銀麗の魔剣と新米冒険者 前編
Added 2022-09-03 08:59:12 +0000 UTC冒険者。 それは世界を旅し、行く先々で依頼を受けて魔物や悪事を働く人間の討伐などを行う人間の総称である。 受ける依頼の内容は多岐にわたり、お使いの範疇にあるものや巨大モンスターの退治、あるいは遺跡の探索といったことまで請け負うこともある。まさに究極の何でも屋と言える存在だ。 そんな依頼をこなした冒険者に与えられる報酬は当然、依頼書に書かれた金銭。それともう1つある。 討伐や遺跡調査の際に得られた戦利品である。 「ここが噂の遺跡……超文明の遺産ってやつね。確かにこの世界の建物とはだいぶ違うわー」 通常、遺跡調査はさほど人気のない部類に入る。 というのも遺跡はガーディアンなどがいて危険が大きい割に、そこで発見された遺物は研究や博物館への寄贈のため大部分はギルドに引き渡すこととなるのだ。 もちろんその分依頼金の割り増しはあるのだが、倒したモンスターの素材や所持品の多くを懐に収めることが許されている討伐の方が人気であるのは仕方のないことと言える。 だが数日前、その認識が覆る出来事が発生した。 大規模な地盤の崩落が辺境の土地で発生。そこに救助隊が向かうと、そこには誰も見た事のないような金属製の巨大な地下空間が広がっていた。 虚空に映る得体の知れない光の文字、魔法とも異なる技術体系により稼働する遺跡。 それは古代超文明の遺産であり、これを手にした者が世界の覇者になれる。と誰もに大それた夢を抱かせるほどの威容を誇る遺跡。 そこに、ギルドの誇る新進気鋭のA級冒険者もやって来ていた。 「フ……謎の超文明の遺産とは言えど、このアレクサンドラ・エクステール様にかかれば……一網打尽よ!」 「待っていなさい未知の異文明!このアイシャ様が直々に攻ゥー略してあげるわ!」 いつぞや教会に出した損害賠償のため貯金の大半を使い果たした冒険者は、勇ましく遺跡に向かって行くのだった。 アイシャ(アレクサンドラ・エクステール) ステータス HP 770/770 MP 500/500 状態 ふつう 2つ名 銀麗の魔剣 ドラゴンスレイヤー 百人斬り 史上最年少のAランク 黙ってれば美人 残念すぎる美人 ゴールドスプラッシュ 頭以外文句なしのAランク ひとことコメント お宝たちよ、首を洗って待ってなさい! そうび うで てつのつるぎ うで きのたて からだ やすもののよろい あし ぼろいくつ(ややにおう) あたま ぎんいろのかみ スキル なぎ払い ダブルスラッシュ かぶと割り ヴィクトリースラッシュ 火炎斬り 氷雪斬り 雷電斬り 疾風斬り 逆流れ 秘剣カグツチ フリージア 霹靂一閃 天空Vの字斬り 魔法 フレイム ブリザード サンダーボルト かまいたち カイザーフェニックス エターナルフォースブリザード サンダーブレイク デッド・ロン・フーン 必殺 超必殺属性網羅カラミティソード 天地開闢アルマゲドンアタック 呪いを受けてから1年。世に出回っている奇妙な書物、異界と交信できる能力者が書いたと言われている書物を読み漁り、そこに記されていたワザの多くを丸ごと吸収したことで更なる力を得たA級冒険者。 傍から見れば本のまねっこをする子供のようだが、タチが悪いことに彼女はそれを実現するだけの能力を持ってしまっていた。 かのSecret Sword もお子様に大人気のアノ技もだいたいそれっぽく再現することができる。 しかし本人のカリスマがそれら人気キャラに追いついているかと言えばそれは別の話。 また技の威力についても、剣技はともかく魔法はほとんど見た目が派手になっただけの通常魔法である。 魅せ技の域は残念ながら出ていない。 ノリで作った必殺技の天地開闢アルマゲドンアタックは火と水がぶつかり合い風とイカヅチが荒れ狂うまさにカオスの権化、最終戦争を思わせる意味不明さの奥義である。 が、敵に命中したことがない。 というより発動した瞬間にそれぞれの属性が大喧嘩を起こして剣がへし折れたので撃てたことすらない。強いかどうかも未知数。 勉強してなおネーミングセンスは壊滅状態の18歳。 _________ ダンジョン B2F ざわ……ざわざわ…… 「うーん……さすがに浅い階なだけあって人が多いわねー。なんも旨みが無さそうだしさっさと先に進んだほうが良さそう」 ダンジョンに入ってから10数分。まだ浅い階であることと、このダンジョンが抜群の人気を誇るがゆえの人の多さがあり、敵やトラップとの遭遇は一切なかった。 こうした遺跡における脅威といえば魔法や科学によって稼働する兵器やトラップだが、もうひとつそれとは別の敵が存在する。 遺跡に住み着きねぐらとする魔物や猛獣である。 遺跡というのは元は人間の建物であったため風雨を凌ぎやすく、倒壊していてなお居住性は高い。それを見逃す魔物や猛獣ではなく、遺跡調査ではこれらの相手もしなくてはならない。 だが今回の場合はあまりにも人が多すぎるためか浅い層の魔物はすでに倒され尽くしている上、探索もほとんど終わっている。浅い階で何らかの遺物を発見する確率は低いだろう。 「ま、進めば進むほど難度は上がるでしょうけど……私には関係ないし。お宝が1番よね!」 だが深層であれば話は別で、奥に進めば進むほど高位の魔物や、強力なガーディアンの出てくる確率が跳ね上がる。基本的にダンジョン探索は奥に行くほど危険となるのだ。 人間がそうであるように、強くて位の高い存在というのは得てして安全な奥の方にいるものである。浅い層というのは人間からの襲撃を受ける可能性が高いため、魔物は本能的にダンジョンの奥を好む。 そのため必然的にダンジョンの奥を取り合う競争が発生し、弱くて位の低い存在はその競争に敗れ、端に追いやられるのだ。 