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氏裸

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【小説】廃墟の融合装置

「廃墟に行くわよー!」


突然後ろから投げかけられたテンションの高い女の声に、俺は辟易としながら振り返る。

そこに立っているのは我らがクラスの問題児、西園寺絵梨香だ。

緩いパーマのかかった金色の髪は前髪の右側の一部だけ青いメッシュが入っている。

服は指定のブレザーを着用せずワイシャツの上からピンクのパーカーを着ており、紺色のスカートの下には黒いタイツに包まれた足をのぞかせている。

こんなハチャメチャな格好でいれば当然教師たちからは何度も呼び出されるわけだが、本人はどこ吹く風といった感じで全く相手にしていない。

うちの学校は校則自体は緩いので退学にさせられるなんてことはないが、それでも流石に限度ってものがあるし教師たちは西園寺の奇行に逐一頭を抱えている。

その破天荒さはうちのクラスどころか学校一番の問題児として有名だ。

そんな誰よりも目立つコイツと、俺は中学からの腐れ縁だった。


「なんだよいきなり……。廃墟に行くって、なんのために?」

「何言ってんのよ誠司。そんなの廃墟探索したいからに決まってるでしょ?」


そんな当たり前だろみたいな顔で言われても困る。

すると、西園寺の後ろからもう一人の少女が声をかけてくる。


「ごめんね、加藤君。また絵梨香ちゃんが変なこと言い出して」


ブレザー、リボン、スカート丈まで全てきっちりと制服を着ている、長い黒髪の真面目そうな少女。

西園寺より少し背の低い彼女の名前は、黒田綾乃。

西園寺の友人である。


「黒田も大変だな。コイツの突拍子もないことにいちいち付き合わされて」

「あはは、私は好きでやってるから大丈夫だよ」


黒田は穏やかそうな顔でにっこりと微笑む。

こんないかにも優等生といった黒田と、教師から目をつけられてる問題児の西園寺が仲がいいというのは、俺からすれば不思議でならない。


「それで、今回はなんなんだ?」

「絵梨香ちゃん、最近動画投稿サイトにハマってて、色々な動画を見てるんだけど……」

「素人でも簡単に動画が投稿できるんだもの。いい時代よねー」


西園寺が俺にスマホを見せてくる。

そこには某有名動画投稿サイトが映っており、様々な動画のサムネイルが並んでいた。

これはどうやら西園寺の視聴履歴のようだ。

その中には動画投稿者が廃墟を探索して回る旨の動画がいくつかあった。


「こういうの見てたらアタシも廃墟行ってみたくなっちゃって。それで色々探してたら近所にいいスポットを見つけたのよ」

「なるほどな、まあだいたいわかった。じゃ、頑張れよ。俺は帰る」

「は? 誠司、あんたも来んのよ」


カバンを持って教室を出ようとした俺の肩を西園寺がグイっと掴む。


「なんでだよ。お前らだけで行けばいいだろ?」

「あんた薄暗い廃墟にか弱い女子二人だけで行かせる気? 何かあったらどうするのよ」


じゃあ行くなよ、と思うがそんなことを言ってもコイツは止まらないので意味はない。


「私も止めようとしたんだけど、絵梨香ちゃん聞いてくれなくて。お願い、加藤君。少しだけでいいから手伝ってもらえないかな?」


黒田が上目遣いで俺に懇願してくる。

そんな顔で頼まれたら男としては断れない。


「仕方ねえな。少しだけだぞ」

「決まりね。じゃ、早速行くわよー!」


乗せられるままに俺は西園寺たちの後をついていく。

こうやって西園寺の奇行に付き合わされるのもいつものことだし、それになんだかんだ言って俺も悪い気はしていない。

だからこそ未だに付き合いが続いているわけで、きっと今日もそれなりに楽しいことになるのだろう。

少なくともこのときはそう思っていた。




────────




学校を出て二時間。

俺たちは木々が生い茂る獣道を進んでいた。


「おい、まだ着かねえのか?」

「あとちょっとだから頑張んなさい」


グイグイと先を進む西園寺の背中を見ながら俺は軽くため息を吐く。

俺たちの地元は田舎で、少し街を外れると周りは山ばかりだ。

こういう林の一つや二つは珍しくないが、こんな民家も何もない場所に廃墟なんてあるのだろうか?


