俺が前に参加してた交流企画で書いたSSです。
登場キャラの親御さんには許可いただいてます。
イサリビっていう方が俺のキャラです
こんな見た目
PIXIVで公開してたんですけど、恥ずかしくなってきたのでこっちで改めて供養させてください
「あーつっかれた……ごめんなさい、ちょっとだけ休憩させてください…」
騎士団寮内、おれの自室。全体的にシンプルな色合いで統一された部屋には、作業をするためのやや小さめのデスクと椅子が部屋の隅に一つずつあり、その近くにはシングルベッドが置いてある。本棚には所狭しと大切な魔術書が並べられており、その中にはスイーツ特集などが載っている雑誌も少しだけ紛れている。
扉を開けてよたよたと室内に入り、部屋の奥に設置してあるベッドへと向かう。もうここ数日だけで数か月分働いた気がする。てかガルガン団長人使い荒すぎ…もう嫌だ…甘いものたくさん食べたい…。
ボフッと音を立てながらベッドへ飛び込むと、ふかふかの感触がおれの意識を蝕んでいく。…やばい、このまま寝そう…。
一年を通して二度だけ行われる、騎士団採用試験。騎士団に入団することを夢見て数多くの勇士たちが集い、自らの武勇を騎士団に見せつける。
当然、参加者も多いため、大多数のものは不採用にされる。採用される者も、ほんの一握りだ。
そんな厳しい採用試験を見事潜り抜け、訓練期間を終えたものだけが騎士団へと所属することができ、「騎士」を名乗ることを許される。
そんな騎士団採用試験が行われる時期が、今年もやってきた。
いやまぁもう終わったんだけどね。
結果としては、おれの所属する「第二騎士団」にまた一人、入団した。
今ベッドで死にかけてるおれの後ろで、胡坐をかいて床に座り、ぼさぼさの長い髪を眉間にしわを寄せつつ一生懸命に櫛で梳いている彼。
「…イサリビさん?あんまり無理すると余計に髪が痛みますよ…?」
イサリビ=ロクドウ。新しく第二騎士団に入団してきたおじいちゃんだ。
なぜこの歳になってわざわざ騎士団に入ったのか理由を聞いてみたのだが、うまくはぐらかされた。
まぁ騎士団に入る理由なんてそれぞれだし、プライベートなことだから深くは追及しなかったけどさ。
おれは微睡む意識の中、そんなことを考えつつイサリビさんをぼーっと見つめていた。
初めて見たときから思っていたが、彼はどうやら身だしなみには無頓着らしい。聞いたところ、風呂から上がってもドライヤーなどは使わず、手入れもせずにタオルで拭くだけ。そんな生活を続けていたらボロボロになってしまったのだと。
そしてそれを見てしまったおれが黙っていられる筈もなく。綺麗な髪の色してるのにもったいない…もっと髪の毛大切にしましょう?とそう伝えたら、これからは髪にも気を使ってくれるって言うから、おれは彼に櫛を押し付けた。そしてその櫛を使っていま彼は髪を梳いているというわけだ。
そしてそんなことを考えているうちにも、睡魔は徐々にやってくる。まって俺を連れて行かないで。やめて。
しかし現実は残酷だ。
あ、やばい。これ落ちる。ごめんなさいイサリビさん。
「…やはり櫛だけだと、絡まってうまく梳けんな………エヴァン殿?」
そんな彼の声を最後に、俺は意識を手放した。
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「……ん…」
朦朧とする意識の中、おれは目を覚ました。そっか、寝ちゃってたんだ。
目をこすりながらのそりと上体を起こし、入り口付近に掛けてある掛け時計に視線を移す。時刻は18時を指していた。
うわ、もうこんな時間。けっこう寝ちゃってたな…。
「…む。お目覚めか、エヴァン殿」
背後から聞こえてきた声にハッとして勢いよく振り返る。そうだ!イサリビさんいたんだった!やっべぇ忘れてた…!