その競争を勝ち抜く魔物というのは、やはり人間にとって危険な存在ということになる。 そうした危険な相手に会う確率の高い遺跡の深層は当然、探索も進んでいないため何らかのお宝に巡り会える可能性が高い。冒険者の中でも指折りの実力者たるアイシャはそれを狙っていた。 ずんずんと肩で風を切り、先へと進んでいくアイシャ。彼女の冒険は始まったばかりだ。 _________ ダンジョン B20F 「キェェエエエエエエ!!!」 アイシャはヴィクトリースラッシュを放った! かいしんの一撃! サイクロプスに15722ダメージを与えた! サイクロプスをたおした! 「……ふう。さすがに人も減ってきて、代わりに魔物が増えてきたわねー。こういうとこにこそお宝があるってもn」 『きゃあああああああぁぁーーーーーー!!!!』 難なく1つ目巨人をみじん切りにしたアイシャの元に、絹をさくような悲鳴が聞こえてきた。 何事かと声がする方に向かうと、そこには魔物の群れに襲われる小さな女の子がいた。 それはアイシャよりさらに若い……というより幼い金髪の少女だった。 「こんなちびっ子になにさらしとんじゃおのれらァァァァ!!!死にさらッッしゃァァァァ!!!!」 アイシャは超必殺属性網羅カラミティソードを放った! トロールに38695のダメージ! オークロードに43728のダメージ! クインスライムに44856のダメージ! コボルト突撃師団長に48932のダメージ! まもののむれをたおした! 『ピギャァアアアアア!!!??』 凄まじい形相で敵の群れに切り込みなぎ倒すその姿はもはや女性の……というより人間の姿には見えなかった。 その姿はさながら魔物よりも魔物。悪魔や魔神。破壊の権化とすら思える壮絶な姿だった。 人に悲鳴を上げさせる側の魔物が泣き叫び逃げ惑うほどに。 『ひぃぃぃいいいい!!??ご、ggggごごごめんなさい!?ごめんなさぃぃ!!ころさないでぇぇ!!!!』 「あら……?」 だがそんなアイシャの凄まじすぎる戦いぶりは、当の救助対象である少女にすら命の危機を覚えさせていた。 ガタガタと震えながら許しを乞う少女に、アイシャはそっと手を差し伸べる……が、逃げられてしまう。 あんな子どもを魔物ひしめく遺跡の深層に1人では居させられない。アイシャはなんとか少女を保護しようと後を追う。 「待ってぇぇぇぇ!!!怖がらせるつもりはないのおおおおおお!!!ちょっと話をおおおおおおおおお!!!」 『いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??』 だが魔物の返り血まみれで追いかけてくるアイシャの姿はお世辞にも優しさを感じられるものではなく、少女は必死の思いで逃げ惑う。 結果、2人が落ち着いて話ができるようになるまでは相応の時間を要することとなった。 少女が疲れ果て逃げられなくなるまで追いかけっこをし続け、ようやくアイシャは少女を助けることができたのだった。 _________ 「……え゛、あなた昨日ギルド入りしたばかりの新人なの?」 「……っ、は、はいぃ……!」 「えーと……ちょっと待ってね。確かにここは新しくできたばっかのダンジョンでまだ整備も行き届いてないけど、生息している魔物の情報くらいはわかってるはずよね?どのフロアにどの魔物がいるかって」 「は、はい、知ってますぅ……」 「じゃあここがどんなに危ないかもわかってるはずよね?今私たちがいるフロアの魔物は、瘴気が濃いところにしかいないようなやつばかりだってこと」 「はぃ……」 「じゃあ、どうしてこんなところまで来ちゃったの?悪いけど、とてもあなたみたいな子が来るとこじゃないわよ。せめてB級くらいの実力がないと……」 ダンジョン及び魔物の危険度はおおむね、瘴気の濃さによってランク付けが成されている。 人間を含む数多くの動物を生み出した神と、その神に敵対する邪神。その邪神の加護を総称したものが瘴気である。 神に生み出された人間がそうであるように、邪神に生み出された魔物は邪神の加護を受けて強くなる。そのため、瘴気が濃い地域は危険が大きいとしてランク付けされているのだ。 特別に濃い地域をAランク。それよりは薄い地域をBランク……と、段階を踏んでランク付けがされている。 そして最低がEランクであり、ここが人間の住んでいる地域にあたる。コボルトやスライムなどがいるのはおおむねここに該当する。 冒険者ランクというのは、この危険度ランクに基づいて決定される。すなわちAランクエリアの魔物も倒せるような者がA級冒険者となるのだ。 「その……ごめんなさぃ……!わたし……こわくてにげてたら……いつのまにか……!ぐすっ、ごめんなさい……!」 「んぇ!?あ、いや、責めてる訳じゃないのよ!?ただその、危ないから気をつけてねーっていうだけで……ぇえと……!」 「ほ、ほら飴ちゃん!飴ちゃんあげるかr……って、あれ?あれれ??」 「………………やっべ、道具袋忘れた……!」 少女を心配しているが故、アイシャの言葉には少し厳しいニュアンスが含まれる。それが幼い少女には叱責しているように聞こえたのか、あるいはこれまで感じた恐怖が決壊したのか…… 少女はアイシャの前で泣き出してしまい、そんなつもりのなかったアイシャも戸惑ってしまう。 なんとかして機嫌を取ろうと道具袋に常備していた飴をあげようとするが、ここで気づいた。自分が道具袋を忘れてきたことに。 なにしろ彼女は世界最高クラスの実力者であるため、そうそう滅多なことでは追い詰められたりしない。 さらに彼女は回避力が高いうえに物理攻撃を得意とする。まず体力やMPを消耗することが少ないのだ。 なので彼女は基本的に回復アイテムを持ち歩くという癖がない。そのため起こった悲劇であった。 だが、それが功を奏することとなる。 