「ふう、ふう……」

「黒田、大丈夫か?」

「あ、あはは……大丈夫……」


黒田は少し疲れた様子で微笑んだ。

息が上がっており、汗で長い黒髪が額に張り付いついている。

あまり体力のない女子には流石にキツそうだ。


「でも、こんなに遠いんだね……私も、今日の目的地はよく知らないから……」

「なんだよ、西園寺のやつ黒田にも場所教えてなかったのか?」


もしかして本当は廃墟なんかなくてドッキリでも仕掛けようとしてるんじゃないだろうか。

そんな気さえしてきたそのとき。


「着いたー!」


一際大きな西園寺の声に顔を上げると、そこには確かに廃墟が存在していた。

三階建ての建物で、壁面は所々コンクリートが剥がれて鉄筋が剥き出しになっている。

木々に囲まれその存在を隠すようにひっそりとしながら、目の前に立つとその異様な存在感がはっきりと感じられる。


「なんか、思ったより本格的な廃墟だね。どうやって見つけたの? こんな所」

「なんか面白いことないかなーって思いながらこの周辺の衛星写真見てたのよ。そうしたらここだけ木が少なくてその奥に微妙に建物の影が見えたのよ。で、気になって来てみたらこれがあったってわけ」


よくもまあそんな細かい所からたどり着いたものだ。

西園寺の好奇心と行動力は側から見ていて呆れを通り越して感心してしまう。


「それで、ここはなんの建物だったんだ?」

「それが全然わかんないのよねー。少なくともネット上にはこんな所に建物があるなんて情報はなかったし、この山で何かが行われてるなんて話もない。民間企業がこの山に入った形跡もないわね。一応この山の所有者についても調べてみたけど、10年ぐらい前に遺産で継いでからほぼノータッチみたいでこの建物についても何も知らなそうだったわ」


