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新人OLとセクハラ課長が入れ替わる話

猫餅さん(user/15232106)の以下のツイートのアイデアをお借りしています。

https://twitter.com/nekomoti_TSF/status/1663136572026540033


1年以上ぶりの全体公開です。猫餅さんのツイートがずっと頭にこべりついて離れなかったので、お借りして書かせていただきました。誠にありがとうございます。


ついでに連絡で、小説の数がかさばってきたので一覧で見れるサイトを仮設しました。ついでにFANBOXの目次もそっちに統合したので、いい感じに使えたら旧目次の方は多分消します。

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目次(新)

新人OLとセクハラ課長が入れ替わる話

「ま、待って!乗らせて……!」


エレベーターの外から響いてきた聞き苦しい声に、既に乗っていた女性がピクッと眉をひそめる。いっそボタン押して扉を閉じてしまおうかと考えたが流石にマズいと思い直し、腹に蓄えた脂肪を揺らしながら走ってくる中年を迎え入れた。


「ぜぇっ、ぜぇっ……。 いやあ、ありがとね涼香ちゃん。ここのエレベーター待つと長いからさ、助かったよぉ」

「……おはようございます、塚田課長」


汗だくになりながら呼吸を整える塚田に、涼香と呼ばれた女性は小さく会釈をして素っ気ない返事を返す。塚田は涼むためかじっとりと濡れたワイシャツの胸元をバタバタと扇ぎ、一層強く漂い始めたツンとした体臭に涼香は再び顔をしかめる。


「いやぁ~、それにしても涼香ちゃんはホント偉いよねぇ、新人なのに頑張ってくれてて助かるよ」

「いえ、そんなことは」

「またまた、謙遜しちゃって。出社時間だって、いつも朝早く来てるんだってね?」

「あ、ありがとうございます……」


馴れ馴れしく話しかけてくる塚田に対し、嫌悪感を隠しきれない様子の涼香だったが何とか礼の言葉を口にする。

彼女、川下涼香はその恵まれた容姿や男好きする肉付きのいい体型のせいで、学生の頃から何度も痴漢やストーカーの被害に遭っていた。こうして早朝に出社しているのはそういったトラブルを避けるための、これまでの経験に基づく自衛策だったのだが――


「今日なんかは施錠当番の僕よりも早いんだから……ほんと、仕事熱心で何よりだよねぇ……ふへへっ」

「っ……」


塚田は品のない笑みを浮かべながら、ポンポンと彼女の肩を叩く。

彼、塚田浩平こそが、最近の涼香にとっての一番の悩みの種だった。念願だった企業に就職し、同期と共に研修を乗り越え希望した部署に配属してもらうことができてと、彼女は思い描いていた理想の社会人生活を歩んでいたのだが、配属先の上司がよりにもよって、『セクハラ上司』という言葉がぴったりの、彼女が最も嫌悪するタイプの下賤な男だったのだ。

今のようにやたらとボディタッチをしてくることは当たり前。さらには「どうせ透けてるならもっと色っぽい下着をつけてきなよ」などと言ってきたりだとか、「ちょっとスカートが短すぎるんじゃない?」などと言ってスカートの裾をめくってきたりだとか、挙句の果てには人がいない場所に呼び出されて直接胸を揉まれた女性社員がいる、なんて噂もあるような相手だった。

当然ながら女性社員からは毛嫌いされており、そういった男を軽蔑する涼香も業務外で塚田と関わらないようにしていたのだが、今朝は運悪く2人きりになってしまったというわけである。


(ほんと、朝から最悪だわ。 ……ていうか、ここのエレベーターこんなに長かったかしら。いつになったら……あら?)


