変わってしまった先輩を『憑依アプリ』で変える話
Added 2024-04-30 12:54:49 +0000 UTCダーク要素抜きのゆるふわライトな憑依モノです、たぶん。
田舎から都会に引っ越して来て、待ち望んでいた大学生活が始まってからは日々驚かされることばかりだ。
学内の敷地は町一つ分あるんじゃないかと思うくらいに広いし、授業時間外ともなれば祭りでもやってるんじゃないかというほど多くの人で溢れかえる。入っている施設も立派なものばかりで、こんな小洒落たカフェに居ようものならここが学校だと忘れてしまいそうになる。
けど、そのどれもが霞んでしまう程に驚かされたのは――
「あ、いたいた。 おーい、りょーたくん!こっちだよー!」
少し離れた席から無邪気にぶんぶんと手を振っている女性の姿に苦笑しつつ、気恥ずかしさを誤魔化すように軽く手を上げながらも声の主に近づいていく。
彼女、白里優月(しらさと ゆづき)は俺が地元の高校へ通っていた時に同じ写真部に所属していた一つ上の先輩だ。地味で大人しそうな見た目とは裏腹に快活で人懐っこい性格をしていて、そんな彼女に恋愛感情を抱いていると自覚したのは彼女が卒業してしまう当日で。勉強嫌いだった俺が遠く離れた都会にある難関大学を志望した理由のほとんどは、もう一度この人と同じ学校に通いたかったからなんて不純な動機だったりする。
「お疲れ様です、優月先輩」
「おつかれー。 ごめんね?入学したてで忙しいのにいきなり呼び出しちゃって」
「大丈夫ですよ。まだ授業とかほとんど無いですし……それに、俺も先輩と久々にゆっくり話したいと思ってましたから」
「ほんと? えへへ、なら良かったぁ」
席に着きながらそう答えると、先輩はへにゃりと嬉しそうな笑みを見せてくる。以前と変わらないはずのその仕草に心臓がどきりと跳ねて、それを誤魔化すようにしてストローに口を付けた。
「それにしても、こういうおしゃれな場所でりょーたくんとお茶できるなんてあの頃は思いもしなかったなぁ。 ほら、高校の時はお茶するって言ったら自販機の前とかだったでしょ?」
「そ、そうっすね……」
「どうしたの? 難しい顔しちゃって」
「いや、知らない人から先輩の声が出てる感じにまだ慣れなくて……」
"地味で大人しそう"だったのは過去の話。一年ぶりに会った先輩は、俺が惚れてるという贔屓目を差し引いても美人としか形容できないほどに垢抜けた女性になっていたのだ。
もっさりとした印象だった長い髪は綺麗に整えられた茶髪に。コンタクトにしたのだろうか、野暮ったかった黒縁の眼鏡は掛けておらず、俺しか魅力を知らないと思っていた可愛らしい素顔にはそれを際立たせるようなメイクが施されている。制服の時は太っているのかと思っていたがどうやら着太りするタイプだったらしく、体のラインがくっきりと出る見慣れない服装は隠されていた彼女のスタイルの良さをこれでもかと強調していた。
「うーん、そんなに驚かれるほど変わってないと思うんだけどなぁ。 ていうか、それを言うならりょーたくんの方こそだよ? すっかりかっこよくなっちゃって~。……ふふっ、ちょっと前までは私よりも身長低かったのにね」
「い、いつの話してんですか。そもそも、俺が二年の時にはもう先輩のこと余裕で追い越してたじゃないですか」
「そうだったっけ? でも、私には小っちゃかった頃の印象が強いんだよねぇ」
「相変わらず適当っすね」
楽しそうに笑いながら話す先輩の言葉に呆れつつも、あの頃と変わらない距離感やその表情に安心感を覚えて思わず頬が緩む。
入学式の日に偶然彼女と鉢合わせて、あの先輩が都会に染まってしまったなんて少しだけショックを受けていたのだが……スマホ越しではなくこうして直接言葉を交わしていく内に、そんな懸念や緊張が少しずつ解れていくのが分かった。
姿形こそ変わっているものの、この人は何一つ変わっていない。あの頃の、俺が好きだった先輩のままなんだ。