「悲報 ワイA級冒険者、道具袋を忘れる大失態を犯す」 「……はーあ……まあクソ貧乏な私の道具袋なんて大したモン入ってませんけど?別になくたって大して困りませんけど?」 「……っ、ふふ……」 「……?わ、笑った?」 「ひぃ!?あ、ぁぁああのごめんなさいごめんなさい!!そんなつもりは……!」 「いやいやいやいいのよいいの!!この程度のボケで笑ってくれるんならいくらでもボケるから!貧乏なのはマジだし!」 浮き沈みが激しいアイシャの喜劇じみたオーバーリアクション。それが少女の警戒心を僅かながら解きほぐし、その顔に笑みを浮かばせる。 その後すぐに失礼をしたと謝り倒されるが、辛うじてアイシャが少女を虐める事態は回避することができた。 「ご、ごめんなさい……せっかく助けていただいたのに……」 「いいっていいって。ダンジョンに迷子が入り込むなんて別に珍しくないんだし。……まあこんな深層にまでってのはアレだけど」 「すみません……でもその、ええと……」 「あ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私はアイシャ。アレクサンドラ・エクステールよ。こう見えてA級冒険者なんだからね」 「アイシャ……アレクサンドラ……A級……って、まさかあの……!」 (お、この展開は……!) _________ 「ま、まさかあなた様は銀麗の魔剣と呼ばれる、強く美しいあの伝説の……!」 「ふふ、そうよ。私がその銀麗の魔剣、アレクサンドラ・エクステールよ」 「す、すごい……!あの、サイン貰えますか!?」 「うふふ、大事にしてね?」 「は、はい!あの……お姉様って呼んでもいいですか……?」 _________ (……とかなったりして……!) 「き、聞いたことがあります……!巨人族の砦を単独で壊滅させたとか1人でドラゴンを倒したとか言われている、数多くの2つ名を持つ伝説の冒険者……!」 「ふふん……!そうよ。私がぎんr」 「ゴールドスプラッシュ、メスゴリラ、黙ってれば美人と呼ばれる、あの……!」 「ブフゥッ!?」 「……ね、ねーぇお嬢さん?その2つ名、どこで聞いたのかしら?」 「え?それはその、この辺の地方ギルドの人たちが……」 「そ、そう……!よーく分かったわ……!」 哀れにもひとつの地方ギルドの命運がここで確定してしまうのである。 アイシャは実力が確かである反面、あまりに若すぎることとその性格上素行にやや問題がある。そのため不名誉な2つ名も広まってしまっているのだ。 中央ギルドが作った正式な2つ名。というより売り文句は「銀麗の魔剣」であるが、残念ながらそちらの知名度はこれら面白2つ名に劣っているのが実情であった。 そもそも2つ名を持つこと自体、高い実力と知名度を持っている証左であり名誉なことではあるのだが。 「いい?お嬢さん。それは周りが勝手に、勝手に!……言ってるだけの2つ名でね?私の正式な2つ名は銀麗の魔剣よ。言ってみて?ぎんれいの、まけん」 「ぎ、ぎんれいのまけん……」 「よし。いいかしら?町やギルドでさっきの2つ名を聞いたらちゃんと訂正してあげてね?それは人の不名誉なあだ名を広めてる不届き者のクソバカ共だから」 「は、はぁ……でもその、アイシャさん、すごくお強いですね。さすがです……!」 「ま、まあね?そりゃーA級冒険者として日々鍛錬してますから?」 「あんなに強そうな魔物が相手にもならないなんて、やっぱりA級ってすごいんですね……」 「んー?んっふっふー。それほどでもないけど?私からしたらあんなのできて当たり前って言うか?」 話しているうちにぐんぐんと態度が大きくなっていくアイシャ。単独行動が多く、褒められ慣れていない彼女は少女のまっすぐな褒め言葉に調子づいていく。 だがこのような雑談に興じてばかりもいられない。ここはダンジョンの深層であり、危険がいっぱいなのだから。 「……と、まあ調子に乗るのはこのくらいにして……えーと、あなたのお名前は?」 「あ、すみません……私はリリカといいます。リリアーナ・カールビンソン……」 「リリアーナ・カールビンソン…………なんていうか、リリアーナ感はあるけど……」 「よく言われます……」 「ま、ラストネームは個人に付くもんじゃないから仕方ないか……」 「……と、それはそれとして。リリカちゃんにはこれからなんとかして町まで戻ってもらわないといけないんだけど……」 「はい……」 「ここで大きな問題があります。どうやってここまで来たのかはわからないけど、少なくともあなたはこれから魔物の住処を19フロアも戻っていかなきゃなりません」 「む、無理ですぅ……」 「だよねー……それをどうするかって話なんだけど……」 「……つ、ついてきて……くれませんか……?」 「そうしたいんだけど、私も生活がかかってるもんでここから引き返すのは……」 「じゃ、じゃあ私がついていきますから……!」 「えっと、それだとあなたが……」 「ひ、1人で帰るよりずっと安全ですから……それにその、お邪魔はしません……に、荷物持ちでもなんでもしますから……!」 「ひとりに、しないで……!」 「ぅ……!」 自分より小さく弱々しい少女に潤んだ瞳で見上げられ、アイシャの胸の内になにかが芽生える。 それは人間なら誰しもが持つであろう欲求。自分より弱い者に対して抱く感情。 (な、なにこの感覚……もしかしてこれが母性……!?) 保護欲。人間が社会的生物としてある為、子孫を護るために生まれた本能である。 それに突き動かされたこと、またリリカの言うことがある程度正しいことがあり、アイシャは彼女と同行することを決めるのだった。 A級冒険者であり、倒せない魔物がほとんどいないアイシャの手が届くところにいる方が安全というのは確かに理屈が通っているし、なによりこんな幼い少女を放ってはおけない。 