早くこの場から解放されたいという思いで階数表示に視界を移す涼香だったが、ふとあることに気が付き首をかしげた。故障でもしているのか、階数を表示するパネルには意味不明な記号が表示されており、エレベーター内のランプは微かな点滅を繰り返し続けている。


「……課長。これ、何か変じゃ……きゃあっ!!?」


そう言いかけた瞬間、涼香は思わず悲鳴を上げる。なんと、背後にいた塚田がいきなり胸を鷲掴みにしてきたのだ。その手つきは過去に彼女が被害に遭ってきた痴漢たちと同じいやらしいもので、涼香は反射的に腕を振り払い、塚田に思い切り平手打ちを浴びせた。


「い、痛いなぁ、何するんだい」

「なっ……それはこっちのセリフです!!いきなり胸を触ってくるなんて、何考えてるんですか!?」

「やだなぁ、服にゴミがついてたから取ってあげようとしただけだよ?」


塚田は悪びれる様子もなく、へらへらと笑いながら答える。そのあまりに白々しい態度に、涼香の怒りは沸点に達した。


「ふざけないでください!!あんな気色の悪い触り方してきて……どう考えてもセクハラですよ!?」

「はぁ……あんなのただのスキンシップじゃないか。 それに涼香ちゃん、僕にそんな態度取ってていいのかなぁ?」

「……は?」

「僕は君の上司なんだよ?僕の気分次第で君のキャリアなんてどうとでもなるんだから……ね? こんなくだらないことで将来を棒に降るよりは大人しくしておいた方がいいって、賢い涼香ちゃんなら分かるんじゃないかなぁ♡」


ニタァっと気持ちの悪い笑みを浮かべながら放ったその言葉に、涼香は怒りを通り越して呆れ返っていた。


(ちゃんとした企業でも、ここまでクズな人間っているものなのね……。 ま、べらべらとしゃべってくれる馬鹿で助かったわ。ここまで証拠があれば人事も動いてくれるでしょ)


涼香は塚田がエレベーターに入ってくる直前、ボイスレコーダーの電源をオンにしてポケットの中に忍ばせていた。

先ほどのセクハラ発言はもちろんのこと、度を越した行為を続ける塚田を失職させるために、涼香は彼が日常的に行っていた数々のハラスメント行為の証拠となるであろう会話はしっかりと録音していたのだ。

それを悟られることがないよう、涼香は塚田の脅しに屈したように話を合わせる。


「……すみませんでした、課長。今後はこのようなことがないようにしますので、どうかご容赦を……」

「ふへへっ、分かればいいんだよぉ。 さ、もうすぐ着くだろうし……って、あれ?このエレベーター、いつになったら――うわぁっ!!?」

「きゃあぁっ!!?」


ガクンッ!と大きく揺れた次の瞬間、2人の乗ったエレベーターはプツリと照明が消えたかと思うと急加速を始めた。ガタガタと激しく上下左右に揺られながら、2人はもみくちゃになりながら床に倒れこむ。あまりのショックに気絶してしまったのか、しばらくはエレベーターが動く轟音だけが響いていたが……やがて室内がパッと明るくなったかと思うと、何事もなかったかのように目的の階で扉が開いた。


「う、うぅん…………?」


その音を聞いて意識を取り戻したのか、塚田が重たい身体を支えるようにしてのっそりと身を起こす。何が起きたのか分からない様子で、目を擦りながらもキョロキョロと辺りを見回していたのだが……やがて倒れている涼香に気づくと、恐る恐る声をかけた。


「あの……大丈夫ですか?」

「いたた、いったい何が……えっ!??な、何これっ、なんで僕におっぱいが……うおぉっ!?♡」


涼香は頭を押さえながら立ち上がったかと思うと、なんと自らの胸を両手で揉みしだき始めた。そして片方の手でお腹、腰、股間と……塚田がいることも気にしていないように、どこかいやらしい手つきで撫でまわしたかと思えば歓喜の声を上げる。