――やがて、グラスの底に残っていた氷も溶けきった頃。突然先輩のスマホが振動したかと思うと、それに気が付いた彼女があっと小さく声を上げる。
「ごめん、私そろそろバイト行かなきゃなんだ! 久々に顔が見れて嬉しかったよ、またね」
「はい、それじゃあまた。 ……って、そういえば大事な話がしたいってLINEに書いてましたけど、アレ結局なんだったんですか?」
「あっ……そ、そうだ忘れてた! ごめんね、もう少しだけ付き合ってもらっていいかな」
「え、ええ。別にいいですけど……」
何やら緊張したような面持ちの先輩を前にして、ジワリと手のひらに汗が滲む。
実を言うと、"大事な話"には少しだけ心当たりがあった。高校の頃、駄弁っていた最中に先輩から冗談交じりに言われた約束。「大学生になっても恋人ができなかったら付き合っちゃおうよ」なんていう、浮いた話がまるでなかったお互いを茶化すような言葉。
あの頃は冗談で流していたものの、今の俺には何よりも大事な思い出になっていて……だから、"もしかして"なんて期待をしてしまう。
「りょーたくんさ、まだカメラ続けてるんだよね?」
「えっ? ……まあ、そうですね。受験とか引っ越しとかあって最近は触れてないですけど、道具一式はこっちに持ってきてるんで。ぼちぼち再開しようかとは思ってます」
「そっか、よかったぁ……! あ、あのね?うちの大学にも写真サークルがあって、私もそこに入ってるんだけど……よ、よかったら入らない?」
「……はぁ、何かと思えばそんな話っすか……」
緊張が一気に解けたからか、それとも落胆によるものなのか、思ってた以上にデカいため息が漏れてしまった。
「あっ……。 や、やっぱりダメ、かな……」
「いえ、そういうことじゃないです。 そのサークルって前に通話した時に話してたとこですよね?そこなら元々入るつもりで――」
「ほんとっ!?」
先輩は俺の言葉に被せるように弾んだ声を上げると、目をキラキラと輝かせながら身を乗り出してきた。至近距離で見る彼女の顔はやっぱり綺麗で可愛くて、ふわりと漂ってきた甘い匂いにドギマギしてしまう。
「び、びっくりした……。 そんなに驚くことですか?」
「ううん、驚いたっていうか……すごい嬉しくて。 高校の時は無理を言って入ってもらったようなものだったでしょ?だから渋々付き合ってくれてるんじゃないかって、もしかしたら大学に入ったら辞めちゃうんじゃないかって思ってて……」
「……そんなわけないじゃないですか。 確かに最初は全然興味なかったっすけど、今はカメラも好きですよ」
「えっ、そうだったの!?……ふふ、今ちゃんと好きならいっかぁ。 はぁ……ほんとよかった」
そこまで言うと、先輩は安堵したように小さく息をついて背もたれに体を預けた。
"大事な話"は思っていた内容ではなかったけど……それでも、同じサークルに入るというだけで先輩は心底嬉しそうにしてくれていて、俺のこの気持ちが一方通行ではないのだと思えて――
「あ、あの。俺が一年だった時の文化祭が終わった後で話したこと、覚えてますか? ちょうど片づけで二人きりになった時の……」
「文化祭の片付けで? うーん……ごめん、ど忘れしちゃったかも。どういう話だったの?」
「その……大学に入ってもお互いに恋人がいなかったら付き合おうって、先輩がそう言ってくれたんです。 もし今も同じ気持ちだったら、俺と……」
「えっ、嘘!? ……あ、あはは。そっか、私そんなこと言ってたんだ……」
先輩は完全に忘れていた様子で、気まずそうに目を逸らされる。何かを誤魔化す時のトーンで笑うその声を聞いて心がざわつく。
「そういえばりょーたくんにはまだ伝えてなかったよね。 ……ごめん、実はもう付き合ってる人がいて――」
***
あの後先輩と何を話したのか、どんな顔をして彼女を見送ったのか、どうやってアパートに帰ったのかまるで記憶にない。気がつけば日はすっかり沈んでいて、ぼんやりとしたままベッドに倒れこんでいた。