そこまで調べたのかよ、という気持ちと、そこまで調べて何もわからないならこの廃墟はなんなんだ、という気持ちで半々だった。

外観を見た感じボロボロではあるが、造り自体はそこまで古くない。

大昔に建てられて解体されないまま忘れ去られた廃墟、という感じでもなさそうだ。

なんだか、見れば見るほどに不気味に思えてくる。


「……なあ、ここ大丈夫なのか? 入ったらまずい場所なんじゃ……」

「バレなきゃ平気でしょ。完全に放置された状態だし、誰かが出入りしてる形跡もないし。何かあったらそのときは柔道三段の誠司にまかせるわ」


俺任せなのかよ。

流石に楽観的すぎる気もするが、本当に大丈夫だろうか。


「黒田はどう思う?」

「うーん、少し怖いけど、でも少しワクワクもするというか……」


控えめな言い方だが、意外と黒田もノリノリのようだ。

どうやら尻込みしているのは俺だけらしい。


「こんなわけのわかんない建物、絶対なんか面白いものがあるに決まってるわ。さあ、暗くならないうちにレッツゴー!」


楽しそうに声を張り上げながら西園寺は玄関口に進んでいく。

俺は何も起きないことを祈りながらその後ろをついていった。




────────




「なーんか、拍子抜けねー……」


懐中電灯を片手にコツコツと足音を立てながら歩く西園寺が気落ちしたような声で言う。

廃墟の中に入って数十分。

俺たちは西園寺の言うような面白いものと出会うことなく、殆どの探索を終えていた。


「打ち捨てられた廃墟なんてそんなもんだろ」

「でももうちょっとなんかあると思ってたのよねー……綾乃だってそう思うでしょ?」

「うーん、私もちょっと残念かな……でも冷静に考えると加藤君の言う通りだよね、あはは」


女子二人は非日常的な体験でも求めていたのか、結構本気で残念がっている。

俺としてはここまで何も起こらなくて安心しているが。


「しかし、ここって結局なんなんだろうな」

「なんかの研究施設っぽく見えるけど、書類の類は全然残ってないのよねー。これじゃあ詳細がなんにもわからないわ」


二階と三階には研究用の机や本棚、理科室にあるような実験道具と思しきものなどが多数見られた。

だが、肝心の研究内容について触れられるものは何も残っておらず、詳しいことは何もわからなかった。


「はぁ……動画で見た廃墟探索は途中でハプニングに遭遇したりしてて楽しそうだったのに……」


西園寺がつまらなさそうに金色の髪を指で弄りながら言う。


「あのなあ、あんな動画のハプニングなんて全部仕込みに決まってるだろ」

「夢のないこと言うわね。こういうのは雰囲気を楽しむのが一番大事なのに。あんた、そんなこと言って本当は怖がらないように必死なんじゃないの?」

「ば、馬鹿、そんなわけねえだろ……」


図星だったが俺は誤魔化して否定した。

というか、この女子二人が怖がらなすぎなのだ。


「さあ、あらかた見終わったし、もう帰ろうぜ」


一階まで降りて来た所で俺は足早に玄関口を目指して足を進めた。

と、そのとき。


「ねえ、ちょっと待って」


突然西園寺が足を止めた。


「なんだよ、この辺はもう見ただろ?」

「最初は気づかなかったけど、ここ……」


西園寺が階段の裏側を指差す。

戸棚が並んでいるそこに、僅かに通り抜けられそうな隙間があった。

その奥は暗闇が見え、なんらかの空間が広がっているようだ。


「ちょっとこれで中照らしといて」

「お、おい!」


西園寺は俺に懐中電灯を手渡すと隙間の中に入っていった。

そんな狭いところを通って、お気に入りのピンクパーカーが汚れてもいいのだろうか。

そんなこと思っていると、やがてはしゃぐような声が聞こえて来た。


「やっぱり! ほら、あんたたちも早く来なさい!」


俺と黒田は顔を見合わせる。

正直気乗りはしないが、仕方なく言われた通り中へ入ると、その奥には下へと続く階段があった。


「地下室よ。まだ何かあるのよ、ここには」


そう言うや否や、西園寺は俺から懐中電灯を奪い取り小走りで階段を駆け降りていった。


「待って、絵梨香ちゃん!」

「おい、置いてくなよ!」


俺たちも慌てて後を追う。

下まで降りると、そこには一際大きな部屋があった。

大きな机がいくつも並んでおり、よくわからない機材のようなものが大量に置かれている。

まるで実験室のようだ。


「ねえ、ちょっと来て!」


西園寺に呼ばれて声をの方を見ると、巨大な機械のようなものが鎮座していた。

中央に大きな筒状の装置があり、それが両脇にある二つの筒に繋がっている。


「なんだ、これ……」


その威圧感に俺は圧倒されてしまう。

SF映画でしか見たことのないような巨大な謎の機械が目の前にあるという状況はなんとも現実感がなかった。


「これ、動かないのかしら」


そう言いながら西園寺があちこち弄り始める。

コイツには自制心というものがないのか。


「おい、あんま触んな……っ!?」


突然、ゴゴゴゴ、と音が鳴りながら機械のあちこちでランプが点灯し始めた。


「まさか、本当に動いた!?」

「嘘だろ!?」


駆動音があたりに鳴り響き、機械が本格的に起動し始める。

中央の筒の上にある黄色いランプが青くなると、ビーッ、と音を立て両脇の筒の蓋が開いた。

筒の中は空洞になっており、それぞれ人一人が入れるスペースがある。

その状態になると、機械は落ち着いたように静かになった。

思わず、俺たち三人は顔を見合わせる。


「……ねえ、すごくない!? やっぱり面白いものあったわ!」

「なんなんだろうね、この機械。そもそも電気もないのにどうやって動いてるんだろう?」

「おい、お前ら何はしゃいでんだ。いいか? もしかしたら危険なものかもしれねえんだからあんまり変なことは……」


俺がそう言ってる間に、西園寺は機械に近づきあちこち触りながら観察し始めた。

俺はガックリと項垂れる。


「この筒の中は特に何もないわね。綾乃、そっちの中どうなってるか見てみて」

「う、うん、わかった……」


西園寺はなんの躊躇もなく筒の中に入り込んで中から機械を調べている。

黒田も西園寺に言われたまま、もう片方の筒の中に入った。


「……こっちの筒も同じだよ。何かを収納するスペースなのかな?」

「おい! だから人の話を……っ!?」


すると次の瞬間、二人が入った筒の蓋が突然閉まった。


「え!?」

「ちょっと、何よこれ!?」


二人の驚きの声が漏れ聞こえてくる。

西園寺が内側から蓋をバンバンッと叩いているようだが、開く気配はない。


「ほら! 言わんこっちゃない! どうすんだよ、おい!?」


すると、青かった中央の筒のランプが赤に変わり、ゴゴゴゴと駆動音を鳴らし始めた。

いよいよ危険な予感がしてくる。


「くそっ、なんで開かないのよ!? ……ちょっ、ちょっと、これって……」

「ひっ!? な、なにこれ!? か、体が……」

「体!? 体がどうしたんだ!? おい、何が起きてる!?」


蓋が閉まった筒は、外からじゃ中がどうなっているのかわからない。

だか二人の反応から何かが起きていることだけは確かだった。


「た、たすけて! 加藤く……」

「誠司っ! あんたなんとかしなさ……」


それを最後に、二人の声が聞こえなくなった。


「おい、西園寺!? 黒田!? どうしたんだよ!? おいっ!?」


俺の叫びが虚しく響くだけで、返事は返ってこなかい。

二人の声が聞こえなくなった後も機械は駆動音を鳴らし続けている。

やがて、ビーッ、という音と同時にランプの色が黄色に変わり、筒の蓋が開いた。


「西園寺! 黒田! 大丈夫か!?」


俺は慌てて筒の中を覗く。

しかし、中は空っぽで誰もいなかった。

さっき確かにこの中に西園寺が入っていたのに。

俺はもう片方の黒田が入った方の筒も見たが、そちらも空だった。

二人が、消えてしまった。


「そ、そんな……」


俺は膝を落として打ちひしがれた。

すると、今度はピンポーン、とチャイムのような音が鳴り、ランプの色が青くなった。

それと同時にさっきまで開いていなかった中央の大きな筒の蓋が開いた。

中からはモクモクと煙が立ち込めており、内側がどうなっているのかよく見えない。


「……ゲホッ、ゴホッ……」

「っ!? 西園寺! 黒田!」


筒の中から誰かが咳き込む音が聞こえてくる。

俺は力を振り絞って立ち上がり筒の中に声をかけた。


「お前ら、無事か!?」


俺の声に反応するように煙の中から一人の人影が出てくる。

その姿を見た瞬間、俺は固まった。


「けほっ……ああ、煙たい……私なら平気だよ、誠司。って、あれ?」


パーマのかかった長い髪。

その色は黒と金が半々になっていて、前髪にだけ青いメッシュが入っている。

服はピンクのブレザーにフードがついているという奇妙なもので、足を包んでいるのは膝下までは学校指定の白いソックスなのにその上は黒いタイツというこれまた奇妙なものだった。