そんな『涼香』の痴態を眺めながら、『塚田』は呆然と呟いた。


「ど、どうして私がもう一人いるの……!?」




***




「おはようございまぁす♪」


始業時刻の数分前、溌溂とした可愛らしい声がオフィス内に響き渡った。それを待ちわびていたかのように何人かの男性社員は顔を上げ、その声の主の方へと視線を向ける。

そこにいたのは、部署の新人である川下涼香だった。同期入社の誰よりも仕事熱心だが、少しとっつきにくいほどに生真面目な新人……というのが以前の彼女の評判だったのだが、最近はそれが一変して、明るく親しみやすい女性社員として社内では認知されている。

黒髪のポニーテールだった髪型は明るめのボブカットになり、以前ほとんどしていなかったメイクも彼女の美貌が際立つようなものが施されている。そして、極めつけはその抜群のスタイルを見せつけるように気崩した服装で、艶めかしい肢体を見せつけるように歩くその姿は以前の彼女とは別人のようだった。


「千尋さん、おはようございますっ」


涼香は自分のデスクに着くと、隣席の女性社員に声をかける。どうやら仲がいい様子で、声を掛けられた女性は少しだけ顔を綻ばせた。


「ふふ、おはよう、涼香ちゃん。今日も元気がいいわね」

「えへへっ、朝から千尋さんとお話できるのが嬉しくって♪」


そうしてしばらく談笑をしていたのだが、横やりを入れるかのように「ちょっと」と、男性の低い声が割って入る。

涼香がその方向に目を向けると、そこには眉間にしわを寄せた中年太りした男性の姿があり、少し離れた課長席から彼女の方を睨んでいた。どうやら話があるようで手招きをしており、少し心配そうな表情を浮かべた千尋に笑いかけると男性の元へ向かった。


「どうしたんですかぁ?『塚田課長』♪」

「っ……!」


険しい顔つきをしている上司を前にしているというのに、涼香はむしろ愉しくて仕方がないといった様子でニヤニヤと笑っていた。その態度に塚田は一瞬怒鳴りかけたものの、すぐに咳ばらいをして平静を装う。


「……川下さん。そういう恰好は流石によくないんじゃない……かな?」

「どうして課長にそんなこと言われなきゃいけないんですかぁ? あたしが何を着てようとあたしの勝手ですよね?」

「そ、それはそう……だけど……」


涼香はタイトスカートの上から自分の太ももをさすさすと触りながら、どこか挑発的な視線を塚田に向ける。彼は何か言いたげにしていたが、悔しそうに歯噛みしつつ口を開いた。


「服装は……まあ、いいとするよ。 だけど、もう少し胸元は閉じた方がいいんじゃないかな? いくらクールビズとはいえ、せめてボタンをあと2つくらい……」

「え~?課長ったらそんなにあたしのおっぱいばっかり見てたんですかぁ?もう、スケベですね♡」

「なっ……!」


涼香はわざとらしく頬に手を当てながら、からかうような口調で言う。絶句する塚田に追い打ちをかけるように、涼香はクスリと嗤うと言葉をつづけた。


「課長には分からないと思うけど、"女の子"って色々大変なんですよぉ? 特にあたしなんかはおっぱいが大きいせいで谷間が蒸れちゃって……ふふっ、こうでもしないと暑くてしょうがないんですよねぇ♡」


涼香はそう言うと、見せつけるような仕草でブラウスの胸元をバタバタと扇ぎ始めた。香水と体臭が混ざった独特の良い匂いが辺りに漂い、服の隙間からは色っぽいブラジャーに包まれた乳房がふるふると揺れる様子が見え隠れしている。その煽情的な光景に男性社員たちの目が釘付けになっていたのだが――そんな彼らとは対照的に、塚田は怒りを露わにしていた。