「……そりゃそうだよな。先輩、めちゃくちゃ可愛くなってたし。あんな美人が一年間も都会で暮らしてて彼氏ができてない方がおかしいんだよ……」
自分を納得させるための言い訳をひたすらに呟こうが、ゴミのように惨めな気分は一向に晴れなかった。
フラれたショックで凶行に走る男なんかをドラマとかで目にしては女々しい奴だと馬鹿にしてきたが、今ならこれ以上ないほどに感情移入できる気がする。あいつらもきっと、こんな気持ちだったのだろう。
同じ大学に入ってから告ろうなんて考えなければ。通話越しにでも想いを伝えていれば。いや、恋心を自覚した卒業式の日に勇気を出せていれば。後悔はいくらでも溢れてくるが、今さらどうしようもない。
俺だけが分かっていたはずの先輩の魅力も……そして、俺が知らなかった魅力も。何もかもひっくるめて全部、顔も知らない男の物になってしまったのだから。
「あーあ、サークルどうすっかなぁ……」
こんなことになってしまった以上、先輩と同じサークルには入らない方がいいだろう。あの人のことだからきっと表面上は今までと変わらずに仲良くしてくれるんだろうが、もしも裏で彼氏に「フった男がいつまでも付きまとってきて気持ち悪い」なんて愚痴るようになってしまったらと想像しただけで胃がねじ切れそうだ。
いっそ、彼女が俺のことをどう思っているのかが分かれば踏ん切りがつきそうなもんだが――
「……そうだ、あのアプリ。 あれを使えばもしかしたら……」
ふと、一年ほど前にいつの間にかインストールされていたアプリのことを思い出す。信じられないような機能を持っていたものの積極的に使う理由がなく、受験勉強が本格的になったのを境にまったく触らなくなっていたものだ。
使った回数は数えるほどしかなかったが、体験した不可思議な現象のことは忘れようがない。そんなアプリならきっと、俺の望みを叶えてくれる機能もあるはずで――そうして俺は、藁にも縋るような思いで『憑依アプリ』のアイコンをタップした。
***
ゆっくりと湯舟に浸かって一日の疲れを癒すお風呂の時間。いつもならこうして温まっているだけで気分がリフレッシュできるのに、今日はずっとモヤモヤしたままだった。
「うぅ~、どうしてこんなことになっちゃったんだろう……」
別れ際に亮太くんが見せた泣きそうな表情がずっと頭から離れない。今日のことは忘れてほしい、気にしないでほしいと言って明るく振舞ってくれてはいたけど、間違いなく彼を傷つけてしまったことだろう。
彼氏が出来たという報告はサークルの新歓の時にサプライズでするつもりだった。亮太くんに直接彼氏を紹介して仲良くなってもらって、二年次からは亮太くんも含めたみんなと一緒にもっと楽しく過ごせるはず……なんてのんきに考えていた自分が恨めしい。
「……全然気付かなかったなぁ。りょーたくんがあんな風に思ってくれてたなんて」
正直なところ、彼が私を異性として見ていたことにはとても驚いた。だって亮太くんはずっと弟みたいに可愛い存在で、そんな彼も私のことを「姉弟がいたらこんな感じなのかも」なんて言ってくれていたから。
卒業した後も連絡を取り続けてくれたのも、同じ大学に進学してくれたのもすごく嬉しかったけど、それは家族に抱いてるような感情で。……そんな相手のことを今さら異性として見れるわけがない。
でも彼とはこれからもずっと仲良くしていたいし、だからと言って彼氏と別れて亮太くんと付き合うなんてできるわけもないし……
「あーもう、一体どうしたら……ひゃぅっ!?」
突然訪れた奇妙な感覚を前に、反射的に変な声を出してしまう。胸の中にムズムズする何かがいきなり現れたような、そんな今までにない奇妙な異物感に襲われたのだ。
「うっ……な、なにこれ……!? 気持ちわるい……うぅっ」
私の中に入ってきた『何か』はまるで血液のように全身を巡ってきているようで、体中に浸透しているかのような感覚が広がっていくにつれて身体の感覚が朧気になっているような気がする。のぼせた時とは感じ方が全然違うし、もしかしたら心臓発作とかそういう病気なのかも……!?