そしてなによりその顔。

俺のよく知る二人の人間を足し合わせたような造形を見て、俺は思わず問いかけた。


「お、お前……誰だ……?」


それに対し、目の前の少女は困ったように頭をかきながら微笑む。


「ええっと、西園寺絵梨香と黒田綾乃……かな? あ、あはは……」


西園寺と黒田。

二人の特徴を持つ目の前の少女はその両方であるかのように言う。


「ど、どういうことなんだよ!? お前ら、どうなってんだ!?」

「ちょ、ちょっと待ってってば。私だってどうなってるか自分でもよくわかんないんだから。とりあえず誠司も落ち着いて、ね?」


少女は俺を宥めるようにそう言うと、ポケットからスマホを取り出した。

そのカバーは西園寺が持っていたものと黒田が持っていたものが混じり合ったような色をしている。

少女は険しい顔をしながらスマホを覗き込んだ。

どうやらカメラを使って自分の顔を見ているようだ。


「あー、私今こうなってるんだー……なるほどねー……」


やがて納得したようにスマホをしまうと、俺の方に向き直った。


「なんか、私たち融合しちゃったみたい。あはは……」

「ゆ、融合……?」

「うん。絵梨香と綾乃が混じり合って一人の人間になっちゃった、みたいな感じ」


にわかには信じ難いことを目の前の少女が言う。

だが、二人が混ざったようなその姿を見れば否定もできない。


「そ、それじゃあ、今お前の中に二人の人間がいるってことなのか?」

「うーん、それはちょっと違うかな。私は絵梨香だし綾乃でもあるの。二つの人格が一つに統合された状態なのかな? 絵梨香としての記憶と感情、綾乃としての記憶と感情、そのどちらも持っている状態の一人の人間、それが今の私なの」


少女が今の自分の在り方を語る。

その喋り方も、口調は黒田ようだが雰囲気は西園寺のもので、まるで二人と同時に喋っているかのような不思議な感覚がする。


「私としても不思議な感覚だよ。今の視点もほら、絵梨香よりは低いけど綾乃よりは高い。それでいつもより低く見える感覚と高く見える感覚が同居してるの」


目の前の少女は西園寺と黒田のちょうど中間ぐらいの身長をしている。

西園寺としては身長が低くなったわけだが、黒田としては高くなっているわけで、二つの違和感が同時に発生しているのかもしれない。


「……どう伝えたらいいんだろう、すごく面白いよ、この感覚」

「面白いって、そんなこと言ってる場合か……? というか、元に戻れるのか? それ……」


俺は当然の疑問を口にする。

この変な機械の使い方を俺たちは知らない。

偶然こうなってしまったわけだが、元に戻る方法が存在するのかもわからない。


「うーん、まあ戻らなくても大丈夫じゃないかな? 私は今特に困ってないし」

「いや、楽観的すぎるだろ……。なんか性格的には大分西園寺っぽいなお前……」


話していると破天荒で奇行ばかり繰り返す西園寺の面影がかなり感じられる。

しかし、その穏やかそうな口調は黒田のもので、なんとも混乱しそうだ。


「そんなことよりさ、誠司……」

「そんなことって、お前…………な、なんだよ……?」


少女は熱っぽい視線をこちらに向けてきた。

真正面から見つめられ、俺は思わずたじろいでしまう。


「誠司もさ、私と融合してみない?」


少女は、とんでもない提案をしてきた。


「は、はあ!? 何言ってんだお前!?」

「だって、今の感覚すっごく面白いんだもの。ここに誠司も混ざっちゃったらどうなるのか、想像したらなんかドキドキしてきちゃって……」


頬を赤らめながら少女が言う。

流石にそんな提案を飲むわけには……。


「ねえ、誠司、よく考えてみて。今の私はただの女の子で、誠司はただの男の子。でも二人が混ざったら男の子でもあり女の子でもある存在になるんだよ? 誠司もドキドキしない?」

「それ、は…………」


誘惑するように囁く少女。

自然と俺の股間も熱くなってくる。

いや、落ち着け。

そんなことは流石に……。


「私、知ってるんだよ。誠司って絵梨香のこと好きでしょ?」

「なっ!?」

「安心して。綾乃が気づいてただけでさっきまで絵梨香は知らなかったから。まあ今は混ざっちゃったからわかるんだけど」


突然胸の内を明かされ動揺する。

確かに、問題児だと思いながら西園寺と連み続けたのは西園寺に好意があったからだ。

黒田に気づかれている可能性は考えていたが、まさかそれをこんな形で告げれることになるとは思わなかった。


「実はね、綾乃は誠司が好きだったんだ。絵梨香は色恋とかエッチなこととか全然興味もなかったけど、綾乃は結構興味津々でね。家でオナニーとかもしちゃってたんだよ? だから、二人が混ざった今の私はエッチなことが好きな絵梨香でもあるの。誠司だって男の子なんだからエッチなこと大好きでしょ? こんな私と一つになったらどうなっちゃうか、気にならない?」


