎなかった。

再び硬くなっていくチンコを、オレは口角を吊り上げながら握りしめた。




────────




大学からの帰り道。

俺は電車に揺られながらスマホを開いていた。

最新のイベントの攻略情報を調べるために攻略wikiを見ていると、誤タップで変な広告を開いてしまった。

よくある過激なweb漫画の配信サイトだ。

思わず舌打ちしそうになるが、電車の中だということを思い出してグッと堪える。

そのとき、少し前に変な広告サイトを開いたのを思い出した。

入れ替わりがどうとかいうやつだ。

あれを見てしまってから少しの間体に妙な違和感があったが、それもすぐになくなった。

今となってはあれがなんだったのかよくわからない。


「……実は…………入れ替わりの…………開いちゃって…………」

「え……唯も…………」


すると、後方から入れ替わりという言葉聞こえてきた。

あまりにタイムリーだったのでつい振り向いてしまう。

そこにいたのは制服を着た女子高生二人組。

なにやら深刻そうな顔で話をしているが、声が小さいのでなにを言っているかはよく聞き取れない。

気にはなったが、女子高生の会話に聞き耳立てて盗み聞きするのは流石にアレなのでやめた。


「……ん? あの子……」


会話している女子高生の片方に、なんだか見覚えがあるような気がした。

肩のあたりに髪が揃えられた、目の大きな可愛らしい子だ。

その顔をじーっと観察する。

……いや、知らない子だ。

というか、普通に初めて見る顔だ。

なんか何処かで見たことがあるような気がしたが、多分他人の空似か何かだろう。

俺は前を向き直すと、ソシャゲを起動してイベントを走り始めた。




────────




「奈緒ちゃん、この前変な広告サイト開いちゃったって言ってたよね? 実はね、わたしもその入れ替わりの広告サイト、開いちゃって……」

「え!? 唯も開いちゃったの!?」


奈緒ちゃんは驚きに声を上げそうになって、自分が電車の中にいることを思い出したのかすぐ声を小さくした。


「あの、真っ白の背景に文字が書いてあって、自分の名前と相手の名前が書いてある、あの?」

「うん、それ。その後から、わたしも変な違和感がずっとあって……」


わたしの言葉を聞いて奈緒ちゃんは絶句している。

まさかあのときの奈緒ちゃんの訴えが本当だったなんて。

わたしは俯きながら口を開いた。


「ごめんね、思い込みとか言って。奈緒ちゃんは本当のこと言ってたのに……」

「いや、いいよそんな。というか、思い込みの可能性はまだ全然あるし」


奈緒ちゃんは気にしない素振りをしているけれど、わたしとしては気にしないなんて無理だった。


「思い込みなんかじゃないよ。だって二人ともなってるんだよ? 絶対普通じゃないよ……わたし、まだ自分に違和感あるし……」

「そうなの? 私はもうすっかり慣れちゃって違和感もなくなったけど」


奈緒ちゃんはもう自分の体に疑問を感じてはいないようだった。

わたしもいずれそうなるのだろうか。

元々は別人だったかもしれないのに。


「大丈夫だよ、唯。今の私たちは奈緒と唯なんだから。奈緒としての記憶も、唯としての性格も全部ある。元々が誰だったかなんて関係ないよ。私たちは私たち。そうでしょ?」

「奈緒ちゃん……」


奈緒ちゃんの励ましを聞いて少し心が晴れる。

たしかに、今のわたしはわたし、天王寺唯なんだから、そのことを気にしたってしょうがないのかもしれない。


「ちなみに、入れ替わり相手が誰だったかって覚えてる?」

「え? うーん、わかんない……たしか、男の人だったような気がするけど……」

「唯も? じゃあ私たち二人とも男から女になってるんだね。やったじゃん、可愛い女子高生になれるなんて私たち勝ち組だよ?」

「えぇ……? そうなのかな……?」


奈緒ちゃんのノリには少しついていけなかったけど、でもたしかにわたしはわたしとして女子高生生活を楽しむのが一番いいのかもしれない。

わたしたち顔を見合わせて思わず笑ってしまった。




────────




「雅弘さん……その、今日入れ替わりの映画を見たの」


仕事から帰ってきた雅弘さんと夕食を取る途中、私は静かに切り出した。


「え、入れ替わり……? いや、そうか。うん、あの有名なやつな。どうだった? 面白かったか?」

「ええ、すごく。話題になったのも納得できたわ」

「そうか……」


会話が止まり、沈黙が流れる。