「救急車、呼ばなきゃ……いや、そんなことしなくていいよ。ただのぼせちゃっただけみたいだし……あれ?」
朦朧としつつある意識の中、自分が呟いた言葉に納得しかかったものの、自分の考えとは真逆のようなその言葉に違和感を覚えた。さっきまであれだけ感じていた抵抗もほとんど無くなっていて、他人の意思と感情がごちゃごちゃに混ざってくる不快感もだいぶ薄れてきている。肉体が発する五感も掌握できたのか、全身を包むお湯の温かさが鮮明に感じられて……成功を確信した"俺"はゆっくりと瞼を開いた。
「おお、胸が浮かんでる……。この声、それにこの視界が少しぼやけてる感じ……せ、成功したんだよな!?」
見づらいように感じられる視界に映ったのは男にはまずあり得ない爆乳で、それを真上から見下ろしているという事実は俺がしっかりと女性の身体に乗り移れたのだと教えてくれた。俺が発しているからなのか若干低く感じられるが、このソプラノボイスは散々聞いた覚えのある声質のもので……抑えきれない興奮に促されるようにして湯舟を出ると、すぐさま浴室の鏡へと向かった。
「は、ははは……やった! 先輩に憑依できたんだ!」
そこに映し出されたのは、今も恋い焦がれてやまない優月先輩の生まれたままの姿だった。同性の友人くらいにしか見せていなかったであろう、恥ずかしい場所を惜しげもなく晒している彼女の綺麗な裸体。……多分彼氏にも見せたんだろうが、この妬みもいずれ無くなってくれるだろう。これから先輩の身体も心も、俺だけの物にするのだから。
俺が偶然手に入れた『憑依アプリ』は自分の意識を肉体から切り離して他人の身体に移し、思うがままに操ることができるというとんでもない機能を持つアプリだった。
憑依している間の記憶はアプリの設定によって適当かつ都合の良い物に置き換えられるため、これを手に入れた当初はそれを利用して友人に軽いイタズラなんかをしていたのだが、今日はその設定をオフにしてある。説明書きによれば、そうすることで憑依中に俺がした行動や思考したこと、感じたことによって身体の持ち主の思考や感情なんかに影響を与えることができるらしい。それを利用して俺に対する好意を徹底的に植え付け、ついでに今の彼氏への悪感情も植え付けることで先輩を寝取る算段だった。
「彼氏に関しては問題ないだろうな。既に心底ムカついてるし……クソッ、俺の先輩に軽々しく手を出しやがって」
軽く探ってみた先輩の記憶によると彼氏は同じサークルの二個上の男で、付き合い始めたのは去年の冬頃から。夏休み明けくらいから仲良くなったらしいが……先輩は夏休み中に友人の勧めでイメチェンをしていたようで、本人は気付いていなかったもののその時期を境にして彼女への態度を露骨に変えたのが明白だった。更には酒の勢いで早々に行為に及んだようで……あんな奴なんかに先輩を渡したくない、渡すわけにはいかない。
「……それにしても、改めて見ると先輩ってこんなにスタイル良かったのか」
鏡に映る先輩は以外にも筋肉質で引き締まった肢体をしていた。よくよく考えれば高校時代に撮影のためにほぼ毎日自転車を数十キロ漕ぎまわしたりしていたし、その習慣によって形作られたものなのだろう。それなのに俺はどうして彼女のことを太ってるなんて思っていたのか――
「まあ、この胸があるからだろうな」
わざわざ見下ろすまでもなく視界の隅に入ってくる、頭と同じくらいの大きさがありそうな爆乳。制服の時はこれのせいで着膨れして太っているように見えていたのだろう。
初めて直接目にする女性の生の乳房は想像以上に魅惑的で、しかもこれは先輩の身体で、先輩のもので……
「……そ、それなら別に触ったっていいよな?今は俺が先輩なんだから……」
無意識の内に生唾を飲み込み、同時に鏡の中の先輩も同じようにゴクリと喉を鳴らす。先輩に憑依したのは目的があってのことだったが、時間制限があるわけでもないんだから別に焦らなくてもいいだろう。それよりも、ずっと恋焦がれてきた女性の身体を思うがままに動かせるというこの状況。……こんな夢のような状況を前にして、健全な男が我慢なんてできるわけがない。