そうしたことから世界最強格と新人冒険者のタッグがここに結成された。 リリカ(リリアーナ・カールビンソン) ステータス HP 52/52 MP 55/105 状態 ふつう ??? 180/500 ひとことコメント が、がんばりますっ……! そうび うで きのつえ うで ブレスレット(やすもの) からだ しょしんしゃのローブ あし しょしんしゃブーツ あたま くろいフード スキル たたく かくれる 魔法 ヒール ディフェンス 必殺 ??? もちもの HPポーション×10 MPポーション×20 ATK強化薬×2 DEF強化薬×2 おいしい水×3 りんごジュース×2 敵から逃げ回った末、いつの間にかBランク相当の魔物ひしめく遺跡の深層に来てしまった新人冒険者。 実力はE級相当であり、残念ながら特筆すべき点は見受けられない。……どころか全体的に最下位レベル。 しかしそんな彼女がこんな場所で20ものフロアを降りるまで無傷でいられたのは奇跡という他なく、普通に考えれば有り得ないことである。 よほど運がいいのか、はたまた……? 使える魔法も少ないが、ジョブとしてはヒーラーに該当する。 回復や支援魔法を習得しているが、数が少ないうえ今いる場所の難度を考えると焼け石に水。 気弱な性格と小柄な体格から保護欲をかき立てられずにはいられない11歳。 _________ ダンジョン B37F 「おんどれァァァァァァ!!!!」 アイシャは秘剣カグツチを放った! ドラゴンゾンビに24322のダメージ! ドラゴンゾンビをたおした! デモンのこうげき! アイシャはみをかわした! 「こなくそォァァァァァアア!!!」 アイシャはダブルスラッシュを放った! デモンに8356のダメージ! てきをたおした! 「ふぃー……さすがにちょっと敵も強くなってきたわねー」 「きょ、教本に出てくるような魔物を一撃で……さすがです……」 「まあ弱点突いてるかんねー。私が銀麗の魔剣と呼ばれるゆえん、魔法剣の力ってやつ?」 (でも片方の敵は単純に力で倒したような……?) この一年、書物を読むほかに筋力トレーニングも欠かさず行ってきたアイシャの力は女性離れしており、皮肉にも面白二つ名を肯定する事態となっていた。 いつぞや世話になった巨漢たちほどではなくとも、その辺りの男なら容易くねじ伏せられる膂力を以て振るわれる剛剣。それは彼女の適正ランクであるAランク魔物すら易々と両断する域に至っていた。 類まれな力量を存分に振るいながら突き進むアイシャであるが、しかしまだ遺跡の底は見えておらず、魔物もまた強くなり続けている。 事実上の最高ランクであるAランクには、強さの下限こそあれ上限は存在しない。極端な例を挙げれば今相手をしている魔物も、そして邪神も分類するならAランクということになる。 そして今彼女がいるのはまさにそのAランク領域相当の世界である。進めば進むほど天井知らずで強くなっていく化け物どもを相手に戦い続けなければならないのだ。 しかも懸念はアイシャだけに限った話ではない。 「チェストォォォアアアアアア!!!!!」 アイシャはなぎ払いを放った! ドラゴンゾンビに9784のダメージ! キマイラに6345のダメージ! トロールに5721のダメージ! ドラゴンゾンビをたおした! キマイラをたおした! トロールのこうげき! 「…………ふぇ?」 「やば、倒し損ねた!?リリカちゃんよけてぇ!」 「ひっ、ひいぃぃぃいぃ!!!!!??」 リリカは逃げまどった! 「よくもうちの子をォォォォオォォオオォ!!!!!!」 アイシャはちからまかせに剣を振り回した! トロールに4566のダメージ! まもののむれをたおした! 魔物が強くなることによる懸念がとうとう現実となった。アイシャの力を以てして一撃で倒れるのを免れた敵が、唯一の弱みを狙い始めたのだ。 すなわち護衛対象への攻撃。パーティで最も打たれ弱い存在への攻撃。 新人冒険者であるリリカが狙われ始めたのだ。 当然ながらそれをさせないためアイシャが前衛を張ってはいるが、しかし彼女の本質はスピードと技による相手の攪乱である。 相手を一撃で仕留めるだけの攻撃力も備えてはいるものの、たったひとつ。敵の攻撃を受け止める打たれ強さだけはさほどでもないのだ。 それでもB級クラスはあるだろうが、この場において物足りない感があるのは否めない。 もしもリリカを狙われてしまったら、その身代わりになって受け止めるようなことは難しい。それが現状において大きな問題となっていた。 「ごめんねリリカちゃん、あれで倒しきれると思ってたんだけど……」 「い、いえ、私こそなんにもできなくて……」 「でも参ったわねー……私は身代わりとかできるタイプじゃないから……やってもいいけどたぶん一発でオダブツジョーよ」 「じょー……?」 「私が倒れたらそれこそリリカちゃん無防備になるし、どうしたものか……」 「あ、あの、そのことなんですけd」 「……まいっか!難しいこと考えないで一撃でブッ殺せばいいのよ!」 持ち前の明るさ、前向きさを間違った方向に発揮し先へ進んでいくアイシャ。 しかしこの先で、それが通用しない相手と戦うことになる。 遺跡のさらに奥の奥。地下40Fという大台の地でそれと遭遇する。 それは世界最強クラスの彼女でも苦戦を免れなかった強敵にして、本来は軍隊を以て討伐にあたる神話級モンスター。 世界で最も有名な強さの象徴、ドラゴン。 ゾンビではない生きた個体が、遺跡の奥地に息づいていたのだ。 そして竜の大口が2人に向けて開かれる。 「…………!?やば……!」 それは今の彼女にとって最も危険な技。 避けることも身代わりになることも叶わない、狭い場所での範囲攻撃。 リリカを守るどころではない。そもそも自身の無事さえ保証できないような大技がいま、2人に向けて放たれる。 (ど、どうする!?どうしたら……!?) 「……主よ、我らが父にして母なる者。邪悪討ち滅ぼせし者。我が祈りに応え、ひとときその奇跡を授け給え……」 「……?り、リリカちゃん……?」 ドラゴンはブレスを放った! 今まさに業火が2人を焼き尽くそうという時、臆病なはずのリリカは動じることなく呪文を唱え始めた。 そして次の瞬間、リリカはアイシャの前に立った。迫る業火の前にその身を投げ出して。 「っ!?なにしてっ……リリカちゃん!?」 「神聖なる神の盾……ディバインリフレクター!」 危ないと止めようとするアイシャをよそにリリカは詠唱を続け…… 業火が2人を包む寸前、それは発動した。 眩い光がリリカを包み込み、その光が吹き付けられる火焔を切り裂いていく。 リリカの後ろにいたアイシャもまたそれに助けられ、千載一遇の好機が訪れた。 「こ、これは……!?」 「今です、アイシャさん!」 「…………あ、う、うん!」 アイシャはフリージアを放った! ドラゴンに15722のダメージ! ドラゴンは逃げていった! ___________ 「ねえねえ!?ねえねえねえなにいまの!?いまのピカーってやつなに!!?すっごいワザ持ってるじゃないのリリカちゃん!!!!!!1!!!」バシバシバシバシ 「い、いたいです……!」 ドラゴンを撃退した後、2人は小休止をしていた。 ドラゴンというのは滅茶苦茶な力を持つ一方、同種以外と群れることを好まない。そのためドラゴンが出没した場所に他の魔物は現れないのが常である。 そしてドラゴンが群れを作るのは巣以外では滅多にないので、ダンジョンにいるようなはぐれドラゴンは一頭きりというのが非常に多い。 なのでドラゴンがいる階層は、ドラゴンさえやり過ごせば安全なのだ。 むろん、それができる冒険者などそうそういるものではないが。 「えーと、でばいん……なんだっけ?まあいいや。ドラゴンのブレスも弾くとかマジパネェっす!!」 「は、はい……一瞬しか出せないですけど……」 「あんなすごい魔法使えるなら教えてくれればよかったのにー!っていうかどこであんなの覚えたの?もしかしてリリカちゃんってものっそい魔法使いのお弟子さんだったりする?」 「い、いえ、普通に学校の授業で……」 「学校やべえ……!?」 「あ、でもそれは選択授業ですし、文献に記されてる特級魔法の知識だけ知っておこうっていう授業でしたので……実戦で使うなんてことは誰も……」 「でもリリカちゃんは使えたでしょ?」 「は、はい……わたしその、痛いのがいやで……この魔法だけはなんだかすごくすんなり覚えられて……でも他のはさっぱり……攻撃魔法はひとつもですし、回復魔法もひとつしか……他のみんなはもっとたくさんの魔法が使えるのに……」 「うん……?それでもリリカちゃんはドラゴンのブレスから私を守ってくれたよ?初心者でそんなこと、普通はできないよ」 「ほかの魔法が使えないのだってさ、時間が解決してくれると思うな。まだ若いんだからさ、焦らずいこう?」 (アイシャさんもだいぶ若いと思いますが……) 「……ふむ、ゴッドシールドガードナー……違うな。砕けぬ盾……これも違う……」 「………………無敵の堅盾……これだ!」 「あの、アイシャさん……?」 「リリカちゃんの2つ名!あなたはこれから『無敵の堅盾 リリアーナ・カールビンソン』になるの!」 「ふええぇ!!!?!」 自信のなさからか、自分を卑下してしまうリリカに対してアイシャは2つ名を授けた。 それは本来なら一流冒険者の証として誰がともなく呼ばれるもの。あるいはギルドが実力者を売り出すため授けるもの。 新人冒険者にとって、見果てぬ夢。 「だっ、だだだめですよぅ!!ふっ、2つ名なんか私には……!」 「まあ世間には当分広まらないと思うけど、私はリリカちゃんをこう呼ぶよ!だからこれは2人だけの2つ名!」 「2人……だけの……」 「世間はまだ誰も知らないけど、私はリリカちゃんをすごいって思う!だから勝手にこう呼ばせてもらうね!」 「じゃ、行こっか!私のパーティとして……よろしくね、リリカちゃん」 「…………っ、は、はい!」 「………………あ、その代わりと言っては何だけど、私の2つ名の件も……よろしくね?ちゃんと広めてね?銀麗の魔剣」 ずるりと身体から力が抜けそうになりながら、それでもなお足取りは軽く。リリカはアイシャに付いていく。 その身を襲う大問題に気づくことなく。 リリカ ステータス HP 52/52 MP 5/105 状態 ふつう ??? 260/500 2つ名 無敵の堅盾 ひとことコメント ふ、2つ名なんて……!あうあうあう……! そうび うで きのつえ うで ブレスレット(やすもの) からだ しょしんしゃのローブ あし しょしんしゃブーツ あたま くろいフード スキル たたく かくれる 魔法 ヒール ディフェンス 必殺 ディバインリフレクター もちもの HPポーション×10 MPポーション×20 ATK強化薬×2 DEF強化薬×2 おいしい水×3 りんごジュース×2 地下40Fにて、実は特級魔法の使い手であることが判明した新人冒険者。 特級魔法とはその威力や消耗の大きさから戦略兵器としての運用が為されている大魔法であり、個人で用いることを想定していない魔法のことを指す。 冒険者養成学校魔法学科において選択授業として取り上げられているものの、これまで誰一人使おうとする者も使いこなせる者もいなかった。 新人のMPではだいたい不発に終わるのが理由のひとつ。 だがこのディバインリフレクターだけは別で、この魔法は継続的にMPを消耗していくタイプの魔法である。 その消費量はなんと秒間50。A級冒険者であるアイシャでも10秒しか展開することができない。が逆に言えば50以上のMPがあれば一瞬だけなら展開が可能。 