「ふざけないでください!!せめてちゃんと服は着て!!」

「ちょっと、何触ろうとしてきてるんですかぁ?」


ボタンを止めようと塚田が伸ばした手を、涼香はバシッと払いのける。


「それセクハラですよ? やめて下さいって、前にも言いましたよねぇ?」

「それはあなたが……!」

「あたしが?ふふっ、あたしが課長みたいなおじさんを触りたがるわけないじゃないですかぁ♡ ……あ、そろそろ始業時間なんで、失礼しますね♪」

「ちょ、ちょっと……!」


涼香は塚田の言葉を遮ると、さっさと自分のデスクへと戻っていく。


「りょ、涼香ちゃん、大丈夫だった?課長の怒鳴り声、こっちまで聞こえてきたけど……」

「ぐすっ、うぅ……。怖かったですぅ……」

「きゃっ!? 涼香ちゃんったら……」


心配そうに話しかけた千尋に対し、涼香は泣き真似をしながら抱き着くと、なんと彼女の豊満な胸に埋めてしまう。

その様子を遠くから眺めていた塚田はギリっと歯を食いしばり、苦虫をかみつぶしたかのような表情を浮かべていた。




***




「塚田課長!今朝のあれはいったいどういうつもりなんですか!?」


やがて昼休みになり、塚田は涼香を連れて会社の屋上まで来ていた。塚田課長……と呼ばれた『涼香』は塚田の剣幕を意に介していない様子で、ニヤニヤとした笑みを浮かべている。


「あれって、一体なんの話かなぁ?」

「とぼけないでください! 同僚の前でそんな痴女みたいな恰好するなんて……!!」

「まったく、涼香ちゃんはほんとお堅いなぁ。 別に何を着ようが君には関係ないだろ?だって……ふひひっ♡自分の身体を好きにしてるだけなんだからさぁ♡」

「違います、それは私の身体です!! 元に戻るまでは勝手なことしないって約束してたのに……いくらなんでも酷すぎます!!」


だらしのない表情で自分の身体を撫でまわす『涼香』と、半泣きになりながらオカマのような声で抗議する『塚田』。そう、彼らは数週間前にあったエレベーター内での原因不明の事故で身体が入れ替わっていたのだ。

「なんとか2人で協力して元の身体に戻る方法を見つけること」と、「それまではお互いの評判を傷つけないよう、身体に合った生活すること」を約束していたのだが、それが守られていたのは最初の数日間程度。涼香は最初の方こそ困惑していたものの、次第に若い女性になったことを心の底から楽しみ始め、最近では塚田が止めるのを無視して彼女の身体を自分好みの容姿に染め上げてしまうほどだった。

それでも元の身体に戻るために、当時の状況を再現しようと早朝に出社する塚田に渋々付き合っていたのだが、今日は彼の呼び出しすら無視する始末で――そしてとうとう我慢の限界を迎えた塚田が涼香を無理やり連れ出して文句を言いに来たという訳である。


「今日だって……どうしてエレベーターに来てくれなかったんですか?今日こそは元に戻れたのかもしれないのに……」

「ああ、それなんだけど、もうやめにしようと思うんだよね」

「……は?」

「だって、あんなに早く会社に来たんじゃ朝の準備の時間がなくなっちゃうだろ? 別に会社でメイクしたっていいんだけど……やっぱり、朝は家でのんびりしたいんだよねぇ」

「そ、そんな理由で……?」

「そんなって、女の子には大事なことなんだよ?あ、おじさんの涼香ちゃんには分からないかなぁ♪」


涼香は耳にかかった髪をくるくるといじりながら、小馬鹿にしたように言ってのける。


「も……元の身体に戻ろうという気はないんですか……!?」

「あははっ、今更なことを聞くねぇ。戻る気なんてあるわけないだろう? 僕は……ううん、あたしは『川下涼香』としてこの先もずっと生きていくって、そう決めたの♪」

「な……何を言ってるんですか…………?」


わざとらしく口調を変えつつ、涼香は可愛らしい笑みと共にそう言い放った。塚田は彼女が言っていることが理解できず……いや、理解したくない様子で、口をポカンと開いたまま呆然と立ち尽くしている。