「うおっ、柔らか……重っ!? これが女の、先輩のおっぱい……!」
恐る恐る両手で持ち上げてみると、指が沈み込んでしまう程の柔らかさとずっしりとした重量感が伝わってくる。そのまま繰り返し揉んでいると揉んだ箇所からこそばゆいような奇妙な感覚が神経から伝わり、これまで経験したことが無かったその感覚に堪らず声が漏れてしまう。
「んっ……胸を揉まれるってこんな感じなのか。女性の身体に憑依したのは初めてだけどこれはなかなか……ひゃんっ!?♡」
偶然に爪先がカリっと軽く乳首を引っ掻いた瞬間、聞いたことも無いようなエロい悲鳴が浴室に響き渡った。その少し前に頭の中に電流が走ったような気がして、胸の先端がジンジンと疼いて……鏡に映る先輩は俺同様に驚き、頬を朱く染めていた。
「びっくりした……。俺の……っていうか先輩の声か、今の。 多分だけどここをイジったから……ひぅっ♡んっ、くうっ……♡うわ、先輩の喘ぎ声えっろ……♡んぅっ♡」
今度は乳首に爪を立てないようにして優しくつまんでみたり軽く引っ張ったりしてみると、頭の奥底に染みていくような甘い快感が伝わってきた。出そうと思ってもいないのに先輩の口からは艶めいた嬌声が勝手に零れ、普段の彼女が絶対に発さない切なげな声を聞いていると、無いはずの肉棒がピクッと反応したような気がした。
「やばい、ムラムラしてきた……けど、なんだこれ……♡頭の中が熱くなって……♡」
頭の奥がジンジンと疼いて思考ごと蕩けていく。いつの間にか息が荒くなっていて、頬を真っ赤にさせてはぁはぁと息を整えている先輩の姿を見ているだけで更に深くまで興奮させられてしまう。
経験なんてまるでなかったが、これが女性が性的に興奮する時の反応なのだと本能的に理解できた。男には無い部分……のっぺりとした股間が、その奥にある臓器が、絶え間ない疼きを伝えてくるのだ。
「うわ、めっちゃぬるぬるしてる……。あの先輩が俺の手で感じてくれてるんだ……♡」
すっと股間を指先で拭うと、明らかに風呂のお湯ではないぬるついた体液が絡みついてきた。多分、これが濡れてるってやつなんだろう。まるで俺の愛撫を悦んでくれているようなその反応を前にますます興奮してしまい、先輩の身体はそんな男としての情欲さえも女としての興奮に変換し、発情してくれているようだった。
「……こうなったらもう、いいよな?先輩の身体がシたがってるんだから、どうせなら最後まで……っ♡」
言い訳にすらなっていないとは自分でも分かっているが、もはや踏みとどまる気なんてさらさら無かった。そもそもこれ以上身勝手なことをこの後するつもりなんだから、躊躇するなんて今更な話だろう。
それよりも……そんなことよりも、今はただこの未知の感覚の先にある快感が知りたい。その衝動に流されるまま、再び秘部へと手を伸ばした。
「くふっ、うぅっ……♡んっ♡あぅっ……♡♡」
ぬちぬちと音を立てながら割れ目をなぞっていると乳首を弄っていた時とは別種のむず痒い快感が全身に広がり、ぴりりと肌が粟立って足先から力が抜けていく。立っていられなくなりその場にへたり込むと、体重を預けようとした先に居た先輩と目が合った。
「はぁ、はぁ……♡ それじゃあ、挿れますね?♡ 先輩の……女の身体の気持ちよさ、俺に教えて下さい……♡」
先輩は見たことも無いような蕩けた表情を浮かべながらも、まるで許しを与えてくれるかのように微笑みかけてきた。もはや遠慮や躊躇いなんてものは搔き消え、彼女が望むままに指をゆっくりと膣内へ沈めていく。
「ひぁぁっ!?♡♡ っ……んだこれ……♡やば……んっ♡くぅぅっ♡」
