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成家 慎一郎 from fanbox
成家 慎一郎

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「フードコートで、また明日。」感想と今後のことについて

「フードコートで、また明日。」ついにアニメ放送始まりましたね!


皆さまのご感想、いかがですか?

僕は放送前に観させていただいていたのでリアタイはしなかったのですが、制作陣の皆さまが原作を大切にしつつイイ感じに遊んでくださっていたので「何も考えずに流せるストレスフリーなアニメ」というジャンルとしてはかなり良い出来だったんじゃないかと思っております。


OPもかわいい!曲も最高!EDもかわいい!曲もエモい!背景の描き込みエグい!声優さんの力量高い!キャラ絵もず〜っとかわいい!


これは別に漫才でもなければ完全なギャグ作品でもないのでウケを狙う必要もなく、のたりくたりとした二人の話し方や仕草が個人的には気に入っています(最初は ん?と思いましたけど、見れば見るほどこれがいいんだな〜って)。誰のことも笑わせなくていいのよ、だってみんな彼女たちを覗いてる視点の話なんだから。


元々僕は生きるとか死ぬとか人間の葛藤とか苦しみとかを描くのが好きで(今のアニメ枠で言うと「タコピーの原罪」みたいな話が大好きだし、これまでに描いた「パレットナイフ」「ドロップフレーム」「ラパステーマパーク」などはそういう題材の作品です)、自分の得意ジャンルではない日常系会話劇「フードコートで、また明日。」がこのような成長を遂げるとは思いませんでした。


以前のブログでも書いたように、僕はこの「フードコートで、また明日。」とは因縁のような、言葉ではうまく伝えられない、言葉にしてしまっては揚げ足取りしかされなさそうな複雑な距離感のようなものがずっとあります。



元々は「セトウツミ」と言うマンガが面白くて読んでいたとき、とあるレビューか何かで「この会話の面白さは男同士にしか生み出せない。女では絶対に無理だ」みたいなコメントを読んだときに「ん?そうかな?」と思って描き出したのが「女子高生がフードコートで駄弁るだけ」でした。


女の子の会話も意外と面白いんですよ。

僕は27歳まで女だったので(FtMです)小中高、そして専門学校も女として過ごしていたため女子特有の会話は長いこと聞いていたし、ヤマもオチもないけど思いついたことをペラペラ話して笑ってうまいことピタゴラスイッチみたいなことが起きたときにひっくり返るほど笑い転げる、あの感じが心地よいなぁと思ってたんですよ。


男性同士の会話って話題に対して解決しようという動きが多いんですけど、女性同士の会話って感情の共感を求める…なんてのはよく言われてることですよね。僕が経験してきた女同士の会話ってのはもっと単純で、表面的な楽しさというか…愚痴とか悩みとかも話すんだけどシリアスにならなくて、重い話も笑い話にして話したらちゃんと笑ってくれるから助かった、みたいなことが多かったんです。それが作品にも活かせるかと思って。

ちなみに「ライオンのメスってトラだよね」「違うよチーターだよ」はうちの高校のギャル二人が実際に言ってた名言です。このネタ好きすぎて「15 明刹工業高校ラグビー部」でもおまけで描いたんだよな〜。


しかし、ネームの段階ではどの編集部でも蹴られ「女の子同士の恋愛にしないと載せてあげられない」とか「エロい話を多くしてくれるなら掲載のチャンスはある」とか…大体にしてやはり「女同士の会話の何が面白いの?」とか言われてお蔵入りしてたんですよ。


それを当時の集英社の担当編集さんが「もういっそTwitterに載せちゃいなよ。きっとこのマンガのためになるよ」と背中を押してくださって掲載したところ、バーンと跳ね上がって一時的に話題になったんですね。


でもその時はもう地獄でした。

ほぼ全ての出版社から「あのマンガ面白いね!うちで描いてよ!」とか「あんな感じの似たようなマンガをぜひうちで!」みたいなオファーが殺到して、掲載前は散々蹴ったくせにバズったらこれだよ…と言う、周りの手のひら返しに感情が追いつかなかったからです。その中には新人時代にマンガの持ち込みへ行ったときに、名前すら聞いてくれずボロクソに叩いて10分で帰らせた編集者もいて、世間は狭いなぁ残酷だなぁと感じたり。