とはいえ普通は一瞬しか出せないうえ、その一瞬でMP50が消える防壁などは燃費が悪すぎて誰も使わない。 参考までに、アイシャも使うフレイムなど初期魔法のMP消費はたったの5。それと比較すれば1秒で10倍もの消費になる。 集団でこの魔法を展開し、背後にいる味方を守護するというのが本来の用途であり、実質的に軍隊用の魔法である。 なお、ほかの特級魔法は発動した時点で7~800ほどのMPを消耗するためこちらも集団で分担するのでなければとても使えない。アイシャですら使えない。 強いが使いどころが限られる。それが特級魔法である。 リリカでは最大2秒しか展開できないが、それでも展開している間はあらゆる攻撃から身を護ることが可能な無敵の盾。 彼女が地下20Fまで無事だったのは適宜この魔法でガードしていたためで、一瞬しか展開できない防壁をうまく使いこなしていた成果なのだ。 普通はここまで使いこなすことができない。彼女の臆病さの賜物と言える。 防御だけなら超Aクラスの11歳。 ________________ ダンジョン B42F 「いやーしかし……なかなか底に着かないわねえ。なんか周りも物々しくなってきたし」 「そうですね、生き物の気配がしないというか……」 リリカの隠し玉発覚から30分。MPと水分の補給を済ませた2人はさらなる遺跡の深層に進んでいた。 ディバインリフレクターは強力である反面消耗が激しい。そのため極力使わないようにしなくてはならない一方、万が一のためいつでも使えるようにはしておく必要がある。 リリカの持っているMPポーションは一本につき50回復するので、一本につき一秒の発動が保証されるということになる。 そのうちの2本を飲みMPは全回復。残り18本のポーションを大事にしていかなくてはならない。 そんな中、2人を囲む状況には変化が現れていた。これまで幾度となく襲い掛かってきた魔物たちの姿が見受けられなくなり、それと入れ替わるように周辺が謎の装置で埋め尽くされる。 まためぼしい遺物も発見できておらず、難度に対して割に合わない印象を抱いていた。 しかしそれでも未知の遺跡である。もしかすると最奥には恐るべき何かが眠っているのかもしれない。 そんな願望を抱いてアイシャと小さな守護神は止まることなく先へ進んでいく。 だがその先で、彼女たちは遺跡の洗礼を受けることになる。 ビー!! ビー!!! 「ふえええぇ!!?なっ、なななんですかぁ!?」 「しっ!……落ち着いてリリカちゃん。これはいわゆる、侵入者を知らせるホルンみたいなもの……」 「しし、侵入者って……!」 「というわけで逃げるよ、リリカちゃん!」 始めての冒険であるリリカは知る由もない、遺跡探索におけるお約束。 設置型魔法や何らかの装置によって成る、侵入者警戒警報である。 一般的なそれよりはるかに無機質であるが、本質を見抜いたアイシャはすぐさま退避行動に移った。 2人が駆け抜けた後ろをどこからか放たれた無数の光線が射抜き、それを受けた壁が黒く焦げた臭いを放つ。 人間が受けたなら、間違いなく無事では済まない代物。 「侵入者って……私たちですかぁぁぁぁーーーー!!!?」 「当然!!!たぶんこれ当たると痛いよ!」 「痛いじゃすみませぇぇぇぇん!!!!?」 ビシュゥゥゥン!!! 「ひぃぃぃぃぃいいいいい!!!!?でぃ、ディバインリフレクタぁぁ!!!」 「あ、ディバった」 あまりの恐怖にリリカは思わずディバインリフレクターを展開。そのわずか2秒ほどの無敵時間に下層へ繋がる階段を駆け下りるのだった。 今回の冒険始まって以来初の、リリカによる先導。それに胸躍らせながらアイシャも後を追う。 リリカステータス HP 52/52 MP 5/105 状態 ふつう ??? 320/500 2つ名 無敵の堅盾 ひとことコメント こ、こわかったぁ…… そうび うで きのつえ うで ブレスレット(やすもの) からだ しょしんしゃのローブ あし しょしんしゃブーツ あたま くろいフード スキル たたく かくれる 魔法 ヒール ディフェンス 必殺 ディバインリフレクター もちもの HPポーション×10 MPポーション×18 ATK強化薬×2 DEF強化薬×2 おいしい水×1 隠し玉の存在やアイシャから貰った2つ名により若干勇気づきはしたものの、それでもやっぱり臆病な新人冒険者。 MPを補充した先からさっそく空っぽになり、再度の補充が急務。 これから飲む分を差し引けば残りは16本。果たして底に着くまで持つのだろうか。 先行き不安な11歳。 _______________ ダンジョン B43F 「んっ……」 光線による攻撃を受けたフロアを降りた先。先ほどの喧騒が打って変わって静まり返ったダンジョン内でリリカは小さく身体を震わせる。 「あ、あの……さっきのはもう来ないんでしょうか……?」 「んー……どうだろ。さっきのはどう考えても私らが侵入したことを誰かに伝える音だから、何もないってことはないはずだけど」 「そ、そうですよね……」 「まあそんなわけで飲めるうちに飲んどいたほうがいいよ、ポーション。MP切れでディバれなくなったら大変だから」 「は、はい……」 「……?どうかした?」 「い、いえ、なんでm……」 リリカがその内で膨らむ衝動を押し殺し、ポーションを飲みながらアイシャと話をしていると、遠くから音が聞こえてきた。 臆病さゆえ周囲に過剰なほど気を巡らしているリリカだからこそ気づける音。無機質な、金属が金属を打つ音が規則正しく。 がしゃん、がしゃん、がしゃん、と。重厚な何かの迫りくる音が遠くから。 「あ、ああぁあぁアイシャしゃん……なななにかきましゅ……!」 「え、ほんとにどうしたの?そんなに怯えて……ドラゴンのブレスにすら立ちむかったのに」 「まあでも後ろにあるのは帰り道だけ、あとは一本道のようだし……行くしかなさそうね」 そして2人が先に進むと、それは居た。 