「あぁぁごめんなさいイサリビさん!!おれ自分から誘っといてほったらかして寝ちゃって…!」
まだ入団したばかりで彼のことを全く知らないから、親睦を深めるという名目で少しお茶しながら話でもしようかと思ってたのに…。外出する準備をしに自室に戻ったらそのまま寝落ちてしまった…最悪だ。
顔を両手で覆って再びベッドへと倒れ込む。
「お気に召さるな。よほど疲れていたのだろう、盛大ないびきをかいて眠っておったぞ」
「あぁぁぁぁぁぁ…いびきまで聞かれてたとか…ほんっと無理…ごめんなさい……」
はっはっはと軽く笑いながら読んでいた本にしおりを挟んでデスクに置き、立ち上がるイサリビさん。
すると今度は、おれが今横になっているベッドまで歩み寄ってくる。
失礼、と一言断りを入れて横に腰かけたあと、おれの方を見て優しく微笑みながら頭にポンと手を乗せてくる。
こうしていると、まるでおじいちゃんと孫みたいだ。
「…お疲れ様だ、エヴァン殿。今日はもうゆっくり休むといい。話なら、また別の日にするとしよう」
は?なんだこのじじい。天使かよキレそう。
一瞬真顔になったおれは、彼の手をゆっくりと退かし、上体を起こす。
…うん、やっぱり早いほうがいいもんな。今日にしよう。
「…これ、誰にも教えてないんですけどね」
「夕方から開店する、夜景がすごく綺麗なお店がありまして」
突然語りだしたおれを、目を丸くして見つめるイサリビさん。
ベッドから降りてデスクに置いてある財布を懐にしまいながら、おれは構わず言葉を続ける。
「そこのケーキ、めっっっっちゃくちゃおいしくて、やばいんですよ」
デスクの上の乱雑に散らかったペンや書類を簡単に片付け整頓したあと、置いてあった彼の本を手に取って振り返り、
「もしよかったら、今からそこでお茶しませんか?」
手にした本を差し出しながら、おれは彼にそう問いかける。
「…私は構わんが…エヴァン殿は、お疲れではなかったのか?」
「さっき寝たので、もう大丈夫ですよ。それに…あなたはもう、おれ達と肩を並べて戦う、仲間です」
「仲間のことをもっとよく知りたいと思うのは、当然のことでしょう?」
なんとなく気が付いていたが、入団試験が終わり、第二騎士団に配属されてからというものの、彼は周りから少し距離を
置いていた。
詳しい理由はわからないが、恐らく周囲との年齢差などを気にして、自分から積極的にいくことが怖かったのではないかと思う…単なる推測だけど。ばかだなぁ、そんなこと気にするわけないのに。
まぁ…580年も生きてるなら、仕方ない気もするよね…ほら、歳をとるにつれて新しい交友関係築くのって徐々に難しくなってくらしいじゃん?
しかも、イサリビさんからしてみればおれ達なんてまだ赤ちゃんみたいなもんだと思うし、そりゃ温度差感じちゃうよね。
「…気が付いてらしたのか。いやはや、お恥ずかしい限りだ」
「なんとなく、ですけどね。おれ、そういうのには敏感なんですよ」
ははは、と、困ったような笑みを浮かべながらばつが悪そうにするイサリビさん。
「……聊か、歳をとりすぎたようだ。すっかり臆病になってしまっていた。」
差し出された本を受け取り、立ち上がる。
「こんな私ではあるが…どうか、これからよろしくお願い致します」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします!」
姿勢を正し、丁寧なお辞儀をする。それに倣って、おれもお辞儀で返す。
よかった。元気出たみたいだ。
「よーし!それじゃあ、出発しましょう!あ、今日は"先輩"の奢りですからね!好きなだけ食べていいですよーっ!」
颯爽と踵を返し、部屋の入り口に向かって歩いていく。頭の中は、すでにスイーツモードだ。
何食べよっかなー、フルーツタルト食べたいな。あ、コンポートもいいかも!
こうして甘いものを想像するだけで、自然と気分も浮き立つというもの。スイーツ最高!!!!!
足取りも軽く部屋の外へと向かう。
「…そうだな。では、お言葉に甘えるとしようか、エヴァン"先輩"。」
そんなおれの様子を見てか、彼の顔にも自然と笑みがこぼれる。うんうん、甘いものは世界を救う!
甘味って、偉大だね。
あ。そういえば、まだこれ言ってなかったや。
おれはふと後ろを振り返る。
「そうだ、これ言っとかないと」
「?」
「ようこそ、第二騎士団へ!あなたを歓迎します、イサリビ=ロクドウさん!」