私は震えながら、また切り出す。


「……雅弘さん、もし私が他人と入れ替わっているとしたら、どうする?」

「……え?」


この質問は流石に想像していなかったのか、雅弘さんは固まってしまった。

自分が今朝した質問と同じ質問を返される意味を考えているのだろう。


「……見たのか? アレを」

「ということは、雅弘さんも……」


悪い予感が当たってしまっていたらしい。

私たち夫婦は、二人揃って誰かと入れ替わっているようだ。


「……いや、あんなのはただのタチの悪いイタズラだ。気にすることない」

「でも! 本当に書かれていた通りなのよ!? アレを見た後からずっと違和感があって、自分が自分じゃないみたいで……」


堰を切ったように口から言葉が出てくる。

抱えていた不安が爆発してしまったみたいに。


「千歳、落ち着け。それはただの気のせいだ。俺も最初は変な感じがしたが、今はなんともない。すぐに慣れる」

「それは! 魂が体に馴染んだだけでしょう!? あのサイトに書いてあったわ!」


癇癪を起こしたみたいに叫んでしまう。

漏れ出た不安が収まらない。


「大丈夫だ、千歳。だから一旦落ち着いて……」

「落ち着けるわけないじゃない! あなたは私の愛した雅弘さんじゃなくて、私も雅弘さんの愛した千歳じゃなくて、こんなの、あんまりよ!」


涙がポロポロと溢れてくる。

ただただ悲しい気持ちでいっぱいだった。


「千歳、俺は俺だ。今までと何も変わらない。俺はお前を愛している。だからそんな心配は……」

「雅弘さんは良くても、私は嫌なの! だって、こんなの気にしないなんて無理に決まってるじゃない! 私が入れ替わったのは……! 元々の私は、おじさ……」

「千歳っ!」


私の言葉を遮り、ぎゅっ、と雅弘さんが抱きしめてくる。

温かい。

雅弘さんの、優しい心臓の音がこちらに伝わる。


「もういい。もういいんだ、千歳。千歳は千歳だ。他の誰でもない。俺はお前を、これまでと変わらずに愛し続けるよ」

「雅弘さん……うっ、うぅ……」


私は嗚咽を漏らして雅弘さんの胸で泣き続けた。




────────




「うッ、出るッ……!」


ビュルっとザーメンがチンコから吐き出される。

これで今日四回目だ。

オレは元々性欲が強い方だが、今日はいつにも増してムラムラする。

これも入れ替わりってやつのおかげか。

なにしろ自分自身がオカズになるんだ。

こんな状態なら何発でもいける。

その証拠にほら、今射精したばっかだっていうのにもうチンコが勃起してやがる。


「へっ、元気なもんだぜ、人妻さんよ……」


オレは自分に語りかけた。

今日一番の興奮材料はこれだ。

オレが元々若い人妻だったという妄想。

これを頭に思い浮かべるだけであっという間にフル勃起だ。

オレはまたチンコをシコり始める。

スマホには若い人妻系のエロ画像を開いて。

旦那と愛し合う、うら若い新妻。

見ているだけでチンコが滾ってくる。


「ふうっ、はぁっ……へっ、へへっ……」


オレは元々どんなやつだったのだろう。

貞淑で旦那を立てるいい妻だったのだろうか。

ま、今はそれをオカズにチンコをシコる汚ねえおっさんだがな。


「はぁっ、はあっ……わりいな、元旦那。オレ、チンコシコって喜ぶおっさんになっちまったよ! おい、聞こえてんのか、元旦那よお!」


オレはここにはいない元旦那に向かって叫んだ。

どんなやつかも知らねえが、大切な嫁を寝取ってやったような気分だ。

いや、オレが嫁だったんだから寝取られたのか?

まあいい、とにかく興奮してきた。

オレは勃起したチンコを、夢中になってシコる。


「ああッ、また出るッ、うあ゛あ゛ぁッ!!!」


ビュルッ、とチンコからザーメンが出てきた。

流石に五回目ともなると薄まってきているのがわかる。


「はあっ……はぁっ……人妻妄想……最高だな……」


息を整えながら顔を上げる。

目の前に広がるのは相変わらず汚ねえ部屋。

だが、この部屋に対する違和感は最初よりはなくなってきた。

これが魂が体に馴染むってやつだろうか。

となると、その内この感覚もなくなっちまうわけか。


「なら、人妻としてのオレが完全に消える前に、もっと楽しんでおかねえとな……」


そのままオレは、本日六回目のシコり態勢に入った。


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