「だってぇ、くたびれたおじさんからこんなに若くて可愛い女の子になれたんだよ? ほんと、涼香ちゃんになってから毎日信じられないくらい楽しくて、気持ちよくて……ふふっ♡ そんな素敵な『あたし』から、あなたみたいなキモいおじさんに戻りたがるわけないでしょ?」

「お、おじさんは課長じゃないですか!」

「だから、もう違うんだってば。これからはずっと、あなたが『塚田課長』なんだよ? あははっ、いっつも女の子をスケベな目で見てばっかりいるセクハラ課長が今のあなたなんだから、ちゃんと自覚しようね♪」

「このっ……!!」


怒りのあまり涼香に掴みかかろうとする塚田だったが、すんでのところでその手は止める。なんと、涼香は彼の目の前でブラウスを思い切り引っ張り、ブチブチとボタンを引きちぎってしまったのだ。

ブラジャーに包まれた大きな乳房がぷるんと揺れ、谷間には汗がじっとり浮かんでいる様子が露わになる。彼の身体に宿った男の本能故か、反射的に股間がググっと持ち上がってしまう。塚田は眼前に晒されている元自分の痴態を目にしてごくりと生唾を飲み込み、思わず手を止めてしまった。


「ちょ、ちょっと……いきなり何して――」

「きゃああああああっっ!!!!」


その隙に、涼香は塚田を突き飛ばすと甲高い悲鳴を上げた。困惑する塚田だったが――間もなく、ガチャリと屋上のドアが開く音が聞こえる。


「うそっ……りょ、涼香ちゃん、大丈夫!!?」


そこにいたのは、彼女の先輩社員である千尋だった。

今まさに悲鳴を発した涼香はあられもない姿を晒し、その傍らには股間を大きくさせた中年男が一人。尋常ではない事態だと察した千尋が慌てた様子で駆け寄ってくる。


「ど、どうして千尋さんが……!?」

「ふふっ、お願いして待機してもらってたの♪ セクハラ上司に呼び出されたんだから、何をされるか分かったものじゃないでしょ?」

「なんでそんなことしたんですか!? このままじゃ、私……!」

「そうね、直接こんな場面を見られたんだからクビ……で済めばいいけど、きっと警察のお世話になっちゃうんじゃない?」

「そんな……」


もはや逃れようのない絶望的な状況に、塚田はがっくりと項垂れる。顔を真っ青にして震えるかつての自分を涼香は他人事のように見下ろし、悦に浸っていた。


「それじゃあさようなら、涼香ちゃん……あ、間違えちゃった。 さようなら、塚田課長♡」


涼香は満面の笑みを浮かべながらそう言い捨てると、一転して泣きそうな表情を作り、彼に背を向けて千尋の元へ走っていった。


「うわぁぁんっ!千尋さん、助けてください……!!」

「涼香ちゃん!怖かったよね、もう大丈夫だから……! ……課長、一体何を考えてるんですか!?こんなことまでするなんて……!」


千尋は涼香を抱きかかえながら塚田を睨むと、怒りの声を上げる。


「ち、違うんです!私が、私が本物の涼香で!身体が入れ替わってしまって、それで……!」

「何を訳の分からないことを……涼香ちゃんにこんな乱暴しておいて、まだ言い訳するつもりなんですか!?最低……!」

「信じて下さい……私が川下涼香なんです……ぐすっ」

「なに泣いてるんですか?気色悪い……。 とにかく、これから警察に通報しますから、逃げようなんて思わないでくださいね。 ……涼香ちゃん、立てる?私の上着貸してあげるから、とりあえずこれ羽織って……」


泣き出した塚田に軽蔑の眼差しを向けると、千尋は涼香をそっと立ち上がらせる。2人が立ち去っていく中、ふと、涼香は塚田の方を振り向くとニヤついた笑みを浮かべ――その笑顔を最後に、『塚田』が『涼香』の顔を見ることは二度となかった。


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