少女は畳みかけるように俺の耳元に言葉を投げかけてくる。

きっと黒田にはここまでの積極性はない。

西園寺にはその情熱がない。

二人が一つになったからこそのこの状況。

そこに俺が混じったら、俺は一体どうなってしまうんだろうか。

ごくりと唾を飲み込む。


「ほら、誠司のここ、大きくなってるよ。もし私たちが融合したら、私にもこれの感覚が味わえるのかな? あはっ、誠司にも、きっとこことか、ここの感覚が味わえるよ?」


目の前の少女は服の上から自分の胸と股間を触れる。

それを意識してしまったら、俺はもう自分を抑えられそうになかった。


「私、先に入ってるから、誠司も心の準備ができたら入ってね」


そう言って少女は両脇の筒の片方の中へと入っていく。

空いているもう片方の筒。

さっきの西園寺と黒田を見ていればわかる。

あの筒の中に入れば、俺は西園寺と黒田が融合した存在と、さらに融合することになる。

やめとけ。

安全だっていう保証はどこにもない。

元に戻れるかどうかもわからない。

一時の欲求に身を任せてどうする。

自分が自分じゃなくなるんだぞ。

怖いと思わないのか。

そんな心の声を無視して、俺は筒の中へ入った。

その瞬間、筒の蓋が勢いよく閉まる。


「あはっ、ありがとう、誠司」


少女の声が聞こえてくる。

ああ、やってしまった。

もう後戻りはできない。

すると、ゴゴゴゴ、と音が鳴り機械が動き始める。


「っ……!? か、体が!?」


俺の体が、足元からサラサラと崩れるように塵となって、上へと吸い込まれていく。

痛みはない。

きっとこのまま全身が塵になり、反対から吸い込まれて来た西園寺と黒田の混ざった塵と一つになるのだろう。

他人と一つになる。

一体どんな感覚なのだろうか。

俺はバクバクと高鳴り続ける胸を手で抑えながら、静かに待つ。

やがて顔まで塵となり始めた辺りで、俺は意識を失った。




────────




ピンポーン、とチャイムのような音が聞こえた。

この音はさっきも聞いた。

ということはどうやら終わったらしい。

目の前の蓋が開き外へ煙が漏れ出ていく。

というか、気づくと周りが煙で満たされていてすごく煙たい。


「ゲホッ、ゴホッ……」


本日二度目の咳き込みだ。

……二度目?

初めてじゃない?

妙な違和感を抱えながら外に出ると、先ほどまでいた地下の実験室に出た。

周りには誰もいない。

今ここにいるのは、俺一人だ。


「これ……成功した……のかな?」


俺は自分の体を見下ろした。

来ている服は、肩から先だけ黒い学ランになっているピンクのブレザー。

何故か襟周りにフードがついている。

下半身はスカートとズボンが一体となったスコートのような不思議なものに膝上まで包まれていて、そこからのぞく足は先ほどと同じように白いソックスと黒いタイツが一体となったものを履いている。