指先に熱が触れ、グチュっという水音と共に強い快感が全身を通り抜けていく。絶えず聞こえてくる先輩の艶めいた声と蜜壺から流れ出る愛液が更に俺の興奮を煽り、その興奮が熱を帯びた先輩の身体を更に火照らせていく。今は記憶を読んでいないというのに先輩の細い指先は勝手に抽挿を繰り返し、まるで自分の気持ちいところを俺に教えてくれているかのようだった。
「あっ♡んぁぁっ♡♡ 先輩のカラダ気持ちよすぎるっ♡♡もっと、もっと深いとこまで……っ♡♡」
膣内に挿れた指がずぶずぶと奥に入り込んでいったものの、カラダが知っている気持ちのいいところまで届かずもどかしくなる。その不満を埋めるようにして空いていた手が自然と胸元に伸び、硬くなった先端をコリコリと弄りながら膣の浅いところをほじくりまわしていく。
「あっ、あぁぁぁあっ!♡♡だめだ、なんかキてっ……♡♡ひゃぅっ!?♡♡んっ、ふぅぅっ……♡♡」
きゅうっと指が締め付けられると同時に全身が大きく跳ね、視界がチカチカと明滅する。お腹の奥の方で弾けた快感の塊が脳にまで達し、ジンジンとした痺れと熱で満たされていく。
なんとか息を整え終わり、シャワーで汗や愛液を流している最中にも絶頂の余韻は残っていて、俺の頭の中にこべりついていた。
「あれが先輩の、女の快感……。 男と女じゃ感じ方が違うとは聞いてたけど、ここまで差があるのはズルすぎるだろ……んっ♡」
割れ目を軽くなぞるだけでまたも快感が走り、先輩の口からエロい吐息が漏れる。射精したらある程度落ち着く男とは違って女は何度もイけると聞いたことがあるが……これは確かに何度でもシたくなってしまう。
「しかもさっき以上のがあるってんだから、楽しみを通り越して少し怖くなってくるな」
さっき膣内を弄った時に感じた、どこか物足りないような感覚。先輩のカラダが一番気持ちいいと記憶しているその快感を、これから俺も味わうことになるのだろう。
「そうだ、これから俺は先輩と……」
シャワーを止め、鏡に映し出された先輩に目を向ける。こうして彼女の身体を操るだけじゃない、そもそも俺はこの人の心を手に入れるためにあの憑依アプリを使ったんだ。
「もう絶対に離れないし、誰にも渡しません。……何としてでも俺だけの物にしてみせますからね、先輩」
そう決意を新たにすると、俺は浴室を後にした。
***
「これって多分寝てるんだよな……? 憑依してる間はこうなってたのか」
目の前のベッドにはスマホを手に持った男が意識なく仰向けに横たわっている。寝ているように呼吸を繰り返しているこの男こそが本来の俺の身体で、俺は先輩に憑依したまま自分の住むアパートにやって来ていた。
先輩の記憶を少し探ってみたところ俺は彼女に「弟みたいに大事な存在」だと、そう思われていたらしい。嬉しくはあったけど、欲しいのはそんな位置じゃない。生涯を共にするかけがえのない存在になりたくて……そんな俺を男として見てもらうべく、これから自分自身の身体と行為に及ぶのだ。
「確か買っておいたゴムがこの辺に……まさかこんな風に自分のチンコを見ることになるとは夢にも思わなかったな」
横たわった俺の身体からズボンと下着を剥ぎ取り、露わになった肉棒を目にして思わずそう零してしまう。チンコのサイズなんて今まで気にしたことは無かったが記憶にある先輩の彼氏のと比べるとかなり大きく、これからこの棒が自分のナカに入っていくことを想像するとゴクっと喉が鳴った。
「はぁ~……さて、やるか。 ……コホン。りょーたくん、昼間はごめんね?私、キミがあんな風に思ってくれてたなんて知らなかったんだ」
先輩の意識に同調するようにして彼女の口調を真似て、俺が言ってほしい台詞を言わせていく。恥ずかしくなるかと思っていたがそうはならず、まるでフィルターを通して変換されていくように俺の言葉が先輩の言葉として発せられていく。
こうやって先輩として、先輩の意思でセックスをしたかのような記憶を彼女の脳内に植え付けることこそが、俺が先輩を寝取るために思いついた手段だった。その記憶だけを残して憑依している間の記憶を消せば、彼女から望んで俺と体を重ねたという事実だけが色濃く残ってくれるだろうと踏んだのだ。