それは全身を金属で装甲した巨人。成人男性の2~3倍の巨体を誇る機械巨人。 多くの遺跡で見られる岩のゴーレムや、特殊な術式で稼働する自律兵器、そのどれとも異なる次元の技術によって成り立つ物。 「さ、さしづめギア・ゴーレム……ってとこかしら。こんなん初めて見るわー……」 「か、kkkkkかかかきゅっ、かきぇっ、かちぇ、かちぇましゅよね……!?」 「……落ち着いて、リリカちゃん。私を誰だと思っているの?……銀麗の魔剣、アレクサンドラ・エクステール様よ!」 ギア・ゴーレムが現れた! アイシャのこうげき! 「よくもリリカちゃんを怖がらせたわねソォォォォォォド!!!!」 アイシャは超必殺属性網羅カラミティソードを放った! ガキィィィイン!! 「………………へ?」 「あ、アイシャさんの剣が……弾かれ……?」 ギア・ゴーレムにダメージをあたえられない! ギア・ゴーレムのこうげき! 「まず……っ!?」 幾多のA級魔物を一刀のもとに切り伏せてきた必殺剣は、未知の金属に依る装甲を前に通じず…… 相手の反撃が始まった。 顔にあたる部分が展開。その下から大きな砲口が姿を現し、先ほどのような光線による攻撃がアイシャを襲う。 「あっっっつ!!!?あっっっっっつうううぅぅう!!!!?」 寸でのところで身をかわし、すれすれで直撃を避けることはできたが掠めた部分が焦げるほど高威力の光線である。 前の階で飛んできたものとは比べ物にならない威力であり、もしこれが直撃してしまえばアイシャといえど無事では済まない可能性が高い。 直撃を喰らう前に相手を倒す必要があるが、しかし現状の最大威力であるカラミティソードすら通じない装甲を全身に施している相手である。これまでのような力押しが通用するとはとても思えない。 ややもすればドラゴン以上の強敵かもしれない物を相手に、アイシャも慣れない頭脳戦を強いられていた。 アイシャはカイザーフェニックスを放った! ギア・ゴーレムにダメージを与えられない! 「くっ……!」 (やっぱり、剣がダメなら魔法でってわけにもいかないみたい……!こりゃ参ったわねー……) いくら斬り付けようとヒビの1つも入らず、いかな魔法にもビクともしない敵の装甲。 魔法剣の強みである斬撃と魔法の同時攻撃。すなわち傷口から弱点魔法を流し込むという必殺パターンの通じない敵というのは初めてのことである。 ドラゴンの堅固な鱗ですら、渾身の力で打ち込めば少しは傷をつけることができる。そこから魔法を流し込むことによって彼女はかつてドラゴンを単身で仕留めてのけたのだ。 これまでの戦い方が通用しない敵を相手に、さしものアイシャも押され続けていた。 ギア・ゴーレムはリリカの方を向いた! ギア・ゴーレムのこうげき! 「……っ!?リリカちゃんっ!!」 「でぃ、ディバインリフレクター!!!」 そして決定打のないアイシャなど敵にとって脅威にはならず、すばしこく動き回る彼女を放置してもう1人に狙いを定めたのだ。 それに気づいたアイシャがリリカに脅威を伝え、なんとか特級魔法の発動が間に合った。 ディバインリフレクターの光の障壁に、敵が放った赤い光線がぶつかり弾け舞う。光と光の大衝突が仄暗い地下をまばゆく照らし出す。 「こっち見ろやデカブツァァァァァ!!!」 だが、そのぶつかり合いは長く続かない。ディバインリフレクターには時間制限があるのだから。 なんとか敵の注意を引こうと、アイシャは光線を放つ砲口に向けて渾身の一撃を振り下ろす。すると…… 『!!?!??!』 ギア・ゴーレムはひるんだ! 「これは……!」 光線を放つ砲口は、装甲を展開させた下から出てきたもの。すなわち堅牢な殻の内側にあたる。 そこを突いたせいなのか敵の巨体は大きくぐらつき、リリカに向けられていた光線の照射も止んだ。 「リリカちゃん大丈夫!?」 「は、はい……!それよりも……」 「うん。今のはちょっと怯んだだけ……またすぐ襲ってくるよ」 「だからリリカちゃん、とっても危ないんだけど……ひとつお願いしてもいいかな?」 「え……」 ごにょごにょごにょ…… 「ええええぇ!?そっ、それって……!!」 「とっても危ないし、下手すると命の危険だってある。けど……多分これ以外に勝つ方法はないと思うの」 「大丈夫、やることはさっきのドラゴンといっしょだから!」 「そ、そうじゃありません!私なんかより、アイシャさんの方がよっぽど……!」 「……だいじょうぶ!見た目よりよっぽどタフなんだから。まかせて!」 「アイシャさん……」 ぽん、とリリカの頭に手を置いて、アイシャはフォーメーションを組む。 それは先ほどのドラゴン戦と同じ。リリカがアイシャを庇う陣形。 リリカは急いでポーションを飲み干し、失った魔力を補充する。これで全ての準備は整った。 (鬼が出るか、蛇が出るか……!) そんな2人をまとめて葬り去ろうと、復活したギア・ゴーレムが照準を定める。 顔の装甲が展開し、顕になった砲口から光線がいま、放たれる。 「今だよリリカちゃん!」 「は、はい!ディバインリフレクター!!!」 それをリリカがディバインリフレクターで受け止め…… そしてその後ろから、アイシャが飛び出していった。 光の壁の外、敵の光線にその身を晒しながら。 「うおおおぉぉおおおらァァァァァァアアア!!!!!」 超高熱の熱線をその身で押し切り、手にした剣を砲口に向けて突き刺した。 そして…… アイシャは超必殺属性網羅カラミティソードを放った! かいしんのいちげき! ギア・ゴーレムに99999のダメージ! 砲口から直接魔力を叩き込み、硬い装甲の内側にある砲口のさらに内側。敵の最もデリケートな電装系をずたずたに破壊したのだ。 