俺はポケットからスマホを取り出した。

三色混ざった奇妙なカバーに包まれたそれを自分の顔に向けカメラを起動する。

するとそこに映ったのは、見たことのない、けれど見たことのある面影ばかりの少女の顔だった。


「……やった、俺、一つになれた! 誠司と絵梨香と綾乃と一つになれたんだ!」


カメラに映る俺が頬を赤くしながら微笑んでいる。

俺はなんとなく髪を触ってみた。

金と黒の混じった長い髪。

さっきまでより黒の比率が増えている気がする。

それに肌もよく見ると活発な男の子らしく程よく健康的に焼けている。

絵梨香と綾乃の白い肌に誠司が混ざっているようだ。


「うわ、そっか、こういうことだったんだ。面白いって……いや、さっきまでも体験してたからわかってるけど、今初めて知る感覚もあって……うわっ、すごいよこれ……」


自分の中に二人の女の子が混ざって来た感覚と、男の子が自分の中に混ざってきた感覚が同時に存在している。

すごく面白い。

この面白いと思う感覚も、今までなかった価値観のような、元からあったような不思議な気分だ。


「うわー、すごいなー、これ……俺、全然別人みたいになっちゃった……あ、声も結構変わってる。すごく高くなった……いや、ちょっと低くなった?」


三人の声が混ざったような違和感のある声が喉から鳴る。

どちらかと言うと女性よりの声だけど少し低くて落ち着いた雰囲気だ。


「身長もさっきよりすごく伸びて……いや、縮んで……あはっ、面白ーい!」


今の俺は男性としては少し低め、女性としては少し高めぐらいで、三人の中間ぐらいの身長になっている。

俺は服の上から自分の体を触った。

女性らしい丸みを帯びた体だけれど、筋肉もついていてしっかり引き締まっている。

もちろん胸もあるので全体を見るとモデル体型のスレンダーボディといった感じだ。


「でも、女の子の要素だけじゃなくて、こっちも……」


スカートの上から股間を撫でる。

そこには女性にはないものの存在感が確かにある。


「本当にある……股間に生えてるってこんな感じなんだ……」


男性の象徴としてのそれが女性らしい体つきの俺に生えている。

そんな今の自分の状態を思うと、自然と胸が高鳴ってくる。


「ああ、すごい……この体……俺のものなのに俺のものじゃないみたいで……でも、これが今の俺なんだ……」


頭の中で、自分について思いを馳せる。

浮かぶのは過去の自分。

西園寺絵梨香。

加藤誠司。

黒田綾乃

全てが俺だ。

毎日のように学校で先生に怒られたのも、柔道の練習が大変だったけど楽しかったのも、ピアノの発表会でお母さんに褒められたのも、全部自分の記憶として思い出せる。


「俺は、絵梨香で、誠司で、綾乃なんだ……ああ、すごい……」


自分の体をギュッと抱きしめる。

自分という存在が今まで以上に愛おしく思える。

自分が好きだった存在が自分になったのだ。

当然と言えば当然のこと。


「ああ、好きっ、好きっ……俺、大好きっ……」


我慢できなくなった俺は服をその場に脱ぎ捨てた。

上も下も全部脱いで生まれたままの姿……と言うと別にこの姿で生まれたわけではないから違うのだけれど、とにかく裸になった。

出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる理想の体型。

男としてそんな女性らしい体に興奮し、同時に女として股間に生えるそれから目が離せない。


「これが、おちんちん……すごい、本当に自分の体に生えてる……」


生まれた頃から生えていた、今初めて見た、俺の相棒。

見ているうちにどんどん熱く滾っていき、上を向いて反り上がっていく。


「勃起してる……俺、女の子でもあるのに、興奮して勃起しちゃってるんだ……」


そっと手を触れると、その敏感さにビクッと震えてしまう。


「ひゃぁっ……すごい、ちょっと触っただけでこんなに……もっと触りたい……」


俺はいつものように男性器を右手で握りしめた。

慣れているけれど初めて感じる心地よさに、腰が抜けてしまいそうだった。

俺は近くの机に腰をかけながらゆっくりと男性器を扱いていく。


「あっ……これっ……すごっ……」


シコ、シコ、とゆっくり扱きあげる。

いつもよりきめ細やかな指先で擦っているからか、快感はいつも以上な気がする。

しかもそれを初めて味わう気持ちもあるのでその快感はさらに強く実感できる。


「んっ、あっ……おちんちん気持ちいい……でも、おちんちんだけじゃなくて、こっちも……」


俺は左手で胸を揉みしだいた。

膨らんだ柔らかい乳房に指が沈み込む。

男の体にはないそれを男の象徴と同時に触れる倒錯感に、脳の奥が痺れていくのを感じる。


「おちんちんとおっぱい同時に触ってる……んんっ、あっ、すごいっ、きもちいいよぉ……んんっ……」


正真正銘、人生初の快感に体を大きく震わせる。

こんな気持ちいい体験ができるなんて、本当に幸せ。

そんな気持ちの中、俺はお腹の下の方に切ない感覚があるのに気がついた。

これだけ気持ちいいのに、まだ足りない。

無意識のうちに胸を揉んでいた手を股間に移していた。

右手で扱き続けている男性器のその下。

本来女の子についているもう一つの性器がそこにあった。


「そっか、おまんこ……おまんこが疼いてたんだ……」


今の俺は男の子であり女の子でもある。

股間には男性器があるし、当然女性器だってある。

俺は左手の中指でその割れ目をそっと撫でながら、ゆっくりと中に挿し込んだ。


「ああ、おまんこの中、指、入ってぇ……こんな、感じなんだ、おまんこの感じ……知ってるのに、初めてみたい……きもちいい……」