「彼氏がいるから付き合えないなんて言っちゃったけど、あれから思い直したの。今のどうでもいいカレなんかより、私のことをずっと想い続けてくれてたりょーたくんの方が大事だって」
意識のない俺の肉棒にそっと手を這わせ、ゆっくりと上下に扱いていく。もしかすると、先輩の手で扱かれていることを無意識に感じ取っているのだろうか。あっという間にむくむくと大きさを変え、遂には先輩の小さな手のひらでは握りきれない程に膨張していった。
「本当は私の初めてをあげたかったんだけど……それはもう叶わないから。代わりにキミの初めてをもらうね。 他の男のことなんて何もかも全部忘れさせて、私をりょーたくんの色で染めてくれる?」
怒張しきった肉棒にゴムを装着させ、その上に跨がるようにして膝立ちになる。これから先輩が俺の物になるという興奮のせいか既に滴るほどに女性器は濡れそぼっていて、肉棒の先端が触れた途端くちっと厭らしい音を立てた。
「返事は言わなくていいよ。私が勝手にしてるだけだし……それに、キミも同じ気持ちだって分かってるから。 好きだよ、りょーたくん……あぁぁっ♡♡挿入って、きたぁっ♡♡」
一瞬の引っかかりの後、ずぷずぷと膣肉を掻き分けながら俺のモノが先輩の中へと侵入していく。指を入れた時とは比較にならないほどの異物感は不安すら感じられるものだったが、直ぐにそれを掻き消すほどの快感に襲われた。
「あっ♡あぁぁぁあっ!?♡♡ なにこれぇっ♡♡オクまでぐりぐりって……ひゃぅぅっ♡♡」
俺にとって、そして先輩のカラダも初めてだと感じ取っている強烈な快楽を前にして視界がぱちぱちと明滅する。彼氏のモノよりも大きな肉棒で奥の方の気持ちいい部分を責め立てられ、内臓を持ち上げられているような感覚と共に軽く絶頂してしまう。
「挿入れただけでこうなっちゃうんだ……あはっ♡私たち、こっちの相性も最高だったんだね♡ いいよ、もっとキて♡りょーたくんの全部を私に感じさせてぇっ♡♡」
両手と両膝をベッドについて体重を支えてしっかりと膣内に棒を咥え込み、興奮のままに腰を打ちつけて快楽を貪っていく。動く度に先輩の豊満な乳房がふるふると揺れ、触らずとも分かるほどに勃起した先端が俺の肌と擦れる度に言いようのない快感が背筋に走る。
「んっ、あはぁっ♡♡ 好きだよりょーたくんっ♡♡ もう離さない……他の誰にも渡さないんだからっ♡♡ 好き♡好き♡♡好き♡♡好きぃっ♡♡」
快感で蕩けきった頭では、もう自分が何を言っているのかもまともに理解できなかった。ただひたすらに気持ちがよくて愛おしい。先輩の意識と同調しすぎたのか"亮太くん"の顔が他人のように見えてしまい、うっすらと顔を赤くしているその寝顔がただただ愛おしく感じられる。もはやこの好きという感情が誰のものなのかもわからず、ただただ幸せと快感だけが身体中を駆け巡っていた。
一生このままでいたいとすら思うけど……ふと、その終わりが近づいていることに気づく。亮太くんが小さく呻きを上げ、同時に膣の中の肉棒が微かに膨らんだのだ。
「いいよ、キて♡♡中に出してっ♡♡私もイっちゃうからぁっ♡♡一緒に……んあっ♡♡あぁあぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡♡」
電流に貫かれたような途轍もない快感が全身を駆け抜け――思い切り仰け反ったかと思った直後、気付けば俺はベッドに仰向けになっていた。何やら股間が生暖かい何かに包まれてるような感覚もして……
「はぁっ、はぁっ……あ、あれ? 先輩に憑依してたはずじゃ……!?」
ふと顔をあげれば、その先にはふぅふぅと息を整えている先輩の姿が。どうやらしっかりと意識もあるようで……もしかして、イった衝撃で先輩の身体から弾き出されたのか……!?