しまいには僕が他の作品を描くたびにSNSには「他のマンガ描いてる暇があるならフードコート描けよ!」というリプライやDMが数多く寄せられ…。

このマンガの何がみんなをそうさせるのかわからない、ただ「描け」「続きはよ」しか言われない、好きで描き始めたはずのマンガも周りの影響が大きすぎて他人の作品を描かされているような感覚になっていきました。この大フィーバーが全く喜べなかった。


人生初の鬱病にもなり、この辺りから正直「マンガを描くこと」が怖くて、不定期連載になったんです。


自分の好きな話が描きたくてマンガ家になったのに、いつの間にか周りの求めるものだけを描くマンガ製造機になってしまった。雑誌連載では編集者が守ってくれてたけど、直接何でも言えちゃって他人との距離が近いSNSマンガの怖さみたいなものに心が耐えられなくなってしまったわけです。


だから一度、5年ほど前に霞でも食う気持ちで新規連載断ち・SNS断ちしました。

周りの意見や要望を遮断して、ひたすらに自分のマンガとだけ向き合う。自分の娘・息子と真剣な話し合いをするような感じです。君たちはなぜ僕の元に生まれて、何がしたいのか、どうなりたいのか。僕はこの子たちのどこが好きで描き続けているのか。マンガを作るにはストーリーやギミックを練るんじゃなくて、キャラクターをこれでもかというほど深掘らないと何も生まれないから。

そうやって少しずつ、時間の経過もあってマンガが好きだった頃の自分が戻ってきました。


現在では結婚して生活環境も大きく変わりずいぶん気持ちも穏やかになって、SNSも宣伝&たまに日常をポストできるようになりましたが、反応や数字は見ていないし気分の良い時だけスラスラと覗くようにして、マンガのほうも自分から編集部に持ち込んだりすることもなくなりました。

ありがたいことに、ごくまれに息抜きでSNSに載せたマンガが連載になるということはあるんですけどね(「教え子くんとはデキません」がそうです)。


そんな因縁ある作品「フードコートで、また明日。」があれよあれよとアニメ化になり、僕が思っていた以上にこの作品の良さを周りの方から伝えられ、ようやく自分がいいものを描いたんだなと、自分の作品だと感じることができました。描けば描くほど喜んでくれる人がいるんだなと、純粋に。ここまで長かった。


「他のマンガ描いてる暇があるならフードコート描けよ!」と言っていた人たちも、今じゃ「フードコート描いてる暇あるなら教え子くんの続き描けよ!」「フードコートはいいからその者のちに早く描けよ!」と言ってきて、なんかもう笑っちゃいますよね。

その人たちを馬鹿にするわけじゃなくて、マンガってそういうものなんだなって、みんなマンガ大好きなだけじゃん!って。勝手にそこに他意を見つけてた僕が馬鹿でしたよ。


いつも読んでくださって、ありがとうございます。

今なら素直にそう言えます。



最後に、今後のことです。

アニメ放送前までは急足での単行本作業、販促物や宣伝などに時間を費やしてしまい、他の連載を休まざるを得ませんでした。アニメ放送が始まればそれはもう見守る他ありませんので、作者の僕はようやく通常作業となるわけです。


「教え子くんとはデキません」「その者。のちに…」「君といる島」など、他連載作品が楽しみな方を大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。どの作品が最初に…というのはまだわかりませんが、順に描き進めて参りますのでもう少しお待ちください!ネームはもうできていたり下書き段階だったり、ちゃんと作業は継続しております。


「教え子くん」は先生が婚活パーティー行ってどうなっちゃうの!?ですよね。「その者」はワズを追いかける&追いかけてきたヒロインたち大集結でどうなっちゃうの!?ですよね。「君島」は絶対島から出ていかない!お前を置いて!と言ってた隆之の両親が交通事故って…どうなっちゃうの!?ですよね。「フードコート」は山本の家庭事情どうなっちゃうの!?ですよね。どうなっちゃうの!?しかないですね笑

がんばります!


ああ〜20代30代の無茶が効く体に戻りてぇ〜!40過ぎたら徹夜がツレェよ〜!中年なってもバリバリ仕事できるマンガ家さんほんと尊敬します。ネームはいくらでも思いつくんですが、作画を頑張れる力がない…誰か作画して…なんて弱音を吐きつつ、今日もひっそり机に向かいます。

「フードコートで、また明日。」感想と今後のことについて

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