女性器はグショグショに濡れそぼっており、挿し込んだ中指を軽く飲み込んでしまう。

ずっと欲していたかのように、咥え込んだまま離さない。


「んっ、あっ、ああっ! おちんちんも、おまんこも、きもちよすぎてぇ……んあっ!」


男性器を扱く右手も、女性器の中を弄る左手も、どちらも止まらない。

自分のものでありながら愛しい人のものでもあった二つの性器。

それらを自分の手で気持ちよくさせていく今の行為は、オナニーでありながらセックスでもあるかのように感じられた。

体と心が満たされていくのを感じる。


「ああっ、きもちいい、きもちいいのっ……! もうダメ、イッちゃいそうっ……!」


両手の動きが激しさを増す。

両足はピンと伸びきったまま所在なさげに震えている。

快感の溜まりきった体はついに限界を迎えた。


「んっ、あッ、ああッ! んんんッ!!!」


ビクンッ、と強く体が震えると同時に男性器の先からビュルルッ、と白い液体が吹き出す。

俺は反射的に体を海老のように大きく後ろにのけ反らせて打ち震えた。

男性器と女性器両方で同時にオーガズムを迎えたようだ。

男性器は液体を吐き出した後もピクピクと震えており、女性器の中も指を咥えたまま脈動している。

俺はそのまま机の上に仰向けに寝転んだ。


「んっ……はぁっ、はぁっ……きもち、よかったぁ……」


息を整えながら、俺は満足して微笑んだ。

間違いなく、今までの人生の中で一番激しく、そして一番気持ちいいオナニーだった。

絵梨香としても、誠司としても、綾乃としても。

こんな気持ちいい体験ができるなんて、融合して本当に良かった。

俺は楽観的にそう考えていた。




────────




「……さて、これからどうしようかなー……」


俺が建物から出るときには既に日が暮れていた。

別に山を降りるぐらいならまだ間に合うけれどこんな薄暗いところに一人というのは少しだけ心細い。

……そう、一人だ。

俺は今一人でここにいる。

結局、あの後三人に戻ることはできなかった。

あの機械に戻る方法があるんじゃないかと少しだけ期待していたけれど、それらしい方法はわからなかった。

そもそもあの機械には最初から融合した人間を戻す機能は付いていないのかもしれない。

そんな状況でも、俺はというと別に取り乱したりはしていなかった。


「まあ、仕方ないよね、こうなっちゃったら」


そもそも今の俺は一人の人間なのだ。

これを今から三人に分けるという方が逆に気分が悪い。

人格的にも完全に融合している今の自分にとっては、今の状況が一番落ち着くのだ。


「とはいえ、今後の身の振り方は悩みどころだよねー……まず第一に、どこに帰ればいいのやら……」


自分の家はある。

けれど、今の俺にとって自分の家は三つあるのだ。

絵梨香の家と、誠司の家と、綾乃の家。

それぞれ全て自分の家だ。

でも、家族からしてみれば今の俺は自分たちの子供とは思えないような別の存在になってしまっているわけで、どこの家にも帰りづらい状況になってしまった。


「うーん、これは困った……まあでも、比較的帰りやすいのは絵梨香の家かなあ」


絵梨香の家は両親が共働きで家を空けていることが多く、恐らく今日も帰ってこない。

とりあえず帰るならそこしかないだろう。


「あー、周りになんて言ったらいいんだろう。三人融合しちゃいました、なんて言っても信じてもらえないだろうし……」


俺は少しだけ憂鬱な気分になりながら家路についた。




────────




「……んっ……んん?」


翌朝、目が覚めると俺は全裸でベッドの上に寝転がっていた。

金と黒の混じった長い髪をかきあげながら体を起こす。


「ああ、そっか昨日家に帰って、ずっとオナニーしてたんだっけ……」


ベッドの周りには大量のティッシュが転がっている。

男性器も女性器も擦りすぎて少しヒリヒリしていた。


「というか、今何時?」


時間は午前10時。

学校には当然遅刻の時間だ。

まあ、この姿では学校にも行けないのだけれど。

俺は自分の胸と股間をペタペタと触る。


「うーん、やっぱり戻ってない。まあ、それはそうだよねー」


もしかしたら全部夢だったなんて可能性も考えていたけれど、当然のように現実の俺は融合したままだった。

まあ、もうこの姿じゃないと落ち着かないけれど。

ふと、スマホが鳴っているのに気づく。

着信を見ると、三人の家族からそれぞれ大量のメッセージが届いている。


「うわあ……どうしようかな、これ……」


いろいろ悩んだ結果、それを見なかったことにした。

このままこの家にいても絵梨香の家族が帰ってきてしまうし、俺は家を出ることにした。

昨日着てた混ざり合った制服は流石に着れないので絵梨香の服を着ていくことにする。

少し小さく感じるけれどこれぐらいなら全然問題ない。

下に男の性器が生えているのに女の子の服を着るのは少しだけ興奮した。


「さて、まずはどっかでご飯食べないとなー……」


俺は適当にコンビニに向かいながら財布を取り出した。

中には三人分のお金が入っている。

これだけあれば少しの間は食いつなげられそうだけど……。


「……ん? 待って……」


俺は財布の中身をじっと見つめた。

俺は今絵梨香のお金と誠司のお金と綾乃のお金を持っている。

これは誰かから盗んだりしたものじゃない。

三人とも俺なのだから全部元々俺のお金なのだ。

つまり、ここから俺がまた別の人と融合すれば、その人のお金も俺のものになる。

そうやってどんどん所持金を増やしていけばもう帰る家がなくても困らないのでは?