いかに護りが硬かろうとその内側を破壊されればどうにもならず、ギア・ゴーレムは大きな音とともに倒れ込んだ。 ギア・ゴーレムをたおした! 「っっっっしゃ!!!勝ったぁぁぁぁぁ!!!」 「いぇぇぇぇぇあぁぁぁあ……ぁぁ……あれ……?」 ばたん…… 「あ、アイシャさん!?」 アイシャステータス HP 52/770 MP 165/500 状態 きぜつ 2つ名 銀麗の魔剣 ドラゴンスレイヤー 百人斬り 史上最年少のAランク 黙ってれば美人 残念すぎる美人 ゴールドスプラッシュ 頭以外文句なしのAランク ひとことコメント …………(気絶中) そうび うで てつのつるぎ (とけかけ) うで もえかす からだ やすもののよろい (はそん) あし ぼろいくつ(しげきてき) あたま アフロヘアー スキル なぎ払い ダブルスラッシュ かぶと割り ヴィクトリースラッシュ 火炎斬り 氷雪斬り 雷電斬り 疾風斬り 逆流れ 秘剣カグツチ フリージア 霹靂一閃 天空Vの字斬り 魔法 フレイム ブリザード サンダーボルト かまいたち カイザーフェニックス エターナルフォースブリザード サンダーブレイク デッド・ロン・フーン 必殺 超必殺属性網羅カラミティソード 天地開闢アルマゲドンアタック 地下43Fにて遭遇した強敵との戦いで無茶をしすぎ、とうとう倒れてしまったA級冒険者。 魔物すら恐怖する凄まじい戦闘能力を見せつける彼女も、まだかろうじて人間だったようだ。 装備のいくつかは先ほどの熱線により傷んでしまっており、使い物にならなくなってしまった。 それでもリリカがディバインリフレクターで少しとはいえ護ってくれたため致命傷は免れている。 もしもリリカが居らず、あの光線を始めから最後まで生身で受け止めていたら最悪も有り得ていたかもしれない。 だが剣をはじめとした装備が傷んでいるのはかなり大きく、ここから先の旅に不安が残る。 旅の岐路に立つ18歳。 ─────── 1時間後…… 「う、ぅぅん……?」 「…………はっ!!やば、寝てた!?」 「あ、アイシャさん!よかったぁ……!」 「リリカちゃん……?あれ、私……」 「……そっか。私、あいつと戦って……」 「無茶しすぎです……っ!ほんとに死んじゃったらどうするつもりだったんですかぁ……!」 あたりに散らばる、いくつものMPポーション。 アイシャが気を失っている間、リリカがずっと回復魔法をかけ続けてくれていたのは想像に難くない。 そして、だからこそアイシャが無事だったのだろうことも。 「ぐすっ……!ほんとに……よかった……っ!」 「ごめんねリリカちゃん……ありがとね」 「きれいな銀色の髪だって、こんなになって……」 「へ……?」 もさっ…… 「うぉあ!!?なんじゃこりゃぁぁあ!!!」 「アイシャさんの髪の毛……黒こげに……!」 「古い!!表現が古い!!!!」 「……まいっか。ポーション飲んでほっときゃ治るでしょ」 「え……?」 「というわけでリリカちゃん、悪いんだけど……ポーション、くれないかな?後で返すから」 「あ、ええ、はいどうぞ……」 「ありがと。……ごきゅ、ごきゅ……」 スゥゥ…… アイシャがHPポーションを飲み下すと、黒く焦げていた髪の毛がみるみるうちに艶のある銀髪に戻っていく。 その様子をリリカは信じられない様子で見つめていた。 (この人、本当に同じ人間なんでしょうか……?) ポーションには自己治癒能力を高める作用があるものの、有効なのはせいぜい切り傷から骨折くらいまでのもの。 髪の毛に関して言うなら、生え変わりを促進する作用はあってもおかしくないが、黒こげになった髪が再生することはまず有り得ない。 しかし眼前で起きているのは明らかに頭髪の再生であり、リリカはアイシャの人間離れぶりを改めて認識するのである。 そしてそれと共に、安心したことで襲いかかる感覚もまた認識する。 ぶるるっ…… 「ひぁう……!」 「……?どしたのリリカちゃん。寒いの?」 「あ、いえ、あの、その、先はあとどれくらいかなって……」 「まあ……経験上あんだけ強いガーディアンが出てきたからには、そこまで長くはないと思うけど……」 「そ、そう、ですよね……!」 「……んー、なんだかリリカちゃん、落ち着きがないような……」 「い、いえ、そんなことは……」 「あ!ほ、ほら、お宝!お宝がいっぱいですよアイシャさん!」 それはリリカなりに話題を逸らそうとしたゆえのことではあるが、しかし本当のことでもあった。 先ほど倒したギア・ゴーレムの亡骸。未知の技術によって造られたその身体は、持ち帰ればどれだけの価値をもたらすだろうか。 「おお、マジじゃん!全部持って帰るのは無理としても、大事そうなパーツをいくつかもぎ取ってと……」 「うーん、バラすのも一苦労ね……こいつバカみたいに硬いから……」 すぐさま解体に掛かるアイシャだが、その硬さと重さがゆえに作業は難航。 解体そのものと、持って帰るものの選別とでかなりの時間がかかるのだった。 リリカステータス HP 52/52 MP 105/105 状態 ふつう ??? ???/500 2つ名 無敵の堅盾 ひとことコメント あぅ……! そうび うで きのつえ うで ブレスレット(やすもの) からだ しょしんしゃのローブ あし しょしんしゃブーツ あたま くろいフード スキル たたく かくれる 魔法 ヒール ディフェンス 必殺 ディバインリフレクター もちもの HPポーション×6 MPポーション×8 ATK強化薬×2 DEF強化薬×2 おいしい水×1 なにやら少し落ち着きのない新人冒険者。 きょろきょろと辺りを伺う様子を見せるが、敵や罠を警戒しているなどといった訳では無いようだ。 果たしてその身に何が起きているのか。その鍵はどうやらたくさん飲んだポーションに隠されていそうである。 言いたいことが言えないPOISONな11歳