急いでスマホの電源を入れてセックス以外の記憶を消すために先輩へ憑依しなおそうとする――が、その手は俺を押し倒している先輩によって止められてしまった。
憑依している間の記憶が残ってしまったということは、俺がしたこともしようとしていたことも全てバレてるってことで……間違いなく怒っているだろう。普段うるさいくらいに饒舌な先輩が黙ってこちらを見つめてくる姿を前に冷や汗が垂れる。
「い、いや、その……す、すみませんでした! 別に先輩を騙そうとしてたとかじゃなくて、その……んむぅっ!?」
必死に言い訳をしようとした途中で、突然唇を何か柔らかいもので塞がれてしまう。それが先輩の唇だと気付いたのは数秒後で、舌を絡め捕られる柔らかな感触に思考が完全に止まってしまった。
「んっ……んむぅっ♡ぷはっ……♡ なにぼーっとしてるの?続き……早くシよっか♡」
先輩は股間から外したコンドームを投げ捨てると、俺の知らない蠱惑的な笑顔で微笑んだ。
***
――あれから数週間後。
当初の目論見からだいぶ外れた結果にはなったものの、あの日から俺は晴れて優月先輩と恋人関係になることができた。
しかし公然とイチャつけるといったようなことはなく、表面上は今まで通り先輩と後輩という関係のまま過ごしている。というのも、別れた元カレが大学を卒業する一年後までは待ってほしいと先輩からお願いされたのだ。
彼女曰く、すぐに誰かと復縁したことを彼が知ったら傷つくだろうからとかどうとか……あんな奴に気を使う必要なんて無いとは思うが、他でもない先輩からの頼みなのだから無下にもできない。
とは言っても高校の時と全く同じというわけでもなく、条件付きではあるもののこうしてデートなんかをするようにはなった。その条件というのが些か不満ではあるのだが……
「……あのー、先輩。やっぱり今日も俺が抱かれる側なんですか?」
「うん、ダメだった?」
「いや、別にダメってわけではないですけど、俺にも一応男としてのプライドってもんが……ひゃんっ!?♡」
「ならいいよね♡今は女の子なんだから、男のプライドなんて無くなっちゃってるでしょ?」
今、俺は先輩の部屋で先輩に押し倒されている。……それも、女のカラダに憑依した状態で。
あの日、憑依アプリを使って俺のことを異性として好きになってもらえたものの、先輩にはその副作用のようなものが残ってしまった。消しそびれた記憶の中にあった俺の行動……先輩の裸に興奮して自慰をした記憶が残った結果、女性にも欲情するようになってしまったのだ。
それ以来、俺の身体と二人きりでいるのがサークルの人間に見つかるとまずいからと言ってデートの度に彼女の知り合いの女性に憑依させられているのだが……ほぼ毎回こうして抱かれている現状を見るに、ただ先輩が女とヤりたいだけのような気がしてならない。もっとも、こうなってしまった原因は俺にあるので強く言えないのだが。
「ほら、りょーたくんってばちょっと弄られただけでもうとろとろになっちゃってるよ? 私の身体に入ってた時もたくさん可愛く喘いでたし、きっと女の子の才能があるんだね♡」
「そ、そのことは何度も謝ってるじゃないですかぁ……あぅっ♡♡ ま、待って♡手ぇ止めてください♡」
「だから、あの日のことは別に怒ってないって言ってるでしょ?ああしてくれたおかげで、こうして今りょーたくんと付き合えてるんだから♡ あ、そうだ。ちょっと待っててね、こないだ良さそうなオモチャを買ったんだけど……」
ようやく解放されたかと思えば、今度は何やらウィンウィンと動く棒のような物体を手に戻ってきた。
彼女であるはずの人に女として犯される歪な関係が続いて、果たして一年後にまともな彼氏と彼女という関係になれるのだろうか……
そんな不安を抱えながら、俺は今日も先輩に抱かれるのだった。