「ねえ、そこの彼女。こんな時間に学校行かずに何してんの? ヒマ? それなら俺と遊ぼうよ。ていうかすげー髪だね。いや綺麗でカワイイと思うよ俺は。てか、そこでお茶しない?」


すると、都合よく俺はナンパ男に声をかけられた。

よし、まずはこの人からだ。


「はい、いいですよ」


俺はにっこりと笑って返事をする。


「マジ? いいねー、そうこなくっちゃ。君、名前は? なにちゃんって言うの?」


名前を聞かれて一瞬考える。

そういえば今の俺には名前がない。

絵梨香も誠司も綾乃も俺だけれど、今の自分の名前にするにはしっくりこない。

新しく考えよう。

セイジ、エリカ、アヤノからそれぞれ一文字ずつ取って……。


「セリノって言います。これからよろしくお願いしますね、お兄さん」




────────




『次のニュースです。先月から続いている連続失踪事件にまた新たな被害者が出ました。これで被害者の数は26人目になります』


「へ〜、もうそんなに出てるんだ。なんか怖くない?」


ホテルの一室で、隣に寝ている少女がニュースを見ながら呟く。

私としては、そんなことは今はどうでもいい。


「ねえ、テレビなんか見てないで、続きしよ……?」

「もう、お姉さんがっつきすぎ〜」


少女は体起こすと、私の体の一点を見つめる。


「でも、すごいね、それ。シーメールって言うんだっけ。あれ? ふたなりだっけ? よくわかんないけど、あたし初めて見たよ〜」

「ふふ、いいから、ほら、しゃぶって?」

「は〜い。……んっ、あむっ……れろっ、じゅる……」


少女はその小さい口で、私の大きな男根を咥え込む。

舌でチロチロと舐めながら健気にむしゃぶりつくその様子は可愛らしくてすぐに果ててしまいそう。


「んっ……ぷはっ、うわ〜、すごいビクビクしてて気持ちよさそう。どうする? このまま口の中に出す? それともおまんこ?」

「あなたはどっちがいい? 選ばせてあげる」

「え〜? あたしが決めていいの? じゃあ、こっちで」


そう言って少女は私の男性器にゴムを装着すると、後ろを向きながら指で股を開いた。

私は微笑みながらそのお尻に手を添え、背後から中に、太く固い棒を突き挿す。


「んんっ、すごいっ、大きくて、奥まで届いてるっ……んっ……」

「動くね……」


私はパンッ、パンッ、と音が鳴るくらい激しく腰を動かした。

少し乱暴なセックス。

でもこういうのが男も女も一番気持ちいいのを私は知っている。


「んっ、あっ、あんっ! すごいっ、お姉さん、上手すぎっ……んあっ!」

「んっ、ああっ……これっ、本当に最高……!」


私は至福の喜びを感じながら腰を振り続ける。

少女も体を震わせて悦んでいた。

二人とも、このままイッてしまいそうだ。


「んっ、あっ、あたしっ、イッちゃッ……んあああぁッ!!!」

「私も、出るッ、んんッ!!!」


私は最後にグイッと腰を突き出すと、そのままゴムの中に射精した。

少女もイッてしまったようで、イッたばかりの私の男性器を強く締めつけてくる。

やがて少女は力が抜けたようにその場に横たわった。


「んっ、ふぅ……すご〜い……お姉さん、今まで会った人の中で一番気持ちいいかも」

「ふふ、ありがとう。ねえ、これ、綺麗にして?」


私はゴムを外しながら男性器を少女の口元にかざした。


「は〜い。……れろ、あむ……」


少女が精液に濡れた私の性器をぺろぺろと舐めて綺麗にしてくれている。

こうした事後の余韻もまた至福の時間だ。


「……んっ……お姉さん、お金はたくさんくれるし、ちんちんは大きいし、セックスは上手いし、本当に何者なの?」

「ふふ、さて、何者でしょう?」


この少女にはきっとわからない。

お金もセックスの経験値も、今の私がそれを26人分持っていることなんて、わかるはずがない。


「……んにゃ? あれ、なんだか、眠くなって、きちゃった……」

「疲れたでしょう? ゆっくりお休みなさい」

「……えぇ? でも……あ、そういえば……お姉さん、なまえは、なんて……」

「私? 私はセリノっていうの。これからあなたの名前にもなるから忘れないでね」

「……え、……それ、どう……いう……………すぅ……」


少女が微睡に飲まれて意識を手放した。

どうやら睡眠薬が効いてきたようだ。

こういう頭の悪い女の子は簡単だ。

ちょっとお金をチラつかせれば簡単に引っかかる。

でもこういう若い女の子の体も必要なのだ。

頭の悪い男を引っかけるためには。


「次に目を覚ますときにはもうあなたはあなたじゃないけど、それまでゆっくり休んでね」


私は先ほどまでのセックスを思い出す。

私の性器を頬張るあどけない顔。

うねるように私の棒を包み込んだ名器の膣。

あれらがこれから全て私と一つになるのだ。

気持ちが昂るのを感じる。

私はウキウキしながら服を着て退室の準備を進めた。

後はこの少女をスーツケースに詰めて車で運ぶだけだ。

場所はもちろん、あの融合装置のところ。


「大丈夫、安心して。私、今とても幸せだから、あなたも幸せになれるよ」


私は穏やかな表情でにっこり微笑みながら少女の入ったスーツケースを閉じた。


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